世界に向かって自分の可能性を信じ、羽ばたこうとする女性たち。その中ではロックという音楽に魅せられ、新たな道へ突き進もうとするものもいる。そんな彼女らの登竜門ともいうべきイベント、WOMEN’S POWERの季節がまたやってきた。たびたびBEEASTでも取り上げてきたこのイベント、約20年の間に53回の開催となるこの歴史は、30~40年選手というロッカーがどんどん現れ始めている現在では「まだ若い」という人もいるかもしれない。しかし、女性のロックを支える基盤を作り上げたという意味では、日本ロック界でも他に類を見ない重要なポイントと言えるだろう。その意義がさらに明確になるがごとく、今回は各日7バンド、3日間で述べ21ステージと、前回に比べ規模を拡大されての開催となった。近年見られるガールズ・ロックシーンの拡大という事情に沿ったような事実だが、果たしてイベントの盛り上がりはいかに?彼女らはそのPOWERを拡大しているのか?その真相を探るべく、3日にわたるイベントの模様を追った。
30度超えの残暑厳しい日が続く中、この日の最高気温は26度とやや涼しめ。しかし目黒LIVE STATIONは最高温度が計測不能なほど熱かった。開場の2時間以上前から長蛇の列ができ、再会を喜び合うファンもいれば、「遂にこの日がきた」と神妙な面持ちで待つファンもいる。そんな様子が53回目となるこのイベントが積み上げてきたものの一つとして、アーティストにとってももはや無視できないプロセスとなっていることを示唆している。そんな各々の思いとともに、階段を下りたその先にある希望のようなものを人々は待ちわびた。
1.ZomBeats!
暗転、SE、ざわついていた会場が一瞬にして沈黙、そしてイベントは始まった。一発目の登場はZomBeats!。メンバーは、aimi (Vocal&keyboards)、nike (Guitar)、nartus (Bass)、kazki (Drums)。キーボードのハイトーンなメロディと重厚なサウンドの摩擦が、待っていましたといわんばかりにフロアを大きく沸かせる。自分らを律するようなメロディと歌詞、そしてつなぎを着用した彼女らの佇まいはトップバッターにふさわしい頼もしさを感じる。赤、青、紺、そして迷彩柄といったつなぎが表すように各々のカラーを発色し、化合され、ZomBeats! 色なるものを生成していくようだ。そしてラストの新曲「NEXT」ではまさにタイトル通り、次のバンドへバトンをつなぎ、トップとしての役割を果たしてくれた。
http://12.xmbs.jp/ZomBeats/
◆セットリスト
M01: RUIN
M02: うたかた
M03: SHIGANSYA
M04: Lost Days
M05: NEXT
2.コイノオトシゴ
「今日は最高に楽しい一日にしましょう!」というMah(Vocal) のコールでスタートしたコイノオトシゴ。メンバーはMah、アイラ(Guitar)、ルイ(Bass)、かよ(Drums)。会場中の青いサイリウムに圧勝するほどまぶしいルックスと身もだえするようなアップテンポなサウンドで、会場をタテにもヨコにも揺らした。いつだって女子の憧れであり、男子の希望である制服を、「みんなと一緒」というおそろい感と「他の女子と一緒にしないで」というアイデンティティの矛盾という絶妙なバランスで着こなす。小難しい表現かもしれないが、要は「可愛いければ正義」ということだ。等身大だけど背伸びしたい女の子そのものである彼女らは、ひたすらにきらきらと輝く「青春」をオーディエンスに投げかけ、会場と一つになった。
http://koioto.net/
◆セットリスト
M01: gemstone
M02: JOKER
M03: Shine
M04: lil pleasure
M05: sheline
3.七彩☆GLITTER
気品あふれるポップ・ロック・ミュージックをバンド名のごとく多彩にフロアに放った七彩☆GLITTER。メンバーはLEN(Vocal)、あさぴー☆(Guitar)、Mica(Bass)、Yuko(Suport Drums)、そしてこの日からyurika(Guiter)が加わり、5人体制で初ライブというメモリアルなステージとなった。途中、ギターの弦が切れるハプニングにも、フロアから「(弦を張り替えるのを)待つよー!」と励ましのエールがあがる。このような会場のあたたかさもこのイベントの醍醐味だろう。ヘヴィもハッピーもオールラウンドに表現し、人間の持つ感情を余すことなく音に詰める。そしてラスト・ナンバー「BREAMEN」の最後にメンバーが指差した方向に、確かな未来を感じた。
http://www.nanairoglitter.justhpbs.jp/
