REPORT2013.07.06

Voices of Rainbow 2013

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TEXT:桂伸也

2010年に渋谷のC.C.レモンホール(現:渋谷公会堂)で行われた『The Voices of Rainbow』が帰ってきた。前回に引き続きRonnie James Dio(以下、Ronnie)を除く、RAINBOWを支えた3人のヴォーカリストが集う夢の競演『Voices of Rainbow Special Live in Japan 2013』。今回は、再び集結した3名の偉大なヴォーカリストを中心に繰り広げられたこの日のステージの模様をレポートする。

1.Joe Lynn Turner & Doogie White
 
◆メンバーリスト:
Joe Lynn Turner(以下、Joe :Vocal)、Doogie White(以下、Doogie :Vocal)、梶山章(以下、梶山 :from JLT :Guitar)、永川トシオ(以下、永川 :from GERARD :Keyboards)、長谷川淳(以下、長谷川 :from GERARD :Bass)、ナカジマノブ(以下、ノブ :from 人間椅子 :Drums)

会場いっぱいに流れるファンタジックなオーケストラのしらべ。映画『オズの魔法使い』の主題歌として有名な「Over The Rainbow」だ。やがて劇中の主役ドロシーの台詞が流れる。不意にその言葉の一つにエコーがかけられ、エコーで強調して観衆に伝えられた。「Rainbow」。その言葉でSEはピタリと止まると、いよいよステージはスタートした。ステージに現れたノブがドラムを打ち鳴らすと、バンドによる盛大な「Over The Rainbow」のサビのメロディがその歓声の厚みを増幅していく。
 
そして演奏がブレイクすると梶山のギターがワイルドなリフを鳴らし始めた。「RAINBOWといえばコレ!」というくらいに有名なロックのスタンダードナンバー「Spotlight Kid」。その粋なオープニングに会場は割れんばかりの歓声を上げた。Joeがステージに登場する前から、フロアはみな我慢できないとばかりに総立ち。一気にヒートアップする会場の中いよいよ満を持してJoeが、第一声となる高らかなシャウトと共に登場した。
 
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スタートからいきなりのハイテンションを見せたメンバー達。疾走するノブのドラムを支える長谷川のベース、そして超絶技巧を見せながらも、ソロのキメではRitchie Blackmoreに敬意を表す定番のフレーズを、永川とのユニゾンでバッチリ決める梶山と、これ以上ないくらいの強力なバックメンバー。そんな彼らにまったく引けをとらないJoeの存在感。往年の風格を歌に表しながら時にメンバーそれぞれとアイコンタクトをとり、時に長谷川と絡んだパフォーマンスをしながらステージを目一杯楽しんでいる、そんな雰囲気をたたえた笑顔を表情に表し、往年のファン達を喜ばせた。
 
「コンバンワ!元気!? Nice to See you again! 」 旧友達への挨拶のような親しみを込め、Joeが観衆に語りかけた。この日を楽しんで欲しい、そんな思いが彼の言葉や、この日のパフォーマンスには表れていたように見えた。サビを観衆と共にコーラスした「I Surrender」、さらにバンドのメンバーとのコンタクトも積極的に行い、長谷川梶山とハイタッチも繰り出したJoe。そんな彼のリード振りに奮闘し、彼に負けず劣らずの歌心をギターで表現する梶山
 
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4曲目の「Can’t Let You Go」を終えると、さらにお楽しみとばかりに今度はJoeと入れ替わりでDoogieがステージに現れた。「Good evening! またここに戻ってこれてとても嬉しいよ!」再会の喜びを込めた挨拶をフロアに投げかけたDoogie。どちらかというとポップでキャッチーなナンバーが続いたJoeのセクションに対し、Doogieはブルージーでロックな、渋いサウンド指向でフロアを攻め立てた。ステージングもバンドとのコンタクトやフロアとのコール&レスポンスを楽しむJoeに対して、自分の歌のプレイに没頭するように彼はその声を響かせた。
 
