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FEATURE2012.04.10

True Thrash Fest 2012 @Osaka Esaka Muse Part II

True Thrash Fest 2012 Part2

PHOTO & TEXT:桂伸也

『True Thrash Fest』Part 2: 2日目 (2012/2/19)
 
Part 1に引き続き、スラッシュ・メタルにおける真の楽しみ方を追求する衝撃のイベント、『True Thrash Fest』(以下、TTF)の模様をお送りしよう。1日目からバンド数も増え、更に激しい展開を見せる2日目、果たしてその行方やいかに!?そこに「スラッシュ・メタルの真実」は見えてくるのか!?
 
hana
 

1)リハーサル(12:00~)

 
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最初のバンドが、サウンドチェックを行っていた。静かな会場。
この日は、SACRIFICE(CAN)とWHICHBURNER(GER)がリハーサルをパス。今回のイベントではヘッド・ライナーという重要なポジションにいる彼らだけに、その余裕には貫禄すら感じられる。この日最初のリハーサルでは、マレーシアのVAULTのリハーサルが行われた。昨日と同じように、リハーサルのサポートを一生懸命に対応する松尾店長。丁寧な対応が功を奏し、リハーサルはスムーズに進んだ。以降は日本のバンド達が黙々とリハーサルを進めていく。昨日よりバンド数が増えているだけに、ここで時間に余裕が出来た松尾店長は一安心。だが、逆に長丁場となるステージには、緊張に気合いを入れる他ないとばかりに、自らに覚悟すら決めた様子だ。それは、自分こそがこのイベントを楽しむために必要な決意のあらわれとも見られた。
 
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2)ライブ(16:00~)

 
1.IMPALER
 

 
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四国は香川からやってきたIMPALER。メンバーはKazuhiko Takeda (Vocal & Guitar)、Yasushi Nishizawa (Vocal & Bass)、Teruki Ishikawa (Drums)。過去のTTF出演経験もある彼らは、スラッシュ・メタル・シーンに限らず、音楽的なシーンすら不確かな香川出身というハンデなど微塵も感じさせない、圧巻のステージを披露した。伝統的なスラッシュ・メタルを継承したストレートなサウンドながらも、そのサウンドでフロアを盛り立てる勘所をよく自分達で理解している。曲の中には、オールド・スクールのスラッシュで使われる王道的なリズムチェンジを巧みに作りこみ、更に会場を大きく盛り立てる。彼ら自身には、決してメインストリームに後れをとっている等という気後れはなく、むしろ自分達のサウンドを楽しみ、ファン達を楽しませる術を心得ているようにも見えた。
 
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◆公式サイト
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=impaler
◆セットリスト:
M01.AxPx
M02.JUNK BRAIN
M03.NIGHTMARE ATTACK
M04.I’M ALIVE
M05.DOZAEMON
M06.ASH
M07.THRASH GENOCIDE
M08.ETERNAL HATRED
M09.IMPALER

2.ABIGAIL
 

 
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続いて登場したのは、結成が1992年というベテラントリオのABIGAIL。メンバーはYasuyuki (Bass & Vocal)、Youhei (Drums) 、JERO (Guitar)。全般的にはずっと疾走し続けるリズムなのに、なぜかリスナーのフィーリングの中で、そのリズムに引き込み、ステージにどっぷりと浸からせるような魅力を持っっていた。シンプルにしか聴こえない音の中で、人を楽しませる隠し味をたくさん引き出しとして持っている。これぞまさに『True Thrash Fest』、お題が示す、「スラッシュの真実」を感じさせる潔さと、百戦錬磨の実績を誇示する余裕がフロアの気持ちを更に高揚させる。演奏が終わって、WITCHBURNERのメンバーが、楽屋にて絶賛の声を浴びせていたのが、非常に印象的だった。
 
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◆公式サイト
http://www.myspace.com/666abigail
◆セットリスト:
M01.Satanik Metal Fucking Hell
M02.Hell’s Necromancer
M03.Metal Evil Metal
M04.Metal Bitch Inferno
M05.Teen Age Metal Fuck
M06.Rocking Metal Motherfuckers
M07.Prophecy of the Evening Star
M08.War 666