◆セットリスト
M01: 華火
M02: Dazzlin night
M03: ウタカタレクイエム
M04: Secret
M05: AIR SHIP
M06: BREAMEN
4.Aclahayr
ゴシック調の黒の衣装に身を包み、妖艶でアンダーグラウンドな雰囲気でフロアを支配したAclahayr。メンバーはそるく(Vocal)、MIYU(Guitar)、薫(Bass)。本能にスイッチをいれるようなグルーヴは女性の憧れるかっこよさそのもの。この日をもってそるくの、バンドへの正式加入という発表にフロアはうれしい悲鳴をあげ、「そるくコール」でいっぱいになる。そんなフロアを一人占めした当事者である彼女は、「よろしくー!」といたってマイペース。かと思えば、グラマラスで悩殺するようなサウンドで会場を挑発し、最後には「目黒LIVE STATIONありがとうございました!」と、自身のステージをしっかりと締めてくれた。
http://aclahayr.net/
◆セットリスト
M01: connect
M02: 新曲(タイトル未定)
M03: glad eye
M04: vortex
M05: シンクロ
5.Alstro Merry
転換の段階からフロアを沸かせていたのはAlstro Merry。メンバーは、AIMI(Vocal)、SAKI(Bass)、柚(Drums)、さや(keyboard)。ランナーズハイのような高揚感をキープしながら、切なくもしっかり前を向いたサウンドを響かせる。AIMIが「声出しましょう!」といえばタオルが回旋し、「まだまだ踊り足りないでしょ?」といえば手拍子が起こる。彼女を中心に、シックさもロックさも常にアクセル全開。そのあふれる興奮をMCにまでにじませ、全力で駆け抜けた30分だった。
http://www.alstromerry.com/
◆セットリスト
M01: Endless Love
M02: YELL
M03: Astro Meria
M04: OMOI
M05: Zin
M06: BEST FRIEND
6.Mary’s Blood
会場に外国人のオーディエンスが見られ始めたころ、はじけるサウンドをポップさと過激さをまじえて表現するMary’s Bloodが登場。メンバーはEYE (Vocal)、SAKI(Guitar)、RIO(Bass)、MARI(Drums)。1曲目「Red Line」では日本人離れした抜群のグルーヴとノリを見せ、ここまで登場したバンドたちとはまた一味違うクールさを全開に見せつけ、目黒から「インターナショナルに活躍するバンドが登場するのでは?」というくらいの予感をさせてくれた。MCではEYEが「日本語わかんねーや!」と呂律が回らなかった自分にツッコミをいれるなどのユーモアも見せたが、パフォーマンスは完璧。ラストにフロアとのコール&レスポンスをばっちり決め、彼女の赤いレザージャケットをひるがえしてその存在を存分にアピールした。
http://marysblood.syncl.jp/
◆セットリスト
M01: Red Line
M02: Ms. Carrie
M03: Mary
M04: Blood
M05: Save the Queen
7.CREA
沸点はどこだといわんばかりに盛り上がり続ける空気の中、初日のトリを飾ったのはCREA。メンバーはNaki(Vocal)、Aiko(Guitar)、Anna(Bass)、Miku(Drums)。とてつもないエネルギーと半端じゃない勝ち気さでノンストップに挑発し、観客も負けじとダイヴで応える。メロディアスでポップなサウンドを、時にシックに、またある時にはまるで油断しないでと警告するように響かせる。アルバム『LINK』の発売に伴い、全国ツアーへのはなむけとなったこのステージで、「ここにいるみんなと過ごせて本当にうれしく思います」と感謝の気持ちを述べた。そして12月18日のWOMEN’S POWER Specialにも参加する彼女らは大きくなって帰ってくることを宣言。その成長をここにいる全員で見守っていきたい。そう思わせる理由とは?「WOMEN’S POWER! お前ら最高!」Nakiが放ったこの一言がすべてだろう。
http://www.crea-music.com/
◆セットリスト
M01: LINK
M02: 悪女なあの子
M03: BY MY SIDE
M04: デドリー
M05: Last Dance
M06: Windy
