特集

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:ヨコマキミヨ

 
新たな時代の風雲児となるべく奮闘を続けているロック男子の姿を追う特集「ROCK SAMURAI STORY」。今年・2014年にデビュー25周年を迎える人間椅子について、メンバー3名のパーソナルインタビューを通じてその魅力をさらに掘り下げていきたい。
 
まずPart1に登場するのは、ドラムのナカジマノブだ。人間椅子に加入したのは2004年6月。バンドの25周年である今年は、彼の加入10周年でもある。そんなナカジマノブに、加入から現在までの10年と、今後の展望など、ナカジマノブ目線での人間椅子を尋ねた。
 
また、昨年はOzzfest効果やニューアルバム『萬燈籠』発売もあり一気に新たなファンが増えたが、「次に何を聴いたらいいのか」模索しているファンも多いに違いない。そこで今回のインタビューでは、これまでのリリースを振り返りながら「『萬燈籠』の次にこれを聴くべし!」という所も伺った。
 
 

mandoro◆人間椅子 プロフィール
 
もともと高校の同級生であったギターの和嶋慎治と、ベースの鈴木研一により1987年頃結成。
 
コンセプトは、当時よくコピーしていたBLACK SABBATHなどの70年代ブリティッシュ・ハード・ロックの サウンドに、あえて日本語の歌詞を載せるというもの。バンド名は、江戸川乱歩の小説からとった。ドラマーは流動的であったが、鈴木の大学の先輩の友人であった上館徳芳(北海道出身)で固まる。 メンバー2人の出身地である津軽地方の方言を取り入れたり、津軽三味線の奏法を導入したりと、既にこの頃基本的サウンドも出来上がる。
 
1989年、TBSテレビ系列の「平成名物TVイカすバンド天国」に出演。演奏もさることながら、鈴木のネズミ男に扮した奇抜な衣装が評判を呼ぶ。翌・1990年7月、メルダックより「人間失格」でメジャー・デビューを果たす。
 
2004年6月、ドミンゴス等で活躍中のナカジマノブが、新ドラマーとして加わる。2009年、デビュー20周年にあたるこの年、1月21日に「人間椅子傑作選~20周年記念ベスト盤」をリリース。11月、15枚目にあたるオリジナルアルバム「未来浪漫派」発表。現在までにオリジナルアルバムを17枚、ベスト盤も含めて21枚をリリース。

 
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出会いは偶然、「スープの冷めない距離」から
—ノブさんが人間椅子に加入したのは公式HPによれば2004年6月ということですが、それ以前にメンバーと交友もあったことと思います。

 
ノブ:もちろん、ありました!
 

—最初はいつ頃、どのような出会いだったのですか?

 
ノブ:詳しい年代は忘れてしまったのですが、2002年頃に水戸華之介さん主催のライブがあって、出演する4~5バンド全てのボーカルを水戸さんが務めるという日で…そこに人間椅子メンバーがバックを務めるバンドがいて、僕はhide with Spread BeaverDAIさんと、Der ZibetHALさんと水戸さんと組んだバンドで出演して、たまたま同じライブで共演したんです。
 

—豪華な顔ぶれですね!

 
ノブ:その時の打ち上げですごく仲良くなって。「うわ、家近いねぇ~」から始まって(笑)俺とちゃんがスープの冷めない距離に住んでて。家が3軒半隣だったんですよ。
 

—素晴らしい偶然です(笑)出会いは2000年代ということですが、その前から人間椅子の音楽は聴いていましたか?