3.FASTKILL
 

 
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昨年末にニューアルバムをリリース、そして今年はこのTTFでひと暴れと、大きな期待を寄せたFASTKILLの登場。メンバーは、Toshio Komori (Vocal)、Jiro Mochizuki (Guitar & Vocal)、Akihiro Itoh (Guitar)、Suguru Ando (Bass)、Kazuhiro Mochida (Drums)。TTFには過去3回すべて出演している、いわば勝手知ったるといったこのステージ。登場したKomori (Vocal)の、上半身裸に刺々しい釘が取り巻かれた腕のリストバンドといういでたちは、スラッシュ・メタルの帝王、SlayerのKerry King (Guitar)を彷彿させる、スラッシュ然としたものだ。サウンドはまさに正統派スラッシュ・メタル・サウンド。インパクト十分な様相で、フロアを佳境へと押し込んでいった。
 
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◆公式サイト
http://www.myspace.com/fastkillofficial
◆セットリスト:
M01.Kill Fast
M02.In Thrash We Trust
M03.Die in the Pentagram
M04.Bloodbath
M05.Die in Pain
M06.Toxic Tormentor
M07.Merciless Onslaught
M08.Kill for Pleasure

4.RIVERGE
 

 
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今回2日に渡り登場した国内バンド、RIVERGE。この関西スラッシュ・メタル・シーンの先駆者ともいえるべきそのサウンド。なんと転換の時間無しにいきなりフロアの隅に並べられたセットで演奏が始められるという演出。演奏が乗ってくるとNAKAMURA (Vocal)は、フロア中央に出来た大きなサークル・ピットの中心に自ら身を投じる。煌々とフロアを照らす明かりがそのまま照明だけに、フロアのファンとの一体感は十分、正しくファンとバンドが一体となってステージを展開する。仕舞いにはNAKAMURANASU (Guitar)が共に、オーディエンスに胴上げされる。スラッシュ・メタル・フェスティバルの楽しみ方を強く提唱したようなこの展開にファンは狂喜し、その喜びを表すように存分に暴れまわった。
 
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◆公式サイト
http://riverge.mad.buttobi.net
◆セットリスト:
M01.Slavish Charge
M02.Cutting Edge
M03.A&a
M04.Ready to Dive
M05.Stand in Fear of Nothing
M06.Hungry Child
M07.Damned World
M08.Thought Free
M09.Till I Die

5.WARGASMATRON

 
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国内組み最後の登場は、WARGASMATRON。メンバーはWATARU (Vocal & Guitar)、NAOYA (Vocal & Guitar)、DAISUKE (Bass)、YOSHIKI (Drums)。曲構成としては正統派の流れを汲みながら、何かミクスチャー的な雰囲気を醸し出し、全てを前に向かわせるようなフィーリングを作り出す。この威圧感は何だろう?という不思議な感じにさいなまれながら、グイグイと引っ張られる雰囲気に、フロアもエキサイティングになる。ベースのスラップを効かせたバウンス感が、普通とは違ったグルーヴ感をもたらし、気持ちのよいノリを作り上げた。
 
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◆公式サイト
http://www.myspace.com/wargasmatron666
◆セットリスト:
M01.DARKER RED NECESSARY
M02.RE-RISING PAIN
M03.STRANGE PRIEST
M04.LINE OF SATAN
M05.STAY THRASHER
M06.SCREAM OF SACRIFICE

6.VAULT

 
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2日目のステージもいよいよ後半戦。ここで登場したのは、マレーシアからの刺客、VAULT。メンバーは、Fizan (Vocal)、Ayen (Rhythm Guitar)、A’ it (Lead Guitar)、Sen (Bass)、Ebi (Drums)。前章のインタビューにもあったように、松尾店長との交流も長く、Sen (Bass)は一度このイベントに出演経験があったということで、非常に遠征ながら彼らのステージには親しみが感じられる。まるで友達のライブを見に来たような錯覚すら覚えさせる。何か一生懸命にプレイする姿が、やはり心からスラッシュ・フェスティバルを楽しもうとする気持ちに強く共感させたのかもしれない。ある意味、スラッシュ・メタルのあるべき姿を強く現したステージとも見えた。
 
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◆公式サイト
なし
◆セットリスト:
M01.Raging Force
M02.Bastard!
M03.Black Leather Cult
M04.Ripping Noise Terror
M05.Victim of Pain
M06.Fuck Off and Die!
M07.Onslaught of Death
M08.Heavy Metal Attack
(encore)
E01.War Fucking War!

