2012年10月27日に東京・赤坂ブリッツで、筋肉少女帯をゲストに迎えて華々しくスタートした、すかんち結成30周年ツアー。札幌・仙台・名古屋・福岡・大阪の全国5都市を巡って、ついにここ渋谷公会堂(以下:渋公)でツアーを締めくくった。17年ぶりに帰ってきた舞台には、2009年11月に事故で重症を負って以来、リハビリを続けるShima-changも参加。すかんちの歴史に残る、感動のワンマンライブの模様をレポート!
渋公に到着すると、折り返しができるほどの長蛇の列に一瞬びっくりしたが、会場への入り口とは別に、場外に設けられたグッズ売り場に並ぶファンの列だった。ライブ会場限定販売の30周年記念セルフカバーアルバム『30th』や、ガチャガチャ缶バッジ、特製トートバッグ等お目当ては無事にゲットできただろうか(この列は終演後にも再び長く長く伸びていた。好評につき、通販もスタートするとのこと)。会場に足を踏み入れると目に飛び込んできたのは、緞帳の下りていないステージにドーンと掲げられた「SCANCH 30th」のロゴマーク。そして一段高い台の上に乗ったドラムセットや、左右2台のキーボード、アンプやマイク等のセッティングがそのまま見渡せた。
それぞれにすかんちへの想いと期待で胸いっぱいのお客さんの、適度な緊張感と和やかな雰囲気が入り混じった会場内に、客電がついたままSEが流れ出したのは、午後6時を10分ほど過ぎた頃。オーディエンスは曲に合わせて手拍子しながら、次々と立ち上がって、早くもスタンディングの体勢を整え始めた。客電が落ち、まもなくメンバーがステージ上に現れると、待ってましたの大きな拍手と歓声が沸き起こり、1曲目「OK!Baby Joe」が始まった瞬間から渋公は総立ちに!
ツアー初日のブルーの衣装とは同じ型で色違いの、超スリムなボディにぴったりしたシルエットの真っ赤なジャンプスーツで登場したROLLY(Guitar & Vocal)をセンターに、小畑ポンプ(Drums)、ドクター田中(Keyboard & Vocal)、小川文明(Keyboard)、佐藤研二(Bass/マルコシアス・バンプ)という面々がステージに揃った。ROLLYの歌声と、それに続くコーラスワークが会場のテンションを一気に上げる。安定した力強いドラムに乗って、キーボードのアレンジも華やかな、ポップなロックンロールが鳴り響く。2曲目「恋のT.K.O.」のイントロで再び歓声があがり、客席は手拍子しながら楽しげに揺れている。高らかに奏でるROLLYのギターソロが、これまた抜群に気持ちイイ。照明も素晴らしくリズミカルで、迫力のドラムにバッチリ合わせて、キラキラしたライブをさらにショーアップさせていた。
メンバー紹介のMCの後、17年ぶりの渋公に「感無量やね」というROLLY。「その間に渋谷公会堂さんも違う名前になっていたりとかして…」「また演奏することができてうれしいです」と挨拶。曲を挟んで次のMCでは、何年か前にKISSの再結成コンサートを観に行った話をして「その時、僕は思ったね。バンドと一緒にお客さんも…年をとったのね」すかんちを長く観てきたお客さんから拍手と笑いが起きる。「悪いことじゃないです、これから日本は高齢化社会ですからね。身体にやさしいコンサートを。無理しなくていい、気合いも入れなくていい。座りたかったら座ればいいんですよ」に続けて「どうぞお座りなさい!」とROLLYは叫んだ。けれどその直後に演奏した、ベースのブイブイうねるグルーヴが光るロックナンバー「ウルトラロケットマン」を始めキラーチューンの連発に、オーディエンスは座るヒマもなく、スタンディングのまま終演まで盛り上がり続けたのは、言うまでもない。
