結成24年を迎えるロックバンド・BUGY CRAXONE(ブージー・クラクション)のワンマンライブ「やりたいだけ!2」が2021年4月24(土)に東京・下北沢GARAGEにて行われた。新型コロナウイルス感染拡大のため、当初予定の2020年6月7日、振替日程の2021年1月31日と2度の延期を経て、約1年越しの開催だ。
北海道出身の彼ら。「北の花盛りは、遅い。しかし、必ず花は咲く!」という言葉の通り、ちょうど北海道で桜の開花便りが届いた春陽の候、音楽の街・下北沢にはどんな花が咲くのか。
◆BUGY CRAXONE メンバー:
すずきゆきこ(Vocal & Guitar)、笈川 司(Guitar)、旭 司(Bass)、ヤマダヨウイチ(Drums)
少しずつ間隔を開けて並び、受付で一人ずつ検温と消毒をして入る。アフターコロナのライブハウス行動様式だ。足元には一列毎の白いテープ。開演前のチェック、ギターの音が鳴り響く。久々の大きな音は我が鼓膜を震わし、心を奮わす。互いに距離を取りながら、ナイスちゃん(=ファンのこと)たちは開演の時を待つ。
そして午後6時を少し過ぎて、笈川司(Guitar)、旭司(Bass)、ヤマダヨウイチ(Drums)がステージに登場。「みんな元気?」最後に真っ白なトップスをまとったすずきゆきこ(Vocal & Guitar)が登場。ずんずん行進するギターリフに軽快な歌声が乗る「変なやつ」からライブはスタート。今月よりライブ会場と通販限定でリリースされた新譜に収録された同曲。クレジットに”作詞:すずきゆきこ“ではなく”変な詞:すずきゆきこ“とあるほどユニークな同曲、「ウニ、いくら、サーモン!サーモン!」のコーラスで意表を突くと、続く2曲目も最近リリースされた「りぼんを結んで」。ダイナミックな重低音に、焼酎ストレート!みたいな味わい深いギター音が乗る。すずきゆきこは体を斜めに、飄々と肩を揺らして歌う。
早くもフロアとの一体感が創出される中、3曲目「WATCH YOUR STEP」は観客の手拍子が一層強みを増す。そんな”勝手知ったる感”に身を委ねてか、ここからエレキを持ったすずきゆきこの歌唱は攻撃的なモードとなり、バスドラとともにフロアにビシビシ刺さる。4曲目「Come on」も鋭利さがどんどん増していき、フロアからは拳が挙がる。
引き続きMCは挟まず、5曲目は「パーラメントに火をつけて」。フロアからめらめらと湧き上がるエネルギーを吸い取るようにナイスちゃんたちと対峙するBUGY CRAXONE。したり顔で弦を爪弾く笈川司。何かを企んでいるかのような目をして笑うすずきゆきこ。共鳴というか、共犯関係のようなライブは続く。
「ありがとう、みんな来てくれてありがとう。お礼の新曲を…」旭司のホップするベースから、おどろおどろしい世界観の新譜「夢の中」。幽玄という言葉があって、表面上霞のような脆さ儚さがあるようで、掴もうとすればするほど深みにはまっていく、実体がないような、でも確実にそこにある、強烈な存在感。そんな、幽玄な曲だ。
クールな照明から一転、パッと閃光が空気を変え、華やかにする。7曲目「ベッドの上でさ」で観客は再び水を得た魚のごとく踊り出す。この曲の何がすごいかって、歌詞の通り「ふぃーるぐっど」で「ぴーすまーく」な出だしに、「ゆーのー?ゆーのー?」一段ずつボルテージを上げていくサビ前、「ぼくら、ぼくら、ぼくらぼくら」の連呼でガッツリ連帯感を生むところまで、とにかくセロトニンがダダ洩れなのである。間奏のギター・ベース・ドラムの密な三つ巴競争は至宝!ピークホールドのまま、最近リリースされた「幸福1」。軽快でエモーショナルなメロディが胸を打つ。
小休止して、ミディアムテンポな9曲目「おんなのこ」。「明るく生きると決めたのだから」、「通用しないぜ おんなのこなんだぜ」内省を深める表現に真っ直ぐ寄り添うサウンド。すずきゆきこは一つ一つの言葉をかみしめるように、力強く歌い上げる。
一呼吸置いて、ヤマダヨウイチが足と手と口でビートを刻む。「凡…凡…」フロアも手拍子で応える。10曲目は「ハッピーでラッキー」。すずきゆきこが全力で頭を振り、両サイドのコーラスが彼女を四方取り囲むように「ふつうにいよ ふつうはいいよ」の大合唱!11曲目「めんどくさい」でさらにBPMも心拍数も加速させていくと、12曲目「ぷんぷん」でいったんスローダウン。ご機嫌斜めになったり回復したりする、日常の心の機微を捉えた同曲、笈川司のトランペットが切なさに輪郭を作る。すずきゆきこの顔に影を作る照明のまま、13曲目「リラックスしろ」へ。シリアスな前半から、「よそはよそ うちはうちだろ? 4月には花が咲くだろ?」からの転調(正確にはテンポアップ)。ライブハウスでこの部分を体感すると、「これこそ音楽のパワー!」と思わずにはいられない。冬来たりなば春遠からじ。音楽は希望になる。
