大人気連載「ロック酒場探訪記」、今回はMichael Schenkerフリークの聖地となっている、東京中野のbar「CRY BABY」をご紹介しましょう。日本におけるMichael Schenkerは、まさに“神”であり、日本の音楽シーンにも多大な影響を与えています。スーパーギタリストは数多く存在していますが、Michael Schenkerだけは別格の存在だと断言する方もいるはず。
Michael Schenkerはドイツ人ですが、通常は英語読みの“マイケルシェンカー”と呼ばれ、フライングV(Vシェイプのエレキギター)の代名詞として世界中にフォロワーがいます。しかしこの連載ではbarの「CRY BABY」にスポットを当てる関係上、Michael Schenker自身については割愛します。さて、取材日はあいにくの雨模様。中野駅からアーケードを抜け、傘を差して少し歩くと、お店を発見!わかりやすマークがポイントです。
ちなみに私がMichael Schenkerを知ったのは、UFOの1977年のヒット作『LIGHTS OUT』でした。その後1980年の『THE MICHAEL SCHENKER GROUP』のアルバムでノックアウト。今でも「Into The Arena」を超えるロックインストナンバーには出会っていません。そんなMichael Schenkerのギターサウンドの要となっているワウペダル(ギターエフェクター)の名前が「CRY BABY」です。さて今夜はどのようなお話が聞けるのでしょうか。
京都府出身。サラリーマン時代に上京。脱サラして成功するとあるロックバーにインスパイアされ、自身も脱サラしてロックバー「CRY BABY」を2008年にオープン。日本初(世界初?)のMichael Schenker(マイケルシェンカー)をモチーフにしたロックバー「CRY BABY」は、東京中野でファンの聖地としてブレイク中。
— 中野という場所は、Michael Schenkerの公演は中野サンプラザ!というイメージと重なり、マッチングが最高ですね。
桜井:はい。Michael Schenkerの中野サンプラザ公演日は、お客さんが入り切れず、店も凄い状態になります(笑)
— 普段のお客さんは、近所の方ですか?
桜井:そうとも言えません。遠方からも来ていただいてます。終電で帰るか、始発で帰るか、taxiで帰るか(笑)。常連さんで一番遠い方は所沢です。それから出張で東京に来た方も時々来てくれます。北海道や名古屋、大阪の方など。
— ご出身はどちらですか?
桜井:京都です。仕事で上京して、もう十何年か住んでいます。
— 最初からお店は中野で!と決めていたのですか?
桜井:やはりMichael Schenkerが中野サンプラザでLIVEやりますし、交通の便と人の多さ、そして物件の家賃の安さが決めてになりました。最初に中野を偵察に来た時に、即ココ(この街で)でやろうと思いました。
— 物件はすぐに見つかりましたか?
桜井:この辺の不動産屋を回って、何度も足を運んで探しました。
— 4周年を迎えられたのですよね。
桜井:はい。今は5年目です。
— お店を始める前は何を?
桜井:普通の勤め人です。サラリーマンですね。
— 脱サラでロックバー経営ということですね。やろうと思ったきっかけを教えてください。
桜井:実はモチーフになったバーがありまして。ギターを弾いている友達の、バンド仲間のお店です。そこに連れて行ってもらったら、そこのマスターも脱サラして開いたと言うので、それからですね。
— 思い立ってからどのくらいでオープンですか?
桜井:1,2年ですね。その頃はリーマンショック以前で、こんなに景気が落ち込むとは思ってもいませんでした(笑)。出店までの準備期間は、資金とか色々なことを考えながら過ごしました。
— お店の名前はどのように決めました?
桜井:実はかなり名前は悩みました。候補がいくつかあって、最終的に「CRY BABY」に決めました。
— マークが特徴的ですよね。
桜井:店のシンボルマークは、プロのクリエーターに考えてもらいました。Michael Schenkerのイメージをどう伝えるか。そのまんまじゃないけど、わかる人にはわかる、みたいな。
— コンセプトがMichael Schenkerというのは、伝わりやすいですね。
桜井:普通のロックバーは、やるのが難しいと思いました。老舗のバーとか、カクテルがウリのバーとかに、脱サラしてやるバーが付け焼刃でやってもかなわないので(笑)、正攻法じゃなくやろうと。他に無い店をやりたかったので、Michael Schenkerだなと。
— Michael Schenker以外は、どのようなアーティストが好きなのですか?