「50才にして若さを取り戻しました、すかんちの英雄、ドクター田中!」とROLLYが紹介すると会場から「ドクター!」の声援が次々に飛ぶ。ここからドクター田中のコーナーの始まり。開口一番「まだ5曲目。足はガタガタ、手は震えて胸はドキドキ、息はあがって…やだな」で場内大爆笑。以前からライブでROLLYが、50才60才になっても(続けていく)!と叫ぶ度に隣で「体力的に無理ちゃうかなぁ…(もう一人のキーボードの)小川さんもいるしそこはなんとか…」と弱気になっていたというドクター田中だが、一転して明るい口調で「今日やってみたら全然平気やわ!」「一番最初に(すかんちを)脱落すると思ってたでしょ?違う、俺、不死身やわ」「たぶん最後までやってるの俺やわ。一人でも“すかんち”って」と頼もしい言葉を連発。「…とは言いつつも今夜で最後かもしれない…という思いを込めてこの曲で燃え尽きます!」曲はドクターがメインボーカルを務める「恋人はアンドロイド」へ。ハンドマイクでステージ上を暴走するドクター田中とノリノリのサウンドに、オーディエンスも熱狂!ROLLYのギターソロも最高!曲が終わると、言葉通りに燃え尽きたドクター田中は、ドラムのそばに倒れ込んでしまう。救急車のサイレンの音と共に、白衣姿の救急隊2名に両脇を抱えられて、爆笑の中、ドクター田中はステージから退場。
暗転した会場にピアノのメロディが流れて、ROLLYのナレーションが響く。そして、ドラムがQUEENの「We Will Rock You」のリズムを叩き出すと、オーディエンスから手拍子が起こる。そして「ご紹介いたしましょう。帰ってまいりました、Shima-chang!」
「SCANCH 30th」のロゴマークの看板が後方に下がり、ドラムセットが大きく左側に移動するとそこに現れたステージに、天使の羽根のついた車椅子に乗ったShima-changがせりあがってきた。それは神々しいほど眩しい降臨でもあり、アイドルの登場のごとく可愛らしくもあった。その場にいたみんなの目に涙がこみ上げ、同時に安堵の笑みが広がるように感じられた。ナース姿のスタッフに車椅子を押され、一緒に白衣姿のドクター田中も付き添うように再登場。ステージ中央に到着したShima-changの第一声は「帰ってきました~!すいませーん。生きてます~!」花をあしらったヴェールに金髪、派手なステージ衣装もメイクもその口調も、以前と変わらないShima-changがそこにいた。「ごめんなさい、がんばってます~。みなさん、ありがとぉ!ありがとぉ!」いくつもの“お帰りシマチャーン!”という声援といつまでも終わらない拍手。後ろからROLLYがこっそり客席を煽り続ける。
「どうもどうも、夢みたいです。もうね、あの(事故からの生還の)後はパラダイスなんです。楽しくて楽しくてしょうがないのよ、全部が」。そしてついにトイピアノが奏でるイントロが始まると、ロリポップな「Sugar Sugar Baby」、スペース・ロック・オペラの「好き好きダーリン」を唯一無二のロリータヴォイスで熱唱!ナースさんが押す車椅子でステージを右に左に移動しながら、右手で楽譜を押さえ左手を上げて声援に応えるShima-chang。バンドの音にもメンバーからの大きな愛を感じずにはいられなかった。2曲を歌い終えて「さいなら、ばいばいきーん!」と明るく手を振る後姿に、心からの拍手が惜しみなく送られた。
ステージは一転して、ダークな雰囲気が漂い始める。濃厚なプログレッシブ・ヴァージョンのはっぴいえんど「かくれんぼ」のカバー。エンディングで魅せた長めのインプロヴィゼーションは、まさに圧巻のプレイ。続く「スローソンの小屋」では、小川文明&ドクター田中両キーボーディストが楽器をギターに持ち替えてのパフォーマンス!最後はBlue Oyster Cultの「Godzilla」へと流れ込む予定外の展開のオマケ付き(アンコールのMCでROLLYは「わしだけこの曲をやるのを知らなかった…」と明かした)。「必殺のハードラブ」では、ドクター田中がなんとリコーダーを聴かせた。
手塚治虫の「火の鳥」をモチーフにした名曲「ロビタ」では、壮大なスケールを感じさせる演奏で会場を感動の渦に。「今回ツアーをやって、改めましてすかんちの楽曲はとてもいい曲だなと再認識しました」とROLLY自身も序盤のMCで言っていたけれど、2013年の今ライブで聴いてしびれるようなパンチ力を、年代を問わずどの楽曲からもビシビシと感じさせられた。ROLLYが紙ふぶきのようにお札を頭上にバラまきながら歌う「恋の1,000,000$マン」で本編が終了。