ここでしか実現しないスペシャル・ステージ。Mary’s BloodのEYEがフロントマンとなり、PRINCESS PRINCESSの「世界でいちばん熱い夏」を全員でセッションしてくれた。ただでさえ華やかだったステージがこれでもかと輝き、これ以上ないほどの贅沢さにフロアも蒸発しそうな勢い。つなぎも制服もレザージャケットもすべてが女の子の武器だが、それに加え楽器を持つ彼女らにかなうものはあるのだろうか。最高気温26度の中でも、まさにここが世界で一番熱い夏。しかしWOMEN’S POWERは始まったばかり。残暑はまだ続くのだ。
イベントとしては中日だが、東京最終公演となるこの日。一日目に負けず劣らずの注目のバンドが集まっただけに、オープンからすでに多くの観衆がライブハウスに集まった。イベント開催側による規模拡大だけでなく、世間のイベントに対する注目度も大きくなったのではないだろうか。これまでの推移から考えれば、イベントに対する認識、そしてガールズに対する認識の大きさは、急激な変化を遂げている。前日に引き続き残暑による暑さが外には蔓延していたが、それとは比にならないくらいの熱気がイベント開始前から会場に立ち込めていた。
1. .ChocoHolic(ドットチョコホリック)
二日目のスタートを華々しく飾ったのは、.ChocoHolicの4人。メンバーは、ecco(Vocal)、美萌(Guiar)、INADA(Bass)、MEG(Drums)。登場からいきなり大きな歓声と拍手の嵐をフロアからもらった彼女らは、WOMEN’S POWER初登場というプレッシャーを微塵も感じさせず堂々としたプレイで観衆を笑顔と興奮の渦に引き込んだ。原色を基調としたファッションの華やかなルックスと溌剌としたパフォーマンス、そして明るくポップなサウンドは魅力いっぱい。会場はいきなり派手な盛り上がりを見せた。「3次元の行動を開始」したばかりという彼女らはステージの実力も未知数だが、自身の持つキュートな雰囲気と元気さ、会場との一体感は間違いなく彼女らの武器として機能し、堂々のステージを繰り広げた。ガールズ・ロックバンドとしての、今後の活躍が期待される。
http://dotchocoholic.com/
◆セットリスト
M01: オオカミ少女
M02: Dear Bear
M03: 乙女はDreamer
M04: First Cry
M05: 約束
2.Ragzis
トランスライクなSEから劇的なイメージで登場したのは、WOMEN’S POWERでも常連格になりつつあるRagzis。メンバーは徠次(raiji: Vocal)、ちょみこ(Drums)、茜(sen: Guitar)、愁(Bass)。いきなりのデス・ヴォイスからフロアを激しくあおる徠次の動きに、会場が大きく波打ち、そのハードでダーティーさすら感じるサウンドからは、先程の.ChocoHolicの明るいイメージから一転、ダークな雰囲気に。「こんばんは、目黒ライブステーションを散らかしに来たRagzisです!!」そんな言葉を吐く徠次を中心に、あくまでヒール役に徹する彼女ら。しかし、ヴィジュアルチックな様相をかもし出していた前回登場までのファッションも一新し、シンプルな装いになりバンドの目指す方向にも新たな展開を見せつつあるようだ。「おらぁ!後ろ!(声が)足らねえよ!!」徠次のその叫び声も、WOMEN’S POWERのファンにはすっかりお馴染み、まさに彼女にされるがままといった様子。リズムも展開やパターンにバリエーションを増やし、音楽性に磨きを掛けている様子が診て伺えるRagzis。プレイを経るたびに鋭くなる徠次のデス・ヴォイスとともに、急速な成長の様子がうかがえた。
http://www.ragzis.com/
◆セットリスト
M01: Determination
M02: It’s me
M03: Despair to hope
M04: TOTO(仮)
M05: 衝動(仮)
3.水越結花
WOMEN’S POWERの中では少数派のソロ・シンガー水越結花。だがすでこのWOMEN’S POWERでの登場も3回、その雰囲気にすっかり溶け込んだ感もある。登場から前半はずっとお立ち台の上で、観衆から見える位置で歌い続けたのは、シンガーとして、一アーティストとしてのアピールを強くした結果といえよう。「It’s Show time!」という一言から始まった彼女のステージは、その元気な一面と共に、WOMEN’S POWERの参加者として他のバンドに負けたくないという強気な姿勢のようなものにも見えた。しっかりと自分の歌を聴かせた前半から、後半は快活なロック・サウンドを披露し、このイベントのPOWERの部分をアピールした。無理にあおらなくても、彼女の優しい雰囲気のある世界に引き込まれ、次第に会場は彼女の爽やかな歌にあわせてウキウキとした気持ちにさせられる。彼女の提唱するアーティストと観衆の間にある「ファミリー」という絆もより一層深まったようだ。
