本誌インタビュー特集「ROCK ATTENTION 13」でもご紹介したMADBEAVERSが、初の吉祥寺GB公演!その対バン相手は、SHINのソロプロジェクトBLOODだ。男の色気が終始飽和状態のステージをレポート!
外の寒さとは対照的に、開演前から熱気を帯びた会場。青い無機質な無人のステージからゴールドの光の破片が物憂げに乱舞する。おしゃべりしながらもひたすらステージを気にしている女性たち。パイプと赤いサイレンの装飾やスケスケのトイレットがいかにもロックに似つかわしい吉祥寺ROCK JOINT GB。心なしか長い髪の綺麗な女性が多い。
午後7時を少々回り、不意を突くように客電が落ちる。待ちに待った、SHIN(Vocal & Guitar)率いるBLOODの登場だ!SHIN(鈴木慎一郎)は1995年にメジャーデビュー。CRAZEのヴォーカリストとしても名を馳せた。そのSHINが2001年に立ち上げたソロプロジェクトがBLOODだ。6年の活動後、2007年に事実上の活動停止となっていたが、昨年末に9年ぶりに初期メンバーが結集。5年ぶりに発売したニューアルバム『JUDGE』を引っさげての今日のライブだ。
ISAO(Guitar)のギターが低く唸る。驚きと悲鳴の入り混じった中でSHIN(Vocal & Guitar)の「楽しんでいこうぜ!」の一言を合図に、会場は一気に怒涛のビートロックの渦に一変。1曲目は「JUDGE」。ニューアルバムのタイトル曲でのオープニングとあって、ファンの歓喜はただごとではなく、客席は1曲目から既に佳境の様を呈していく。
SHINの長身がしなる。音が止まると、空中に髪がフワリと浮く。次の瞬間にはもう叫んでいる。切れ目なく猛烈なスピードでなだれ込む「WILD TRUE DREAM」。そして3曲目の「腐れ外道の汚ねえ吐いた唾」で身も心もとろけさせられる。メランコリックな切れ目ないメロディラインにいい意味で悪酔いさせられていると、次の瞬間には感傷など叩き潰すような激しいビートの嵐、骨の髄までビリビリと感応させられる。SHINの音程のしっかりとした伸びやかなヴォーカルがこんなにも退廃的な楽曲を操れるなんて。泣きたくもないのに涙の出る場所に食い込んでくるような楽曲。赤と黒に入れ代わる照明にも眩惑されて、3曲目にしてすでに鳥肌が出たのは私だけではないだろう。
既にライブ終盤のような盛り上がりを見せる会場を鎮めるように、SHINの優しげなMCが入る。なんと今年38歳ということで、自虐ネタ「サンパチ先生」を連呼。激しい動きを止めてファンに語りかけるときの笑顔がまたカッコいい。そして後ろに陣取って満足げに見つめる男性ファンに捧げるかのように、「クソガキのためにつくった」、4曲目「WARUGAKI」。「ワルガキのままでいいさ」というサビのリフレインにSHINの生きざまが垣間見える。
5曲目「カヤノソト」、6曲目「NEVER SAY NEVER」では観客席との間の鉄柵に片脚をかけて熱唱。会場全体を心地良いランナーズハイのような状態に導いたところで、再度MC。2007年の活動休止を経てなお聴きつづけてくれるファン、そしてバンドメンバーに向けて、SHINからシンプルな、本物の感謝の言葉が贈られる。「ロックを愛する気持ちで成り立ってる」という言葉が印象的だった。
そして「いちばん大事にしているバラード」として久しぶりに歌われた名曲「ANOTHER」。Dr.SHUEの重低音のリズムが刻まれる中、「激しく愛した時もこれからも」、「魂が終わる時も」、決してロックを愛する仲間を、ファンを、そしてロックヴォーカリストである自分を手離さない、そんな決意が振り絞る声に現れていた。立ち尽くす観客。この日はツーマンだったため、BLOODを初めて観るという観客もいたかもしれないが、SHINの歌唱力と厚みのある演奏に、誰もが聴き惚れていた。
歌い終わって少し間が空いてから、夢から覚めたような拍手。すると口の端がニヤリと上がったかどうか、錯覚だったかもしれないが、勢いよくDr.SHUEのドラムソロがスタート!Dr.SHUEこと酒井愁、ロック好きにはたまらないベテランドラマー、布袋寅泰や土屋アンナのステージでも知られている。手数・足数の多さ、パワーやテクニックなんて、そんなものは当然の代物だと言わんばかりに、ビートを操る凄いドラマーだ。