7.WITCHBURNER(GER)
 

 
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イベントも終盤に近づき、また場内を沸かせるビッグ・アーティストとして、WITCHBURNERが2日目の登場を果たした。とにかく押しまくる轟音の洪水には、様々な形態をとることで発展していくスラッシュ・メタルという音楽の中で、意外にも似つかわしくない「本物」「伝統」という感覚からくる貫禄を炸裂させた。「ワタシタチガ、WITCHBURNERデス!!」Pino (Vocal)が叫ぶと、フロアも一気にステージへの距離を縮め、大暴れ。スラッシュ・メタルは、そのサウンドに抵抗感をもたれることも多いが、そうではなくステージとフロアの距離が一番短い、親しみのある音楽であることを彼らは身を持って教えてくれているようだ。もっと楽しめ!とばかりにとにかくその爆音を投じ続け、フロアの血圧を上昇させ続ける彼ら。「最後の曲を、Miki(松尾店長)に贈るよ!」松尾店長を誇った、親愛の情を込めたようなラスト・コールに、ステージは最高の興奮を呼び起こした。
 
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◆公式サイト
http://www.witchburner.de/
◆セットリスト:
M01.German Thrashing War
M02.Kill
M03.Blasphemic Assault
M04.Final Detonation
M05.Hexenhammer
M06.Steel Triumphator
M07.Demons
M08.Ultra Violence
M09.Blood of Witches
M10.Nightbreed
M11.Seeds of Evil
M12.Deamonc War Machine
M13.Possessed by Hellfire
M14.Witchburner
M15.Grave Desecrator
M16.Thrashing Rage
M17.Bonded by Blood(EXODUS)

8.SACRIFICE(CAN)
 

 
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いよいよイベントも大詰め。大御所という風格すらあるSACRIFICEもまた、先ほどのWITCHBURNERに続き2日目の登場を果たす。展開にもアレンジにも、オリジナリティ溢れるセンスと、抜群のテクニックを気迫十分にフロアに投げ掛ける。ときにブルージーに、一方で柱としているのは、伝統のスラッシュ・メタル・サウンド。シンプルな白玉のフレーズの取り入れ方にすらセンスを感じさせ、単なる暴れ者では済まさない、最後まで複雑なキメをきっちりプレイしてくる実力で、イベントのトリをしっかりと務める。超絶的なプレイを見せながらも、演奏を楽しんでさえいるような、各メンバーのその余裕の表情には、貫禄すら感じられた。
 
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◆公式サイト
Myspace オフィシャルサイト:
http://www.myspace.com/sacrificecanada
Spiritual Beast オフィシャルサイト:
http://www.spiritual-beast.com/sacrifice/
◆セットリスト:
M01.We Will Prevail
~ The Ones I Condemn
M02.Hiroshima
M03.Lost Through Time
M04.A Storm In The Silence
M05.As The World Burns
M06.Atrocity
M07.The Great Wall
M08.Tetragrammaton
M09.Soldiers of Misfortune
M10.Forward to Termination ~ Terror Strikes
M11.In Defiance
M12.Sacrifice
(encore)
E01.Re-Animation

 

3)エンディング(23:00~)

 
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最後には松尾店長の言葉でイベントは締めくくられた。堂々とした、そして満足げなその表情は、イベント主催者自らがイベントを楽しみ、充実したことを示す証しだ。その後、楽屋裏やホールではあちこちでバンド同士や、ファンと出演者の交流が盛んに行われた。会場にはBEEASTのオブザーバーでもある杉内哲(SACRIFICEの日本でのレーベルSpiritual Beast代表/SOLITUDE/ex.SACRIFICE (JPN) のヴォーカリスト)もライブを観戦、合わせてフォトセッションに応じてくれた。その他大勢の交流が生まれ、お互いを讃え合うフェスティバルの楽しみ方がここに完結した。
 
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ミニコラム
このフェスを楽しむ要素の秘訣などをミニコラムとして紹介!
 