アンコールで再登場したROLLYによると、この公演は5月末にライヴDVDとして発売するために収録をしていたらしい。「いろいろハプニングがあって観るのが怖いな、ベソをかいてしまった(苦笑)」とのことなので、発売されたら要チェックを!アンコール1曲目は、燕尾服姿で、時にシルクハットから鳩(の人形)を出し、時に赤のスカーフを白にかえるプチ手品も披露した、小川文明がリードボーカルの「MANGO JUICE」。弾けるパフォーマンスに、大盛り上がりのオーディエンス。ROLLYは「30年以上、ロックンロールをやってきたけどサイコー!でもまだまだ。まだまだロックンロールは終わらないぜ!」と叫ぶと、最後は再びShima-changをステージに呼び込んで「とにかくよかった。よかったよ本当に」としみじみ。そして「音楽は最高だ!音楽が人と人をつなげるし、心をひとつにする」と語った。「それでは我々のヒット曲…みたいなものを。いや、リバイバルヒットもありうるぞ。もし我々が武道館公演をしたら、みんな来るかね?その時は自慢してもいいはずだ。渋谷公会堂にも行った、ってな!他のみなさんは新参者だ。仲良くしてやってくれ!」ROLLYらしい言い回しに笑いが起こる。
ラストは、オーディエンスも大合唱の「恋のマジックポーション」で大団円。すべてをやり切ったメンバーが全員ステージ中央に集まると、とうとう泣き出したShima-chang。もらい泣きの客席。メンバーはお客さんに向かって何度もカーテンコールを続けた、この瞬間が過ぎ去ってしまうのを惜しむように。一人ずつステージを去り、最後までステージの端で深々と頭を下げたROLLYの姿に胸を打たれた。きっとみんなこの日の渋公を忘れないだろう、そしてすかんちの武道館公演がいつか実現する日まで願い続けるに違いない。
M01. OK!Baby Joe
M02. 恋のT.K.O.
M03. Mr.タンブリンマン
M04. ウルトラロケットマン
M05. 恋するマリールー
M06. 恋人はアンドロイド
M07. Sugar Sugar Baby
M08. 好き好きダーリン
M09. かくれんぼ
M10. スローソンの小屋
M11. 必殺のハードラブ
M12. 恋は最後のフェアリーテール
M13. ロビタ
M14. 恋の1,000,000$マン
-encore-
E01. MANGO JUICE
E02. 恋のマジックポーション
http://www.rollynet.com/
◆ROLLY オフィシャルfacebookページ
http://www.facebook.com/rolly.official
◆ツアーファイナル記念グッズの通販開始!
http://www.rocket-exp.com/m/arti/artiItm.php?site=R&ima=2742&cd=234701
◆インフォメーション
・2013年03月08日(金)【赤 坂】BLITZ
※谷山浩子×THE 卍×石井AQとしての出演
・2013年03月09日(土)【代々木】Zher the ZOO
※THE 卍としての出演(Vo.&Gt.Rolly/Ba.佐藤研二/Dr.高橋ロジャー)
・2013年03月10日(日)【代々木】Zher the ZOO
※THE 卍としての出演(Vo.&Gt.Rolly/Ba.佐藤研二/Dr.高橋ロジャー)
・2013年03月20日(水祝)【横浜】BLITZ
※谷山浩子×THE 卍×石井AQとしての出演
◆関連記事
【レポート】すかんち結成30周年 ゲスト:筋肉少女帯
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【レポート】「夕方のヒットスタジオR&N !?」人間椅子×RockRolly
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【レポート】『クリンドルクラックス!』
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