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【NEWS】騒音寺10作目のアルバム『Hip music』ミニインタビュー

2023年04月19日

騒音寺10thアルバム『Hip music』ミニインタビュー!
TEXT by 株本和美

 


 
京都に拠点をおくバンド騒音寺(そうおんじ)が、10作目のアルバム『Hip music』を1月18日にリリース(※先行発売は2022年12月25日)。ガツンとしたロックンロールナンバー「I live for rock」からはじまり、バラエティに富んだ全8曲が収録。制作時のエピソードや作品にこめた思いなどについて、ヴォーカリスト・NABEと、ギタリスト・TAMUにインタビュー。
 


――前作『百歌騒乱』(2018年7月発売)から約5年ぶり、10作目『Hip music』のリリースおめでとうございます。今作のコンセプトは?
 
NABE:毎回コンセプトというものはなくて、騒音寺に足りないものをやっていく、というスタンス。だから、今回はバラードの曲がはいっているけど、今までやったバラードよりもっとシンプルで聞きやすいバラードを作ろうと思ってね。それが足りないと思ったので、まずバラード。そして、最後アルバムを通して聴いたときに、まだパンチがたりないと思ったので、日本の音階にロックをあわせ融合された、当初の騒音寺の目的に準ずるような曲を持ってくれば、完全な騒音寺のアルバムになると思ったので、「キョート・バウンド」という曲を収録しました。
 
――5曲目「キョート・バウンド」、情緒あふれる楽曲ですね。
 
NABE:昔よくやったご当地ソングなんだけど、今は新幹線や飛行機、インターネットを通じて、世界のいろいろなところへどこでも行けちゃうから、今こそ、ご当地ソングを、と思って、自分が住んでいる街を歌にしてみました。
 
――京都の原風景が目に浮かびますね。
 
NABE:そうだね。新型コロナウイルスが流行してライブができなくなったり、戦争が始まったりして。それと、今こそ「人間失格」(4曲目)は、すごくみんなの心に届くんじゃないかと思って。曲調も騒音寺らしいし、収録するにもってこいの曲だと思って再録しました。
 

 
――そして6曲目の「ロックスター」は、至極のバラード。
 
NABE:どうしてもバラードの歌詞を書くと、古い……いったらダサいフォークソングの歌詞になっちゃう。で、いっぱい歌詞を書いたんだけど、自分の弾き語りで書いた「ロックスター」という歌詞はすごく気に入っていて。自分の人生を振り返るわけではないけど、バンド人生ってこういうことがあったな、って。この歌詞は、フォークにはならず、ロックになるんじゃないかな、と思って、バンドでやってみたら大成功でした。
 
――NABEさんの経験が歌詞に反映されているとのことですが、バンドマンなら誰しもが共感できる歌詞なんじゃないかなと思いました。
 
TAMU:以前、NABEさんのソロでこの曲を聞いたことがあったので、なんとなくバンドでやったら、もっと大きくできるんじゃないかなと思っていて。それでちょうどいい機会だし、やってみようということになり……。今回のアルバムは、日常を無理なく、でも挑戦もしている感じがでてるアルバムだなと思うよ。「人間失格」もしかり、「ロックスター」もバンドでやってみたら、どうなるのかな?ってところから始まり、結果イイ感じに仕上がってよかったなと思ってます。
 
NABE:「ロックスター」に関しては、50回転ズダニーリクオさんから、なんであの曲、バンドでやらないの?って、結構まわりのミュージシャンから弾き語りの時に言われてたことが心に残っていたのかも。
 
――アレンジ面などでこだわった点は?
 
NABE:ソロとは全然ちがうよね。ドラム、ベース、増幅されたギター、どこまで大きく表現できるか?デフォルメって大事だから、ロックバンドに。思い切り極限まで広げて。
 
TAMU:そのほうが、いろいろな想像力が、たぶん聴いている方も働くと思うしね。
 
NABE:バンドって、音ありきのものなので、音を基本に置いて、歌詞は後から、という感覚で作るのは作ったかな。
 
――1曲目「I live for rock」は、痛快なロックナンバーですね!
 
