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TEXT:橋本昌浩 PHOTO:岡田祐貴子
2012年から札幌で毎年開催されている『HAMMER BALL』は、下山武徳[以下:下山](SABER TIGER)が個人で主催しているHARD ROCK / HEAVY METALにフォーカスしたピュアなロックイヴェントだ。 ![]() ■AARU
『HAMMER BALL2016×NoMaps』のオープニングアクトを務めたのはAARU(アール)。北海道内バンドコンテスト「TRUTH OF PRIDE」で優勝した若手実力派バンドだ。多弦ベースを操るK-sukeと、ダウンチューニングのギターで轟音を鳴らすMasa。耳に残るメロディラインを歌い上げたり、懸命なスクリームを聞かせるヴォーカルのMatts。ラウド系のサウンドをベースに、同期やヴォーカルエフェクトを取り入れたモダンな楽曲と演奏力の確かさが印象的。「オレ達ガキんちょ代表だけどサ、貴方達の音楽を好きだと云うキモチとオレ達が音楽を好きと云うキモチは対等だと思うからさ」と溌剌としたパフォーマンスを披露したAARU。彼等は立派に『HAMMER BALL2016×NoMaps』オープニングアクトの役割を果たしたように思う。
◆AARU
Matts(Vocals) Masa(Guitar) K-suke(Bass) ※※※※(Support Drums) ◆Official Website http://aaru-official.jimdo.com/
◆Setlist
M01. Openending M02. ~Determination~ M03. The Progress M04. Shoot Niagara M05. The 1st Step Of“Diftlection”
![]() ■月光グリーン
『HAMMER BALL 2013』以来、3年振りに登場した月光グリーン。3年前に彼等がラインナップされた際、バンド側は「自分達はメタルと云うジャンルではないけれど・・自分達で大丈夫でしょうか?」と下山に不安を吐露したそうだが、下山は「お前達はココロの中にメタルが有る。お前らアツいから大丈夫だよ」と返答したそうだ。そして、月光グリーンは成長した姿を『HAMMER BALL2016×NoMaps』で見せつけた。SEが始まった瞬間から弾けたように踊り出したファン達は、「進化論」「雨月の光」「落下流水」とBANDが繰り出す曲に合わせ、一緒に唄いながらジャンプしたり踊ったりとホール内の空気感を賑やかにしていく。
月光グリーンのノリの良いメロディックでポップな曲には、なるほどメタルな要素やヘヴィなニュアンスは感じ難いけれど、ギター・ベース・ドラムとヴォーカルのみなシンプルな編成で鳴らすサウンドは良質なロックだと思う。リフレインが耳に残る「それでも生きる道はあるさ」から、怪しげな雰囲気の「侍ロマン」でステージは終了。『HAMMER BALL2016×NoMaps』で“バンドとしての地力を増した姿”を見せてくれた月光グリーンは、今後の更なる活躍を期待したいBANDだ。
◆月光グリーン
テツヤ(Vocals & Guitar) ミツヒコ(Guitar) シンイチ(Bass) チュウ(Drums) ◆Official Website http://aldious.net/
◆Setlist
M01. 進化論 M02. 雨月の光 M03. 落下流水 M04. MONSTER M05. はじまりの光 M06. それでも生きる道はあるさ M07. 侍ロマン
![]() ■SABER TIGER
『HAMMER BALL』を主催する下山が心血を注いでハンドリングするSABER TIGERとって、2016年は結成35年のアニヴァーサリーイヤー。国内ツアーのみならず海外でのライヴも実現させ、35周年を祝したイヴェント『牙虎際』を開催。オランダのレコード会社Into The LimeLight Recordsと欧州テリトリー独占契約を締結し、2017年にはCDリリース&ヨーロッパのライヴツアーが予定される等、追い風に乗るSABER TIGER。『HAMMER BALL』では毎回ホスト役なスタンスで前半戦に登場するが、圧倒的な音圧とクオリティの高いパフォーマンスで『HAMMER BALL』の興奮をイッキに高める。ギターのフィードッバックから「Angel of Wrath」「Heroism」と続いたSABER TIGERの演奏は、緻密でスキルレヴェルの高い楽曲をプレイする事に余裕さえ感じさせる。木下昭仁[以下:木下]と田中康治[以下:田中]のツインギターは鉄壁のアンサンブルでオーディエンスに迫り、複雑且つ高速なリズムを刻む水野泰宏とボトムを支えるHIBIKI。
