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REPORT2012.06.04

NEKOJINI NIGHT 2012/04/20 @吉祥寺 ROCK JOINT GB

TEXT&PHOTO:桂伸也

我らがBEEASTの取材でもすっかりお馴染みのライブハウス、吉祥寺ROCK JOINT GB。その看板娘とも言える、佐藤ブッキング・マネージャー(以下、佐藤M)。彼女が主催したロック・イベント『NEKOJINI NIGHT Vol.1』。その意味深さを感じさせるイベント・タイトルと、見るからに強烈な個性を感じさせる強力な出演グループ達。今回はこの佐藤M、がイベントに向けて込めた強い思いを、インタビューによって紐解くと共に、この日繰り広げられたその「禁断の宴」とも見られる異色のステージの模様をレポートする。

1.真っ赤なルージュズ
 
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ステージに並ぶや否や、いきなり3人揃って、フロアに投げキッスとアピールする真っ赤なルージュズ。メンバーは、ぱぁ子(Drums & Lead Vocal)、福井ひよこ(以下、ひよこ:Guitar & Vocal)、みくちゃん(以下、みく:Bass & Vocal)。彼女らは先日BEEASTでもレポートした『JYOJI-ROCK U-22 GRAND PRIX 2012年春大会』の参加バンドの一つだ。3人の中でも特に、ひよこのアピールが強烈。飛んだり跳ねたり、とにかく一時も落ち着かずその内に秘めた思いを吐き出さんばかりに歌い、ギターを掻き鳴らす。時にコミカルで、時にセクシーに、そしてトドメに、曲の最後に必ず「ここぞ」とばかりに入れるジャンピング。とにかく一挙一動のアクションに強いアピール感を感じさせる彼女とは対照的なのがみくぱあ子。直立でただ黙々と楽器をプレイし、渾身のヴォイスを聴かせる。「オイオイ、聴こえないんじゃないのか?もっともっと!!」フロアを煽るぱあ子。キュートな女の子が立ち並ぶだけに、ハードなギターが掻き鳴らされるパンク・サウンドの中で、何か「女の子らしさ」を感じさせる華やかさ、明るさ、そして何かやりきれない、女の子らしい憂いを込めたメロディと歌が印象的だ。
 
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◆公式サイト
http://redrouges.jimdo.com/

2.La’alts
 
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続いて登場したのは、La’alts。メンバーはPower(Vocal , Mandolin & Art)、Brand New(Vocal & Sax)、Miracle(Vocal , Cymbal & Mascot)、Passy(Bass)、Gow wow wow(Guitar)、Wakame(Vocal & Guitar)、Atsushi Armstrong,jr(Drums & Djembe)。幕開けからいきなりステージに立ち並んだプレイヤーは、パンクにしては割とシックにジャケットを着込んだ、「粋」ともいえるスタイルのメンツ。ギターのWakameは「キュート」ともいえるようなルックスに、非常に興味が注がれる。そしてオープニングの第一声からアバンギャルドな声を発し、「どんなサウンドを出してくるのか?」と期待させる。と、一転後から妖しい格好をした3人が急に登場。ボンデージもボンデージ、妖しく、怪しげなVocalの3人。見るからに度を過ぎたイメージが観衆を捉え、皆あっけにとられた表情でエンディングまで見届けさせられてしまった。リアルなパンキッシュ・フレイバー満載のそのサウンドは、その光景に更にイメージを増幅させられ、強力な印象を会場いっぱいに振り撒いた。
 
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3.the twenteens
 
これぞパンク!といった強烈な個性が去り、続いて現れたのはthe twenteens。メンバーは、タカイリョウ(以下、タカイ:Vocal & Guitar)、(Bass)、ウルマヒロユキ(以下、ウルマ:Guitar)、シュトゥダイナソー(Drums)。これまでのパンキッシュな、何か楽器が身に染みてない感じとは違う、「ロックバンド」の連中が3人、ステージに現れる。と、なんとタカイは、フロアからステージに登場という反則ワザ。またしても出し抜かれたフロアの観衆は、彼の姿にずっと釘付けになってしまう。もうイっちゃっている目をしながら歌い、ギターを掻き鳴らすタカイと、対照的に、一心不乱に演奏に没頭する他のメンバー。ウルマが奏でる印象的なメロディを起点としてそのイメージを形成する彼らの演奏は、タカイの瞳の中の白目が増していくとともに徐々に興奮度を増していく。この日のメンツの中では8ビート、16ビートとリズムにバラエティ感を醸し出し、しかもメロディをシンプルなバッキングの中で自由に泳がせる空間を作る、音の鋭いところでバンドの個性をはっきりと見せ付けた。
 
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◆公式サイト
http://thetwenties.info/

