REPORT丨2012.05.05
Michael Schenker『TEMPLE OF ROCK JAPAN TOUR 2012』2012/03/29@中野サンプラザ
昨年、久方ぶりの新作を発表したMichael Schenker。彼を示すアイコンともいえるフライングVは、ハード・ロックの歴史に数々の名演を残してきたが、それが今も全く色褪せることのない魅力を放ち続けている。そんな彼が、久し振りの日本公演を果たした。日本のロックファン御用達の、過去の名曲も数々演奏されるという告知には、往年のファンも必見とばかりに、多くのフリーク達がこの日中野サンプラザに駆けつけた。その輝くようなギターは健在なのか?それは、この日のステージで証明された。
◆メンバーリスト:
Michael Schenker (以下、Michael: Lead Guitar: MSG, ex Scorpions/UFO)
Herman Rarebell (以下、Herman: Drums: ex Scorpions)
Michael Voss (以下、MV: Vocal&Guitar: Casanova, ex Mad Max)
Elliott Rubinson (以下、Elliot: Bass: Owner of Dean Guitar)
Wayne Findlay (以下、Wayne: Keyboards&Guitar: MSG)
場内にかかっていたBGMが突然、入場のSEに切り替わると、一気に場内はハイヴォルテージへ。大きな歓声と共に中野サンプラザの1階席のファン達は総立ち、大きな手拍子で彼らを待ち受ける。そして、場内の照明が徐々に暗くなる度にその拍手と歓声は大きさを増していった。
最初にステージに登場したのは、Herman。ドラムセットに座る前に、真っ直ぐ腕を上げて「来たぞ!」という仕草をすると、一層大きな歓声がそこに投げかけられた。彼がドラムに座り、イントロを叩きだすと、ギターキッズにはお馴染みの、「ロック・ギター・ナンバーの金字塔」ともいえるあのナンバーのリフと共にメンバー全員がステージに現れた。あのナンバーとは、「Into the Arena」。シャッフルノリのリズムに、絶妙に刻まれるヘヴィなリフは、今聴いても色褪せることのないハードロック・マスターピースの一つだ。それを、Michael本人が弾くプレイを目の前に出来るというチャンスに、最前列のファン達はもう理性を失いそうなほどの興奮を覚える。そんな観衆に応え、ステージ最前で堂々とした演奏を見せ付けるMichael。
続く「Armed and Ready」より、日本のロック・ファンを魅了し続けたキラー・ナンバーが続き、更に会場内の熱は上昇の一途を辿っていった。曲の並びで展開を作るなどというまどろっこしい雰囲気は見られない。彼の楽曲は、もう既にどれもが珠玉の名曲と化しており、日本のファンにとってはまるでJazzのスタンダードの如く、そのイントロを聴いただけで何かが分かるまでに知り尽くされている。それぞれのイントロが流れるたび、大きく反応を挙げるファン達。この興奮以上のものを、誰が望んだだろうか?常に前列に寄りファンとの交流を図りながらプレイを続けたMichaelのショーマン・シップは、また改めて彼の、別の面を感じる。存分に聴けるMichaelのギター、歌心タップリのチョーキング音。一転して歌が入ると、それはもう世界遺産級に語り継がれた名リフの応酬へと変わる。その音は、曲に強い魅力を放つMVの声と競うように、サウンドの中で絡んでいった。
もう4半世紀を越えながらも、今尚ギター・ヒーローとして君臨するMichael。その存在感は健在、流麗なフィンガリングの速弾きなど、スーパー・テクニックに飢えている昨今のギター・キッズにも、十分にアピールできるほどのフラッシーなフレージングが連発した。かと思えば一転、歌心タップリのチョーキング、ヴィヴラートをふんだんに取り入れたメロディアスなフレーズでは、「これが同じ人の弾くギター!?」と思えるような、引き出しの多さを見せ付ける。改めて彼のギターを聴いて感じた印象は、一般に「鳴きのギター」といわれるような、チョーキングを多様するフレージングの中で、かなりエッジの立ったトーンを聴かせるということだ。ゆったりとしたフレーズの中でも、全くそのハードなサウンドを変えることなく、歌心を見せる。そこに彼の、ロック・ギタリストとして持つ真のポリシーすら感じ取られた。正にファンにとっては悶絶必至、堪らないプレイだ。そんな喜ぶファンの姿を見ながら、彼のギターを抱える姿は、ギターの位置を目いっぱい下げ、前かがみになた姿勢を崩さない。そして、ここぞというフレーズでは、あのギターの「V」の部分に足を絡ませる。この姿も、もうあらゆるシーンで登場したロック・ギターのアイコンとなるシルエットと化しつつある。
そしてステージもいよいよ大詰め、SCORPIONS、UFOと渡り歩いたバンドの名曲から、最後はこれもロック・クラッシックとしては外せない名曲「Lights Out」。サビのコーラスでは、歌うことによりギターの「神」ことMichaelと一緒にプレイを楽しんでいるという気分にまでさせてくれるのだ。そしてギターの本当のカッコよさを知り尽くしたMichaelとの対話もいよいよ終焉、キラーなリフが終わると、大歓声に感謝しながらメンバー一同ステージの中央に集まり、この日の成功に礼を告げながらステージを降りた。
鳴り止まぬアンコールの拍手に、2回のアンコールで応えた彼ら。ここからは、往年のギター・キッズ失神寸前のスーパーナンバーが続く。第一アンコールでは、サビのコーラスが場内の一体感を強くする「Rock You Like a Hurricane」、これまたギター・キッズが避けては通れない、ギター・ミュージックの定番の一つでもある「Rock Bottom」。ここでは中心人物であるMichaelを更にフィーチャーし、まるで組曲や物語のようなロング・ソロタイムが設けられ、彼の世界観タップリのギター・ソロを堪能させた。第2アンコールでは、ロックなノリ抜群の「Blackout」、そしてロックの殿堂入り間違いなしの名曲「Doctor Doctor」で、最後の大歓声が会場中に響き渡った。彼を語る上で、この物悲しい、憂いのあるイントロ・メロディ、そして展開から気持ちを前に向けてくれるドライブ感抜群のリフは外せない。そんな彼のサウンドにある存在感を改めてファンの心の中に刻み込み、最後は場内のファンに深々と敬礼を送り、見事なフィニッシュを決めた。

