連載

GUITAR TRIBE 梢江“ナガセ”店長に突撃取材!
TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

連載「ロック社会科見学」第13回は、ヴィンテージギターショップGUITAR TRIBEをご紹介しましょう。ヴィンテージギターは、文字通りヴィンテージ(年代物)なギター。新品では手に入らない、古き良き貴重なギターの世界です。古くは1950年代から製造された物が、ギターを弾かない人からすると驚きのプライスで売られています。

しかし、例えばクラシックの世界の古い楽器が、高価である話を聞いたことがあるかもしれません。ヴァイオリンの名器「ストラディバリウス 」などは都心の高級マンションと変わらない値段がするものです。ヴィンテージギターの世界では、1950~1960年代にかけて生産されたギブソンのレスポールモデルや、フェンダーのストラトキャスターモデルが、高値で取り引きされています。

1970年代ごろまでは、今のようなヴィンテージというカテゴリーはなかったようですが、ヴィンテージサウンドを求めるアーティストやギターファンのニーズにより、1980年代ごろから明確なマーケットが出来上がり、今日に至るようです。今回は大阪で有名なヴィンテージギターショップ、GUITAR TRIBEを社会科見学してみましょう。若くイケメンな梢江“ナガセ”店長にお話をうかがいたいと思います!

梢江“ナガセ”直記 店長 プロフィール

島根県出身。18歳で大阪に出て来てから、バイトでヴィンテージ楽器業界に入る。音楽活動を経て、再びヴィンテージ楽器業界へ。ミュージシャンを含め、お客様からの絶大な信頼を得て、2年前から店長として切り盛りしている。30代なかばにして膨大な知識とキャリアを築いているが、ヴィンテージ道を極めるため、日々まい進中。「ナガセ」のニックネームは、長瀬智也に似ている事から、楽器業界に入った時に付けられた。

— ヴィンテージギターに魅了されたのはいつ頃ですか?

ナガセ:僕は島根出身なのですが、地元に居た若い頃にギター雑誌を読んで、いいな、かっこいいな、と思っていました。

— 勝手なイメージですが、若い世代に手が届くギターの金額ではないような気がしますが…。

ナガセ:それが当時は手が届く値段でした。15年前くらいでしょうか。今ほど高騰していなかったのです。年々金額が上昇して、リーマンショック前がピークでしたね。その後は徐々に右肩下がりになり、相場的には以前に戻りつつあるのかなと。

— ヴィンテージ楽器業界に入るキッカケを教えてください。

ナガセ:大阪の専門学校に入学しました。大阪でヴィンテージ楽器の店へ遊びに行ったのがキッカケです。

— それからずっとこの業界ですか?

ナガセ:いえ、一時期バンドの音楽活動に専念していたので、業界を離れていました。以前から知り合いだったこの店のオーナーから、ここをオープンするからと誘っていただきまして、その連絡からまたこの業界に戻ってきました。最初はバイトでしたが、二年前から店長で任せてもらっています。

— 今、バンド活動の方は?

ナガセ:店で精一杯ですが、機会があればギタリストの活動もやりたいですね。

— ギターを始めたのはいつ頃ですか?

ナガセ:実はギターを本格的に始めたのは大阪に出てきてからです。元々はキーボードを弾いていました。当時はジャズピアノを習っていたのですが、その先生になぜかVAN HALENを勧められて(笑)。聴いてみたら衝撃でした。キーボ-ドもギターも鳴っているし、ギターがギターなのにギターではないぞ!!これは凄い!!って。ギター自体に興味を持ったのは、そこがスタートですね。地元の高校の友達などは皆ギターだったので、最初のギターは友達から売ってもらいました。

— なるほど。Edward Van Halenは確かに衝撃的なヒーローですね。

ナガセ:なのでギターに触れたのは、本当に大阪に出てくる前、高校3年くらいから始めた感じですね。

— それでは、ズバリ、ヴィンテージギターの魅力を教えてください。

ナガセ:古くても、すごくきれいなギターもあれば、逆に年季が入ったギターもあります。ヴィンテージギターそのものは、やはり楽器をやらない方だと、ただの傷が付いたギターと思うかもしれません。家にあったら、おかんが「汚いギターやから捨てとくで」と言われた事もある方もおられるのでは?でも僕らはそういう使いこなされたギターを見ると血が騒ぐのです(笑)。魅力はやはり音でしょうか。このギターじゃないと出ない!という音が、ヴィンテージギターの魅力だと思います。掘り下げると限界がないので割愛させて下さい。

— ヴィンテージゆえに高額なギターが多いのですよね。

ナガセ:確かに高価なギターが多いかもしれませんが、基本は楽器です。ミュージシャンからすれば道具なので、やはり楽器はちゃんと鳴ってちゃんと弾けないとダメです。GUITAR TRIBEでは、在庫が入ってきたら必ずセットアップをして、コンディションを最善に近づけます。

— お客さんはこだわりのマニア層ですか?

