東北最大級のロックフェスとして2001年より開催されているARABAKI ROCK FEST.(荒吐ロックフェスティバル)が今年も4月28日と29日の2日間に宮城県柴田郡川崎町のエコキャンプみちのくにて開催された。
「野外フェス初心者への指南書」という構成でお届けした1日目(4/28)に続き、2日目(4/29)は各ステージのレポートを中心にお送りしたい。アラバキの特長の一つは、魅力的なステージが数多くあること!いずれも東北に由来し命名された6つのステージに加え、みちのくプロレスのための特設ステージや、アラバキラヂオの公開録音ブース。そして何より美しい蔵王連峰と釜房湖を背景にした豊かな水と緑は、他のフェスではなかなか味わえないスケールだ!
収容人数は1万名を誇る、ARABAKI ROCK FEST.最大規模のステージ。命名の由来はもちろん、東北全域の古称である陸奥(みちのく)だ。この日は朝10時過ぎより仙台の若手4人組・アンテナが出演。続いてTHE BACK HORNが出演した。

そして注目すべきは昼12時半から出演した子供ばんどだ。冒頭、赤ん坊の泣き声のSEに合わせて、全身紅白のベールに包まれた男4人が登場!そのうち3人がマントを取ると、現れたのは全身真っ赤な衣装に身を包んだ谷平こういち(Vocal & Guitar)、湯川トーベン(Vocal & Bass)、やまとゆう(Vocal & Drums)だ。そして、全身紅白のベールに包まれた謎の男が中央に…そこへ、旗を持ってうじきつよし(Vocal & Guitar)が現れ、ベールを脱がす!センターでギターを持っていたのは、奥田民生(Vocal & Guitar)だったのだ!
「アイラブ、ロックンロール!」絶叫とともに爽快感溢れるトリプルギターサウンドがたまらない!「DREAMIN’(シーサイド・ドライブ)」ではうじきつよしと奥田民生の豪華なツインボーカルが披露され、みちのくに集まった1万の大人たちも”子供”心に戻って「夢をー追ーいかーけてー」の大合唱!
このほか、陸奥ステージにはTHE BAWDIES、JUN SKY WALKER(S)、BRAHMANが出演。BRAHMANはオーディエンスに大熱狂の渦を巻き起こし、ダイブ連発!MCでTOSHI-LOW(Vocal)は「ただ生きてるだけで幸せ」と、震災への思いを熱く、力強く語った。そして夜は川内太鼓のパフォーマンスに続いてセッション企画「ARABAKI RADIO SHOW!!」。浅井健一、奥田民生、曽我部恵一、仲井戸”CHABO”麗市、真心ブラザーズらが登場した。
収容人数1,500名。入場ゲートから一番近く、各ステージへの中心地点である位置に設けられ、アラバキを象徴する名が付けられたステージだ。読み方は「あらはばき」。かつて岩手県奥州市を中心とした北東北に住んでいたとされる荒吐(あらはばき)族がその名の由来だ。その祭神を「荒吐(あらばき)」とし、宮城県多賀城市など東北各所に荒吐神社が祭られた。荒吐族の思想や文化が岩手県から東北各地へ広がっていったように、ARABAKI ROCK FEST.の発信源的な意味合いを込めているという。
そんなアラバキの玄関口で熱演を繰り広げたのは、KUDANZ、People In The Box、hotspring、BIGMAMA、ECHOES、ROCK’N’ROLL GYPSIES、SPARKS GO GO、石橋凌(Guest:仲井戸麗市)、DOES、サンボマスターの10組。中でも結成22周年を迎えるSPARKS GO GOは、「SOOKIE SOOKIE」「SLOW DOWN」「ざまーない!」などライブでの定番曲に加えて新曲「BEAUTIFUL WORLD」も交えたラインナップでオーディエンスを踊らせ、純度の高い轟音ロックを披露!大物政治家のような迫力ある出で立ちで登場の石橋凌は、「アラバキの皆さん、はじめまして」と笑顔で語りつつ、「AFTER’45」などARBファンならずとも陶酔必至のラインナップをソウルフルに歌い上げ、迫力あるステージを展開した。
収容人数1,000名のこのステージ名の由来はもちろん、青森県北部の呼称「津軽」だ。エコキャンプみちのくを囲む釜房湖に面したロケーションが特長で、時には甘いりんごのように和やかに、時には大間のまぐろ漁のように力強く繰り広げられるライブは、まさに青森・津軽の空気のようで、自然な一体感を生み出している。仙台を中心に活動する芸術家集団「ピクニカモンスターズ」によるステージ上の装飾も可愛らしい。
出演者は日食なつこ、阿部芙蓉美、Permanents(田中和将&高野勲)×齊藤ジョニー、THE GROOVERS×佐藤タイジ、TAIJI at THE BONNET、ガガガSP、神聖かまってちゃん vs B.B.クィーンズの7組。中でも神聖かまってちゃんとB.B.クィーンズの対バンは異色対決として大きな注目を集めた。さらに、本場・弘前から登場の津軽三味線「夢弦会」のライブが客席後方のサブステージで随時披露され、彩りを添えた。
収容人数は3500名で、そのうち前方スタンディングゾーンは1800名ほど。秋田の県魚となっているハタハタは、漁のピークである冬に日本海でよく雷が鳴ることから、別名をカミナリウオとも言う。そんなステージ名にちなんでか、轟く雷が落ちたような激しいステージが連日展開!さらに初日には、国の重要無形民俗文化財にも指定され、ベールで顔を包んで踊る神秘的なスタイルが特徴の西馬音内(にしもない)盆踊りも鰰ステージ脇で披露された。