http://ameblo.jp/miyu328/
◆セットリスト
M01: In the room
M02: Me and you
M03: Your song
M04: Rainy Girl
M05: HERO
4.FullMooN
2日目中盤のスペースに登場したのは、新鋭、FullMooN。メンバーはねね(Vocal)、えれん(Guitar)、さかえ(Bass)、みつの(Keyboards)、えどがわるる(Drums)。アキバから来た美少女戦士という触れ込みにあわせ、アニソン風のナレーションから登場、いきなり「FullMooNだ!目黒をぶっこわしに来たぜ!」というねねの過激な挨拶とは裏腹のポップさとカラフルなルックスのギャップにステージングの様々な趣向が伺える。また、そのネタを変に意識させないほど堂々としたステージをプレイする度胸も感じられる。WOMEN’S POWER初登場とは言え、すでにこれからのますますの活躍が楽しみな様子が、ステージ全体から伝わってきた。ノリのよいドライブ感たっぷりの楽曲が続き、フロアは異様に盛り上がりっぱなしの状態、モッシュ気味のフロアの上で、仕舞いにはねねがクラウド・サーフィンをしてしまうようなハプニングすら現れ、イベント自体の盛り上がりの様子を強く表した。
http://fullmoonofficial.web.fc2.com/
◆セットリスト
M01: ステージ
M02: フラッシュバック
M03: 光
M04: ドキドキ夏休み
M05: しゃむちゃら
5.HEART THROB
クライマックス間近で、さらなる強力なバンド、HEART THROBが登場。メンバーは、SHIZUKÅ(Vocal)、磯貝”マーティ”真由(以下、磯貝: Guitar)、サッコ(Bass)、川島恵(Support Keyboards)、藤村順子(Support Drums)。何の大きな仕掛けもないSEからの登場だが、いきなり大きな手拍子の嵐がフロアから沸いてくる。その歓声に応え、いきなり超ド級のハードロックサウンドをお見舞いする5人。アピール性抜群のSHIZUKÅのヴォイスは、インパクトだけでなく旨さや聴かせどころをたくさん見せて観衆を魅了する。元々マーティ・フリードマン・プロデュースというお墨付きの触れ込みがある彼女らだが、その名に恥じず磯貝のギターもなかなかの歌心を聴かせてくる。その目一杯感情移入し弾いている姿自体から見えるインパクトも十分な彼女。ステージングはあくまでシンプルだが、プレイに集中するそのパフォーマンスには、下手なMCより演奏や楽曲で勝負という意気込みすら見えてくる。楽曲自体の作りは、サラッと聴かせながらも玄人受けするポイントが随所に見られ、サウンドにも本物志向が垣間見られる。30分があっという間に感じられた彼女らは、今後どこまで駆け上がっていくのか、その行く末は非常に楽しみだ。
http://binylrecords.com/gokukara/
◆セットリスト
M01: 有りの侭
M02: Resist!
M03: STAY…
M04: story of eternity
M05: Fly Away
6.G∀LMET
終盤も近づいてきたころに登場したのは、もう大阪のガールズ・メタルの顔となった感もあるG∀LMET。メンバーは、みっき~(Vocal)、ルキ(Guitar)、あやの(Guitar)、アマ(Bass)、idyako(Drums)。この日、彼女らを本気で待っていたファンも少なくなかったのは、スタートで会場暗転しただけで大きな歓声があがったことからも明らかだ。いつもの登場SEから一人、また一人と登場するたびに歓声が大きくなる。スタートから異様なまでの盛り上がりを見せたフロアでは、もう観衆がもみくちゃ状態、WOMEN’S POWERの勢いを強く表した一面が垣間見られた。デス・ヴォイスの中でいろんな表情を見せるみっき~、そんな彼女を中心に、あくまでサウンドは硬派なメタル。「みんなもっと手をあげて!」ガールズの「萌え」の部分と、デス・メタルという組み合わせのユニークさも、すっかり彼女ら自身を表す一つのスタイルとなった現在では、色物という雰囲気はそこにはない。アルバムリリース、ビッグイベントと大きな動きを目前としていた彼女らの勢いは抜群、終盤にはこの日2回目のクラウド・サーフィングまで登場するほどに盛り上がった。
http://galmethp.web.fc2.com/
◆セットリスト
M01: Road To The Legend
M02: 翼
M03: Rebirth
M04: Spirit Of Fire
M05: What’s Mine?
