演奏

TEXT & PHOTO :桜坂秋太郎

東京ハートブレイカーズの公演は、前回『グッドモーニング、ビッグバン』をレポートしたが、そのライヴ感にノックアウトされてしまった。今回は次の催物である『コルトガバメンツ -revisited-』をレポートしたいと思う。バンドスタイルでの再演ということだが、私は取材日を指折り数えるほど、この『コルトガバメンツ -revisited-』を楽しみにしていた。今回の会場は南青山MANDALA。取材は公演初日。あいにく東京では雪が降った後だ。足下が悪く、踏みつける雪の音を少しうっとうしく思いながら会場へ到着。すでに開場時間を過ぎているため、店内に入ると多くのお客さんがグラスを傾けている。開演までのゆっくりした時間が流れていく。

 


 


 


 


“コルトガバメンツ”は小学生の仲良し4人組のグループ。大人になった今の姿と、小学生の時の姿をクロスして見せることで、ストーリーは展開する。少年の頃の思い出や記憶、大人になって振りかえることは男性ならば誰でもする話だ。仲が良いようで、少し距離があるような関係。純粋な少年だから言えなかった気持ちは、大人になってどう変わるのか。大人の見栄や体裁は、何の意味があるのか。少年期を引きずったままの不完全な人間模様を、青春臭さを出したバンド演奏が彩る。

 


 


 


 


キャストは、藤井肇浜田信也)・藤井肇の小学生時代(首藤健祐)・能美信也上山竜司)・能美信也の小学生時代(平野勲人)・愛染正次多田直人)・愛染正次の小学生時代(草野とおる)・吉田明夫中村哲人)・吉田明夫の小学生時代(石川よしひろ)。ストーリーの蕎麦屋になった駄菓子屋の話など、リアル過ぎて思わず頬がゆるむ。舞台は客席の一部も使った形で構成されていて、それは暗い楽屋のようでもあり、突然舞台と一体化して踊りが始まることもある。このフレキシブルなスタイルが実に面白い。

 


 


 


 


印象に残るのは“戦争ゲーム”のシーン。小学生の頃、似たようなゲームで遊んだことを思い出す。何十年も忘れていたことが、遠い日の記憶として蘇る。実力派の俳優達の中に、思わず自分の姿を重ねる。それが芝居を目の前で観る幸せ、このライヴ感が最高なのだ。袋にしまっていた自動拳銃コルトガバメントと一緒に、主人公藤井肇が心に抱えていたモノが、ゆっくりと変化して溶けていく様子を、カメラのファインダー越しに感じる。シンクロするライヴ感、それがまさに東京ハートブレイカーズ主催の首藤健祐が狙っているところなのではないだろうか。

 


 


 


 


以前話を聞いた時、首藤健祐は演劇ファンとロックファンを結びたいと言った。『コルトガバメンツ -revisited-』は、まさにそれを表現していて、演劇ファンもロックファンもが楽しめる内容になっている。本作品の演出と音楽監督を担当している右近健一は、愛染正次役の多田直人が持つオリジナルフォークソング「回転寿司」をパンク調にアレンジし、本作品のために「卒業」「そんなこと関係ない」「戦争ゲームが好きさ」「やっぱりぼくは君が好き」「お母さん ごめんなさい」という個性的なオリジナルナンバーを書き下ろした。そのセンスは実に面白く、ストレートに心に響いてくる。

 


 


 


 


終演後、会場の出口付近で帰るお客さんを見送る。青春映画を観終わった後のような、爽快感溢れる笑顔ばかりだ。少し恥ずかしいようなテーマに正面から取り組む東京ハートブレイカーズの『コルトガバメンツ -revisited-』。公演初日を取材した感想は、最後の大阪公演までの大成功は間違いないだろうと思う。会場を後にして、青山通りを歩く。踏みつける雪の音が、少年の頃の楽しかった雪遊びを思い出させてくれる。いつの間にか大人になり、いつの間にか流されて生きている。少年期を全力で過ごしている息子のことが頭をよぎる。彼にも…人に言えないコルトガバメントがあるのだろうか。

 


 


 


2011年夏、吉祥寺スターパインズカフェにて東京ハートブレイカーズが舞台化、
全ステージ完売のうちに幕を下ろした『フィッシュストーリー』。
アンコールの声にお答えして、新たな演出、キャストのもと、劇場版としての上演が決定!

詳細はコチラ
◆東京ハートブレイカーズ 公式サイト
http://www.tokyoheartbreakers.com/

◆コルトガバメンツ
脚 本
田村孝裕[ONEOR8]
 
演出・音楽監督
右近健一[劇団☆新感線]
 
出 演
多田直人[キャラメルボックス]
上山竜司
浜田信也[イキウメ]
中村哲人
平野勲人
石川よしひろ
草野とおる[壱組印]
首藤健祐