NABE:聞いてすっきりするもの、ファンのみんなが、「すげえな、こいつら強いな」って思うような。それだけのことを俺はやってきたし、今ああいう歌詞を書いても問題ないんじゃないかなと。やっと歌えるようになったよ。
 
TAMU:今やからこそ、さらに説得力があるしね。前に歌ってても、もちろん説得力はあるんやけど、今、転がって駆けあがって、山もあって谷もあって、またここから行くっていうときに、この曲が出来たというのは、バンドにとってでかいと思う。自分も今まで以上にやる気がすごく出たしね。バンドのことだけじゃなくて、人生いい時も悪い時もあるから、それを経てこんなに風通しのいいロックンロールができてうれしかった。スコンとして、ほんま、よく書いてくれたな~。
 

 
NABE:ちょっと目標を失った人とか、人生ぜったいそういうことってあると思うんよ。そういう人こそ聞いてもらえれば、前向きになるんじゃないかな。今から振り返ったらさ、俺ら、あの歌詞の通りにやってきたから(笑)。俺らの歌だ。
 
TAMU:ほんま、自分らのために書いてくれたのかな、っていうくらい(笑)。
 
――2曲目「エバーグリーン」は初披露の日、ナベさんが「かわいい曲ができました」と紹介したことを覚えています。
 
NABE:♪「自転車の二人乗り、悪いことだと思っていない」って誰もが思ってるよ(笑)。いい曲だよね。
 
TAMU:普段歩いていても、ついつい口ずさんでしまう。
 
NABE:1番、2番の下りでこの曲は決まったなって。かけた瞬間、手ごたえはありましたよ。ただちょっと古いフォークソングになってしまうのは嫌なので、途中でアートロック的な要素、60年代後半の音を入れたいなと思って、コードの展開をしてみたかな。
 
――3曲目「太陽賛歌」についてはいかがでしょうか?
 
NABE:これ、昔から歌詞はあったの。ただメロディがつかなくて。騒音寺ってミディアムテンポの曲が得意だから、どうにかこうにかその歌詞を活かせないかなと思って書いた曲が「太陽賛歌」。途中で変拍子になるし、ちょっとブルースちっくな感じに。
 
TAMU:今回のアルバム、僕だけじゃなくてドラムもベースもいろいろ挑戦できたんですけど、この曲はそれの一番、トップレベルくらいできた。音色とか、今までファズとかそんなん使ったこともほとんどなかったし、でもそういう挑戦をさせてくれる曲でしたね。
 
NABE:野口雨情という詩人がいて。その詩人がすごく好きで、俺も野口雨情を超える歌詞を書けないかな、と思って。
 

 
――そして7曲目の「八百八小唄」、言葉遊びが楽しい楽曲ですね。
 
NABE:昔は、日本にも小唄とか端唄っていう世界があって。今のポピュラーミュージックをやってるひと、ロックバンドもしかり、テレビに出ているひともしかり、そういう独特の日本人の言葉遊びって、あまり知らないと思うから。今の音楽、ほとんどが無味無臭だから、聴いていても面白くないって。ちょっと一発小唄でも書いてやろうかなって(笑)。
 
TAMU:これが「I live for rock」と一緒にならんでできるのが騒音寺かな。
 
NABE:やりたいことがいっぱいあるから。こんな音楽やりたい、あんな音楽やりたいって言っても、全部騒音寺流に仕上げないとレコーディングできないしね。「八百八小唄」は騒音寺流に仕上がった(笑)。仕上がってなかったら収録してないしね(笑)。
 
――粋な曲ですね!ライブでの反応はいかがでしたか?
 
NABE:それが、最初に関西で演奏したときは「何これ?」って。無反応みたいな!? みんな驚いちゃったのかな(笑)。ちょっと恥ずかしかったもん。
 
TAMU:今、こんなの聞いたことないだろうから、面食らったのかもね(笑)。
 
――え、意外です!手放しで楽しむことができる曲ですし、私はお気に入りです。
 
NABE:いいこと言うね(笑)。この曲が出来て、スタジオへもっていったとき、ドラムのフジエくんが「これ、やりたい!最高!」って言ってくれたな。ギターリフは、T-ボーン・ウォーカーというブルースマンのフレーズを拝借して、ブルース寄りにしてるね。
 
――ギターを重ねて録音していると思いますが、NABEさんもエレキギターを弾いているんですか?
 
NABE:「キョート・バウンド」は、エレキギターを弾いてるね。あとアコースティックギターも弾いてるな。せっかくの作品だから音はゴージャスにしたいから分厚いサウンドにしてます。ほかのみんなは、普通に重ねていると思うけど、今まで、それほど重ねたことがなかったから面白かったよ。騒音寺もやってみよう!みたいなチャレンジ(笑)。
 
――「尻を出せ(Hip music)」はアルバムタイトルにもなっているわけですが、文句なしのパーティーチューンですね。
 
NABE:ああいうブギウギスタイルの曲も、騒音寺ってあまりなくて。シンプルなブギウギスタイルな曲を作りたかったっていうのはある。これやってくれ、ってパッとセッション曲としてもできるし、ライブでも盛り上がることが出来るなって思ってアルバムの最後に入れました。今回、曲順は結構悩んだもん。
 