M06: Fangs Of Slaves
7.DESTROSE
いよいよイベントも終盤、この日のトリを務めたのは、WOMEN’S POWERのバンドの中でも一つの象徴となりつつあるDESTROSE。メンバーはMarina(Vocal)、Mina隊長(Guitar)、成美(Guitar)、miho(Bass)、Haruna(Drums)。先に登場したG∀LMETに負けず劣らずの勢いを見せた会場の盛り上がりは、WOMEN’S POWERを総じて、彼女らの登場が待たれた証しともいえる。登場のSEにのって勇ましく登場、勢いよくステージをスタートした彼女ら。会場に響くMarinaの声に観衆の胸は高鳴った。ミディアムのイントロから始まる「Destination」からしっかりとステージをスタートするあたりは、風格すら感じられた。Marinaのアピールは絶対的でもあり、Mina隊長を中心とした楽器隊のプレイにも安定感は群を抜いている。さらにこの日のステージでは各人の集中した様子がうかがえ、現メンバーでまもなく一年を迎えようとするこの時期に大きな成長の跡を見せた。そのことを十分に感じた観衆の反応も大きく、フロアを荒海の波のごとく揺らして、玄人肌のメタル・ファンが見ても納得するであろうステージが展開された。
http://destrose.net/
◆セットリスト
M01: Destination
M02: Lifer
M03: Hearts Grave
M04: Fenixx
M05: Sword of Avenger
この日もいよいよ大詰め、恒例のセッションタイムがやってきた。この日のセッション・リーダーはFullMooNのねね。堂々としたリードぶりからプレイヤー出演者たちが呼び込まれ、いよいよクライマックスを迎えた。前日に引き続いて曲は、PRINCESS PRINCESSの「世界でいちばん熱い夏」。今年期間限定でPRINCESS PRINCESSが復活を遂げたことも相まってか、ガールズを象徴するスタンダードが会場を揺るがすほどのエネルギーを発した。強力なデス・ヴォイスやメタル・サウンドすら、ここで一つのガールズ・ロック・サウンドとして形となる。またここではガールズという魅力を感じるとともに、他では見られない特別な時間であることも改めて感じさせられた。
2012年内に数えること50公演を超え、この大阪においてもガールズロックの祭典としてすでに定着したWOMEN’S POWER!各地で艶やかにして激しく、滑らかにして刺激的なロックを奏でる彼女たちの熱を、生で感じてやろうとBEEASTレポートでは馴染みのライブハウスへ潜入。心斎橋club ALIVEは開場の瞬間から大盛況だ!この日はあいにくの空模様ではあったものの、次代を担う女性たちのサウンドに焦がれるべく集まった大勢のオーディエンスでにぎわった。昨今流行りのアイドルイベントとは会場のレイアウトからして一線を画すが、それでもやはりガールズロックイベント!取材準備の為にと早めに訪れた会場には、すでに熱烈な男性ファンたちによる行列が。毎回にも増して盛況な物販ブースを抜け、湧き上がる期待を胸に今か今かと開演を会場入りしたファンのみんなと待ち続ける。大半は男性だが、女性の姿もチラホラと伺えるのも、WOMEN’S POWERならではの光景といえる。いわゆるファンだけの盛り上がりイベントではないという実績と、回を重ねるごとに集うバンドたちの実力向上という相乗効果。今回もまた関西勢vs関東勢となるこの日の饗宴。きっと彼女たちも関西から関東から集まったオーディエンスたちを舞台より目の当たりにして、ガールズ・ロックファン待望の夜を届けてくれるに違いない!!