 
ノブ:それはもちろん!古くは「イカ天」で、人間椅子も出ているし、僕もGENというバンドで3回目放送に出ているので、やっぱり当時イカ天に出たバンドは話題に上るので、「人間椅子っていうすげーかっこいいハードロックバンドが出た」というのはすぐ耳に入ってきましたね。ラジオからも流れてくるし。その後も…ドラムの後藤マスヒロくん。彼とは元々The ピーズ時代から友達だったので、「マスヒロくんが人間椅子に入ったんだ!」ってことで、どんなバンドかなぁと興味を持って聴いていましたね。
 

—人間椅子のサウンドは結成当初から加入直前までずっと親しんでいたのですね。

 
ノブ:そうですね。それで、水戸さん主催ライブの共演と打ち上げで仲良くなってからは、ちゃんがDJをやる「ハードロック喫茶ナザレス」にもゲスト出演しました。それが2003年9月でしたが、ちょうどその少し後、2003年12月のO-WESTワンマンを最後にマスヒロくんが脱退することになったと聞きました。
 

—そこから、どのような経緯で人間椅子に加入することになったのですか?

 
ノブ:その年の12月の終わり頃、ちゃんから電話がかかってきて「しばらくリハも入ってないし、体がなまっちゃうから、練習に付き合ってくれないか?」と言われたので、「じゃあ友達のためなら一肌脱ぐよ!」と。日程を決めて、「人間椅子の曲を何曲か持ってきてよ、俺カバーしとくよ!」って言って。
 

—最初は「練習付き合ってよ」だったのですね。

 
ノブ:本当にそういう言い方だったんですよ。それこそ僕らは「スープの冷めない距離」に住んでいたから、ある日ポストを開けたら音源が入ってたんですよ(笑)当時はまだMDでしたね。6曲くらい入っていて、これをちょっと練習で合わせられたら…と大急ぎでカバーしました。
 

—曲は何が入っていたのですか?

 
ノブ:最初に入っていたのは、確か「死神の饗宴」。それから「相剋の家」、「りんごの泪」、「ダイナマイト」。あと…「地獄」と、「針の山」でしたね。
 

—「練習」にしてはすごいラインナップです。音源を聴いて、当時どんな印象を持ちましたか?

 
ノブ:まず随分色んな種類のビートがあるなぁって思いました。各々の曲が、たとえばプログレッシブなビートのチェンジのものだったり、テンポが変わるものだったり、8ビート・16ビート・シャッフル、8ビートが2ビートみたいに速い 「ダイナマイト」とか…で、ツーバスがありフィルが難しいのがあり、と幅がすっごく広かったんですよ。それから、コーラスも面白かったので、「これは、ちゃんと再現したい!」と、音源聴きながらすごくワクワクしました。
 

—なるほど。

 
ノブ:で、ツーバスのプレイもあったので、スタジオに入るその日に、ツインペダルを買っていきました。高校生の頃に踏んでみたことがあるっていう程度で、それ以来ずっとシングルでやっていたので、これはいい機会だし、友達のために何とかツーバスを踏めるようになろうと思って、買いました。それでリハで初めて組み立てたんです。
 

—高校以来というか、実質は人間椅子が実戦デビューとなったのですね。

 
ノブ:それまでは頭の中でイメージしていただけだったので、どっちの足から踏んだらいいのかなぁと思いながら(笑)。で、今までシングルの時は左足が常にハイハットで、表で踏む癖がついていたので、ツーバスでも左足を表に。右足は自由に動けるのでバックビートにしようと決めました。
 

—2003年12月当時、ノブさんご自身の音楽活動はどういう状況だったのですか?

 
ノブ:長くやっていたドミンゴスから一時脱退していたんですね。ちょうどその頃にちゃんから連絡が来ていて…でも、他にも色んなバンドをやっていました。元ロリータ18号エナちゃん(エナポゥ)たちと、PUFFYのバックバンドから始まったPONI-CAMPというバンドを組んでいたり、水戸華之介さんや中山加奈子さんともやったり、自分のソロも始めていて…
 

—多忙ですね!

 
ノブ:そのころの僕的には…バンドは色々やっていて、もちろん全部120%でやっていましたが、一つ代表するバンドがこれというものがない時期ではありましたね。
 

—その時期にソロCDのリリースや初のソロワンマン、さらにはテレビ出演などもあり…スケジュールがびっしりだったのでは?

