覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。突然の訃報が届いたあの日を。X JAPANのギタリストであり、ソロ、hide with Spread Beaver、zilchとしても活躍していたhide。1998年5月、彼の死を伝えるニュースが全国を駆け巡りました。
彼が旅立った直後にリリースされた「ピンク スパイダー」。この曲に関するインタビューでhideはこんな言葉を遺しています。「オレも作ろうかな、ロックオペラ」。
それから12年。hideの楽曲だけを使ったミュージカルを制作するプロジェクトが始動。そして、13回忌のメモリアルイヤーを締めくくる最後のイベントとしてROCKミュージカル『ピンクスパイダー』が上演されることになったのです。
音楽監督としてhideの共同プロデューサーであり、hide with Spread BeaverのメンバーでもあるiNAを迎え、hideに見出されてメジャーデビューした後も進化を続けてきたdefspiralがバンドとして参加。そこに、hideと多くの時間をともに過ごしてきたJも加わり、彼を慕ったミュージシャンたちと役者陣がタッグを組んだ今作品。hideの生涯をフィードバックしたものではなく、彼の描く幻想世界をモチーフに仕上げられました。
ストーリーは、会ったことのないエス(武田真治/渡部豪太 ダブルキャスト)とメル(南沢奈央/高橋瞳 ダブルキャスト)が携帯を通じて交わす会話からスタートします。メルに夢を語るエス。でも、エスは言います。「ボクには羽がない。だから、飛べなくて」と。
そんなエスの前に現れたのはTAKA。TAKAはPSYCHOMMUNITYへの招待状である蝶の羽をエスに渡します。やがて、エスと同様にメルも蝶の羽を手にすることに。架空の世界であるPSYCHOMMUNITYと現実の世界を行き来するエスとメル。
飛べないとこぼしたエスでも飛べたのがPSYCHOMMUNITY。しかし、蝶の羽は奪われてしまいます。それを再びふたりに渡そうとしたのは、やはりTAKA。差し出された蝶の羽をエスは受け取るのでしょうか。エスの伸ばされた手の先にあったのは…。
PSYCHOMMUNITYでメルを見つけたエス。現実の世界へと戻ってきたエスがメルに語った言葉は…?
「翼が欲しい」。この作品の中で何度も歌われる「ピンク スパイダー」には、こんな歌詞が出てきます。羽がないから飛べなかったエス。彼はPSYCHOMMUNITYでメルと同時にもうひとつ、あるのものを見つけました。それは、とても大切なもの。翼や羽がなくても飛ぶ方法。
歌われる楽曲の歌詞によって、登場人物の心境や気持ちが表現されることが多いミュージカル。同時にセリフでも、それらは表現されます。『ピンクスパイダー』は、そういった従来のものとは少し異なったミュージカル。役者陣が口にするセリフは多くなく、歌詞にセリフに代わる言葉がズバリ出てくることもありません。多くは曲中の動きや表情によって語られ、ストーリーは進んでいきます。それだけに、同じ楽曲が使われていても、歌い手や場面によってまったく別の表情を持つことも。
同様に、キャストによってもまた違った印象を与えるのもこの作品のおもしろさ。エスとメルはダブルキャストになっており、ゲネプロでは武田真治×高橋瞳・渡部豪太×南沢奈央という組み合わせを披露。渡部×南沢は悩み・優しさがより伝わり、武田×高橋はどこか芯の強さを感じさせるエスとメルでした。この組み合わせのほか、本公演では武田×南沢、渡部×高橋のパターンも有り。
キャストの起こすお芝居の化学反応と楽曲の中で進むストーリー。恐らく、100人が観れば100通りの受け取り方があるはず。hideの音楽がそうであったように、この作品もまた解釈はオーディエンスに委ねられている。そんなミュージカルが『ピンクスパイダー』!
本公演がスタートする前日のゲネプロ前に行われた囲み会見。エスとメルを演じる4人が出席しました。
武田:ボクの初日は11日なので(まだ少し先ですが、明日初日を迎える)豪太くんはどう?