桜井:LAメタル全盛期を通っていますので、その辺のバンドは聴いていました。でもどちらかと言うと、ギタリストがメインのバンドが好きでした。Ritchie Blackmore、Yngwie Malmsteen、Randy Rhoads。
— ギターも弾かれるようですね。
桜井:ギターは高校1年から始めました。でも、ちょっと練習してたくらいで、本格的にはやっていません。友達の家に集まってギター弾いて。上手い人が友達にいたので、かなわないというか、何か一生懸命練習をしませんでした。後悔しています(笑)。あの頃もっと弾いておけばよかった。
— 当時買ったギターはやはりフライングVですか?
桜井:いえ最初はストラトを買いました。その後、高校2年の時にギブソンのフライングVを買いました。
— 高校生でギブソンですか?今ならわかりますが、当時は珍しいですね。
桜井:アメリカにホームステイする時、バイトで貯めたお金を全部持って行きました。アメリカで買ったフライングVです。それは今でも家にあります。
— それからずっとMichael Schenkerフリークですか?
桜井:Michael Schenkerは、その後のサラリーマン時代まで、ずっと聴いていましたね。来日したら必ず観に行って。
— 脱サラしてお店を開いて、宣伝はどうされました?
桜井:Michael Schenkerの有名なファンサイトがありまして、そのサイトに、これからこういう店をやろうとしているので、ファンに紹介してくれませんか?とたずねました。そうしたら、是非という返事をもらいました。有名なファンサイトで紹介してもらったことは、効果が大きかったですね。後は口コミで広がるのを待ちました(笑)
— 逆にMichael Schenker???みたいなお客さんはいませんか?(笑)
桜井:います(笑)。ウチのお客さんは、少なくとも5割以上はギタリストなのですが、特にMichael Schenkerが好きじゃない人に、Michael Schenkerの良さを洗脳したりしています(笑)
— お店でイベントなどはありますか?
桜井:普段からギタリストが多いのと、ギターもすぐ音が出るようにしているので、自由に弾いてもらっています。イベントをする時は、この小さいスペースなので、奥に(演者)陣取ってもらい、お客さんは立ち見でやっています(笑)
閉店後は「今年、子供が生まれたばかり」とのことで、まっすぐ帰宅されるそうです。それまではギターを弾いたり飲みに行ったり、アフターがあったようですが、さすがにそういうわけにもいかないですね。「お客さん数名から、息子の誕生祝いにミニV(小さいフライングV)を頂きましたが、弾ける年齢になるまでは、店に飾っておきます(笑)」。親子でフライングVを弾く…ぜひ観たい光景です。
相当な知識を持っているマスターですが、上には上がいて「お客さんの中には、凄いマイケルマニアがいるので、教えてもらうことも多いですね」。マスターは、Michael Schenkerへ興味を持ったのは1985年頃だそう。それまでは佐野元春や大瀧詠一などの邦楽を主に聴いていた様子。なので、MSG(Michael Schenker Group)の初期の来日(1981年・1983年・1984年)には足を運べていないのが悔やまれるとか。
そして、Michael Schenkerに混じって、店内にはなぜかTHE SLUT BANKS(ザ・スラット・バンクス)のポスターが。その理由は「横関敦さんが良く来てくれるんです!」。THE SLUT BANKSのDR SKELTON(ドクタースケルトン:横関敦)も大好きなロックバー「CRY BABY」。まだ未体験の読者は、ぜひ一度足を運んで、Michael Schenkerの旋律とお酒に酔いましょう!
CRY BABY
営業:19:30~
定休:月曜(不定休有り)
住所:〒164-0001 東京都中野区中野5-50-10
TEL:03-3387-8140
公式サイト:http://www.bar-crybaby.com/
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