1.TONE[+]PUZLE
トップバッターは、TONE[+]PUZLE。闘翻(Guitar)、うき(Guitar)、ルク(Bass)、のスリーユニットからなる彼女らは今回、やよ(Support Vocal)、まゆ(Support Drums)を迎えた布陣で、イントロからヘドバンとあおりでたたみ掛ける1曲目「独白」からのスタートだ!曲間にメンバー紹介をまじえながらグイグイと自分たちのキャラを表した世界に!サポートメンバー2名を起用してのステージとは思えぬほどの彼女らの一体感が、あれよあれよと放熱する会場の熱気を一つの奔流へとまとめ上げていく!シャッフルの効いた2曲目「エリーゼ」を届け、大阪人には馴染みの深い吉本新喜劇のテーマにのせてのMCへ。この曲がかかってないとトークが続かないという彼女たち。続くセットのサビ部分の振り付けをこのMCタイムでしっかりレクチャーし、3曲目「乙女のハート」はもう盛り上がるしかないといった感じだ!全員でステージを楽しんでいる彼女たちらしい。闘翻が翌日に誕生日ということで用意されたサプライズコールもまさにそれを象徴するかのようだった。メンバー皆がもみくちゃになりながら届けた「天国の狭間で」。一切の出し惜しみなくバンドとして一丸となり届けた彼女たちの演奏は間違いなく、この夜の始まりの灯火を、きっと一層激しい炎にしたに違いない。
http://tonepuzle.web.fc2.com/
◆セットリスト
M01: 独白
M02: エリーゼ
M03: 乙女のハート
M04: カラーリング
M05: 天国の狭間で
2.PowerPuffBoyz
二番手として登場したPower Puff Boyz は、Junko(Bass &Vocal)、Saya(Violin,Keyboards &Vocal)、Chikage(Drums &Vocal)、K-C(Guitar &Vocal)からなる、一見するとポップな印象を持つ4人組だ。中でも目を引くのはヴァイオリンを手にしたセンターSayaの雄姿だ!そして耳を奪うのはメンバー全員が歌を奏で、それぞれにメインとして繰り出される、その個性的なヴォーカル・ワークからなる音楽性。Junkoの軽快なMCとK-Cのロックテイスト溢れるあおり!そしてChikageのキュートなコーラスワーク。四人四様に織りなす、まさに個性の詰め合わせギフト!ステージにあるメンバーの笑顔が本当にまぶしくて!楽しいばかりの構成かと思いきや、3曲目の「勝手な女の子」はヴァイオリンの音色が、会場を包み込むミディアムな大人のナンバー。舞踏会の一幕を彷彿とさせるブリティッシュ・ロックとポップの融合の様にも思えた「Blue Moon」。彼女ら曰くジャニーズ方式と公言するヴォーカル・チェンジ・スタイルが余すところなく発揮されたそのステージは一見の価値あり!ラストのラストはももいろクローバーZの「行くぜっ!怪盗少女」のカバーでもうひと盛り上がり!お客さんを楽しませることに余念のない彼女たちの在り様は、エンターテインメント精神の極みと伝えても申し分ないだろう。
http://ppboyz.exblog.jp/
◆セットリスト
M01: ONにして10
M02: 乙女心研究所
M03: 勝手な女の子
M04: Blue Moon
M05: マスクマン
M06: おかしパーティーソング
M07: 行くぜっ!怪盗少女(COVER)
3.Я-MIX
この夜の三番手はЯ-MIX。メンバーは、RAY(Vocal)、MAKI(Guitar & Violin)、SERI(Bass)、KUMI(Drums)、YUMIKO(Keyboard)。どこか懐かしくて、それでいて熱い、それこそがЯ-MIXのサウンドだ。WOMEN’S POWERには久々の登場とMCで自ら語った彼女らだが、その高い演奏力と実力に裏打ちされた堂々たるステージは圧巻。ひときわ他の出演バンドよりも目を引いたのはベーシストのSERIが外国人!昨今さほど珍しいことでもないのかもしれないが、外国人で女性ベーシストでということが筆者にはとても斬新な構成だった。と余談はさておきЯ-MIXの個性はメロディアスでありながら力強く説得力のある旋律。1曲目の「飽きて捨てるは慣れたワザ」でRAYの圧倒的な歌唱力を見せつけ、2曲目ではアニメストリートファイターⅡより名曲「傷つきながら熱くなれ」をカバー。MAKIがそのギターをヴァイオリンに持ち替え、続いて届けられたのは変拍子であることがかえって心地よいメロディアスなナンバー「Voice of Stardust」。彼女らの届けてくれた楽曲にはどれも間違いのない説得力がある。そこには懐古主義的な感慨ではなく伝えたいとする思いが素直な姿のまま音となり表現されているかのようだ。確かに音楽にも流行はあれ、表現には古いも新しいもないのだと改めて知らしめてくれた彼女たちとの時間だった。
なし
◆セットリスト
M01: 飽きて捨てるは慣れたワザ
M02: 傷つきながら熱くなれ(COVER)
M03: Voice of Stardust
M04: Heart ache
M05: Break!