1.英語

海外のバンドと直接やり取りということで、英語が必須だったのだが、当記者は英語が喋れない。不安の元に「英語しゃべれないんですけど…」と松尾店長に相談したところ、、一言「まあ、なんとかなりますわ」。松尾店長は、海外バンド4つを相手に奔走、サウンドチェック、リハーサルではバンドにつきっきりでPAとのやり取りをサポートする。何かあればあちこちより「Miki!」(松尾店長のニックネーム)の呼び声があちこちから飛ぶ。ここは一つ、松尾店長に迷惑かけまいと、休んでいたWITCHBURNERのメンバーに単独でアプローチ、ここは度胸一つでアタックをかけたものの、やはり細かい話がお互いに通じず、こちらの意味不明な英語に、彼らは「?????」と、困惑した様子。業を煮やして、ヴォーカルのPinoが叫ぶ。「Miki~!?」ああ、やってしまった…すいません、松尾店長…
いやはや、英語は少しでもやっておくべきだなぁ、などと英語で自由にコミュニケーションできる人達を横目に恨めしく思った記者であった。それにしても本当に松尾店長、ご苦労様でした!

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2.愛あるイベント開催

引き続き松尾店長の話だが、バンドマン達からは本当に友達同士という感じで慕われていた。VAULTのライブではステージに乱入し、ヴォーカルのFizanと共にサウンドを謳歌するような楽しみを満喫する彼。ステージを袖で眺めていた彼の、ワクワクした少年のように無垢な表情は忘れられない一幕だった。また、アクシデントでバンドが来日できなかったREMAINSEkkachaiは、そのトラブルに尽力しバンドメンバーを集め、ステージをやりきらせたことに大きな感謝を込め、彼を「My Father」と讃えた。最高のひと時を演出してくれた松尾店長、その存在とスラッシュ・メタルに込めた想いには、ただひたすら敬意を表したい。

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3.パッチGジャン

会場後に一番多く見かけたファッションがこのスタイル。Gジャンのベストにこれでもか!という位のワッペンやバッチをつけまくったその姿は圧巻。しかも一人や二人でなく、多くの人がこのスタイルで集まっていた。記者があまり東京方面では見かけなかったこのスタイル、地方性なのかと思ったら、REMAINSEkkachaiや、VAULTのメンバー、そしてSACRIFICEのサポートスタッフまでもがこれを着用。なかなかコアなファンの、フォーマルなスタイルと見た。「80年代に始まったムーブメントの頃からのスタンダードなんですよ。」松尾店長に説明を伺った。スラッシュ/デスメタル等、微妙に違うジャンルの中で、正統派のスラッシュ・メタルのライブでは、これがスタンダードとなっている。「マニアの人は、このワッペンを貼りまくることで1号機、2号機と持ってて…実は私、3着持ってるんです!」照れながらも、誇らしげに語る松尾店長。バタバタした中であまり意識してなかったが、松尾店長自身もファンに負けない立派な戦闘服を、開場と共に準備。これはある意味、スラッシュ・メタルを心から楽しむための、一種のフォーマル・ウェアなのだ。

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hana
 
前章にも記載したが、通常のクラッシック楽典によって出来た理論と一緒にすると、スラッシュ・メタルは音楽としての無理を唱えられることになる。日本語で唱えられる音楽という言葉は、「音を楽しむ」ことをいい、その意味では、スラッシュ・メタルは同じ要素を備えているものともいえる。また、ファン達がアーティストとつながり、一緒にステージ、そしてイベントを作り上げていくような雰囲気が、会場中に蔓延していた。音を楽しむことに際限を作らない、その為に労力をいとわない。今回イベントで見られたこんな楽しみ方こそ「True Thrash」、本当のスラッシュ・メタルの姿、そしてスラッシュ・メタルの楽しみ方だ。そんなことを、この2日間、スラッシュ・メタル・ファンを満腹にしたこのフェスティバルは示してくれたように見えた。これは音を楽しむ一つのきっかけに過ぎない。松尾店長の強い思いが導いたこの素晴らしきフェスティバルの存続を、強く願いたい。

Part 1もご覧ください。
True Thrash Fest 2012 レポートPart 1!!
以下をクリック!
https://www.beeast69.com/feature/14495

 

また、こちらも是非ご覧ください。
ロック社会科見学:ステージ7★中古&輸入レコード店長編
『ROCK STAKK RECORDS 松尾店長に突撃取材!』

以下をクリック!
https://www.beeast69.com/serial/sociology/5796