TEXT：栗林啓　PHOTO：ossie

HEAD PHONES PRESIDENT『In the Abyss』RELEASE TOUR FINAL
2024.12.13 @Hatsudai DOORS

2024年を締めくくるべく、HEAD PHONES PRESIDENTのワンマンライブが初台DOORSにて開催された。ニューアルバム『In the Abyss』のリリースツアーのファイナルとなるこの夜は、彼らの「今」と「これまで」を凝縮した、まさに集大成とも言える内容となった。

圧倒的な世界観の幕開け

開演前は、DJ YUGOの選曲による会場の空気が徐々に温められ、ファンの期待感が高まっていく。ライブは新作のラストを飾る「Abyss」からスタートする。ヴィジュアルエフェクトとライティングが相まって、会場は深淵へと引き込まれるような幻想的な雰囲気に包まれた。荘厳なイントロが響く中、ANZAの歌声が静かに、しかし力強く会場に響き渡る。そして「Change the Game」へと突入し、バンド全体が一気にギアを上げる。オーディエンスもこの流れに引き込まれ、序盤から熱気は最高潮に達した。

過去と現在の融合

中盤にも「Seeds Remain」や「Can You Feel It」など、ヴィジュアルエフェクトを取り入れた楽曲が披露され、視覚と聴覚の両方で楽しめるステージが繰り広げられた。特に「Seeds Remain」では映像の高速な映像の切り替えが楽曲のスリリングな展開をより際立たせ、観客を圧倒していた。ジャムセッションを挟んだ後、会場はさらに熱気を帯びる。「Chain」のイントロが流れると歓声が上がり、観客は一斉にヘッドバンギングする。5人編成時代の楽曲が新たなアレンジを施されて演奏されることで、過去と現在が見事に融合していた。特に「Labyrinth」では、ピアノのSEから始まる静寂と、そこから一気に爆発する強烈なグルーヴが印象的だった。「Wandering」ではANZAが観客に語りかけながら歌い、まるで物語の登場人物になったかのような感覚に引き込まれる。「ALIVE」ではNARUMIのベースラインが空間を支配し、ANZAのヴォーカルがその上で鮮烈な感情を放つ。観客とのコール＆レスポンスが繰り広げられ、会場全体がひとつになる瞬間であった。

エネルギーの頂点へ

終盤の「Live With」では、ANZAが倒れ込むほどの衝動を見せ、彼女の楽曲に込めた感情の深さが伝わる。バンド全員が極限のエネルギーを放出し、会場全体がその熱量に包み込まれる。新しいアレンジを加えた「For You」では、ANZAが一人一人に語りかけるようなMCを挟み、観客との一体感がより強まったように感じた。そしてラストナンバー「Burn it all Down」では、HEAD PHONES PRESIDENTらしい激情とエネルギーのすべてが爆発。観客も最後の力を振り絞るかのように拳を突き上げ、ステージと客席が完全にシンクロした状態でクライマックスを迎えた。演奏が終わると、ANZAが改めて感謝の言葉を述べ、2025年の25周年に向けた意気込みを語った。

25周年への期待

この夜のステージは、単なるツアーファイナルではなく、HEAD PHONES PRESIDENTの新たな旅の始まりを予感させるものだった。結成25周年を迎える2025年には、年始の南米ツアーや6月のヨーロッパでのイベント出演も予定されており、さらなる進化を遂げることは間違いない。彼らのライブは単なる楽曲の再現ではなく、まるでひとつの壮大な物語として体験できるものである。それはANZAの圧倒的な表現力、HIROのテクニカルでメロディアスなギター、NARUMIの衝動的でグルーヴィーなベース、BATCHの力強く繊細なドラムが一体となるからこそ生まれる。HEAD PHONES PRESIDENTは、ライブの度に新たな感動と驚きを与えてくれるバンドである。そして、25周年という節目を迎える彼らが、どのような新しい物語を紡いでいくのか、期待せずにはいられない。