大人気連載「ロック酒場探訪記」。今回は大阪・中央区のオフィス街に2012年オープンしたばかりのロックバー「ELWOOD」をご紹介します。商人の街・大阪の中でもとりわけ高層ビルが林立するこの地区は、平日夜は仕事終わりのビジネスパーソンでにぎわいを見せる一方、土日は観光客の動線から外れることもあって森閑としています。私が訪れたのが土曜夜ということもあって、飲食店を経営するのも一筋縄ではいかないのかな?と勝手に心配しつつ、地下鉄御堂筋線の本町駅で降りて「インペリアル船場ビル」を目指します。
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確かにオフィス街の一角に店はありました。しかし想像していた「オフィス」感はなく、木目の温かさが感じられる扉と手作りの看板、プレートからは、むしろ「ロック好きの友人の部屋を訪ねる」ような親近感があります。扉を開けると…そのアットホーム感にまた驚き!店の中心に店主が立ち、そこをぐるりとカウンターで囲っていることで、お客さん同士が顔を見合わせ談笑できるような親しみやすさを作りだしてくれています。
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決して広くはないものの、バーにはありがちな「狭さ」や「死角」を一切排した空間設計は見事。…と内心分析していると、「何にしますか?」と岩本オーナーが笑顔で話しかけてくれました。それでは、インタビューを始めてみましょう!
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現在39歳。現役のギタリストであり、雑貨販売業を経て2012年11月に「ELWOOD」を開店。ハードロック、ヘヴィメタルを中心にパンク、ブラックミュージックなど幅広く聴く。現在『6 ball pockets(ロック・ボール・ポケッツ)』というパンク系バンドで活動中。「ELWOOD」にて、月一回『EL NIGHT』と銘打ったアコースティック系ライブイベントを開催。出演者募集中。
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— こちらのお店はいつ頃から始めたのですか? br>
岩本:オープンは去年の11月12日です。元々バーで飲むのが好きで、自分でもバーをやりたいなとは、おぼろげながらには思っていました。 br>
— 何か開店のきっかけがあったのですか? br>
岩本:このビルのオーナーがドラマーなんですが、昔一緒にバンドをやっていまして。そんな(バーをやってみたいという)話をしたところ、「じゃあうちで一つ、居抜きで空いてるテナントがあるから、入る?」と紹介してくれて、店を出すことができました。 br>
— ちなみに岩本オーナーは、楽器はどのパートをやっているのですか? br>
— バーを始める前はどんなお仕事をされていましたか? br>
岩本:これが全然違う仕事で、雑貨の販売をしていました。飲食店の知識も経験も何もない状態でこの店を始めたのです。 br>
— 若い頃から店を出したいという憧れはあったのですか? br>
岩本:やりたいと強く思うようになったのはここ数年ですね。前の職場で若い子が増えてきて、ここでずっと定年まで…というのは考えられないなぁと。いずれ違う職に移るだろうと漠然と考えました。でも年齢的に考えて(現在39歳なので)転職も難しいので、じゃあ自分で店を出すという選択肢になりました。じゃあ何の店を出すかと考えた時に、料理はできないからレストランは無理だし… br>
岩本:で、バーでお酒を飲むのが結構好きだったので、バーがいいかなぁと思い始めて。それが1、2年前ですね。でも漠然と「やりたいなぁ」と思う程度でしたが。 br>
— できたてホヤホヤのお店ということですが、店のコンセプトはどのように考えたのですか? br>
岩本:元々自分がバンドマンで、ロック好きなので、ロックバーになるであろう、というのは分かっていました。それで準備するにあたって、お客さんが店に入った瞬間に「あぁここのマスターはロック好きなんだな」ってわかるような、わざとらしいというか、白々しいくらいの感じにしてやろうと考えました。 br>
— お客さんがたくさんいてにぎやかですね。普段よく来るお客さんは、どのような世代が多いですか? br>
岩本:本町がオフィス街なので、サラリーマンの方が多いですね。30代から40代くらいの方ですかね。 br>
— オフィス街ということは、平日が盛況になる感じですね。 br>