4.THEEE BAT
 
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破天荒なバンド、個性的なサウンドが出揃ったこのステージに続いたのは、THEEE BAT。メンバーは、Mika Bat(Guitar & Vocal)、Kub Sharp(Bass & Scream)、Fool The Animal(Drums & Savage)。ステージに並んだ、お揃いの帽子とスタイル。シンプルな3コードをひたすら続けるところからスタートした彼ら。「グルーヴ?御意味無用!?」等というくらいの潔さを前面に出し、ただひたすらシンプルなラインを奏で続ける彼ら。そして、あのTHE NEWSを想像させるような、パンキッシュかつ、なんらかのメッセージを感じさせるヴォイスが会場を貫く。ソリッドで荒削りなサウンドと、パフォーマーか道化を思わせるパフォーマンスを展開するMika BatKub Sharp。それとは対照的に、ただひたすらリズムを刻み続けるFool The Animal。最後はスタンダードの「サマータイム・ブルーズ」から、「監獄ロック」へ。そのスタイルは、「上手ではない」という表現が褒め言葉に聴こえるほどの強力な個性を見せ、最後にはフロントの二人は文字通りぶっ倒れる始末。パンク魂全開のスピリッツを大きくアピールした。
 
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5.イギリス人
 
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そしてこの日のトリを務めたのは、イギリス人。メンバーは、戦車(Guitar)、黒沢・ビッチ・たつ子りん(以下、黒澤:TinWhistle , Harmonica , Accordion&大正琴)、サコ・ヘンドリックス・クロサワ(Banjo) 、遠井地下道(Acoustic Guitar) 、トム(Bass) 、ガビー・ヴァンヘイレン(Drum)。黒のスーツに身を包んだ5人の男がステージに身構える。シックな雰囲気かと思うと、後から登場してきた黒澤。その他のメンバーが黒で統一しているだけに、彼の姿は明確に強調されて見えた。メロディを大事にしたキャッチーなメロディス・パンクが会場を和やかな雰囲気にし、そして気持ちを高揚させてくれる。最前列に並んだファンたちは、彼の歌に調子を合わせ、腕を振り上げ、彼らの歌をあわせて歌う。「大丈夫!大丈夫!大丈夫だよ!」そのフレーズの意が繁栄されるように、観衆は更に勇気付けられ、振り上げる腕の動作をさらに鋭くする。これぞポップ・パンクの真骨頂ともいえるような様相だ。全編にとにかく気持ちをそっとしておいてはくれない2ビート。ラストはマンドリンによるアイルランド民謡風のメロディからでてくるサウンドで一気にステージを守り立て、イベント全体の締めとなるフィニッシュをしっかりと決めてくれた。
 
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◆公式サイト
http://45.xmbs.jp/igirisujin/
佐藤M ミニ・インタビュー
 
—:自分でイベントを作るという立場で教えていただければと思います。普通の対バン企画ではなく、「NEKOJINI」という一つのキーワードを掲げて今回の企画を立ち上げたというところには、何らかの意図があるように感じられるのですが、その部分についてはいかがでしょう?
 
佐藤:そうですね…まあ、違うジャンルや、今迄組み合わせたことの無いバンドを組み合わせてイベントを行うと面白いんじゃないかと思ったんですよ。普段の対バンって、どうしても同じジャンルに集中しちゃうと思うんですね。だから、もし自分がやるんだったら、今迄ありえないような組み合わせをやりたい、って思って。例えば今日出たバンドの中でも、まるっきり正反対のバンドってあったと思うんですよね。それをあわせてイベントを行うことで、イベント自体の幅を広げたい、って思ったんです。固定観念に囚われないようなね。
 
—:ブッキングや企画の仕事をされる上で、喜びを感じるときってどんなときでしょう?
 
佐藤:やっぱり、自分がいいと思ったバンドを、旨くブッキングできたときは本当に「やった!」って思いますね。自分の思いの強さが、その仕事に反映されたような感じがとても快感で。
 
—:今後Vol.2、その後に続けて、抱負みたいなところは何か考えられていますか?
 
佐藤:まずは宣伝方法をちょっと考えてみたいのと(笑)あとは、ちょっと大きい(名のある)バンドを2~3バンド集めたり、若いバンドの中にベテランのバンドを入れてみたりと、サウンドのバラエティ性だけでなく、色んな個性でバンドを集めてやってみたいと思います。そんな色んな観点でバンドを集めて、本当に「楽し過ぎて死んじゃいそう」なイベントを作って行きたいと思います(笑)

「犬死に」という言葉がある。無念にも成す術もなく、惨めに死んでしまうような意を示す言葉だが、今回このイベントになづけられた「NEKOJINI=猫死に」とは、その犬死にに反して、「楽しすぎて死んでしまう!」という願いを込めてつけられたという。何とも粋なネーミングだ。バンドという形を中心に考えたイベントだと、どうしてもその意識が個々のサウンドに集中してしまい、イベント自体の趣旨が薄れてしまいがちだが、こんなキャッチフレーズ一つでイベント自体が締まって見えると共に、その趣旨がハッキリとし、どんな対バンでも非常に興味深い内容に見えてくる。

インタビューで 佐藤M が語った通り、この日は様々なサウンドの個性を持ったバンドが登場、一筋縄ではいかない、楽しいイベントを繰り広げた。イベント、ステージを楽しくするものは、それを作り上げる人の熱意。そんな様子がこの日のイベントで、強く垣間見られた。この後日、更に幅広く奇想天外な対バン組み合わせで『NEKOJINI NIGHT Vol.2』も行われたとのこと。さらに次、その次と、どんな刺客がロック・ファンを「NEKOJINI」させてくれるのだろう?佐藤M の手腕と共に、今後の動向が期待される。