前編のインタビュー(http://www.beeast69.com/feature/188205)に引き続き、後編としてHEAD PHONES PRESIDENTメンバー全員による『In the Abyss』の全曲解説編をお届けする。ニューアルバムの『In the Abyss』は、これまでのHEAD PHONES PRESENTらしさは保ちつつも、ヘヴィなものからトライバルなものまでと曲調や展開等バラエティに富んだ内容で、今までの作品以上に多面的な佳作となっているが、アルバム制作過程におけるその多面的な楽曲群の魅力が詳細に興味深く語られているので、是非ご覧いただきたい。
ジャパニーズ・ヘヴィ・ロック・シーンのカリスマHEAD PHONES PRESIDENT
前作『Respawn』から5年ぶりとなるアルバム『In the Abyss』をリリース決定!
HEAD PHONES PRESIDENT『In the Abyss』
M01. Change the Game
M02. Silence
M03. Burn It All Down
M04. The Moon Chases Me
M05. Roar Into the Night
M06. To the Air
M07. Seeds Remain
M08. Can You Feel It
M09. Abyss
発売日:2024年07月10日(水)
発売:TONIC code/RADTONE MUSIC
販売:株式会社FABTONE
HIRO:これはねアイデア的には結構古い、古いと思います。なんかえげつないリフっていうか…。
HIRO:そうですね。これがなかなか厄介なリフで、 最初難しくて全然弾けなかったんだけど、レコーディングしてるうちに上手に弾けるようになって。歌もねANZAと色々やりながら作ったんですけど、ANZAは1回曲を送った時に入れたメロディをすごく気に入っちゃって、もう絶対変えるなっていう指令があって(笑)
HIRO:そうですね、個人的にはそこまでヘヴィだなとは思わないんですけど、ただキーがちょっと厄介というか、キーがCの開放弦を使っていないポジションのリフなんで。うん、ベースはちょっとね…。
NARUMI:すごい指が辛い(笑)
HIRO:最初はこの小難しいリフをユニゾンでやる予定だったんですけど、自分でベースラインを作って弾いてみて、これはかなりの猛者じゃないと弾けないやつだなと思って。 そこでちょっとアレンジを変えて、ものすごく音数を少なくしてみたら、ユニゾンよりも良くなって。ベースのフレーズは、少ない音使いでスピード感を表現できたいいリフだなと思って。ギターのリフよりもいいものを思い付いたなっていう感じですけどね。意外とベースはそんなに早く刻んだりもしてないし、それでいてなかなか効果的で、なんかいいリフだなって。ちょっとうまいの考えたなって個人的には思いますけどね(笑)
HIRO:そうですね。これはね、なんかUKロックというか…。
HIRO:そうなんですよ。自分の中ではDavid Bowieなんです。David Bowieの感じをこのバンドでやりたいなと。
HIRO:間違ってないですね。あの辺の80年代のブリティッシュロックのサウンドを自分たちで、HEAD PHONES PRESIDENT流でやったらどうなるかなっていうところにチャレンジしました。
HIRO:そうなんです。面白くて、意外な感じの曲にしたかったんですよ、これは。ANZAもすごくメロディにすごいこだわっていて、絶対変えるなとこれも言ってたけど(笑)アレンジの進行に伴い、何箇所かちょっと変えたりして、 なかなかギターもカッティングしたりとか今までにないアプローチで、これも大変でしたね。
HIRO:そうですか?それはあんまり意識してないけど。結局どこかで歪ませないとバンドとしては成立しないから、ずっとカッティングしてるわけにはいかないので(笑)、まとめるのが大変でしたね。いろんな要素がいっぱいあったから。
HIRO:そうですね、アレンジで聞きどころといえば、やっぱり転調してるとこですかね。ラストのサビのところのアウトロのエンディングでまた元のキーに戻ってるっていうところが。そこが自分のちょっとひねくれたセンスが爆発してるというか、発揮されてるかな?普通転調したら戻ってこないんで、そのままフェードアウトして終わるんですけど、また戻ったらこれ面白いだろうって思って、誰もやってないよなと思ってやってみました。
NARUMI:戻ったの気づかれないかも。
HIRO:まあ、気づかないかも。転調したのも、もしかしたら気づかないかも。
NARUMI:半音転調?
