大人気連載「ロック酒場探訪記」。今回は、大阪・北新地にあるバー「paradox」をご紹介しましょう!大阪は濃いロック酒場が集うエリアですが、今回もとても濃いお店のようです。何でも来店するお客さんはミュージシャンが多く、ミュージシャンズバーのような存在だとか。
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北新地といえば高級店が並ぶ飲み屋街ですが、取材は営業後の午前中にお話を伺うため、明るく静かな街を歩きます。読者の方が行く時は、夜のネオンと雑踏の中を歩くことになりますが、わかりやすい場所にお店はありますので、問題ありません。
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日宝ノ-スビルを発見し、「paradox」の看板を確認。2Fへと向かいます。出迎えてくれたのはカッチンさんの奥さんであるレイちゃんと息子さん。別の連載「ママはロッカー」とのダブル取材というスタイルで、インタビューをスタートします。
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※連載「ママはロッカー:第9回レイちゃん」の記事はコチラ!
大阪枚方出身。80年代のジャパニーズメタルシーンで、エンターテイメント色の強いロックバンド、ショットガンマリッジのボーカリストとして活躍。その後、ワクチン5などを経て、V系ロックのテレビ番組でMCを務める。親友のカリスマボーカリストMを結婚保証人として家庭を築き、妻子の応援を受けながら、現在のバンドTHE FLYING PANTSで奮闘中。毎日paradoxでは、朝までお客さんを笑わせている。
カッチン:2015年で12年が経ちました。 br>
— 店内にお祝いのお花がたくさんありますね。 br>
カッチン:毎年、何周年って書いたのを頂くので、どんどん増えています(笑)。今年ももらったんですが、12周年のやつはまだライブハウスに置きっぱなしです。ライブハウスの人が重たくて持ってきてくれません(笑)。 br>
— ライブハウスにあるんですか? br>
カッチン:ライブハウスで、周年を祝った記念イベント(Paradox Sonic~パラソニ)を、毎年やっているんです。 br>
— そうなんですね。しかしこの辺はロック色が薄い場所ですよね。 br>
カッチン:よく言われます。新地のど真ん中に、なんでこんな小汚いバー!って(笑)。 br>
— ここをなぜ選ばれたんですか? br>
カッチン:嫁さんの都合ですな(笑)。 br>
レイちゃん:昔、私が新地のお店で働いていたんです。その店が無くなってしまったので、人件費のかからない小さい店をやろうと思いました。前のお店のお客さんに来てもらうには、この辺でやらないとって。その頃は結婚する予定も無かったし(笑)。 br>
— なるほど。 br>
レイちゃん:開店してから、(カッチンと)一緒にお店をやっていたんですが、結婚して、私が徐々に引退しまして(笑)。その頃から徐々にロック色が濃くなったように思います。 br>
— それまでは普通のバーだったんですか? br>
レイちゃん:そうです。赤い壁の普通のバーでした(笑)。 br>
カッチン:でも、今までロックバーと言ったことは一度もないです(笑)。 br>
— え?それは意外です。 br>
カッチン:スポーツバーとは言ったことあります(笑)。飾ってある色紙のは全部スポーツ選手のサイン(笑)。ミュージシャンは適当に書いてもらってます。トイレとか(笑)。
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— スポーツがお好きなんですね。 br>
カッチン:大事に色紙を並べているのは、スポーツ選手だけです(笑)。 br>
— カッチンさんはお店に入る前は別のお仕事をされていたのですか? br>
カッチン:いえ、14年間何もしていません(笑) br>
レイちゃん:ショットガンマリッジの後、大阪でワクチン5ってバンドをやっていて、それが解散した後に東京へ行ったんですよ、この人。大阪時代から無職で、東京行っても無職(笑)。 br>
— マジですか! br>
カッチン:仕事すんのが嫌だった(笑)。でも大阪帰ってきて、この店やるちょっと前に14年ぶりに新地で働きだして、流れでこの店をやるようになって。 br>
— 先ほど結婚を機に、徐々にカッチンさんへシフトされたということでしたが。 br>
レイちゃん:私は結婚と出産があったので、お店はできなくなりますし、この人は友達がすごく多くて、友達が来てくれたことで、すんなり私はフェードアウトできました。 br>