そこにギターがベースが絡み、さらに暴れまくる後半戦! 「Boogie」、「S.I.C.K」、「LOST」と容赦ない縦ノリのロックが続いていく!観客席との鉄柵に脚を乗せっぱなしのSHIN、その脚にしがみつく女性ファン、きらめきながら落ちる大粒の汗、煽る声、応える声。途中、いきなり声を低くして「隙間、気になる」と観客席を指差すSHIN。なにやら不穏な企みを感じて女性陣は動きを止め、SHINの「ロックは何やったっていいんだ。でも、ケガするな?女の子は守れ?」、低く優しいやんちゃな声で突然ダイブシーンが繰り広げられる。
転換時に観客に取材したのだが、18年来のファンだという女性がSHINの魅力はまっすぐなところだと語ってくれた。陳腐な言葉だが、「本当だ、本当にまっすぐな人だ」とこんな荒々しい怒涛の後半戦の最中で思わずにいられなかった。どれだけロックが好きで、どれだけロックに愛されている男なのか。そんなSHINの野生に目覚めたかのようなシャウトに、まるで刃物のような鋭いギターとベースのアンサンブルが襲いかかる。ヘヴィなドラムのビートに揺られて、会場は完全にトランス状態!それは異世界へと魂を連れ去ってしまうかのよう。
そして12曲目となるラストはファンにはおなじみの「dear my friend」。「僕らの未来は輝きに満ちている」と歌いあげる、ラストにふさわしい爽やかでメロディアスな楽曲だが、最後までリズムは破壊的な威圧感を保っていた。「裸の魂ぶつけあうとき何かが生まれる」、そんな歌詞を体現しているのがまさにこのBLOODだ。常に全身全霊、最初から最後までまっすぐに暴走しきってくれるこんなロックバンド、なかなかないのではなかろうか。「実力が人気に先行している」と評していたファンがいたが、本当にそうだと思った。もっと多くの人に聴いてほしい。
最後にはSHINとDEEN、男同士の抱擁を見ることができた。ロックスターはいろんなものを背負ってなんぼ、SHINは背負ってまっすぐに生きている男なんだと感服させられた。同世代だけでなく、若い人にも見てほしい、そしてぜひワンマンで見たいバンドであった。
M01. JUDGE
M02. WILD TRUE DREAM
M03. 腐れ外道の汚ねえ吐いた唾
M04. WARUGAKI
M05. カヤノソト
M06. NEVER SAY NEVER
M07. ANOTHER
M08. I can’t feel
M09. Boogie
M10. S.I.C.K
M11. LOST
M12. dear my friend
何の前触れもなく、3つの細身のシルエットが蒼くたゆたうライトの中にふらっと現れた。そして次の瞬間にはもう、3ピースとは思えない密度の大音響が会場を包み込む。MADBEAVERSの登場だ。互いの呼吸を再確認するかのように黙々とそれぞれの楽器を奏で始める、Kiyoshi(Vocal & Guitar)、EBI(Bass)、JOE(Drums)。薄暗いライブハウスに最初に響き渡るのは「WOLF」のスピーディーなリズムとどこかエキゾティックなメロディライン。Kiyoshiのうめき声にEBIのコーラスが巧い具合に重なる。飾り立てる必要などない。敢えて肩に力を入れることをやめた、大人の男たちのオープニング。淡々と歌い、演奏しているのに、一音一音の強さと一体感がすでに会場を圧倒的に支配している。抜け駆けとも言える高速ドライブの幕開けだ。
一転、2曲目「GALAXY WAY」はしびれるギターサウンドから始まり、サビに向かって心地良い高揚感が広がるロックらしい楽曲。Kiyoshiの細く硬く伸びる高音が韻を踏んだ歌詞を歌い上げ、会場の熱をじわじわと引き上げてゆく。
一瞬の隙もなく、3曲目は「MAD STAR」。Kiyoshiのシャウトに観客は腕を振りあげ、3人の音のトリコと化す。間奏でドラムとベースに音を絡ませるのを楽しむように横を向くKiyoshi、その横顔の美しさはまさに「悲劇のMADSTAR」さながらだ。そして低音を鮮やかに駆使してバンドの底を支えるEBIの素知らぬ顔、パワフルでありながらしなやかな華を持つJOEの切れ長の瞳。凄いメンツが組んでいるんだ、と改めてまざまざと思い知る。本物の音。本物の男たち。とにかく抜群にカッコいいバンドだ。