 
ノブ:確かに(笑)ドミンゴスを辞めてどうなるかな、とは色々思っていたのですが、「ドミンゴス辞めたドラムのヤツ、ちょっと活動が小さくなっちゃってダサいよな」って言われると、ドミンゴスがダサいって言われているみたいで嫌だったという意地もあって、活発にやってやろうと決めて、色んな人に声をかけたりかけてもらったりしました。
 

—そうした思いがあったのですね。でも色んなタイプのバンドを掛け持ちしたり、テレビ出演したりと、頭の切り替えが大変ではなかったですか?

 
ノブ:よく言われるんですが、実は全然切り替えてないんです。ドラムって長くやってくるとその人の人生とか生き様がそのまま出ると思うんです。どのバンドに行っても、違うビートや違う雰囲気のものは叩けても、俺は、俺のまんまでしかできないんですよ。喋りもそうだし。何をするにも、自分が自分でできることしか、できない。だから、どのバンドにも最初に言うんです。「俺は120%以上の力でやるけど、俺は自分をうまく切り替えたりできないから、俺のまんまのドラムでよかったら、いつでもいくらでもやるよ」と。今こうして喋っていても、何も切り替えてないんです。
 

実はテストだった… 「運命」感じたスタジオ練習
—人間椅子の練習に参加したのがスタートということですが、そこからメンバーとして加入するまでにはどのような経緯があったのですか?

 
ノブ:その時はまったく、僕としてはただ練習に付き合ったということだったのですが、和嶋くんとちゃんはその頃ドラムを探していて、僕には言っていなかったけどオーディション的に「ノブ君と合わせてみよう」ということだったそうです。その日の練習帰りに「ちょっと喫茶店に行って話そうよ」と言われてついていって、最初は「あの曲こうだよね」と音楽談義をしていたのですが、急に2人がまじめな顔つきになって。
 

—いよいよ本題が来ましたね!

 
ノブ:「大事な話があるんだけど……実はオーディション的な感じだったんだ」「え?何?」って(笑)スタジオで合わせた時点で、2人は僕がトイレかなにかに行っている間に「ノブくんいいね」って話をしてくれていたみたいで。和嶋くんも以前水戸さんのイベントで共演した時から僕の叩く8ビートがとても気持ち良かったっていう記憶を持ってくれていたようで。
 

—既に有力候補の一人ではあったのですね。

 
ノブ:「きょうの感触が良かったから、もう一度スタジオに入ってほしい。今度はそういう気持ちでやってみてくれないか」と。「わかった!がんばる!」と言ったら改めて別の曲が6曲も来て(笑)
 

—追加課題ですね(笑)

 
ノブ:「うわ、また難しいのがきたぜ!やりがいあるなー!」って思いましたね(笑)。「黒い太陽」という、キャタピラビートというかあまり速くないツーバスの曲が入っていたり、「戦慄する木霊」や「人面瘡」、「天国に結ぶ恋」など、前とタイプが全然違う曲が6曲入ってましたね。
 

—2回の練習で12曲も!

 
ノブ:しかも、確か1回目の練習の時からやったと思うんですが、既存の曲以外にも「こんなリフがあるんだけどノブくんならどう叩く?」って言われて、僕が叩いてみて、一緒にアレンジしました。その時あわせたリフが「道程」なんです。
 

—2004年9月にリリースした『三悪道中膝栗毛』の収録曲ですね。1回目の練習から既に曲作りにも参加されていたとは!

 
ノブ:それで2回目のリハーサルが終わってまた同じ喫茶店に行って、「人間椅子のドラムをやってほしい」と言われました。それから4月からレコーディングをやることが決まっている、と。
 

—すぐにOKしたのですか?