HIRO:かなり自然にやってるから。ANZAもキーもしっかり合わせたおかげで、転調しても苦しさとかもないぐらいスムーズにやれてるから。それで、終わりもまた戻って終わってるので、もしかしたら言われてみないとわからないぐらいのレベルでやれてるかなと思います。その分弾くのはちょっと癖があって大変ですけど。
ANZA:これはNARUMIさん。
NARUMI:そうっすか(笑)そうなんですね。でも最初に作った時とはもうだいぶ曲の形が違うので、どうなんだろうな?最初、もっとまったりした曲で…。
HIRO:スローなね。
NARUMI:まったりした曲を作りたいなと思って、リフはドーンって感じで、ドラムだけタン!みたいになってるけどどよーんとしている曲を作りたいなと思っていたんですけど、結果的にはそうならなかったですね。
HIRO:俺がアレンジしちゃうと(笑)
NARUMI:結構ゴリゴリとりした感じの曲なのに、なんだろう?凛としてるというか、透き通った感じがある曲になりました。
HIRO:イントロの出だしのギターもほとんどNARUMIのデモをそのまんまでやってるので。そのデモで送られて来たものをこういうことなのかな?みたいな感じで解析して、うまく弾きました。コード進行とかはそのままで、オブリガートとかも入れてるけど、サビも大体コード進行はそのまんまかな?Dパートはもうめちゃくちゃ変えて、元はなんかミディアムテンポのドゥドゥドゥみたいな感じだったよね?
NARUMI:いやいや、これはそのまま早くなるだけじゃなかった?
HIRO:なんかベースラインがさ、ドゥドゥドゥみたいな感じだったよね、ずっとね。
NARUMI:そこから8ビートになる。まあまあ残ってるっちゃ残ってるかな?
HIRO:ギターはもう、なんかちょっと『Gutarhythm』(笑)
NARUMI:そう、ギターはComplexな感じが…。ジャジャジャーンって(笑)
HIRO:Complexかって(笑)
NARUMI:すごい最初気になったけど、だいぶ慣れた(笑)
HIRO:あれはね、そのままやる訳にはいかないから(笑)
NARUMI:これはありなのか?いや、これなしでしょ!っていうのを何回かもう迷って(笑)
HIRO:ギリギリのところついたから(笑)
NARUMI:ありなのか?もしかしたらありかもしれない(笑)
NARUMI:これは早い曲作ろうと思って、いわゆるアルバムの2曲目みたいな曲。2曲目っぽい曲を作ろうと思ったんすけど、思いの外まったりした曲になりました。
ANZA:ううん。全然。
ANZA:ていうか、多分ああいうメロディに普通しないと思うんですよ。
HIRO:どこの話ですか?サビですか?サビはね、原曲が3コードの繰り返しだったんですよ。D、E、F#で、デーデーデーンって感じ。ずっとそれだったから、これはちょっと変えなきゃまずいなと思って、途中からちょっと変えて今の形になっています。だからその結果、難しく聞こえるんじゃないですか?多分そうだと思う。
ANZA:全然何にも考えずに歌ってるよ。
HIRO:歌は自分で考えたメロディをそのまま歌ってるだけだから。多分大変とかはなくて…。
ANZA:聞こえたままに書いたから別に全然。え、そうなの?あれそんな大変な感じなの?
ANZA:ううん、全く、そんな。なんか普通に、普通に歌ってた、私。あんまり気にせず。
HIRO:これは、割と制作終盤ぐらいに急いで作った曲です。曲が足らないって事態になって、もう1曲作らなきゃダメかってなって作った曲です。最初ねパワーバラード的な、それでいてどっかちょっと暗い感じの曲を作りたくて、結果こうなったんですけど、 なんかイントロの感じはちょっとDokenみたいな感じなんだけど、サビがまた少しブリティッシュな感じというか…。
ANZA:これはHIROさんが全部作ったんで。私、ああいうメロディは書かない、基本的に。なんか私の中ではすごい昔のハードロックというかHarem Scaremとか、あの辺の時代の人たちが歌ってるようなメロディに聞こえます。
HIRO:Skid Rowの曲はちょっと意識したかな?ああいうなんかパワーバラードじゃないけど、そういうのをやろうかなと思って、その感じでギターソロとかも含め作ってたらすごいダサくなっちゃって(笑)、これはちょっとまずいなって、ギターソロもどうしよう?ってずっとモヤモヤしてて…。ワンコードでちょっともう打開していくしかないなってあの感じになったんですよね。ずっとダダダ、ダダダって感じで、ワンコードでやったらなんかしっくり来たかな?
