FEATURE丨2010.01.19
Let The Music Do The Talking 〜テイク6「丹下眞也(アウトレイジ)」インタビュー
日本のロックバンドで、世界という舞台へ推薦できるバンドはそう多くない。両手くらいの数ではないだろうか。星の数のほどのバンド数をその分母とすると、実に天文学的な数字が出てくると思う。日本にロックバンドが登場し始めた60年代から、ロックバンドが世界を狙おうとすると、昔は決まってこう言われた。「日本のロックが世界で通用するわけねーだろ!」…考えてみると、野球もそう言われていた気がする。「日本の野球が大リーグで通用するわけねーだろ!」…今やグローバルに活躍できる才能が、日本から誕生しているのは事実だ。
今日インタビューするのは、アウトレイジ。バンド名をそのままアルバムタイトルに持ってきた、最上級なMETALアルバム『OUTRAGE』をリリースして、今年からツアーが始まるところだ。バンドのスポークスマンである丹下眞也に、ストレートな質問をぶつけてみたいと思う。実は、私がアウトレイジを始めて観たのはかなり古く、デビュー以前のインディーズ時代。名古屋から凄いバンドが来るというので、今は無き渋谷のセンター街にあった“屋根裏”という、キャバレーの上階にあるライヴハウスに足を運んだ。それは80年代前半、長髪ロッカーが市民権をまったく得ていない時代だった。
アウトレイジは1982年に名古屋で結成され、その後1987年にデビュー。密度の高いアルバムをコンスタントにリリースした。特に1991年リリースの『THE FINAL DAY』や、1995年リリースの『LIFE UNTIL DEAF』は代表作として知られるアルバムで、世界中の音楽メディアが絶賛した作品だ。橋本直樹(Vocal )、阿部洋介(Guitar)、安井義博(Bass)、丹下眞也(Drums)という4人による完璧なヘヴィアルバムは、言葉では言い表せないほどの衝撃を放った。しかし1997年に橋本直樹が脱退、惜しまれつつ音楽活動から完全引退してしまう。以後は残った3人のメンバーで、3ピースバンドとして10年間活動を続けた。
2007年、デビュー20周年を記念したライヴに橋本直樹が参加し、4人によるアウトレイジが期間限定で登場。そのままヘヴィロックの祭典『LOUDPARK:2007』にも出演し、熱狂的な声援を浴びた。そして翌年2008年、ついに橋本直樹の完全復帰が伝えられ、4人のアウトレイジが帰ってきた。新譜『OUTRAGE』は、まさに入魂の一撃。新譜の発売前には『LOUDPARK:2009』にも出場し、その勇姿に感激したオーディエンスは多いはず。橋本直樹のブランクなどまったく感じさせない、まさに王者の風格。別格な存在感をアピールしたアウトレイジ。そのかっこ良さの秘訣に迫ってみたい!
丹下:アウトレイジの持つキャッチーな部分は、曲作りの段階から意識していました。良い曲には必ずキャッチーな部分があり、メロディーの引っ掛かり具合であったり、歌詞の分かりやすさだったり、リフのフックだったりと、印象に残る部分が必要だと思います。バンドもそれを意識してやっていましたが、それにプラスしてフレドリックのプロデュースも大いに助けられました。実際に第三者の耳で聴いて必要がない部分は、フレドリックがカットしようと提案してきました。6分近くある曲が大きくカットされたり。フレドリックの意見では「人間の曲に対する集中力はそんなに長くはない。」と言っていました。
丹下:向こうに行く前にフレドリックのいくつかの作品はチェックしていました。ARCH ENEMYのような完全なるMETALの音、もう少し作りこみが控えめなSPRITUAL BEGARSの音、BRING ME HORIZONのような新しいバンドの音のどれもかっこ良いし、またフレドリックの色がありながらも、ちゃんとバンドの音にしているところが良いなと思いました。実際に向こうでフレドリックに会い、サウンドの話をした時も、「今、細かい事まで話し合わなくても、結果的にアウトレイジの音になるから心配せず作業に入ろう」と言っていました。
丹下:曲順は本当の最後の最後に決まりました。全曲作りの念頭に各曲の存在がダブらないようにしたいと思っていました。一気に聴けるのはやはり曲の無駄な部分をそぎ落としたのと、曲順がうまくはまったのが大きいと思います。最終的に1つの物語を読むようなイメージの曲順になったと思います。だからこのアルバムは最初から最後まで曲を飛ばさずに聴いて欲しいと思います。
丹下:直樹のレコーディングのブランクを考えると、直樹の今回の作業ぶりには拍手を送りたいですね。たった4日であれだけ集中して歌えるのは凄いなと思いました。メロディーに関しては直樹が考えたものや、バンド全員で作り上げたものもありますが、フレドリックのアドバイスの元に歌った曲もあります。フレドリックは直樹のブランクに関して勿論知っていましたが、そこを意識せずにいちシンガーとして、直樹の歌をプロデュースしたと思います。それは本当に良い方向に転んでいったのかなと思います。
丹下:日本からDEMOを送った段階で、フレドリックの頭の中に何かバンドの音以外のものが鳴っていたようです。日本を経つ前の彼からの提案に、すでに「オルガンやオーケストラを入れたらどうか?」とありました。フレドリックにはこの曲がPINK FLOYDのように聴こえたそうです。向こうに行く前の彼のその提案に、自分としては「なるほどな、そう来たか」と思いました。オルガンを入れる事は確かにチャレンジではありましたが、「曲に合わなかったらMIXで採用しなければいいや」くらいの気持ちでもありました。ですが入れてみて、こんなに曲のイメージを大きく膨らませてくれるとは思ってもおらず、想像をはるかに超えてかっこ良い仕上がりになったと思います。