 
ノブ:2人の出すリフにしてもグルーブにしてもサウンドセンスにしてもすっごくかっこ良かったので、これは是非一緒にやりたいなと強く思いました。でも、素直な気持ちで考えると今まで僕がやってきた音楽、それから応援してくれるファンの人に見せてきたサウンドと180度違うものになるし、佇まいも変わるので、僕を応援してくれている人がちょっと戸惑うんじゃないかなという気持ちもよぎって、その時は「一緒にやろう」と即答できなかったんですよ。それでその時は「”サポート”のようなニュアンスが少し残るのでも良ければ、是非一緒にやりたい」という返答をしました。
 

—そうだったのですね。

 
ノブ:そうしたらちゃんがかっこいいことを言うんですよ。「わかった。僕らはノブくんとやりたいと思ってるからお願いします。ただね、ノブくんは今そう言ったけど、一緒にやっていたら必ずノブくんの方から正式メンバーにしてくれって言ってくるはずだ」って言ったんですよ!もうかっこ良くて!ブレてない、芯を持っている人だなと感じましたね。俺がそれに魅了されるというのも、予感があったんでしょうね。和嶋くんも横で「その通りです…そうですね…」と。(和嶋慎治のモノマネをしながら)
 

—そこから実際にレコーディングが始まって、鈴木さんや和嶋さんに対してはどんな印象を持ちましたか?

 
ノブ:やったら本当に面白くて。何しろかっこいいというのが前提にありますからね。かつて先輩に「バンドって5年同じメンバーで一緒にやらないとグルーブって揃わないんだよ。本当のグルーブって、それからだよ」って言われたこともあるんだけど、バンドには、リフを作るセンスや作詩や作曲、アレンジのセンスだけじゃなくて、人と合わせるためのグルーブセンスというのも重要だと思うんです、それがやっぱり2人ともすごいんですよね。
 

—最初から2人に「グルーブ」を感じたのですね。

 
ノブ:当時僕は、レコーディングで自分のドラムを考える時に…、というか今でもそう思ってるのですが、どんなにかっこいいビートとか、かっこいいフィルとか、ということよりも、何よりも優先されるのがグルーブだと思っているんですね。そのグルーブが とっても揃っていたので、「うわ、この2人とやるのは俺、運命かもしれないな」と思いましたね。それで、2人に僕から言いました。「正式メンバーでやらせてほしい!!」と。
 

—鈴木さんの予言通りになりましたね!

 
ノブ:二人とも快く受け入れてくれました。ただ、ドミンゴスの解散ツアーが控えていたので、それだけしっかりやりとげたいとお願いして、発表を待ってもらいました。ドミンゴスのラストライブが2004年5月8日に渋谷O-WESTで開催されて、確かその翌日にブログで人間椅子加入を発表したと思います。
 

 

『萬燈籠』の次に聴くなら、上昇志向の『未来浪漫派』

 

—それにしても昨年は5月のOzzfest出演に始まり、8月にニューアルバム『萬燈籠』がリリースされて、全国ツアーが各地満員御礼と、実に激動の一年だったと思います。新たなファン、とりわけ20代男性が多く増えたように思います。その辺りはどう見ていますか?

 
ノブ:僕らの目から見ると、確かに若い層の人達は増えましたが、40代50代の方も少なくないし、男女比も半々か、男性の方が多いか…どの層の方にも聴いて頂いているように思います。
 

—昨年から人間椅子ファンになった人達は特に、『萬燈籠』を聴いてライブに行って、「さぁ次に何を聴いたら良いだろう」と思っている方も多いようです。不躾な質問ですが…「次の1枚」をこれまでの作品の中から選ぶとしたらズバリ、どのアルバムがオススメですか?

