• TOP>
  • REPORT>
  • LIV MOON LIVE 2012「THE END OF THE BEGINNING」

REPORT2013.02.09

LIV MOON LIVE 2012「THE END OF THE BEGINNING」

Banner

TEXT:桂伸也 PHOTO:ヨコマキミヨ

昨年秋にアルバム「THE END OF THE BEGINNING」をリリース、その世界観をまた新たな方向に広げたLIV MOONが、この日リリースに伴うライブ・ステージを敢行した。今回はその模様をレポートしよう。先日BEEASTの『Watch the Outside! CASE 2 AKANE LIV(LIV MOON)~表現の境界を越えて』でも、そのライブのイメージは「シアトリカルな感じの雰囲気」「オープニングから『え?こんな風に始まるの?』と思わせる」「物語の世界に入っていける感じ」と、AKANE LIVが語ったその新たな趣向には興味が尽きない。果たしてどのようなステージとなるのか?その秘密がいよいよ明らかになった。
 
広大なステラボールのフロアには、真っ赤な座席が並べられ、ロックコンサートというよりは演劇が行われる講演会場。集まった観衆も、根っからのロックファン、メタルファンと合わせて、金曜日の夜ということでスーツ姿の観衆とさまざまなファンが集い、彼女らの登場をみな待ちわびた。
 
◆メンバーリスト:
AKANE LIV(Vocal)、西脇辰也(以下、西脇 :Keyboards)、MASAKI(Bass)、大村孝佳(以下、大村 :Guitar &Vocal)、前田秋気(以下、前田 :Drums)

Photo Photo

Photo Photo Photo Photo

SEは波の音に変わり、ゆっくりと会場が暗転した。そして、ステージ前面に張られた薄い幕にAKANE LIVのシルエットが映し出される。突然、一気に幕は落ち、いよいよLIV MOONが織りなす物語の世界がスタート。虫の音、笛の音、ハープ、ストリングス、そして盛大に広がるクワイア。ニューアルバムの序章「Prologue」のメロディにあわせ、AKANE LIVが舞う。やがてピンスポットの下にたたずみ、不思議な世界への序章の幕開けを示した。ステージの照明が一時落とされいよいよメンバーが登場、オープニング・ナンバーの「Free your Soul」よりLIV MOONのサウンド・ワールドが展開される。地響きのような音を立てる無骨なメンバー、その間にいるAKANE LIVは、この世界の妖精?それともプリンセス?ステージの幻想的な雰囲気とあわせて、観衆を北欧神話の世界へといざなう。
 
Photo Photo

Photo Photo

「And Forever More」は、大村AKANE LIVのデュオで歌われた。AKANE LIV情感たっぷりにメロディを歌う大村。この曲はアルバムの中では彼の尊敬するギタリストKee Marcelloが歌っているが、そのリスペクトが存分に感じられた一幕だ。そして「Black Fairly」に続き、第一幕最大の見せ場となる「The End of the Beginning」へ。ここでは歌のパートが一人7役という非常に難しく、アバンギャルドな展開となるが、ある時は悲痛な叫びを挙げる歌姫、そして時には悪魔、いたずら好きの妖精、小人と巨人というような、様々なイメージのキャラクターを演じた。そしてステージでのショウ的パフォーマンスを忘れず、かつこの複雑な構成を見事に歌いきり、一幕を観衆に強く印象づけた。
 
Photo Photo

Photo Photo

ここでAKANE LIVは一時、舞台を離れた。彼女がそこにいるだけで、LIV MOONの世界は成立する、それだけの存在感を放ったAKANE LIV。だからこそ次に続いたインスト曲「Valhalla」は、個々の凄腕ミュージシャンの本領が発揮されるスペースでもあり、逆にLIV MOONという世界観を広げる必要のある非常に重要なパートだったに違いない。西脇のピアノ・ソロから、劇的なギター・メロディへと展開する、文字通りのメタル・ソングだ。目を見張るような大村のギターにしっかりと追従するMASAKI前田。そしてハーモニーの中にしっかりと隠し味として刺激的なコードを仕込む西脇。途中にはMASAKI前田の4バース・バトルを織り込むなど、ロック・ファンにとってはたまらないプレイに、大きな歓声がまたもフロアから押し寄せた。
 