口直しのシャーベットのようなギターリフを挟んでフロアを冷ますと、ドコドコドコドコ高速でビートが刻み出す!14曲目「花冷え」だ。「わたしはドントクライ 明日もちゃんと生きるつもりよ」そんな前向きな歌詞に触発されて、フロアのあちこちで拳が高らか挙げられる。コーラスとリズム隊が加速し、15曲目「なんとなくBe happy」へと続く。「たとえばピンチはチャンスなんだし 笑っていられるくらいのわたしでいたいよ」高揚感、多幸感に涙腺が刺激される。フロアを煽りつつもすずきゆきこの目にも光るものが(気のせい?)。達成感のような表情を浮かべ、顔を上気させている。そこに間髪入れず16曲目「チーズバーガーズ・ダイアリー」のイントロが流れると、クライマックス感がこみ上げてくる。「だからぼくは泣くの 迷うことはないの」、「誰といてもひとり そんな時もあるよ」…歌詞を改めて噛み締める。あなたは一人じゃないよ、なんて押しつけがましく言われるよりも、ずっと安心できる力強さがある。「一人」を肯定してくれる見守りといったら良いだろうか。
まだまだ終わらない!17曲目「ふぁいとSONG」では”見守り”から一転、BUGY CRAXONEの魅力”おせっかい”が全開!「いろいろあるけど、みんなでがんばろうぜ」こんなにストレートに、勇気をもらえる言葉があるだろうか。「ちゃんとたべてるかい?」「ゆっくりねてるかい?」ナイスちゃん一人ひとりに語り掛けるように、すずきゆきこは観客一人一人に目配せする。18曲目「ふにふに」ではタッタカ刻まれるビートに、再び笈川司のトランペットが陽気に気楽にフロアを躍らせる。そして最後19曲目は「欲望」で、感情をスパークさせる!あっという間に駆け抜けていった。
熱烈なアンコールの拍手に応えてメンバー再登場。「いいライブができたのはみんなのおかげ!ありがとう!」シンプルに謝辞を述べると、ハイテンポな「BOY」をクールに決める。そして照明がパッと真っ白に変わり、最後は「bye-bye song」で締めくくった。
一寸先が見えない時代の希望の灯はここに、確かにある。終演後、名残惜しさがないわけではないだろうが、ナイスちゃんたちは皆、いつまでもここに残ろうというより、前を向いてそれぞれの持ち場へと戻っていくような、そんな足取りで会場を後にしているように見えた。(時短要請もある中、ライブハウスの速やかな撤収に協力しようという意思もきっとあるのだろう)
BUGY CRAXONEの音楽はただただ底抜けに明るいというだけでなく、人間のさまざまな感情、特に怒りに対してきちんと正対している、真っ当なパンク魂が宿っているように感じる。ただその「怒り」というのは決してネガティブなものではなくて、大切なものを守るための、負を打ち破る原動力であり、眩しい希望だなと思った。
M01. 変なやつ
M02. りぼんを結んで
M03. WATCH YOUR STEP
M04. Come on
M05. パーラメントに火をつけて
M06. 夢の中
M07. ベッドの上でさ
M08. 幸福1
M09. おんなのこ
M10. ハッピーでラッキー
M11. めんどくさい
M12. ぷんぷん
M13. リラックスしろ
M14. 花冷え
M15. なんとなくBe happy
M16. チーズバーガーズ・ダイアリー
M17. ふぁいとSONG
M18. ふにふに
M19. 欲望
-encore-
E01. BOY
E02. bye-bye song
◆BUGY CRAXONE 公式サイト
https://www.bugycraxone.com/
ライブ会場&通販限定EP「3月10日」
・2021年4月14日(水)発売
1,000円(tax in)/ BNBR-0017
<収録曲>
M01. 夢の中
M02. ぷんぷん
M03. 変なやつ
https://bugycraxone.base.shop/items/42447467
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【連載】新譜るLIFEダイアリー BUGY CRAXONE 20th BEST ALBUM『ミラクル』
http://www.beeast69.com/serial/simple/160084