「皆んな、HAMMER BALLへようこそ! 今年も皆んなに会えて嬉しいよ!」と下山はオーディエンスを煽る。「BYSTANDER EFFECT」リリース後からの精力的なライヴツアーを通じて「最新が最強」とアピールする一方、長いキャリアからチョイスされる曲も古くからの“SABER KID’S”には嬉しい事だろう。今回のセットリスト唯一のバラード「ある去りがたき心に」では下山が情感溢れる壮絶なヴォーカルを披露。キラーチューンとして定着した「輪廻」から「Sin Eater」でオーディエンスのアタマを振り抜かせ、ホール内の熱気を上昇させてSABER TIGERのステージは終了。本格的な海外進出を果たすであろう2017年、SABER TIGERの躍進に期待したい。
◆SABER TIGER
下山武徳(Vocals) 木下昭仁(Guitar) 田中康治(Guitar) 水野泰宏(Drums) hibiki(Support Bass) ◆Official Website http://www.sabertiger.net/
◆Setlist
M01. Angel Of Wrath M02. Heroism M03. Dreadout M04. ある去りがたき心に M05. その果てを知らず M06. Hate Crime M07. 輪廻 M08. Sin Eater
![]() ■二井原実バンド
ジャパニーズヘヴィメタルと云うジャンルを創出したLOUDNESS。その“LOUDNESSのヴォーカリスト”二井原実[以下:二井原]が『HAMMER BALL2016×NoMaps』にラインナップされ、札幌在住のミュージシャンをバックにどんなパフォーマンスを観せてくれるのかはとても気になるところだった。唐突に「Crazy Doctor」のイントロがPAから飛び出してきて、二井原が「Oh,Yeah! Sapporo!!」とシャウトした瞬間にホールは大歓声に揺れた!“Take Me Away From Hera Forever”を大合唱して二井原実バンドに呼応するオーディエンス。「二井原実バンド、昨日結成した若手バンドでございます!」と場内を笑わせ「壮大な…贅沢な…カラオケ大会を…」と数曲の洋楽カヴァーを披露したのだが、これが凄かった!
二井原が「メタルヴォーカルに目覚めた」と語るRonnie James Dioが唄うDIOやBLACK SABATHの曲では抜群の歌唱力を見せつけ、場内大合唱となったRIOTの「Worrior」では、ギターソロ導入部にLOUDNESSの「In The Mirror」のギターソロパートを挟むアレンジで洒落っ気を見せる二井原実バンド。ポテンシャルの高さは素晴らしい。Y&Tの「Forever」を唄う二井原のヴォーカルは、DAVE MENIKETTIとは質感が異なるものの、クオリティの高さやアクの強さは遜色ないと感じさせる極上のパフォーマンス。世界各国の過酷でアウェイな環境でもフロントマンの責務を果たしてきた二井原は、その経験値を生かして絶妙なタイミングでオーディエンスを煽り、ホールの興奮度を上昇させて行く。「まだまだイケますかぁ? 一緒にアタマ振れますかぁ?」と二井原実バンドはLODNESSの人気曲「Angel Dust」で場内を更に盛り上げ「思いっきり声出してくれますかぁ?」と「Dream Fantasy」でオーディエンスを熱狂させ、二井原と云うヘヴィメタルシンガーの凄みを見せつけてステージを降りた。
◆二井原実バンド
二井原実(Vocals) 田中将人(Guitar) 早瀬祐一(Bass) 岡野哲也(Drums) 貝崎綾子(Keyboards) ◆Official Website http://tyo-jpn.syncl.jp/
◆Setlist
M01. Crazy Doctor/LOUDNESS M02. Like Hell/LOUDNESS M03. We Rock/DIO M04. To Hell With The Devil/STRYPER M05. Heaven And Hell/BLACK SABBATH M06. Worrior/RIOT M07. Forever/Y&T M08. Angel Dust/LOUDNESS M09. Draem Fantasy/LOUDNESS
![]() ■人間椅子