4.Alstro Merry
続いてはAlstro Merry。メンバーは、あいみ(Vocal)、早希(Bass)、さや(Keyboards)、柚(Drums)。ますます活躍に勢いを増す彼女たちは、そのステージングもルックスもうなぎ昇りの勢いだ!新たなドラムとして柚を迎えた新生Alstro Merryは、よりロック感を増し会場に集まったオーディエンスたちを虜にし、拳と揺れを誘発する。客席のひとりひとりの眼差しを確かめながら歌うあいみ。舞台せましと躍動的なステージアクションでありながらも早希のドライブ感満点の安定した低音がなんとも心地よい。構成からも察して頂けるようにGuitarサウンドは打ち込みによる同期。だがそれを頼りなく感じさせる部分など彼女らのステージには微塵もない。さやのアグレッシブな鍵盤さばきは、目にも耳にも圧巻だ!会場に集まった彼女らのファンたちにも初見で見るオーディエンスもひっくるめて会場中をそのライブスタイルの虜にした彼女らは、「会場でのPV無料配布や11月のレコ発ライブ、そしてこれからの活躍にもますます目が離せないぞ!」と誰しもに伝えずにはおかないステージとなった。ライブ後半は彼女たちの物販でも購入可能なジュリアナ扇子を使ったあおりで彼女らの名刺代わりとも言えるバンド名の由来でもある花の名を持つ「Alstro Meria」をプレイ、一気に会場をまくし立てる。そしてあいみ&早希のツイン・ヴォーカルで届けられる「YELL」で熱いこの夜を締めくくった。
http://www.alstromerry.com/
◆セットリスト
M01: Endless Love
M02: Zin
M03: BEST FRIEND
M04: OMOI
M05: Alstro Meria
M06: YELL
5.CREA
五番手を担うのはCREA。メンバーは、Naki(Vocal)、Aiko(Guitar)、Anna(Bass)、Miku(Drums)。彼女らのステージは、ガールズロックならではの魅力そのものだ。躍動感あふれるAnna&Mikuが作り上げるグルーヴとリズム。Aikoの紡ぎだすハードなギター・サウンドに負けず劣らずの存在感を見せる、ハスキーながらも伸びやかなNakiのヴォーカル。どこを切り取っても彼女らでしかないといった表現力を持ったサウンドの中で、ガールズという魅力を前面に出したルックスとパフォーマンスは大阪のガールズ・ロック・ファンのハートもわし掴みだ!約一年ぶりとMCでも語られた大阪でのステージに対し、全国リリース・ツアー中の彼女らの意気込みは常に本物。すべてにおいて高い完成度を誇る彼女らの楽曲の中で、筆者が印象深く感じたのは「LINK」。ビリビリと伝わってくるヒステリックなメロディの裏にある憂いを帯びたハーモニーがたまらない。女性ならではのメロウにしてハードという心情を表現に乗せたような、まさにCREAを象徴するような、激情の中にある繊細さを感じることができたように思えた。大阪オーディエンスの心も拳も震え上がらせた彼女らの本気はここから先も留まることを知らない!本イベントと同様の冠を持つWOMEN’S POWER LABELから第一弾アーティストとして登場した彼女らの活躍には、今後もますます目が離せない!!
http://www.crea-music.com/
◆セットリスト
M01: Last Dance
M02: BY MY SIDE
M03: 悪女なあの子
M04: AR
M05: LINK
M06: Windy
6.DESTROSE
いよいよイベントも後半戦!満を持しての登場はDESTROSE。メンバーは、Marina(Vocal)、Mina隊長(Guitar)、成美(Guitar)、miho(Bass)、Haruna(Drums)。大阪のファンたちにもすっかり馴染みとなった「パイレーツ オブ カリビアン」のテーマSEで颯爽と登場したDESTROSE。メンバーたちがステージ上にそろうや否や繰り出される客席からの歓声と拳!Marinaがあげるシャウト一閃!客席は一気にマックス・ボルテージ!その堂々たるステージングはまさに大御所の風格、大方の遠征アーティストが通常持つであろう探り探りの慎重な雰囲気とは確実に、完全に一線を画している。懐かしさと新しさをその響きに併せ持つ、伸びやかに突き抜けるMarinaのヴォーカルセンス。硬質にしてしなやかな様式美をそのすべての楽曲にに吹き込んでいくmihoのベースプレイ。Mina&成美のギターテクニックが織りなす見事なまでのハーモニクスが繰り出すメタルセンスを、Harunaが確かなグルーヴとリズムでまとめ上げる。ライブ感の疾走する彼女らのエネルギーを待ち詫びていたオーディエンスも一気呵成にと大歓喜。ステージ前ではすでに馴染みのとおり、あおりを待つまでもなく我先にとアクティブなヘッド・バンギングを連発する様子。熱いエールに呼応して負けじと繰り出される、フロント・メンバー全員によるシンクロ・ヘッド・バンギングも彼女らのステージングの醍醐味だ。新生DESTROSEとして一年の航海をかなえてきた彼女らは、最強の布陣から生みだされるグルーヴをここ関西でも見せつけた。彼女らならではの女性らしいテイストを盛り込んだハードロックサウンドによる、さらなる大航海の成功を、これからも応援していきたい!