ナガセ:GUITAR TRIBEは、隣にライヴハウスknaveとリハーサルスタジオPAD Studioがあります。3社で1フロア借りています。なのでライヴハウスに出演するミュージシャンの方や、練習でスタジオに来る方の来店が多いですね。あとは店のホームページなどから問い合わせて来店される方など。確かにマニアの方もいますので、気になった一本のために遠方から来られる方もいます。

— 納得いくまで試弾されるのでしょうか?

ナガセ:様々ですね。気になるギターをじっくりと弾く方もいれば、色々試される方もおられます。同じ物が一本も無いのが、ヴィンテージギターを選ぶ楽しみでもあります。

— 新品とは違う楽しみ方があるわけですね。

ナガセ:けして新品が悪いわけではありません。GUITAR TRIBEでもオリジナルブランド「SLIP!!」というオーダーメイドで新品ですが、ヴィンテージと戦う為のギターがあります。

— お店はオープンからどのくらい経ちますか?

ナガセ:2012年の9月で9年になります。この場所(フロア)に来られた楽器好きな人は必ず入って来られます。若いミュージシャン達は今使っている楽器のレベルアップ、プロミュージシャンの方は掘り出し物も探しに来られます。

— エレキが中心かと思いきや、結構アコギもありますね。

ナガセ:そうですね。エレキは確かに多いのですが、アコギもかなりの数があります。隣のライヴハウスは、弾き語りのミュージシャンも結構出演しますので、一時期はギブソンやマーティンのアコギを増やしたのですが、すぐ売れてしまいました。今でも常に選んでストックする様にしています。

— アンプ類も結構ありますね。

ナガセ:アンプは半々です。古いのと新しいの。いつの間にかアンプが増えてしまいました。

— 天井にはギターケースが山積みですが、これも年季が入った物ばかりですね。

ナガセ:ヴィンテージギターは、やはりその当時のオリジナルケースが付いているのが基本です。セットですね。ケースが無いと、その分値段が下がります。

— 店長が知る限りで、これは高価だ!というギターを教えてください。

ナガセ:今も昔も変わらず、58~60年、特に59年のレスポールは群を抜いています。杢目の表情によっては3,000万~というも物もあります。当店で扱ったギターも歴史的価値の高いZemaitisi(ゼマイティス)で、美しさでは負けてはいません。

— 試奏されている方を見て思うことはありますか?

ナガセ:お客様は十人十色ですが、その方がどんな音を求められているのかが最初に思う事です。そこから比較できる物を選んで弾いて頂き、楽器も同様に十人十色ですのでネック形状の違いで演奏性の部分も考えますね。

— 近年流行のギターサウンドと比較して思うことがあれば教えてください。

ナガセ:音を言葉にするのは難しいのですが、ヴィンテージギターにしか出せない音はあります。先日、59年のLes Paulの音を堪能できる機会があったのですが、聞けば聞く程ポーっと音に酔ってしまう本当に良い音でした。

— 最後に、ヴィンテージギターを選ぶポイントを教えてください。

ナガセ:希少価値のレア度やプレミアム物もありますが、プレイする為の楽器は道具という観点からすると音と演奏性ですね。

ヴィンテージギターが大好き!という想いが伝わってくる梢江“ナガセ”店長のインタビュー。そのコメントは、本当に心から好きな物なのだなと、肌で感じるほどでした。好きな物に囲まれて幸せなお仕事だと思います。

ロック好きな方であれば、ギターのシェイプによるベーシックなサウンドの差を理解していると思いますが、この“枯れた”独特のヴィンテージサウンドにシビレてしまうと、もうそれを知る前には戻れない!と言ったところでしょうか。ヴィンテージサウンドに魅了された多くの方の信頼を経て、梢江“ナガセ”店長は日々お仕事をされています。

最後に、締めに頂いた言葉をご紹介しましょう。「高価でも安価でも、その楽器を使える楽器にする事、どんな楽器でもそのポテンシャルを最大限にしてあげたいと思っています。楽器によって生かしてもらっているので、というより楽器が、ギターが好きなだけのギター馬鹿だと思います」との熱いコメント、さすがです。

GUITAR TRIBEでは、お客様のお望みのヴィンテージギターを探すこともやっているそうです。関西圏だけでなく、日本全国からの問い合わせにも対応してくれるとのこと。自分だけのヴィンテージギターを求めている方は、GUITAR TRIBEへぜひ一度ご連絡を!イケメンの梢江“ナガセ”店長が、ご要望をしっかりと受け止めます!

GUITAR TRIBE (ギタートライブ)
所在地:
〒550-0015 大阪市西区南堀江3-11-21 トールバレービル 地下1階
営業時間:13:00~20:00(木曜定休)
TEL & FAX : 06-6536-1401
公式サイト:
http://www.guitar-tribe.com/




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