2日目は若手の雨ニモ負ケズを皮切りに、秋田民謡の藤原美幸、SCOOBIE DO、レキシ、TOKYO No.1 SOUL SET、FLYING KIDS×Bose(スチャダラパー)×山田将司(THE BACK HORN)、 RHYMESTER、ザ・キングトーンズ featuring ジミー入枝(Special Guest:上田正樹)の合計8組が登場!藤原美幸による秋田民謡は鰰ステージの毎年の定番。今年も2日間にわたりなまはげと秋田三味線を率いて熱いステージを展開した。TOKYO No.1 SOUL SETは、福島県双葉郡富岡町出身で昨年は猪苗代湖ズとして紅白歌合戦出場など活躍した渡辺俊美らが熱演。美しい桜をバックに、デビュー22年の貫録を見せつけた。
2008年より第5のステージとして設営された唯一の屋内ステージが、花笠ステージだ。収容人数は2000名で、山形県の花笠祭りがその名の由来。このステージの最大の魅力は、屋内だからこそ実現する、異空間を体験できるかのような映像演出だ。「映像と音の祭」と題して夜間に行われるプログラムでは、音楽と融合して繰り広げられるビジュアリスト達の映像世界が、まるで花笠のように色鮮やかで独創的だ。
2日目はaoki laska、tricot、group_inou、星野源、MONGOL800、EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXX、チャットモンチーが出演。チャットモンチーはこの日もサポートメンバーを加えず2人だけのステージ。橋本絵莉子(Vocal & Guitar)のかわいらしさと福岡晃子(Drums & Bass)のかっこよさが両輪となって、屋根の中に入れず外に溢れたオーディエンスをも熱狂させた。
午後7時からの「映像と音の祭」では、CINEMA dub MONKS with 欧州楽団とランテルナムジカの2組が幻想的なステージを披露した。さらに、花笠ステージに隣接されたプロレスリングでは、恒例の「みちのくプロレス」と「センダイガールズプロレスリング」の試合が繰り広げられた。ロックフェスとプロレスとはまた異色の取り合わせだが、エキサイトして思わず叫びたくなるのはロックもプロレスも同じ!ここアラバキでしか体験できない、貴重なステージだ。
会場内でも最も端にある磐越ステージは、収容人数が6000名、うち前方スタンディングゾーンが3000名。キャンプサイトに近く、テントからの観戦も可能な、アラバキ史上最も新しいステージだ。現在「SLばんえつ」が復活運行中の福島県の観光路線・磐越西線より命名された。この日は朝10時にトップバッターでチョビ渋×渋さ知らズオーケストラが登場。次いで昼前にはカナダから来日したAlex Lukashevskyが登場。午後はPascals、元ちとせ、エレファントカシマシが出演。元ちとせはバックに鈴木正人(Bass)、ASA-chang(Percussion)の2人だけを率いてのシンプルな編成。広大なキャンプ地を携えたステージで、透き通った歌声をどこまでも遠くへと、力強く届けていた。
さらに、夕方5時半からは「THE GREAT PEACE 10 SONGS “RESPECT FOR 忌野清志郎” FROM ARABAKI ROCK FEST.12」と題したリスペクトセッションを2年ぶりに開催。バンドメンバーはDr.kyOn(Keyboard/BO GUMBO3)、エマーソン北村(Keyboard/THEATRE BROOK)、佐藤タイジ(Bass/THEATRE BROOK)、TOKIE(Bass)、宮川剛(Drums)、Leyona(Chorus)、うつみようこ(Chorus)。そしてボーカルは泉谷しげる、上江洌清作(MONGOL800)、KUMI&NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)、鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)、曽我部恵一、田中和将(GRAPEVINE)、中納良恵&森雅樹(EGO-WRAPPIN’)、増子直純&上原子友康(怒髪天)が務め、全10曲を天国の忌野清志郎へ向けて歌い上げた。

2日間で合計4万人が訪れたARABAKI ROCK FEST.12も、これにて終了。出演したバンドのブログやTwitterを見ていると、桁違いにスケールが広大な森と湖に囲まれて、普段より開放的な気分でパフォーマンスできたと語るミュージシャンが多いことが特徴的だ。おそらく、この地を訪れたオーディエンスも同様に、大自然の中で開放的に、そして都会の喧騒や日常をこの2日間はすっかり忘れて、「自然に返って」純粋に音楽を楽しむことができたのではないか。
そんな、お客さんたちの最高の笑顔を、記事の最後にお届けしたい。題して、「アラバキ・スマイルコレクション」。
ではまた来年、このアラバキの地で!
































ARABAKI ROCK FEST.12 1日目のレポートはこちらへ!
http://www.beeast69.com/feature/26539