http://destrose.net/
◆セットリスト
M01: Fenixx
M02: Lifer
M03: Sword of Avenger
M04: Hearts Grave
M05: Destination
7.GoDeath
最後にトリを飾るのはGoDeath。メンバーは、mi-ya(Guitar)、asami(Bass)、ALi(Drums)。そして今回はサポートにメイラ(Vocal)を迎えての登場だ!いつにも増して鬼気迫る雰囲気で始まったこの夜のステージは、GoDeathの決意のようにも感じられるものだった。会場に集まったファンたちもその想いを感じ取るかのように聴き入る。ALiの圧倒的なドラミングがますます猛々しく会場を蹂躙する。今宵のMCではmi-yaによってGoDeathの様々なこと、次なる展開へとGoDeathが進んでいくことに対する彼女らの飽くなき挑戦と決意が次々と伝えられた。今回が初ライブというメイラへの敬意を払いつつ、圧倒的スタミナの高さと経験値で、GoDeath流メタルを渾身の力で見せつける!あちこちで発生する猛烈なヘッド・バンギングは、関わるすべてを飲み込んでいく彼女らの迫力そのものだ!そしてライブの終盤、ALiから最初で最後と自らが語る2/10主催ライブの知らせが告げられた。最初で最後というその真意を測り知ることはできないが、並々ならぬ決意を感じるには十分な迫力であった。自らの公式サイトでも多くを語らないGoDeath。その世界に触れる為には肩書きも能書きもいらない。ファンたちと共に躍動するこの生きた時間こそが彼女らのプロフィールだ。そんな彼女たちの思いは、ぜひ会場にてライブで体感して欲しいと願わずにはいられない。
http://godeath.com/
◆セットリスト
M01: 希望
M02: 虚構
M03: Use less Work
M04: 矛盾
M05: Negation
全LIVE終演後にはWOMEN’S POWER恒例となる出演者一丸となってのスペシャル・セッション。各バンドそれぞれに余すところなく個性を発揮した面々が一堂に会する様は、女性ならではの華やかさも手伝っていつ見ても笑顔になってしまう光景だ。そして今回セッションにと用意された楽曲はPRINCESS PRINCESSの「世界でいちばん熱い夏」。まさに彼女らのエネルギーが、秋の到来を少しばかし遅らせてしまったような熱さを保ったまま、様々な想いにあふれた大阪で一番熱い夜は見事に締め括られた。
一日7バンドのステージという長丁場のイベントの中、ステージのオープンから最後のセッションまで、まるで振り上げた腕を下ろすことも、声を途切れさせることすらも忘れたかのように、終始ステージの一挙一動に興奮を覚えた観衆も少なくなかったのではないだろうか。そこにあるPOWERは、確かに勢いを増していた。全く音楽性も感性も違うバンドたちすべてが、それぞれのスタイルで、そこにいた観衆を魅了したことでそれは明らかと言えるだろう。しっとりと歌を聴かせるヴォーカリストから、強烈な威圧感すら感じられるメタル・バンドまで、フォローされる音楽的レンジも広がった中、もう女性という特異性を取り外しても十分活躍が期待できるのではないかと思われるバンドも、いくつも見られ始めている。ヘタをすれば男といえども油断はできない。今後のイベント、そして女性たちの動向にも引き続き注意、注目が必要であることは言うまでもない。
「Women’s Power Special 2012」
WOMEN’S POWER×Polish(Pole Dance)
12月18日(火) 渋谷O-WEST
w / exist†trace / CREA / Mary’s Blood / FullMooN / Guest : Cyntia
OPEN: 17:30 / START: 18:00
ADV: 2500 / DOOR: 3000 (ドリンク別)
TICKET:
チケットぴあ181-337 http://t.pia.jp/
ローソンチケット72406 http://l-tike.com/
イープラス http://eplus.jp/
お問い合わせ:
O-WEST 03-5784-7088
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