鈴木亮介 Vo.24
仕事柄、入試問題を年間300校ほど(国語だけですが)解きます。そうすると、否応なしに物語文と論説文を合計600題ほど読むわけですが、そのほとんどは読むに堪えない退屈なものばかりです。よくこんな駄文書けたなという論説や、「また重○清、あさ○あつこか」という似たり寄ったりの物語。国語嫌いを量産するためにやってるのかとさえ言いたくなってしまいます。
そんな状況ですから、たまに面白い文章が出てくると、解説授業も思わず熱が入ってしまいます。
最近読んだ中でのヒットは、東京都立両国高校の平成20年の問題。
まず物語文では、樋口一葉とその家族にまつわる悲劇を題材にした歴史小説。作者は領家高子という地元・下町出身の小説家ですが、これが面白い。
平凡な暮らしをしていた母娘3人が、姉が「作家・樋口一葉」として売れることで状況が一変。妹、母は気苦労を強いられ、さらに姉の病状が深刻になっていくという悲惨な状態で、ボロボロになっていく妹、母の心境を描いた一節。
母は妹を気遣い、妹はそう考える母の心中を察して辛さを感じ…という二重三重の苦しみがある中で、姉を恨みたい気持ちはありつつ、でもそうすると仲の良かった家族を否定することになってしまうからできず、「樋口一葉という別人格がわれわれ家族をバラバラに引き裂いている」と思い込むことによって、その辛さを何とか発散しようとしていく…何とも形容のし難い悲しみが描かれているのですが、描かれているテーマの秀逸さもさることながら、「こころの肌理(きめ)を荒らさず暮らす」など随所にこの作家の表現センスの高さを感じます。
そして、「天才・一葉と、ささやかな幸福を求める家族との乖離」を描いたこの問題が作られた背景には、両国高校からのこんなメッセージが隠れているのかなとも感じました。
「君たち両国高校の門を叩く優秀な人間には、いずれ世に出て大舞台で活躍し、世間を引っ張っていく宿命がある。そこには、世間が描く華やかさとは真逆の苦しみや辛さがある。持つ者と持たざる者…君たちは持つ者としての使命を自覚し、また持たざる多くの平凡な人間の気持ちも理解できなければならない」と。
続いて登場する論説文にも、一貫してそうしたメッセージが込められている気がします。論説文のテーマは「時間」。「最近一年が過ぎるのが早い」という感覚は、日々に新鮮な感動がなくなっているため。いつでも感動を忘れない人間は日々が充実していて、「明日を待ち侘び、未来に生きている」から時間が引き延ばされて感じるのだ、といいます。ここにも、「お前ら両国高校受験生たるもの、毎日を退屈な当たり前の繰り返しと思い込んで目をふさいでしまわずに、日々身の回りの常識を疑い、問い直し、新しい発見をしろ。感動できる人間になれ」と、将来のエリートたる両国高校受験生へのメッセージが込められているように感じます。
そして最後は紫式部と清少納言の天才対決。これはもう言うまでもありません。全ての問いの一番最後には、「どんな反対意見も自分の勉強のために素直に取り入れたいが、人間は感情の動物で、なかなか冷静に他人の批判を聞くことができない」という筆者の主張に対して考えたことを述べる二百字作文が登場します。
明治34年の創立以来、東京・下町のエリート校として脈々とその歴史を刻み続け、芥川龍之介、半村良ら数多くの著名人を輩出し続けている両国高校に相応しい文章題のセンスと、問いのセンス!!
…と、長くなってしまいましたが、国語に限らず東京の進学校の入試問題は面白い問題が多いです。英語で円周率の求め方を聴く長文が出たり…その分、難しいんですけどね。
最後に、お知らせです!新宿の「WildSide Tokyo」では12月13日に高校生バンドによる「文化祭」イベントを行います。10代にも気軽にライブハウスに足を運んでもらい、その魅力を知ってもらいたいという思いや、音楽を通じて人のつながりを広げてほしいといった思いが込められている熱い企画!当日はメイドさんが場内を回ったり、楽屋を開放して初対面の出演者同士、観客同士が気軽に談笑できる「出会いのスペース」を作るなど、楽しい企画が目白押しですので、お時間があれば皆さん是非お越しください!
本誌・BEEASTでもこの模様をたっぷり取材し、リポートします。おそらく会場にはスズキがいます。お見かけしたら気軽にメロイックサインを!シャイな記者なので多分返しませんが…
★WildSide Tokyo presents 「青い春」
2010.12.13(月)
OPEN:17:00 START:17:30
場所:WildSide Tokyo
新宿区新宿1-34-13 貝塚ビルB1
チケット代¥1500(Dチャージ別500円フードチケット1枚つき)
出演者
After The Calm / 3×6 / The★想いで / F4 / OP69 / endrphia / DJ:AKINO LEE /
メイド:ふとももちゃん&お鈴&ひらりん / 風船ガール:ミカコちゃん&ミサキちゃん /
お笑い:ゑびすナンバー
フードブース:藤原&世界のあーちゃん&橋爪ちゃん
協賛:WebロックマガジンBEEAST、喫茶カールモール
当日、会場は完全禁煙禁酒とさせていただきます。WildSIde Tokyoの上の階のカールモールを借りますので飲酒、喫煙が可能です。カールモールはWildSideとは一風変わったゆったり落ち着ける喫茶店です。イベントは4時間弱と長丁場なので、保護者の方や、少し休みたくなったお客様は休憩できます。WildSide Tokyoのチケットの半券を見せれば飲み物食べ物全て1割引となります。
2010.12 鈴木亮介拝
http://www.geocities.jp/ryosuke_bellwood/