オフィシャルサイト
http://www.michaelschenkerhimself.com/home.php
東京音協 オフィシャルサイト
http://t-onkyo.co.jp/
キングレコード オフィシャルサイト
http://www.kingrecords.co.jp/
◆セットリスト:
M01.Into the Arena
M02.Armed and Ready 9
M03.Lovedrive
M04.Another Piece of Meat
M05.Hanging On
M06.Shoot Shoot
M07.Too Hot to Handle
M08.Love to Love
M09.Let it Roll
M10.Natural Thing
M11.Lights Out
[Encore]
E1.Rock You Like a Hurricane
E2.Rock Bottom
[2nd Encore]
E3.Blackout
E4.Doctor Doctor
Michaelがギターヒーローとして台頭してから、もう30年以上にもなる。その間、ギター・サウンドやテクニックも多様化、発展し、ギター・サウンドの極地を探すのも困難な時代だが、この日の彼のステージでは、彼が弾き出すサウンドこそが、その一つであることを示したようにも見えた。これだけの長い間に世界のトップ・プレイヤーとして君臨し、尚もファン達を魅了するその力量こそ、多くのギター・キッズが目指す頂点の、一つの姿ともいえよう。そして、唯一無二の「神」ことMichael Schenker、彼のギターは、これからも多くの人を魅了し続けるに違いない。
1)ROYAL HUNT 『20th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2012』

会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-7000円
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
2)RAGE 『JAPAN TOUR 2012』

会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-7000円
[メンバー]
Peter “Peavy” Wagner(Vo,B)
Victor Smolski(G)
Andre Hilgers(Ds)
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
※未就学児入場不可。
3)Angel Witch 『JAPAN TOUR 2012』

会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-6500円
[メンバー]
Kevin Heybourne (Vo&G)
Bill Steer (G)
Will Palmer (B)
Andrew Prestidge (Ds)
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
お問合せ:
東京音協 03-5774-3030

「TEMPLE OF ROCK」
KICP-1584/2,700円(税込)