演奏

TEXT:まことZ PHOTO:株本和美

今年1月にも「新春LIVEツアー2012~お年玉はもう貰えないよ おまへは~」をBEEASTで取材させていただいた、ジャンルにとらわれない異色の新感覚バンドFOLKROCKS。実績も実力も確かなメンバー5人からなるこのバンドは、いわばツワモノ集団だ。ポップスミュージックを色んな方向から表現する技術に加え、楽曲の完成度も非常に高く、おまけにステージパフォーマンスでは笑いも取れる。
 
今宵の会場は若者文化の発信地にして、音楽の街下北沢の440。白い塗り壁と木の床の瀟洒なライブバーだ。ライブ前、楽屋を訪れ挨拶をすると、「今日のは変なバンドだよ」と軽く冗談を言う永井ルイ。そんな彼らの個性的で上質の音楽に、非常に期待が高まる。
 
◆FOLKROCKS メンバー
湯川トーベン(Vocal & Bass)、永井ルイ(Vocal, Keyboard & Guitar)、中野督夫(Vocal & Guitar)、向山テツ(Vocal & Drums)、本多”taco-bow”正典Percussion

一通りバンドメンバーとの挨拶を済ませ店の外に出ると、入場を待つ観客がどんどん増えてきて、ついには長い列となった。男女半々くらい、年齢層は30~40代といったところ。FOLKROCKSのバンドTシャツを着たファンもいる。着席100人程の空間が、人で溢れかえる、「超」の付く満席だ。
 
第一部はアコースティックバンド。湯川トーベンがアコースティックベース、永井ルイがピアノとシンセサイザー、中野督夫がアコースティックギター、向山テツがドラム、本多”taco-bow”正典がパーカッションだ。5人がステージに入り、まずは「夏が来た」。夏のコンサートに相応しいテーマだ。ギターのブラッシングから始まる、脱力系のコミカルな曲だ。湯川トーベンが歌い、中野督夫永井ルイがコーラスを取る。次は「甘いワイン」。Billy Joelっぽいピアノフレーズから始まり、歌い出しからのハーモニーがきれい。中野督夫はギターソロでアコギにオーバードライブをかけ、エレキギターを弾くかのようなフレーズを奏でる!
 
 


   

 
ここでMC。「シャツ発ライブへようこそ」と湯川トーベン。「レコ発ライブ」ではなく、新しく作ったTシャツを物販する、「シャツ発ライブ」なんだそうな。なるほど、前回BEEASTで取り上げた新春ツアー時に販売していた単色のTシャツとは別に、今回は新たに七分袖のラグラン袖Tシャツだ。コンサート開演前にお客さんはすでに物販で買っていて、もう着込んでいるではないか。気づくと、バンドメンバーも全員、今回新しく作ったラグラン袖のTシャツを着ている。
 
MC明けて次の曲は中野督夫が歌う「箱庭の街」。本多”taco-bow”正典が不思議な民族楽器で小鳥の鳴き声を出していた。「下北沢」という歌詞を入れていたが、果たしてこの曲は元々下北沢のことを歌ったものなのだろうか。そしてまた短いMC。湯川トーベン中野督夫をいじるのだが、掛け合いがまるでお笑いだ。会場も笑いで沸く。
 
 


   

 
永井ルイが歌う「Atlantic」は、幻想的なコード進行も去ることながら、サビのハーモニーが印象的。続いての「ストロベリーガール」は、ラテンのリズムのドラミングから始まり、湯川トーベンが歌うラブソングだ。そして「コブのない駱駝」はフォーククルセダーズのカバー。コブのないラクダ、鼻の短い象、二本足で歩く豚は、それぞれ自分が醜いと悩む。でも実は、コブのないラクダは馬で、鼻の短い象はカバで、二本足で歩く豚は人間だった…という、説法のような歌詞に、向山テツの中東の雰囲気漂うボーカルが見事に調和していく。
 
再び永井ルイがボーカルをとり、「悲しきNO.2」。常にNO.1にはなれない「人生(に)軽く納得」、そしてそんな人生が「嫌いじゃない」という哀愁漂う歌詞だ。第一部の最後は、本多”taco-bow”正典のパーカッションから始まる「雨の日には」。本多”taco-bow”正典のパーカッションは、全身で歌っているような印象だ。メンバーが代わる代わるリードボーカルをとる。そして「ちょっと休憩」と言って、第一部が終了した。
 
 


   

 
30分程の休憩を挟んで、メンバー達が単色のTシャツに着替えて登場。第二部はエレクトリックバンドだ。エレクトリックバンドになったといっても、中野督夫のアコースティックギターがエレキギターになり、湯川トーベンのアコースティックベースがエレクトリックベースになっただけで、2人が使っているアンプも一緒だし、他のメンバーの楽器も変わらない。ただ、曲調と演奏内容はガラリと変わった印象だ。まず演奏した「脳天R&R」は反骨ソングのような曲だが、中野督夫が奏でるギターソロは、中野督夫の本来持つカラーを良く出しているように感じた。そう、中野督夫は水を得た魚のように、自在なアドリブプレイを披露したのだ。
 