そしてさらに4曲を終えると、Doogieはもう一人の「Voice of Rainbow」ことRonnieへの思いを語り始めた。スポットライトに照らされた彼の手にはメロイックサインが組まれていた。Ronnieのトレードマークともいえるそのポーズから、彼に送るレクイエムの如く流れたメロディは「Catch The Rainbow」。RAINBOWに在籍したRonnieを語る上では外せないバラードナンバーといえよう。強烈なコブシを利かせたハードロックナンバーとは対照的なこのバラードを、切々とDoogieが歌い上げていった。
 
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さらにDoogieが渾身の2曲を歌い終えると、再びJoeがステージに呼び戻された。「Hello! Do you remember me!?」「ガンバッテイコウ!」おどけながらもはしゃぐように会場を盛り上げたJoeとともに楽しいステージを演出するDoogieRAINBOWを経た二大スターがこのように競演することなど、果たして当時のファンが考えたことはあっただろうか?
 
そしていよいよフィニッシュへ。最後はRAINBOWではなく、DEEP PURPLEの曲である「Burn」へ。あまりにも有名なこのロックナンバーに興奮し狂喜乱舞する観衆達。サビでもJoeDoogieの二人が観衆とのコール&レスポンスを楽しむ。文字通りの完全燃焼で、フロアからの盛大な拍手と歓声と共に、ファーストステージはエンディングを迎えた。
 

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◆公式サイト
Joe Lynn Turner
http://www.joelynnturner.com/index.php
Doogie White
http://www.doogiewhite.com/
◆セットリスト
M01. Over The Rainbow
M02. Spotlight Kid
M03. I Surrender
M04. Can’t Let You Go
M05. Death Alley Driver
(Doogie White in)
M06. Wolf To The Moon
M07. Black Masquarade
M08. Hall Of The Mountain King
M09. Catch The Rainbow
M10. Street Of Dreams
M11. Can’t Happen Here
M12. Power (with Doogie White)
M13. Kill The King (with Doogie White)
M14. Burn (with Doogie White)

2.ALCATRAZZ featuring Graham Bonnet
 
◆メンバーリスト:
Graham Bonnet(以下、Graham :Vocal)、Howie Simon(以下、Howie :Guitar)、Tim Luce(以下、Tim :Bass)、Bobby Rock(以下、Bobby : Drums)

しばしの休憩から続いて登場したのは、Graham率いるALCATRAZZ。「Hello!」活気を見せる第一声から繰り出されたのは、2010年開催時と同じM.S.G.Michael Schenker Group)の「Assault Attack」。「Voices of Rainbow」という主旨からは外れるが、RAINBOWという大舞台を踏んだあともM.S.G.Impellitteri、そしてこの ALCATRAZZとロック界でも光輝く場所を歩いてきたGrahamだけに、その軌跡をたどる意味でもこの選曲は興味深い。ロックスタンダードとしてRAINBOWのナンバーに負けず劣らずの存在感を示すこの曲に、観衆も興奮の色を隠せなかった。
 
オールバックのヘアスタイルにサングラス、真っ白のTシャツにGパンとあまりにもラフなGrahamのスタイルは、ロック然としたJoe達のファッションとは対照的だが、彼だからこそこのスタイルは許された。というより彼はこのようなスタイルでないとGrahamと認めてもらえないというくらいにその風貌がぴったりと彼の雰囲気に合っていた。「Thank you! Come on! Sing louder!!」彼が叫ぶ。JoeともDoogieとも違う彼のパフォーマンス。彼は、会場の観衆と一体となり曲を盛り上げていった。
 