 
ノブ:そうですねぇ…パッと思いつくのは、今は絶版で手に入りにくいんだけど、『踊る一寸法師』ですね!…いや、やっぱり、どのアルバムもとっても良いです、甲乙つけがたい。自分が叩いていないものも全部大好きです。今までもそうだったように、僕が入ってからも、レコーディングで毎回試行錯誤しながら…エンジニアもずっと同じ人なので、一緒に色んなことを経験して、スタジオをこう使ったらいい音がするね、とかっていうのもだんだんわかってきて、工夫もできて、サウンドもずっと進化してると思うんですよ。でも、過去に出したものを聴いても何ら遜色がない、どのアルバムにもその時の最大限が出てるっていう感じです。
 

—その中で『踊る一寸法師』を選んだ理由を教えてください。

 
ノブ:バンドの勢いをすごく感じるんですよね。グルーブだけじゃなくて、音作りも。その時(鈴木和嶋両名が)どういう気持ちでやっていたのかちゃんと聞いたことはないんですけど、どの曲を聴いても気合いというか、前のめりな感じが伝わってくるので、すごく好きです。重たいものは重いし、速いものは速いんですけど、どの曲もサウンドが前のめりに入ってきて圧倒される感じが好きです。
 

—再版を是非期待したいですね。

 
ノブ:あとは「初期、中期、現在」みたいなものがもしあるとして、「現在」で今のサウンドをもう1枚聴きたいと思ったら、僕は『未来浪漫派』をおすすめしますね。そして、中期作は『修羅囃子』(2003年1月発売/ベスト盤を除き11thアルバム)。マスヒロくんの最後の作品ですね。で、やっぱり(初期作は)1st、2ndは聴いてほしいですね。…と言っていると『怪人二十面相』(2000年6月発売/ベスト盤を除き9thアルバム)もいいし…
 

—そう考えるとやはりどれもいい!ってなりますね。

 
ノブ:うーん…ライブ盤がいいかもしれないですね!
 

—2010年12月リリースの2枚組『疾風怒濤~人間椅子ライブ!ライブ!!』ですね。

 
ノブ:この前のO-EASTライブもそうですが、その前のツアーでも、どんな土地でいつやっても…新曲以外に定番曲やレア曲を混ぜながらライブをやりますよね。でも、どの曲をどの順番でやっても全く古さを感じないし、つい最近の新しいエッセンスを取り入れてやっているんじゃないか?っていう感じがするくらい、どの時代でも、どこを切っても金太郎飴みたいな人間椅子なんですよね。だからどのアルバムを聴いてもらってもいいので、是非全部(笑)
 

—そうですね。その「金太郎飴」という表現は全く悪い意味でなく、どの曲にも一本芯が通っているのだと思います。

 
ノブ:やっぱりブレないで続けている、大好きなサウンドがあるんですよね。表現したいグルーブだったり、表現したい音、歌詞、パフォーマンスがずっと一貫して同じレベルである。それが多分人間椅子のすごい所だと思います。それにライブ後なんかには、「きょうもがんばったけど、次はこれやろうよ」「このくらいでは、まだまだ納得いかない」「上をみたらまだまだ先がある」っていつもそういう話になるんです、「次のツアーはこれやろうぜ」と。常に目が前を向いている、それが人間椅子のいい所だと思います。
 

—お話を伺った中でも特に、ノブさんが加入後の作品を1枚ピックアップしたいと思います。『未来浪漫派』について、さらに伺ってまいります。

 

◆『未来浪漫派』
2009年11月04日発売
<収録曲>
M01. 太陽の没落
M02. 輝ける意志
M03. 浪漫派宣言
M04. 至福のロックンロール
M05. 愛の法則
M06. 赤と黒
M07. 冥土喫茶
M08. 塔の中の男
M09. 月下に捧ぐ舞踏曲
M10. ヤマさん
M11. 秋の夜長のミステリー
M12. ばっちりいきたい子守唄
M13. 深淵

 

—『萬燈籠』の2作前、2009年11月リリースの(ベスト盤を除いて)15thアルバムですね。5年前、ノブさんが加入されてから5~6年目の作品になりますが、当時を振り返ってレコーディングのエピソードなどありますか?