MCなんて必要なかっただろ?と言わんばかりの有無を言わせぬ凄いスピードで3曲を終えて、Kiyoshiの短いMC。セリフの終わりにギターをかぶせて、観客を休ませることなく、4曲目は新曲の「SHALALA」。のりやすく覚えやすいナンバーで観客はすっかりご機嫌だ。さらに「A walk in the sky」、「太陽のEDGE」とファンに人気のナンバーが続く。
7曲目「MORNING GROLY」は3人の音がしっかり聴き分けられる心地よい楽曲。昨年夏のアルバムに収録された、ライブではおなじみの曲だ。「MORNING GROLY」=「朝顔」という名のさわやかでピュアなナンバーに観客たちは力を抜いて思い思い、存分に体を揺らして楽しんでいる。そして後半に入る前に、ゆるやかなMC。「自由に勝手に酒でも飲んで」とささやき、会場のなじみのPAに感謝を述べてはギターをがなりたてるKiyoshi。本当に自然に楽しんでいて、ロックのことしか考えていない、根っからのロッカーがそこにいる。
後半は陰と陽が交互に点滅するかのようなセットリスト。「嵐の夜」の王道のロックテイストで心臓を圧迫されたかと思うと、9曲目「ANGELA」は眩しいほどの美しいメロディライン。一度聴いたら忘れられないせつなげなサビのメロディライン、せつないのに誰もが体を振動させずにいられない。観客はもうそれぞれに陶酔しきって、周囲のことなど目に入らず、思い思いのやり方でMAD BEAVERSとコミュニケイトしている、そんな感じだ。続く「DAZZLIN」はイントロの音の切れ間に、きしむギターが何とも言えず色っぽい。Kiyoshiの歌声も心なしか艶を増していく。
そして「BLACK SUNSHINE」。走るビートに乗った明るい曲調に、それと裏腹な狂気を秘めた歌詞がかぶる。気づいたらKiyoshiは天使の翼を刻んだ白い背中に、真っ白なライトを浴びている。端正な顔立ちで少年のような裸体をさらすKiyoshiはもう無邪気な堕天使にしか見えない。癖になる歌声。そこにEBIのベースが渦を巻き、JOEのドラムが全力疾走する。
目の眩むようなアグレッシブな一体感、この日何度目かのギターのピックも投げられ、汗を浴びたKiyoshiの姿にロックほど楽しいものはこの世にないという確信を植えつけられる。そしてラストの「RISE」。最高潮の会場に旅立ちの曲が鳴り響く。全部で12曲とは思えない、あまりにも短く感じられたこの日のステージ。一切隙間のない音の世界を堪能した観客は、諦めきれずにアンコールを呼びかける。
そんなファンの声に応えて3人が再び登場。歓声の中、敢えてファンの前でアンコール曲の相談。Kiyoshiがわざと激しい曲を提案すると、2人のクールな表情が一変し、会場に笑いが起きる。Kiyoshiが飲み干したスーパードライの缶を優しく放り投げる。そんな和やかなムードの中で、全員40代後半とはとても思えぬパワーで最後に「SPUNKY」を披露。こんなにもドラム、ベース、ギターの一音一音を滑らかにパワフルに体に叩き込まれ、なおかつ酔わせてくれるライブに参戦できて、観客たちはさぞ幸福感に満たされ、ハイテンションだったことだろう。
ライブ終了後、しばらくしてステージから下りてきた3人。集まったファンへの謝辞を述べた後、ドリンクを手に興奮冷めやらず語り合う彼らの顔は、一様にすっきりとした笑顔だった。好きなことを、とことん真剣にやっている男たちの掛け値なしにカッコ良いライブ。MADBEAVERSの快進撃は止まらない。
M01. WOLF
M02. GALAXY WAY
M03. MAD STAR
M04. SHALALA
M05. A walk in the sky
M06. 太陽のEDGE
M07. MORNING GROLY
M08. 嵐の夜
M09. ANGELA
M10. DAZZLIN
M11. BLACK SUNSHINE
M12. RISE
-encore-
E01. SPUNKY
http://madbeavers.com/
◆インフォメーション
・2013年03月08日(金)【名古屋】CLUB UPSET
・2013年03月09日(土)【豊 橋】club.KNOT
・2013年03月24日(日)【代々木】Zher the ZOO
※3/24はワンマン公演
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