TAMU:これしかないって順番になったよ、ほんまに。
 
NABE:「キョート・バウンド」」から「八百八小唄」をやって……、よし、カラスの鳴き声でつなごう!って。動物の鳴き声を入れたくて。そうするとちょっとマヌケになるでしょ?(笑)。
 
――鶏も鳴いてましたね(笑)。ジャケット画は、カミグチさん(CODED、Underbug)が描かれたそうですね。
 
NABE:古い絵ハガキを見るのが好きなんだけど、インターネットで「何かいいのないかな」ってヤフーオークションを見てたら、今回のジャケットのサンプルになるような絵ハガキを見つけて。150円で落札して。見れば見るほど不思議な絵で、誰が描いたのか調べてみたけど、何も情報がなくて。何十年も昔のものだからかな~。なので、ちょっとそれをアレンジして、「墨絵のような絵を描いてくれないかな?」って何人かに声をかけたんだけど、みんな根をあげて。結局、カミグチが、「俺、描くわ」って、仕上げてきたのがこのジャケット画!着物はヒョウ柄だし、ヘッドフォンをしているし、五重塔も描かれているし、“Hip music”すべてにリンクするな、って。あいつが見事に描いてくれました。今までのアルバムの中で一番好きかも!ジャケット広げるとズボンを脱いでるし、最高~。原画は俺がもらって額装して飾ってあります。
 
TAMU:Underbugの物販もカミグチ君が描いてるって話してたね。
 

 
――今の時代、サブスクで聞くのもひとつの選択肢ですが、NABEさんはどう感じていますか?
 
NABE:世の中こうなってきたら、やらざるを得ないかなと思ってきたけど、俺はモノを持ちたい派だし、サブスクによってミュージシャンが殺されているんじゃないかなという思いもあって。やっぱり、発表したモノをもって、伝えたい。古い人間って言われるかもしれんけど、モノを持つ派の人間として……。
 
TAMU:楽しみ方が増えるというのはええことやと思うけどね。
 
NABE:どうもそういう面に関して俺が頑固だからな~。いつまでも携帯を持たなかったし、スマホが流行ってもずっとガラケーだったし、まだアナログ集めてるしね。音楽はこうやって聴く!って確立しちゃってるから、それを周りに押し付けているけど誰も聞いてくれない(笑)。サブスクはないけど、カセット、レコード、CD全部出したろかってね。
 
――では、あらためてこのアルバムでプッシュしたい曲は?
 
NABE:「キョート・バウンド」かな。今時ないでしょう?最後の方はサイケデリックな感じで恐怖感も与えているからすごくいい曲だと思う。あれぞ、騒音寺じゃないでしょうか。
 
TAMU:俺は「I live for rock」。この曲が出来たおかげで、迷ったり悩んだりしていたことが吹っ切れたり。しょうもないことを悩んでたんだな、って。まだまだやれるな、と思わせてくれた曲なので、自分の中でもバンド人生の中でもすごく大きな曲になりました。
 
――最後にメッセージを!
 
NABE:自分のやりたいことが全部できたアルバムだと思う。今まで、聞き返した時に、これがたらなかった、あれがなかった、曲が長い、といったことが全くない、シンプルにやりたいことが全部やれた、騒音寺の意地がつまったアルバム、是非聞いてください。ガツンと来ます。これぞロックです。
 
TAMU:NABEさんが言った通り、俺も一番気に入ってるし、本当にみんな新しい挑戦が出来て、うまくいったアルバムだと思うから、みんなに聞いてほしいですね。これが出来たおかげで、騒音寺も次の段階へ突入できるんじゃないかなと思ってるんで。自分ら自身も今後の自分たちが楽しみになれるようなアルバムなんで、是非聞いてください。
 
NABE:これだけ自分で聞き返すアルバム、ないもんな。


 
騒音寺:
https://so-on-g.net/discography/
https://twitter.com/so_on_g
後列左から)ベース・こーへい、ギター・TAMU
前列左から)ヴォーカル・NABE、ドラム・フジエワタル


 
◆作品情報
■発売日 : 2023年1月18日
■Artist : 騒音寺
■Title : Hip music
■税抜価格 : 2,500円 税込価格:2,750円
■収録曲: -CD-
01.I live for rock
02.エバーグリーン
03.太陽賛歌
04.人間失格
05.キョート・バウンド
06.ロックスター
07.八百八小唄
08.尻を出せ(Hip music)