 
ノブ:プリプロの時の印象に残ってる仮タイトルがあります。「愛の法則」という曲ですが、これは仮タイトルが「愛の嵐」だったんです。これはこれでインパクトありますよね。この仮タイトルからも感じたんですが、この曲は、恋愛に限らずですが、和嶋くんの中から出てくる人間観が特に散りばめられている曲だと思います。「赤と黒」もそうですね。個人対個人。女と男、欲しあっている2人の歌だなぁとも思うし…個人的に、レコーディングを振り返って覚えていることは、「冥土喫茶」のサビのドラムの手順がちょっと難しかったなーと。
 

—どういった所で苦労されましたか?

 
ノブ:僕は右利きだから、フィルは右から入るのがやりやすいんですが、「冥土喫茶」は左から入ったり右から入ったり、左手と右足をシンクロさせながらしかも速いビートで叩くというのが、自分の中ではちょっと挑戦だったんですよ。できないことではなかったのですが、レコーディングに耐えうるというか、ちゃんと人に聴いてもらうために録る、というために密かに練習しましたね。
 

—ライブでノブさんが熱唱する「赤と黒」も底抜けな明るさがあって、個人的には好きです。

 
ノブ:ありがとう!あとは、「輝ける意志」とか「浪漫派宣言」も、上昇志向の曲だと僕は受け取っています。そういう気持ちが『未来浪漫派』には満載だと思っています。このアルバムは東日本大震災前のリリースで、震災への思いはまだ含まれていないですね。
 

—そうですね。この次の『此岸礼讃』が震災をテーマに制作され、2011年8月にリリースされました。

 
ノブ:今、いろんな形で表現している人たちは僕らも含め大体の皆さんが、あの震災のことは忘れられないことだし、まだまだ伝えていかないといけないことだと皆さんどこかで思っていて、作品に何かしら影響が出ていると思います。『未来浪漫派』は時期的に、そうした震災の影響を受ける前に作られたアルバムなので、(震災前)当時の上昇志向、恋愛観、人間観など自分の内側から出てくる趣味嗜好などを表現していて、今聴くと色々と感じられるものがあると思います。それから…やっぱり「深淵」!
 

—「深淵」も『未来浪漫派』の最終トラックに収録されていますね。

 
ノブ:かっこいいですよね~!「深淵」のドラマチックで組曲的なプログレッシブな展開もそうですけど、この時に「3人の8ビートが呼吸もグルーブもすごくいいものが録れたね」って3人で話し合いましたね。
 

—「深淵」はOzzfestでも披露されましたね。『未来浪漫派』リリース当時は、昨年のOzzfestのような大きな舞台は目標としてイメージされていたのでしょうか?

 
ノブ:いや、Ozzfestみたいなステージは全然イメージになかったですね。ただ、野外フェスがこの頃には既に盛り上がっていたので、「野外フェス出たいなぁ」っていう野望はずっと持ってましたね。確かこの頃から『AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-』(青森で開催される野外フェス。人間椅子は2010年に初出演)に呼ばれるようになりました。
 

—そうですね。ちょうど『未来浪漫派』の少し後に初出演されていますね。

 
ノブ:フェスは見に来る人にとってショーケースというか見本市みたいな感じで色んな出演者を観られるじゃないですか。そこでかっこいいと思ったバンドのライブに、次に足を運んでくれる。これは音楽業界にとって、とてもいいものだと思うし、そこに人間椅子が出たら絶対に得るものは大きいはず、という気持ちもあったのでフェスに出たいと思ってました。ただ、あの頃はまだ、Ozzfestのような素晴らしいステージに自分たちが立てるとは想像していなかったですね。
 

バンド生活25周年「大きな野望を持ってます」

 

—人間椅子加入から10年が経った今、鈴木さんと和嶋さんとの関係性について、どう見ていますか?