Photo Photo

Photo Photo Photo Photo

再びステージに戻ったAKANE LIVは、黒のドレスと花の冠を身につけ登場。続いた「Midsummer Eve」に聴かれるような、部分的にポップでもあり、メルヘンチックな雰囲気に彩りをそえる。第一幕が白いドレスで女神のような印象を出し、曲調としてもかなり物語の序章といったかなり重々しい雰囲気であるのに対し、ここではまた違った境遇をもつキャラクターに展開した。こうしてみると、ニュー・アルバムに作られた構成が違った視点で垣間見られ非常に興味深い。
 
Photo Photo Photo Photo

Photo Photo

「霧の葬送曲(レクイエム)」に続いた大村の劇的なソロ・パートは、もはやLIV MOONのステージでは、なくてはならないものとしてすっかりおなじみのパートだ。超絶速弾きフレーズはもちろん、メロディアスなフレーズの中にチョーキング・ダウンを取り入れたパートでは、セッションを頻繁に行っているMarty Friedmanの影響も感じられるなど非常に興味深い。このソロも含め、先述の『Watch the Outside! CASE 2 AKANE LIV(LIV MOON)~表現の境界を越えて』にてAKANE LIVが語っていた「俺が大村だ!」と主張する自身と意識向上が十二分に表現されている。
 
Photo Photo

Photo Photo

そして大村のソロに続いたのは、MASAKIのタッピング・アルペジオ。「Land of Spirit」への序章として奏でられたものだが、自他とも認めるベース・ヒーローの彼だけに、ベースが奏でるメロディが主体となっているこの曲の序章にもMASAKIらしさを前面に出した歌心のあるアレンジが随所に見られた。また、こうして各プレイヤーも表に出る場面があるからこそ、フロアが大きな声で反応する。ミュージカルやオペラのような展開を進めながら、観衆が大きく反応できるという、エンターテインメントの新たな姿がそこに表現された。
 
Photo Photo

Photo Photo

そして、神話の世界の物語はいよいよクライマックスへ。「人間の世界」を表すというラストナンバーの「Voyage」へ向けて、AKANE LIVは再び白のドレスで一人の象徴的な人物を演じる。終演に向け、徐々に激しさを増していくリズム。演じるという要素を保ちながらも、観衆とコミュニケーションをとるように舞台を左に、右にと移動するAKANE LIV、そして彼女の作り出すLIV MOONという世界観を必死で支えるように激しいプレイを繰り出す4人のプレイヤー。寸分の狂いもなく展開するサウンドの中、AKANE LIVの一挙一動にまで演者としての気配り、集中力が込められ、観衆はそのたびにハッとさせられ続けた。
 
Photo Photo Photo Photo

Photo Photo

ラストナンバーでは、ゲストとしてバイオリニストの南條由起(以下、南條)が登場。ノスタルジックで北欧民謡的なこの曲に彩りを与え、また二人を対で照らすスポットライトがAKANE LIVとのコントラストを描き出し、舞台に一段と深い奥行きを与えた。そこに映し出されたのは大海原にたたずんだ女神が見守る人々の姿。その様を懸命に追い、AKANE LIVの歌声にあわせてメロディを口ずさむ観衆、その声は、まるでこのオーケストラを支えるクワイアとなったようにも見えた。そして物語はついに終焉を迎えた。「ありがとう!」AKANE LIVの感謝の一言で、彼女らは物語の最後の一ページを閉じた。
 
Photo Photo

Photo Photo

鳴りやまない拍手と歓声。アンコールを叫ぶ観衆の声が大きくなる。そして、ステージに再び現れたメンバー。アンコールでは定番となった、インスト・セッションのコーナーだ。ゲストの南條を迎え、MASAKIがイントロからリードをとり強力なセッションが始まった。西脇のキーボードから南條のバイオリン、前田のリズムが重なり転調、そして大村のギターがメロディをとなえ、凶暴なまでの展開がスタートする。バイオリンがバイオリンと思えないほどの激しいプレイで、大村と対当した南條。曲の途中でシャッフルのリズムに変わり、西脇がプログレ仕込みのアバンギャルドなソロをとると、それにあわせてバイオリンとギターが激しいバトルを展開する。そしてそれがブレイクすると今度は猛烈な勢いで弾きまくるMASAKIのソロ、次は前田の土壇場と、見せ所たっぷりのスリリングな展開がまた会場を熱くした。
 