HIRO:そうですね、当初はエレキのアルペジオだけだったんです。普通っていうかオーソドックスな感じだったんですけど、これもしかしたらアコースティックギターがハマるかもって閃いて、オーバーダビングしてイントロだけ弾こうかなと思ったけど、結果割とずっとオーバーダビングしてやってみました。
HIRO:ずっと迷ったんですよ。シタールでやるかアコースティックギターでやるかどっちかでずっと迷ってたんですけど、 結果アコースティックギターになりました。アコースティックギターはね、3曲目のDパートでちょっと入ってます。3曲目と6曲目でオーバーダビングで入れてます。
BATCH:はい。
ANZA:だけどまあ(笑)
HIRO:これも難しかったよ。BATCHのアイデアを解析するのが難しかった。
ANZA:全然違うよね、もうね。
HIRO:ギターもちゃんと入ってて、ベースも入って、ドラムもちゃんと入ってるのが送られて来たんだけど、なかなか理解できなかった。
BATCH:ベースは入れてない。
HIRO:ベースは入れてないんだっけ?
BATCH:そう。HIROさんならなんとかしてくれるかと(笑)
HIRO:俺がさ聞きたかった。これどうやって録ったの?
ANZA:この曲?
BATCH:結構前に作ってた。
ANZA:前だよね。でも、全然メロディがない。パターンはいっぱいできてるんだけど、自分の中でなんかしっくりが来なくて。 困ったな、どうしようと思ったときに、HIROさんがアレンジしたものが来た瞬間にもうすぐ歌メロができて。この7曲目の方の前半の歌メロはもうすぐにできて。
HIRO:そう、Ebとかだったんだよな、リフが確か。それでアレンジしたんだけど、ANZAのデモに入ってた歌メロに対して、そのEbだとちょっと整合性が取れなくて。久しぶりにダウンチューニングにして、ドロップAっていう、Kornみたいな感じのAチューニングが、久しぶりにドロドロドロした感じのチューニングにして弾いてみたら、あ、これだなって。 これいいんじゃない?久しぶりにこれ、いいんじゃないかな。だから、もう初期のHEAD PHONES PRESIDENTのサウンドを思い起こさせる音にはなったかな?
ANZA:昔だったら、ただ暗いとか泣き叫ぶとかっていうテイスト満載になっちゃうんだけど、今のHEAD PHONES PRESIDENTがこういうダークソングみたいなものをやるとこうなりますって感じかな? ただ、やっぱり、BATCHの音をそのまんま生かすと、多分そっち系の感情型になるんだけど、それはもう散々やってきてて、でも今回、この7曲目、8曲目の、私の中ではまだ1曲なんだけど、これはちょっと意外な、私の中では新しい要素なの。 実を言うと、何曲かBATCHのダークソングのデモがあったんだけど、どうしてもこの曲を形にしたいなって。でも、自分の中でどうにもできなくて、ギター弾けるわけでもないから。HIROさんが持ってきた時に、あ、もうこれ出来上がったって。ただ、8曲目のAメロとか、私、結構ぶっ飛んだ、結構高いところから始めていたんだけど、HIROがこれじゃダメだってメロディを変えてきて、最初はそれで戦ったんだけど…。
HIRO:いきなり高く突き抜けちゃってたから、これだとストーリーが盛り上がっていかないから、それはちょっと、1回後ろに、2回目のAパートに置いて、前半はスタジオでまた別でメロディを作って最初のAパートでね、結構色々スタジオで組み立てて作ったら、うまく盛り上がるようになって…。
ANZA:そもそもが、これ、Aメロ、Bメロ、かCメロとかっていう感覚がなく、私が歌っちゃった。なんかあんまりそこがわかんなくて…。
HIRO:元々なんか見えづらい感じで作ってあったんで。
NARUMI:どこがサビだか俺わかんないもん(笑)
ANZA:いまだにわかってないから(笑)
NARUMI:あれ?またサビ来た?みたいな(笑)
ANZA:ただこれ1番最初にBATCHに頼んだ時に、なんかそういうちょっと長い曲で展開がたくさんある曲を作って欲しいんだっていう風に私がリクエストして作ったのがこの曲だったんだよね、確か。 だから色々な要素を頑張ってBATCHなりにはやってくれてて、だけどやっぱりどうしてもギターを全部弾けるわけじゃないから。