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様々なメンバーチェンジを経て現在に至るALCATRAZZの現メンバーも強力だ。中でもギターのHowieは、目まぐるしく曲により変わるプレイスタイルをまったく難なくこなしてしまうテクニシャン振りを発揮。時にMichael Shenker、時にYngwie Malmsteen、またある時にはSteve Vaiと、スタイルもサウンドも違うそれぞれの曲を、Grahamのパフォーマンスにピッタリと溶け込むようにプレイ。逆にいえば、様々な遍歴の中で、歴史に名を残したギターヒーローと行動を共にしたGrahamだけに、これほどのスペシャルなプレイが出来なければギタリストとして務まらないのだろう。
 
RAINBOWの曲をやるぜ!」Grahamが観衆に語りかけ、4曲目にしていよいよRAINBOWナンバー「Loves No Friend」がプレイされる。今度はRitchie BlackmoreとなったHowie。そのギターからかき鳴らされたリフは、先程プレイされた「Island In The Sun」「God Blessed Video」と、ポップなALCATRAZZのナンバーとはまったく性質の違うブルージーな雰囲気を漂わせる。このような曲による対比が楽しめるのも、Grahamのステージならではといってよいだろう。
 
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歌の合間にもじっとしているときがなく、常に動き回っては観衆をあおり、そして観衆に言って聞かせるようにメロディを発するGraham。観衆と共にライブを作り、そして楽しむようなスタイルは彼の持ち味。若かりし日に見えた勢いよりも、様々な経路をたどった経験で得た余裕と度胸こそが、この日の彼のステージで観衆を沸かせた。
 
Howieのギターソロから「Eyes Of The World」をはさみALCATRAZZのナンバーからいよいよクライマックス。「Welcome to the party tonight! This is the rock’n roll party!」Grahamの叫びからラストスパートが掛かった。続けて「Since You Been Gone」、「Lost In Hollywood」とプレイされた曲はRAINBOWファンにはたまらないメインディッシュ。だがラスト前にプレイされた「Dancer」はまた格別。M.S.G.の楽曲だが、この曲が日本でプレイされたのは、実はこの日が初めてだったという。スペシャルなこの夜に相応しいスペシャルなセットは会場をさらに興奮させ、盛況のうちにステージを終了させた。
 
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鳴り響く拍手でアンコールをせがむ観衆。そこに出てきたのはHowieTim。おどけるようにギターとベースで、映画『JAWS』のテーマイントロを奏で、「何が出てくるのかお楽しみ!」とばかりに観衆の期待をさらにあおった。やがて登場したGrahamは遂にJoeDoogieもステージに呼び込み、この日最大の「夢の時」がスタートした。曲は2010年のセットと同じく「All Night Long」。個性的な3人のヴォーカリストの歌と、時には3人で奏でられたコーラスを存分に堪能できる時がそこに現れた。曲がブレイクすれば「I wanna live you~!?」「I wanna live you!」とサビを三人三様でコール&レスポンスが行われ、さらにエキサイティングな瞬間を演出。
 
そしてラスト曲「Long Live Rock’N’Roll」へ。イベントを締めくくるにあたり避けられないそのナンバーを、会場の観衆全体が揺れながら堪能する瞬間。ステージはさらに興奮し、仕舞いにはDoogieがステージを降り、フロアを駆け回りながら熱唱を続ける始末。それを「しょうがねえなあ」と苦笑いしながらステージを楽しむGrahamJoe。サビはもちろん、ステージ、観衆合わせて大きな声でコーラス。素晴らしい夢の時は、こうして幕を下ろした。
 

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◆公式サイト
Graham Bonnet
http://www.grahambonnet.com/
ALCATRAZZ featuring Graham Bonnet
http://www.alcatrazz.org/
◆セットリスト
M01. Assault Attack
M02. Island In The Sun
M03. God Blessed Video
M04. Loves No Friend
M05. Stand In Line
M06. Guitar Solo – Eyes Of The World
M07. Will You Be Home Tonight
M08. Only One Woman
M09. Big Foot
M10. Jet To Jet (Incl. Drums Solo)
M11. Skyfire
M12. Since You Been Gone
M13. Dancer
M14. Lost In Hollywood
-encore-
E01. All Night Long (with Joe & Doogie)
E02. Long Live Rock’N’Roll (with Joe & Doogie)