丹下:やはり直樹の歌を、またアウトレイジの曲に乗せられたのは感慨深いものがありました。そして直樹の作業ぶりには本当に驚きました。完璧にやってくれました。すでにDEMOの録音の時から感じていましたが、この4人でやればおのずとアウトレイジの音になっていくんだなと感じました。それをレコーディングで再認識しました。直樹の力強い声に、洋介の鋭いリフと、義博のうねるベース、そして俺のドラムが入れば、どこから聴いてもアウトレイジになるんだな!と感じたレコーディングでした。個人的にはドラムのレコーディング作業が4日くらいだったので、過去最速で終わったレコーディングで相当疲れました。
丹下:日本人で正式にプロデューサーとしてクレジットされてるのは、2ndの「BLIND TO REALITY」の時のジョージ吾妻さんだけですが、日本のエンジニアと海外のエンジニアと比べると、やはり海外のエンジニアが作った音は骨太ですね。アウトレイジの曲にはやはり海外のエンジニアの音のほうが合いますね。今回はフレドリックの音とアウトレイジの曲が、オールドスクール的だけど新しくもあるという、バンドが欲しかった音になったと思います。
丹下:アウトレイジという山があるならば、もう何度も登っては降りて、登っては降りてという繰り返しだったと思います。だからこそ今回の作品はアウトレイジらしいものに仕上がったと思います。何度も登り降りした道は自分達が一番良く知っているし、その山の手ごわさも知っています。その山道の再確認にはずいぶんと時間も使いました。
丹下:大きな会場でも小さな会場でも同じエネルギーで演奏していますが、自然とそのエネルギーの質が変わってくるのかもしれません。多くの人に音を伝えたいという気持ちがそうさせるのかもしれません。アウトレイジを知らない人に音を聴いてもらえるチャンスとしてLOUD PARKのような大きな会場で演奏させてもらえる事はとても感謝しています。
丹下:昔の事を考えると、本当に良い時代になったと思います。世界が近くなったのは、バンドにとって大きな違いです。MySpaceも大きな力を持っているし、これからも色々な手段で音が世界に発信できるかと思うとワクワクする時代であります。ただ逆にLIVEのセットリストがアップされたりと、簡単に情報が入る事でワクワク感が減ってしまう事もあるでしょう。でもやはり今の時代のほうが絶対良いです。レコーディング自体が1ヶ月で終われたのもコンピュータの時代の恩恵だと思います。
丹下:アウトレイジはファンを大切にしたいといつも考えていますが、その反面、曲作りに関してはファンの声を全く気にしていません。今、自分達がやりたい事をやろう!というのがずっとバンドの根底に流れています。今回アウトレイジらしさに溢れる音に仕上がったのは、4人の持つ音もありますが、今回は「アウトレイジらしいアルバムを作る」という自分達の意思があったからだと思っています。そしてそのように思いながら作った作品を、皆さんが気に入ってくれたなら、それは最高に嬉しいですね。
丹下:世界戦略とか大きな事は何も考えていません。何かどこかの国でアクションがあればとても嬉しいですし、喜んでチャレンジしたと思いますが、大きな事を言って実行できないのもどうかと思いますので。この音が1人でも多くの人に届くならどんな方法であろうとも、何でも全力でトライします。
丹下:音楽をやるのも聴くのもいつも楽しくあればと思います。また逆に辛い時に音楽を聴いたりと、音楽はいつも自然に横にいるものであればと願います。アウトレイジを知らない人は、是非今回のアルバムを聴いて下さい。METALが好きな人ならば、楽しんでもらえるのではと思います。そして1月からツアーがありますので、是非LIVE会場でお会いしましょう!
アウトレイジというバンドの凄さは、多くのファンを20年魅了しているだけでなく、多方面で活躍するアーティストからもリスペクトされている点だ。今回のインタビューを通じて気づいたことがある。好きな音楽を追求する、ただそれだけのシンプルかつストイックな論理が、アウトレイジのまさに原動力。リスペクトされている理由は、アーティスティックな感性がリンクするからに他ならないと言えるだろう。それはアートに通じるマインドであり、アートそのものだ。
アウトレイジ。成長しながら突き進むモンスターバンドとして、伝説となる日はそう遠くないはずだ。いやもはや伝説かもしれない。「アウトレイジを好きで良かった」そう思っているロックファンの気持ちが痛いほどわかる。この記事で初めてアウトレイジを知った方は、新譜『OUTRAGE』からの“RISE”のPVを観て、そのかっこ良さに痺れることから始めよう。アルバム全曲を聴かずにはいられなくなること、間違いない!
OUTRAGE/RISE |

http://www.outrage-jp.com/
JAPAN TOUR 2010“RISE”
http://clubcitta.co.jp/001/outrage2010/
2010年1月30日(土)【東 京】SHIBUYA BOXX
2010年2月13日(土)【福 岡】DRUM Be-1
2010年2月14日(日)【大 阪】umeda AKASO
2010年2月27日(土)【名古屋】Electric Lady Land
2010年3月13日(土)【高 松】DIME
2010年3月14日(日)【広 島】CAVE-BE
2010年3月26日(金)【新 潟】CLUB JUNK BOX
2010年3月27日(土)【仙 台】HOOK
2010年4月24日(土)【札 幌】SOUND CRUE
2010年5月01日(土)【川 崎】CLUB CITTA’

」
2009.11.25 Release
01.RISE
02.YOU CARE? I DON’T CARE
03.REIGN
04.UNTIL YOU ARE DEAD
05.FISTS FULL OF SAND
06.SHELLS RAIN DOWN
07.LANDSHARK
08.SHINE ON
09.TOR
10.TERRORIZER
VICP-64779 ¥3,045(tax in)
Victor Entertainment, Inc.