 
ノブ:10年も一緒にやっていると、2人が生きるということをどう考えているのかとか、音楽を聴くこと/演奏することについてどう考えているのかや、メンバーとのスタンスについてどう考えているのか、が少しずつわかってきました。和嶋くんは、はじめは保守的なように見えたんですが実はガンガン行くタイプだし、ちゃんは、たとえば俺がちょっと浮き足立ちそうになると、「普段のリハ通り、いつも通り頑張ろう」と言ってくれて、落ち着かせてくれたりして、全体をちゃんと見るタイプですね。
 

—ノブさんはこれまでも、そして現在も様々なバンドを経験されていますが、改めて他のバンドと比べた時に、人間椅子というバンドについてはどのような印象を持っていますか?

 
ノブ:ドミンゴスの時は僕が最年長だったのですが、人間椅子では一番年下です。この2人のお兄さんの生み出しているものを自分なりにかっこよくできたら、と常に考えています。「ついていく感」というか、2人に追いつきたい!という立ち位置は心地良いですね。まぁ今でも全然追いつけていないですけどね(笑)
 

—3人の中でのノブさんの立ち位置は、どちらかというと広報的な、表に立ってPRしていく人なのかなと思っていました。

 
ノブ:そう見えますか?(笑)でも僕自身は、前に出ているつもりは全くないし、今言ったように2人の後をついていっていると自分では思っています。和嶋くんがまずバンドのクオリティ部分を担っていて、ちゃんはバンドの深い所を語っていき、最後の僕はあまり出ていかない。出ていく順番もそれでいいと思っています。何と言っても2人が25年培ってきたものが大半で、僕はそこに加入して、僕も僕なりに自分の雰囲気を人間椅子で出してはいますが、大事なのは普遍的な人間椅子というサウンド、グルーブ、歌詞、リフ、雰囲気だと思うんですよね。それは、僕が前面に立ってイエイ!って話しちゃいけないと思っていて。やっぱり2人が喋ってこそ人間椅子だと思うので、広報的なことをやっているつもりは全くないです。ただ対メディアや対ライブハウスといった窓口的なことはやるので、外の人とたくさん話すタイミングや時間があるのは事実かもしれませんね。
 

—和嶋さんと鈴木さんが作ってきたものを「もっと新たな場所に」と引っ張って行っているのがノブさん、という印象です。

 
ノブ:それは嬉しいですね!できれば今まで聴いたことがない人、存在を知らなかった人の所に和嶋くんとちゃんという国宝級の2人を出せたらなとは常に思っているので!
 

—この10年間、人間椅子の活動において、悩みや葛藤などはなかったですか?

 
ノブ:悩んだということはなくて、常に思っているのは「ちゃんと和嶋くんがそれぞれのペースを乱さずに素晴らしい曲を作れる環境、素晴らしい演奏ができる環境を作ろう」って思っているだけですね。僕があれもこれもやろうと急ぎ過ぎて、2人から出てきた意見を聞いて「あ、ここはもう一歩待ってゆっくりやった方がいいかな」と考える時もあるし、「ここは、どうしても、なんとかして2人に納得してもらって、やったほうが良いはず!」と思う時にはそう促すように話すこともありますね。なんかズルいやつみたいですけど(笑)。特に活動でどうしようって悩んだことはないですね。
 

—人間椅子への思いは、10年間ずっとブレていないのですね。

 
ノブ:2人がたくさんの人を魅了していると思うので、そこに僕も1枚噛んで、後ろでイエイ!って言っていられれば幸せだなぁって(笑)。もちろん120パーセント以上の力で叩きます!
 

—それにしても昨年はバンド・人間椅子にとっても、ミュージシャン・ナカジマノブにとっても激動の一年だったと思います。

 
ノブ:そうですね。今までずっとミュージシャン生活を続けてきて、去年一年は、正確には一昨年の暮れぐらいからですが、劇的に素晴らしい一年でしたね。
 

—燃え尽き症候群のようになってもおかしくないような大舞台の連続で…その中で、皆さんの中には既に次の目標は生まれているのでしょうか?