— 友達が多いのは素晴らしことですね。 br>
レイちゃん:この人は、今までずっと、友達に助けてもらって生きてこられた人ので(笑)。それだけでお店がなんとか今もあります。 br>
— 12年やってきてどうですか? br>
カッチン:ずっと、たくさんの友達が来てくれます。ありがたいことです。東京の友達も、大阪に来たら寄ってくれるし。とことん友達に恵まれています(笑)。 br>
— お店の終わりは、お客さんが帰るまでですか? br>
カッチン:そうですね。朝までやっています。帰らない時は、閉めずにずっとそのまま営業していることも。昨年の正月は36時間もやっていました。ずっと飲みっぱなし(笑)。 br>
— お客さんから音楽のリクエストはありますか? br>
カッチン:ウチにはレアな物があるので。それがウリでもありますね。友達関係のバンドの映像、ここだけの!ってのが山ほどあります。Youtubeとかにはもちろん出ていない(笑)。 br>
カッチン:友達が家にあった映像をどんどん店に持ってくるんで、お宝がこんな溜まってしまいました(笑)。 br>
— ギターが置いてありますが、これは使えるものですか? br>
カッチン:はい、音は出ます。お客さんが弾くというより、僕が弾いています(笑)。家ではなかなか音出せないので、お客さんが居ない時に曲作りをしています。 br>
— お客さんが来るまでは作曲されているんですね。 br>
カッチン:ギターをケース入れてしまうのが面倒くさいので、出しっぱなしにしています(笑)。自分の部屋みたいな感じですね。 br>
— 確かにカッチンさんの部屋っぽい感じがします。 br>
カッチン:しますか?やっぱり。それ本当はいけないんでしょうけど(笑)。 br>
レイちゃん:お客さんも言いますね、カッチンの部屋みたいだって。この狭くて汚いのが落ち着くとか(笑)。 br>
— お店の宣伝はどうされていますか? br>
カッチン:特に何もしてないです。口コミだけですね。フライヤーとかも作ったことないです。昔テレビの司会をやっていた時に、少し宣伝してもらったことはあります。その番組はいわゆるVisual系だったんで、V系バーって言われていたこともあります(笑)。 br>
— お店のイベントはいつからされているんですか? br>
カッチン:この店はミュージシャンが多く集まるんで、5年目くらいから何となくイベントを始めました。それを恒例行事にしたら、お客さんも楽しんでくれて、今も継続しています。 br>
— 定期イベントになったわけですね。 br>
カッチン:毎年夏にパラソニ(paradox sonic)ってタイトルでやっています。1日か2日になり3日になり(笑)。10周年のときは4日もやりました(笑)。 br>
カッチン:平均すると、ライブハウスで2日か3日やる感じです。かなりパラソニは浸透したイベントになったようで、ウチの店に来たことないのに、パラソニ出しください!って連絡きましたし(笑)。 br>
— イベントが一人歩きしていますね! br>
カッチン:100万人の身内のためのイベントなんで(笑)。 br>
— イベントに出るバンドはどのような感じが多いですか? br>
カッチン:この店がきっかけになっているケースは多いですね。お前もなんかやれ!ってお店のお客さん同士でセッションはじまって、そこからちゃんとしたバンドになったのもあります。 br>
— よく出るお酒は何ですか? br>
カッチン:よく出るのは、女の子は甘いカクテル。男は焼酎とワインかな。高級なシャンパンを頼むようなお客さんは来ないので、安い酒ばっかり頼んで長居されます(笑)。 br>
— ワインも出るんですね。 br>
カッチン:高級なワインじゃなくて、質より量みたいな感じ(笑)。ワイワイするために来る人が多いから、オーダーした酒が無くても、特に問題ないですし。別に酒が無いなら無いでええねん!みたいな(笑)。 br>
— フードはどうですか? br>
カッチン:フードは実は人気の丼ぶりとかあります(笑)。この店特製のパラ丼ってやつ。結構評判なんですが、作るのが面倒でほとんどやりません(笑)。 br>
— パラ丼のイメージがわきませんが、どんなものですか? br>
カッチン:チキンラーメン風の小袋のラーメンに、色々入れてトロミをつけたものをご飯にかけるだけですが、これが旨い!(笑)。 br>
— 旨いけど作らないわけですね! br>
カッチン:今日は無いって、もう半年くらい言い続けている(笑)。 br>
— 日曜がお休みですが、何をされていますか? br>