岩本:そうですね。とは言えまだオープンしたばかりなので固定のお客さんはそこまでたくさんついていませんが。日曜は定休日にしています。また、僕が現役でバンドをやっているので、自分がライブに出る日は臨時休業です(笑) br>
— 内装に関して、こだわっていることはありますか? br>
岩本:「こだわり」というのは特にないですが、ロック好きの人が店に入った時に「ここいいなぁ」と思ってもらえるような雰囲気は出せればと思っています。ただ、ガチガチのロックバー、じゃなくて、ロック好きな人はもちろんロックに興味がない人でも普通にバーとして楽しんでもらえるようには心がけています。 br>
— カウンターや入口の扉に木を使っていることもあってか、とてもアットホームな感じが良いですね。 br>
岩本:元々居抜きで、結構低予算で開店したので、他のカッチリしたバーに比べると手作り感があると思います。ですので、気を張らずに宅飲み感覚で気軽に一杯だけでも、楽しんでほしいですね。 br>
— 並べてある小物類も色々なものがありますね。これはどうやって増やしていったのですか? br>
岩本:元々は家にあった私物を持ってきていましたが、物足りないなと思って、最近はリサイクルショップやバザーで購入して揃えています。 br>
— お店の人気メニューは何ですか? br>
岩本:フードはおつまみ程度ですが、イタ飯、「イタリア料理」ではなく「炒めた料理」ということで、出しています。ドリンクだと場所柄、カクテルよりもウイスキーや焼酎、ハイボール、バーボン水割りがよく出ますね。 br>
— 逆に「これを飲んでほしい」という、岩本オーナーのイチオシメニューがあれば教えてください。 br>
岩本:「サリー」というオリジナルカクテルがあるのですが、女性のお客さんからリクエストされて、考えて作りました。そのお客さんがあだ名で「サリー」とみんなから呼ばれているので、そのまま名前を引用して、「サリー」です。 br>
— 店で流している曲はどういう選曲をしていますか? br>
岩本:基本的には自分の好きなものですが、お客さんの好みを把握してくると「じゃあそれを流しましょう」とお客さんに合わせて選ぶようにしています。 br>
— お店のカウンターに立つ上で、心がけていることはありますか? br>
岩本:そうですね…来てくださるお客さんはやはりロック好きが多いのですが、会話を途切らせないように、というのは心がけるようにしています。あくまで基本的なことですが。 br>
— 今後お店をこうしていきたい、というプランを教えてください。 br>
岩本:今までお店に来てくれたロック好きな人は大抵「こんなのもある!」と満足してくれました。ロック好きな人が集って、知らない人同士がここで出会って、盛り上がってもらえるような、そんなお店にしていきたいと思います! br>
自分のやりたいことを思いっきり楽しみ、その楽しみをお客さんと共有しようとしている岩本オーナー。それぞれのお客さんに合わせた気遣いをされていて、とても気さくで爽やかな方でした。
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ちなみに店名の「ELWOOD」は映画『The Blues Brothers』の2人組の弟・ELWOODが由来。その理由を尋ねたところ、「ロックバーだからと言って安直にロックにちなんだような…例えばTHE ROLLING STONESのブラウン・シュガーとかにしちゃうと、THE ROLLING STONESのバーなのかな?と思われちゃうので、店名はロックじゃない分野から持ってこようと思ったので」…ということでした。
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「語呂がいいから、直感で決めた」とのことですが、そんな店名にも表れているように、お客さんを限定したり排除することは一切なく、「誰もがここで楽しめるようにしたい」という岩本オーナーの人柄が伺えます。「ロック好きな人だけが集まるバー」でなく、「みんなが集まって、ロック好きになれるバー」、そんな魅力を持っているのかなと思います。お客さん同士の交流も活発になり、どんどん店のファンが増えていってほしいです!
営業:18時~LATE
定休:日曜
住所:〒541-0054
大阪府大阪市中央区南本町3-3-23
インペリアル船場ビル2F
TEL:06-6243-6477
公式サイト:なし
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