 
ノブ:もちろん色々考えていますね。今年がデビュー25周年というのもあるのですが、まず一つは、今まで人間椅子が行ったことのない土地が日本国内にもまだあるので、そこに行ってみんなにライブを観てほしいと思います。行ったことのない土地で充実したライブをする、そして最終的に今年の目標はもう僕の中にはあって、人間椅子は今までワンマンツアーを何回もやってきてますが、その中でも一番大きな、今までやったことのないサイズのハコでやってみたい、そこを大成功させたい!という目標がありますね。だから、まず1月にO-EASTでワンマンができたのはそのとっても素晴らしい第一歩だと思うので、今年の最後の方には、もっともっと大きい会場でやりたいと思っています!!!
 

—大きな会場と言えば、O-EASTワンマンのMCでも怒髪天の日本武道館公演が話題になっていましたね。

 
ノブ:そうですね。あれもとっても感激したことの一つでした。今は年齢関係なく「いいものはいい」と観てくれる時代じゃないですか。一昔前よりは確実に受け入れてくれる層が広がって、聴いてくれる方の土壌がとてもうまくできあがっていると思います。だから、怒髪天もああやって活躍できるし、僕らもがんばれると思っています。ここから一歩、二歩、五歩、十歩って…絶対的にステップアップできればなぁって思ってるので…だから、武道館は目標のひとつですね!怒髪天とは25年以上の友達で…
 

—「あいつらがやったんだから俺だって」という…

 
ノブ:人間椅子ならできる!という野望。ただ、焦って踏み外したり、自分を見失うようなことだけはしたくないなと思っています。焦りは感じていませんが、海外にも行きたいし、大きな野望は持っています!
 

—そしてファン目線としては新作も楽しみです。

 
ノブ:次の作品に関しては、まだ始まったばかりですが、鋭意製作中です!いつも楽しみにしてくださっている方から初めて手に取る人に至るまで、胸を張って絶対にいいものができると思います!ライブを含め。楽しみにしていてほしいですね!
 

◆人間椅子 ディスコグラフィ
(ナカジマノブ 加入以降)
 

『萬燈籠』
2013/08/07発売
TKCA-73939
 
 

『疾風怒濤~人間椅子ライブ!ライブ!!』
2010/12/01発売
TKCA-73608
 

『人間椅子傑作選』
2009/01/21発売
TKCA-73403
 
 

『瘋痴狂』
2006/02/22発売
TKCA-72977
 
 


『此岸礼讃』
2011/08/03発売
TKCA-73676
 
 


『未来浪漫派』
2009/11/04発売
TKCA-73486
 
 


『真夏の夜の夢』
2007/08/08発売
TKCA-73226
 
 


『三悪道中膝栗毛』
2004/09/29発売
MECR-2015
 

 

次回予告

特集「ROCK SAMURAI STORY」、次回は鈴木研一ソロインタビューを掲載予定!
 

◆人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/
 
◆人間椅子 公式ブログ
http://ningenisu.exblog.jp/
◆ライブ情報
「abura derabu」
・2014年03月20日(木)【東京】TSUTAYA O-EAST
出演:人間椅子 / ZAZEN BOYS
時間: OPEN 18:00 / START 19:00
★読者プレゼント★
ナカジマノブのサイン入りピックを、抽選で2名様にプレゼント!
 
ご応募方法は“BEEASTファンクラブ”の方にお届けする「週刊ビースト瓦版(無料メルマガ)」にて記載いたします。
 
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【コラム連載中!】浪漫派宣言 和嶋慎治(人間椅子)
http://www.beeast69.com/column/wajima
 
【レポート】人間椅子 「バンド生活二十五年 ~ 猟奇の果 ~」
http://www.beeast69.com/report/98781
【PHOTOレポ】樋口宗孝追悼ライブ vol.5
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