渡部:大丈夫だと思います。
高橋:私も(初日は)9日なんですけど、緊張してます。
南沢:私もすごく緊張していて。稽古中なのに胃が痛くなったり。完全に緊張してます。
武田:今回はダブルキャストなんですが、いいところをいっぱい学びたいと思います。それはダブルキャストでやれる特権だと思いますね。
渡部:(武田)真治さんが言ってくださるんですよね。「豪太、ここはもっとこうしたほうがいいぞ」って。それを真治さんがやって見せてくださるんですよ。なので、今までにない経験をさせてもらってます。
武田:この作品は、普通のミュージカルよりもステージ上の音が大きいんですよ。ミュージカルで生バンドが入っていると、ドラムの前にクリア板とかあって音を抑えたりするんですけど、もうバーンと出てますから。相当迫力があると思います。もちろん歌もありますし。
南沢:歌は高橋さんが専門なので、教わってます。発声からノドのケアまで。キャストのみなさんはミュージカルを経験されている方が多いので、ストレッチとかも稽古場で教えてもらいながら練習してます。
高橋:私もミュージカルの経験はゼロだし、観に行くっていうこともなかなかなかったことなので、先輩方にいろいろアドバイスいただきながら毎日稽古に励んでおりました。今回の『ピンクスパイダー』は私にとっては新しい刺激で新しい挑戦で。日々楽しいです。
武田:普通のミュージカルってメインの曲以外は2分弱くらいで終わるんですよ。でも、今回はhideさんへの思い入れもあって、曲の歌詞を切れないってことで始まったら4分間歌わなきゃいけないんですよね。それが二十数曲。
渡部:でも、楽しいので、幸せな4分間というか。あっというまに終わってしまいますね。曲の中でストーリーが展開するので、たぶん見ていておもしろいと思いますよ。
武田:このミュージカルのなかで何回か歌われる「ピンク スパイダー」も、それぞれの立場から歌うので全然違ってくるし。それがすごくおもしろくて。とても聴きごたえがあると思います。あと今回、すべての公演にJさんが出演してくださるんですね。で、このあいだみんなでちょっと稽古場打ち上げみたいなのをやったときにいろんなお話をうかがって。じつはこの作品って多くの方が想像されてるよりもポップな仕上がりになってると思うんですね。でも、それでいいんだみたいなことを言ってくださって。亡き人を知ったふうなふりして掘り下げるんじゃなくて、遺されたものを明るく楽しく解釈して、次の世代につないでいってくれみたいなことを言われて、すごくスーッとしたんですよ。Jさんと出会えてよかったなと思ってます。
渡部:そんな『ピンクスパイダー』。
高橋:3月8日から。
南沢:東京グローブ座にて。
武田:上演しています。よろしくお願いします!
キャスト:武田真治/渡部豪太、南沢奈央/高橋瞳、TAKA(defspiral)、J(友情出演) ほか
バンド:defspiral、田中詞崇(keyboard)
スタッフ:竹内佑(脚本)、荻谷浩一(演出)、iNA(音楽監督) ほか
公演日程:
・東京公演:
2011年3月8日(火)〜27日(日)@東京グローブ座/9,000円(全席指定・税込)
・名古屋公演(メインキャスト・武田真治×南沢奈央):
2011年4月10日(日)@愛知県芸術劇場大ホール/S席9,000円、A席3,000円(全席指定・税込)
・神戸公演(メインキャスト・武田真治×南沢奈央):
2011年4月15日(金)@神戸国際会館こくさいホール/S席9,000円、A席7,000円、B席5,000円(全席指定・税込)
・札幌公演(メインキャスト・武田真治×南沢奈央):
2011年4月23日(土)@ニトリ文化ホール/S席9,000円、A席5,000円(全席指定・税込)
問い合わせ:
サンライズプロモーション東京(東京):TEL 0570−00−3337
サンデーフォークプロモーション(名古屋):TEL 052−320−9100
キョードーインフォメーション(神戸):TEL 06−7732−8888
エーダッシュ(札幌):TEL 011−533−7711
主催:テレビ朝日、WOWOW、イープラス
企画協力:ヘッドワックスオーガナイゼーション
企画:アトリエ・ダンカン、バックステージプロジェクト
製作:アトリエ・ダンカン
オフィシャルサイト:http://pinkspider.main.jp/