カッチン:店に来てくれるお客さんのライブを観に行くとか。やはりお客さんのバンドは観ておかないと。できるだけ行くようにしています。 br>
カッチン:そうですね。結構大きくガンガンかけています。 br>
— 家でも音楽は聴きますか? br>
カッチン:ぜんぜん聴かないですね(笑)。ミュージシャン夫婦の家とは思えないほど(笑)。店でアホほどデカイ音で聴いているんで、家に帰ったらテレビでスポーツ観たりしてゆっくりしています。 br>
レイちゃん:CDは店に全部置いてあるし、そもそも家のオーディオは壊れたまま(笑)。 br>
— お客さんのライブではなく、ご自身のライブの日はどうされていますか? br>
カッチン:朝まで店やって、そのままライブハウス行きます。会場入りが早い時は家に帰らず。店で少し仮眠して、リハーサルやって、ほとんど寝てなくてヘロヘロでライブ本番。ライブが終わったらそのまま店を開けます(笑)。 br>
— ハードですね! br>
カッチン:この前なんか、三日も家に帰らず(笑)。店・ライブ・店・ライブ・店・ライブで、心身ともに抜け殻のようになりました(笑)。 br>
— ライブの打ち上げもお店でされるとか? br>
カッチン:昔はライブ終わったら居酒屋で朝まで大勢の打ち上げしていましたが、最近のライブってそういうの無いですね。ライブ終わったら軽い打ち上げで終わるような。だからその後に店に来てもらうため、僕だけちょっと先に抜けて、店開けて待っているわけです(笑)。 br>
— 流れてきてもらうんですね。 br>
カッチン:ライブの後は、特にミュージシャンが大勢集まりますね(笑)。 br>
以前バンド活動をしていて、ブランクが空いているような人が、「paradox」に飲みに来て、カッチンさんと話しているうちに、再び楽器を手にするようになる、といったケースが多いとのことで、ロックの活性化への貢献が素晴らしいお店です。音楽が与えてくれるコミュニケーションの輪が、「paradox」を中心に形成されていることを確認できました。え?あの人も!といったミュージシャンのサインもたくさんあります。
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そして店名の「paradox」の由来は、レイちゃんがお店の名前決める時に「最期がエックスとかの名前が良いんだけど、何か良い単語ないかな?」とカッチンさんに聞いたところ、何個か候補を出してもらった中に「paradox」があったそうです。電話で名前が言いやすいかも、と言う理由とのことでした。
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「paradox」でのインタビュー直前に、お店の片付けをされていたカッチンさんは、「さっき(早朝)までお客さんがいて残骸が散らかっています」と言われた後、「残骸があるほど忙しかったわけでもないんだけどね(笑)」と続けられ、その最初に交わしたトークで、カッチンさんワールドにハマってしまいました。昔、芸能プロダクション吉本興業から2度のスカウトを受けたことがあると聞いて、なるほど!と納得。カッチンさんの魅力あふれるトークが「paradox」が愛されているファクターです。
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「paradox」の界隈は徒歩圏内のホテルが多く、大阪以外の人も寄りやすい場所にあります。お店の営業時間帯が遅めで朝まで飲めるので、お仕事や市内観光の後、食事をしてホテルに戻る前に寄ると、ちょうど良いのではないでしょうか。また、あえて宿を取らず、カッチンさんとたくさん話して、早朝の新幹線に乗る……というスタイルも面白いかもしれません。楽しい時間を過ごせることは間違いなし!ぜひ「paradox」へ足を運んでください。
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※連載「ママはロッカー:第9回レイちゃん」の記事はコチラ!
営業:21:30-5:30(日曜定休)
住所:〒530-0002
大阪市北区曽根崎町新地1-2-29日宝ノ-スビル2F
TEL:06-6343-9988
料金:チャージ¥500 1ショット¥600~
Website:http://shotbarparadox.fc2web.com/
カッチンblog:http://ameblo.jp/katchin/
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