Photo Photo Photo Photo

Photo Photo

最後に登場したAKANE LIVは、水色のドレスにティアラをつけた姿で登場した。物語を賢明に展開したライブ本編の緊張感から解放されたかのように、彼女は晴れやかな表情を見せていた。ここでは過去の作品から印象深い曲を展開、AKANE LIVLIV MOONとして活動を始め、育んできたシンガーとしての成長の跡を示すようなその様とともに、メンバーとともにフロアより観衆が挙げたコルナ(メロイック・サイン)が立ち並ぶ。そして「私の愛するメンバー」としてAKANE LIVが各メンバーを紹介し、いよいよラストナンバー「アマラントスの翼」へ。感無量といった観衆はそろってスタンディング・オベーション。AKANE LIVの投げキッスとともに、舞台は幕を閉じた。
 
Photo Photo Photo Photo

Photo Photo

 

Photo

◆ 公式サイト: 
ビクターエンターテインメント オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A022867.html
AKANE LIV オフィシャルサイト
http://www.akaneweb.net/
 
◆セットリスト: 
M01. Prologue
M02. Free Your Soul
M03. Fountain of my Pleasure
M04. And Forever More
M05. Black Fairly
M06. The End of the Beginning
M07. Valhalla
M08. Midsummer Eve
M09. Hell
M10. 霧の葬送曲(レクイエム)
M11. Land of Spirit
M12. Immortals
M13. 黄金の涙
M14.Voyage
Encore
E01. The Winter Metal
E02. Kiss me Kill me
E03. The last savior
E04. 溺れる人魚
E05. アマラントスの翼

ロックのライブと、舞台といった区分は、LIV MOONの世界観を構築するには障壁であり、それを打ち破ろうとする意志がこの日のステージには感じられた。そしてその目的の遂行とステージの成功を確信し、最後にAKANE LIVはカーテンコールに応え再びステージに登場し、広大なホールの中にも関わらず生声で一生懸命に感謝の念を告げていたのが印象的だった。LIV MOONという存在を大きくする為の挑戦、それに打ち勝ったことへの思いを強く表した一幕だった。
 
ニュー・アルバムで描き出されたLIV MOONの新たな世界観は、この繰り広げられたステージでようやく完成されたと言えるだろう。この日のステージを成功させた彼女らは、自信持って次のステップへ向かうに違いない。さて、彼女らが作り出す物語の第二章、その行方はいかに? 今後展開していくそのシリーズを、今は楽しみに待ちたい。
 

Photo
「THE END OF THE BEGINNING」初回盤(CD+DVD)
発売日:2012/09/26
VIZL-489/3,800円(税込)
CD収録曲:
01.Prologue
02.Free your Soul
03.Fountain of my Pleasure
04.And Forever More
05.Black Fairy
06.The End of the Beginning
07.Valhalla
08.Midsummer Eve
09.Hell
10.霧の葬送曲(レクイエム)
11.Land of Spirit
12.Immortals
13.黄金の涙
14.Voyage
DVD収録内容:
初回限定盤のみDVD付(※「And Forever More」MV& レコーディング風景)
 


 

Photo
「THE END OF THE BEGINNING」通常盤(CD)
発売日:2012/09/26)
VICL-63914/3,150円(税込)
01.Prologue
02.Free your Soul
03.Fountain of my Pleasure
04.And Forever More
05.Black Fairy
06.The End of the Beginning
07.Valhalla
08.Midsummer Eve
09.Hell
10.霧の葬送曲(レクイエム)
11.Land of Spirit
12.Immortals
13.黄金の涙
14.Voyage


◆関連記事
Watch the Outside! CASE 2 AKANE LIV(LIV MOON)~表現の境界を越えて
https://www.beeast69.com/feature/38057