イベントが終わっても、冒頭に流れた「Over The Rainbow」のフレーズがいつまでも頭の中に響いていた。様々なメンバーチェンジを経たことはバンドにとっては苦難の道ではあったが、今こうして様々なスタイルのヴォーカリストのパフォーマンスを一度に見てみると、まさに虹の如く多彩なスタイルがそこにはあった。彼らがハードロックの一つの原点であることは、今尚彼らのステージが輝いて見えることからも分かることだろう。
 
余談だが、かつてGrahamが参加したImpellitteriのファーストアルバムには、この「Over The Rainbow」が収録されていた。この曲が収録されたことと、この楽曲が採用されたことが直接結びつくエピソードはないが、いろんな意味を考えさせられる。RAINBOW登場以降、「虹の彼方」を目指し、多くのハードロック/ヘヴィメタルミュージシャンが現れた。他のロックレジェンドといえるべきバンド同様、やはりこれだけの素晴らしいヴォーカリストがいたRAINBOWも、ロックの一つの指針となる重要なバンドだ。筆者は、直接はRAINBOWは通過しなかったが、どこを見てもその虹の影は存在していることを認識した。そんなことを改めて感じたイベントだった。
 

東京音協主催 今後のライブ予定
 
HIBRIA JAPAN TOUR 2013 
6月26日にニュー・アルバムを発表するブラジルのパワー・メタル・バンド「HIBRIA」の来日公演が決定!

日時及び会場
9月1日(日)大阪:梅田クラブクアトロ
OPEN 5:00PM / START 6:00PM
前売¥6,500(税込・スタンディング・ドリンク代別途)

9月3日(火)名古屋:ボトムライン
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥6,500(税込・スタンディング・ドリンク代別途)

9月4日(水)東京:Shibuya O-EAST
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥6,500(税込・スタンディング・ドリンク代別途)


FAIR WARNING JAPAN TOUR 2013 
ドイツが生んだメロディアス・ハード・ロックの最高峰「FAIR WARNING」。
最新アルバム『SUNDANCER』を発表し、3年半ぶりの来日公演決定!

日時及び会場
2013年7月21日(日)東京:品川プリンスステラボール
OPEN 5:00PM / START 6:00PM
前売¥7,500(税込・1Fスタンディング)

2013年7月23日(火)名古屋:ボトムライン
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥7,500(税込・スタンディング・ドリンク代別途) 

2013年7月24日(水)大阪:梅田クラブクアトロ
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥7,500(税込・スタンディング・ドリンク代別途)


TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA『THE MYSTERY WORLD TOUR 2013』 
TOBIAS SAMMETが主宰する壮大なメタル・オペラ・プロジェクト「AVANTASIA」。
今回も豪華なラインナップで来日公演決定!世界中のファンを魅了する必見のライブ!
● 来日予定メンバー
Tobias Sammet (Edguy, Avantasia):Lead Vocals
Michael Kiske (ex- Helloween, Unisonic):Vocals
Eric Martin (Mr. Big):Vocals
Bob Catley (Magnum):Vocals
Ronnie Atkins (Pretty Maids):Vocals
Thomas Rettke (ex- Heaven’s Gate):Vocals
Amanda Somerville (Trillium):Vocals
Sascha Paeth (ex- Heaven’s Gate):Guitar
Oliver Hartmann (ex At Vance):Guitar, Vocals
Michael“Miro”Rodenberg:Keyboards
Andre Neygenfind:Bass,Backing Vocals
Felix Bohnke (Edguy):Drums

日時及び会場
2013年7月10日(水)東京:品川プリンス ステラボール
OPEN 6:00PM / START 7:00PM
前売¥8,500(税込・1Fスタンディング)



お問合せ:
東京音協 03-5774-3030

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