HIRO:とはいえまとめなきゃいけないんで、始まりがあって終わりがあるっていう流れにしないといけないから、とりあえずそのストーリーを作る上で必要な部分となり得る要素だけ抽出して作ったみたいな。だからリフのところのドゥドゥドゥドゥドゥドゥ…のグルーヴとかはもうBATCHの元のアイデアがあったんで、それはもう完全に生かして、今までなかやってなかったグルーヴだったから、これは面白いなと。
HIRO:そうそうそう、あれはもう自分の感覚というか…。
BATCH:あれついていけない(笑)
HIRO:そうそうそう。あれは別に自分の中では普通のアイディアなんだけど、他の人には多分理解できないのかな?と思ったけど、だからこそ、その倍テンポのダダダダダダっていう、後にまた戻るんかよ!みたいな面白さがあるかな?ここで戻るの?お茶噴き出す(笑)みたいな。だからいいのかな?あれがなかったらしつこいんですよ。ずっとダダダダダダだけだとかなりきついんで、なんかびっくりポイントつけて。
HIRO:でもね、アレンジの1番のキモはドラムイントロを設けたことだと思ってるから。7曲目の前半があって、8曲目にドラムイントロ入れたんですよ。そこでバツっと切り替えるから、これでもうほとんどアレンジ決まったかな? あとはもう流れに任せてやるだけ。
ANZA:今までの『Respawn』の時もそうなんだけど、BATCHの元ネタからアレンジが変わる時の曲が1番新しい要素が入るっていうか。 なんかね、面白いのが。NARUMIの曲をアレンジするのはなんとなく見えるんだけど、BATCHの曲をHIROがアレンジをして、全員で色々やった時に1番化学反応が起こるのかもしれない。
HIRO:えっとね。BATCHの曲のアレンジは難しい。これいじっていいのかな?なんかこれすごいこだわってんじゃないかなみたいな?すごいコードをチョイスするんですよ。
BATCH:そうなの?それは…。
HIRO:でもこれちょっと合わないんだよな?みたいな。
BATCH:その知識がないから(笑)
ANZA:いやだからBATCHにこれキー何?って言っても、いや、よくわかんないんだよって(笑)
BATCH:こっから始まってるんだけど…みたいな(笑)
HIRO:でもこれこだわりなんだよな?とか思いながら、でもこれ変えないと繋がんないから変えちゃえってアレンジしたんです。難しいよ、BATCHの曲は。
ANZA:この間の『Respawn』の時も、化学反応が1番起きやすいのはBATCH骨組のアレンジが加わった曲が1番変わる。HIROさんが自分で作った曲じゃなくて、1番変わるのはここです。それがなんか意外に面白かったりはするんだけど。
HIRO:あと、意外と弾けるからさ、ギターとか。音はNARUMIよりは取りやすい(笑)
ANZA:おーい。元ギターリスト(笑)
HIRO:NARUMIのね、あの歪みのリフはちょっと音程がわかりにくいんだけど、BATCHの場合は割と弾けるから、なおさら音がわかるから、ちょっと…。
BATCH:気遣っていただいて(笑)
HIRO:いいのかな?って悩む。そういうのはあります。
ANZA:これはもう完璧にBATCHさんが、今までこういう民族チックな曲って必ずHEAD PHONES PRESIDENTの曲の中に入っていて、今回も入れないとまずいなと思って…。
ANZA:最初からそういう民族チックなものはもう日本語でいきたいと思っていて、やっぱりこの世の中で、今自分が1番祈りを求めているっていう、そのせいかもね。戦争のおかげで色々潰れたものもあるし。やっぱりコロナ禍もそうだし、なんかすごくこう争ってるじゃない、いろんなところで。それは日本人同士もそうだし。自分たちにできることはもう祈りの歌。その思いを込めて歌うっていうことを。英語でも良かったんだけど、最後はヒンドゥー語。スワヒリ語?何語だったっけ?忘れちゃった。(編集部註:正解はスワヒリ語)全部調べて、あえてそこは訳してないんだけど「祈り」。祈りの最後に愛することが1番大事っていう。
なんかHEAD PHONES PRESIDENTっぽくないんだけど、やっぱりHEAD PHONES PRESIDENTも実はその光だから。光を求めてやってるバンドだから。そこはあえて日本語にしたいなって。もうそれはね、『Respawn』の時から実はもう決めていて、日本語を1曲とにかくどっかに入れたいって。これから多分増えていくとは思います。