続いて永井ルイが歌う「RAINBOW」。永井ルイが歌う曲は、不思議なコード進行が使われていることが多いような印象。そのまま永井ルイの上質のハーモニーがたまらないバラード曲「ネオンライト」へと続く。
 
 


   

 
そして「お馴染みになりました、実話シリーズ」と湯川トーベン。どうも次の「チョロマカシ天国」は何らかの実話に基づいているらしい。ここでは永井ルイはエレキギターを演奏。「確定申告チョロマカシ」と歌詞にあったが、誰かの実話ということなのだろうか。途中でCREAMの名曲「White Room」のあの印象的なフレーズがオマージュとして出て来たが、そういう仕掛けも楽しいところだ。
 
次の「雲のサーカス」は永井ルイがボーカルだが、この曲もハーモニーがとてもきれいだ。中野督夫のエモーショナルなギターソロも見せ場を作る。続く「Mr.GS」は、リバーブを深くかけたパーカッションで始まった。ハーモニーで歌いだし、中野督夫のメインボーカルになった。コミカルな曲調で「気分ウキウキハイ」と歌う!この曲では本多”taco-bow”正典のパーカッションソロ、永井ルイのシンセサイザーソロ、中野督夫のギターソロがあったが、ここでも中野督夫のアドリブプレイが炸裂した。
 
 


   

 
ここで短いMC。「ライブはなかなかないよ」と、ライブ頻度の少なさをネタにここでも笑いを誘う。確かに今ここで観られるのは貴重な体験だ。だが、良質なものが頻度が低いのは仕方のないことだろう。メンバーそれぞれが各々の音楽活動で忙しい中、クオリティの高いステージングをしようとすれば、回数は少なくなってしまうものだ。だからこそここで、何一つ見逃さず、何一つ聞き逃さずに過ごしたい。
 
続いて「グーでバッチリ」では、ボーカルを務める湯川トーベンが観客を煽ったかと思えば、バンドは演奏を止めて観客に手拍子を要求、観客をステージパフォーマンスに引きずり込む。ファンとしてはこういった仕掛けが、何とも嬉しいものだ。中野督夫のギターソロではリズムが8ビートからカントリー調に変わるなど、アレンジが凝っている。気づくと向山テツが汗だくになっている。向山テツに注目してから気づいたのだが、ツインペダルでツーバスを踏んでいるではないか。もう、何でもアリなんだな、このバンドは!最後は永井ルイのギターの速弾き!
 
 


     

 
第二部の最後の曲「なんだよおまへは」はカントリーっぽい。途中バンドメンバー全員が同時に演奏から手を話し、小さく両手を挙げて「ハイ」とかけ声を挙げるのを繰り返すところがあるのだが、それがものすごく無理があって、コミカルで面白い。ここの「ハイ」は観客も一緒なのだが、本当に楽しい雰囲気だ。曲の最後は全員で同時にアドリブ、またしても向山テツがツーバス、湯川トーベンも指弾きで16部音符を奏でていた。音量を上げ、音数を上げ、曲が終了。と思いきや、中野督夫が替え歌を弾き語り。何だこの展開はと思っていたら、また「なんだよおまへは」が始まった。なんと、曲はまだ終わっていなかったのだ。何とも長い曲だ。そしてようやく曲が終了、今度は永井ルイが指揮棒を振り、それに合わせてバンドがジャカジャカと演奏。曲というのではなく、指揮棒に合わせて音を出す遊びだ。指揮棒に合わせてジャカジャーン、ジャカジャーン。湯川トーベンも指揮棒を振り、ジャカジャーン、ジャカジャーン。そして長い長いこの曲のエンディングが終了、第二部が終わった。
 
 

 
アンコールは「ワンモアグッドタイム」。コーラスで始まり、これも不思議なコード進行だが、さわやかな曲調だ。これにて、演奏は全て終了。本当にバリエーションに富んだ内容だった。第一線のミュージシャンの演奏だけに、3時間程の滞在は全く疲れを感じないくらい、心地いい空間だった。大手メディアでは表になかなか出てこない音楽活動でも、本当に質の高いものはたくさんある。このコンサートではそのことを、強く感じさせられた。次にまたこれほど素敵な音楽体験ができるまでどれくらいかかるかわからないが、それまでの間、この日の心地よさをずっと抱いていたい、そう思った。
 

◆セットリスト
-第1部-
M01. 夏が来た
M02. 甘いワイン
M03. 箱庭の街
M04. Atlantic
M05. ストロベリーガール
M06. コブのない駱駝
M07. 悲しきNO.2
M08. 雨の日には
-第2部-
M01. 脳天R&R
M02. RAINBOW
M03. ネオンライト
M04. チョロマカシ天国
M05. 雲のサーカス
M06. Mr.GS
M07. グーでバッチリ
M08. なんだよおまへは
-encore-
M01. ワンモアグッドタイム

 
◆FOLKROCKS 公式サイト
http://folkrocks.iinaa.net/


 


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【レポート】FOLKROCKS 新春LIVEツアー2012 ~お年玉はもう貰えないよ おまへは~
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【特集】ARABAKI ROCK FEST.12 (2日目/子供ばんど)
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