『HAMMER BALL2016×NoMaps』のメインアクトにラインナップされたのは人間椅子。1990年にメジャーデビューしてから、唯一無二のコンセプトで独特の世界観を表現している個性的なバンドだ。アルバム『萬燈籠』に収録されている「此岸御詠歌」がSEで流れると場内はドゥームなムードに染まる。メンバーがステージに上がり、人気曲「相剋の家」で人間椅子のステージは始まり、ハードロックテイストの「芳一受難」が続けてプレイされる。和嶋慎治[以下:和嶋]はギブソンSGをヴィンテージタイプのマーシャルアンプで鳴らし、ヘヴィでありながらもナチュラルにドライヴした心地良いトーンを聞かせる。
人間椅子にとって『HAMMER BALL2016×NoMaps』が2016年3度目の北海道でのライヴであり「I Love Hokkaido!I Love Sapporo!」とリラックスしたMCで場内をなごませた後、「なまはげ」「冥土喫茶」で妖しげで不気味な雰囲気から「Die! Die!」と掛け声を叫ばせるスピード感溢れるメタルテイストなニュアンスまで、オーディエンスのノリを自在に操りながら人間椅子独自の世界を表現していく。鈴木研一[以下:鈴木]は不気味さと可愛らしさを同居させたようなキャラでオーディエンスを楽しまながら、BCリッチのベースを重厚なトーンで鳴らしてグルーヴを生み出す。ナカジマノブ[以下:ノブ]がオーディエンスを盛り上げる「超能力があったなら」がプレイされ、和嶋はフェイザーやテルミン(1919年にロシアで発明された世界初の電子楽器)を使用する等、エフェクティブなギターサウンドで曲を彩る。アップテンポな「針の山」をステージ最後の曲にチョイスした人間椅子。人間椅子のエッセンスを凝縮したようなパフォーマンスにオーディエンスは圧倒されたようで、人間椅子は『HAMMER BALL2016×NoMaps』のメインアクトとしての責任を充分に果たしたように思う。
◆人間椅子
和嶋慎治(Vocals & Guitar) 鈴木研一(Vocals & Bass) ナカジマノブ(Vocals & Drums) ◆Official Website http://ningen-isu.com/
◆Setlist
M01. 相剋の家 M02. 芳一受難 M03. なまはげ M04. 冥土喫茶 M05. 超能力があったなら M06. 人面瘡 M07. 針の山
![]() ■ENCORE SESSION
アンコールとして用意されたのは、この日の出演バンド混成チームによるセッションタイム。人間椅子の和嶋・鈴木・ノブに、SABER TIGERから下山・木下・田中が加わり、月光グリーンのテツヤと二井原がステージに上がる。そこでプレイされたのはAC/DCの「Highway To Hell」で、二井原と下山はロックシンガーとしての本領を発揮し、そこに負けじと絡むテツヤが頼もしい。トリプルギターの音圧はとてつもない轟音でオーディエンスに襲いかかり、和嶋・木下・田中がそれぞれ個性を発揮したアドリヴソロを披露して「Highway To Hell」が終了し、すぐに二井原が「Let’s Get Fanky! CRAZY NIGHT!!」と叫び、和嶋があのリフを弾き出すと場内は大炎上!HARD ROCK / HEAVY METALにフォーカスした『HAMMER BALL』に足を運ぶ者にこの曲を知らない者は居ないだろう。
他の出演者もステージに上がり、オーディエンスと一緒に「M・Z・A!コール」を繰り返しては『HAMMER BALL2016×NoMaps』の成功を喜んでいたようだ。下山は最後に改めて出演バンドを紹介し、オーディエンスへ「また来年会おうぜ!」と感謝の意を伝えて、ステージから下がる際に深々と一礼。『HAMMER BALL』は決して巨大なフェスとは云えないが、下山が拵えた「ROCKのテーマパーク」でしか感じられない何かが間違いなく有る。HARD ROCK / HEAVY METALにフォーカスしたピュアなロックイヴェント『HAMMER BALL』が今後も継続される事を願う。
◆ENCORE SESSION
二井原実(Vocals) テツヤ(Vocals) 下山武徳(Vocals) 木下昭仁(Guitar) 田中康治(Guitar) 和嶋慎治(Guitar) 鈴木研一(Bass) ナカジマノブ(Drums) ◆Setlist M01. Highway To Hell / AC/DC M02. Crazy Night/LOUDNESS ![]()
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 本イベント翌日(2016年10月16日)に開催された『Acoustic Night(二井原実&下山武徳)』はコチラ↓ http://www.beeast69.com/report/158496 ◆関連記事 |