特集

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:幡原裕治

本誌BEEASTが自信を持ってプッシュする太鼓判アーティストの特集、第41弾はクレヨンイーターに焦点を当てる。メンバーは市川マコト(Vocal, Guitar & Sampling)、アキヤマカズヒロ(Guitar)、小野町子(Bass)、武藤巧磨(Drums / Synthesizer)。2011年に結成し、結成当初からTHE STAR CLUB矢沢洋子KEYTALKらとともに台湾ツアーを敢行し、頭脳警察外道らと共演を重ね、アジア最大級の野外フェスSpringScream2012では、若手バンド異例の大トリでの出演を果たすなど注目を集めた。
 
2015年にベーシストを募り、小野町子が加入。すぐにレコーディングを開始し、1stフルアルバム『サタニックマジョルカ』を制作。1年を経て、2016年10月26日(水)に INSIGHT MUSICから全国リリースする。
 
「性別があるらしい」、「空飛ぶ象」、「ヘッドフォンしてるから無敵!」など全13曲を収録し、作品キャッチコピーからアルバムに収録された楽曲、歌詞に至るまで、独自のサイエンスフィクション、ストーリー性を感じさせる作品に仕上がっている本作。ジャケットはRyo Yambeがデザインを手がけている。
 
クレヨンイーターの音楽を聴くと、大人になるにつれて日常に忙殺され忘れてしまっていた、幼少期の”おれなんでもできるんだぜ!”という万能感を呼び起こされる。図工室でパレットに絵の具を溶かし始めた瞬間。理科室でマッチで起こした火をアルコールランプに灯す瞬間。家庭科室でミシンの足ぺタルを踏む瞬間。あのワクワクを単に懐古するだけでなく、「よし、もう一度」と踏み出すきっかけになる。
 
本誌BEEASTでは今回、クレヨンイーターのメンバー4人へインタビューを実施。結成の経緯から楽曲制作の舞台裏まで余すところなく話を聞いた。なお、本インタビューの実施にあたっては音楽専門学校ミューズ音楽院協力のもと、ミュージックビジネス専攻の授業の一環として実施した。
 

クレヨンイーター
2011年、結成。
10月タワーレコード限定V.A.『Garage Blast』発売。(他、go!go!vanillas, the twenties等)
10月31日初の自主企画イベントに、BAD BRAINS, SUBLIME, WHITE ZOMBIE, SMASH MOUTH等のメンバーからなるLONGBEACH REHABをカリフォルニアから招聘し、共演。
2012年3月、頭脳警察/THE PRODIGAL SONSの前座に大抜擢。
4月、THE STAR CLUB/矢沢洋子/KEYTALK等と共に台湾ツアーを敢行。アジア最大級の野外フェスSpringScream2012に出演。
6月、THE MANFREDS(=MANFRED MANN)の結成50周年記念来日公演2日目に、ゲスト出演。(一日目はTHE NEATBEATS、三日目は甲本ヒロトザ・クロマニヨンズ))
7月、disk UNION無料サンプラーCD『CRAZY DIAMOND RECORDS SAMPLER 2012』に参加。
12月、外道主催イベントにて、外道と共演。
2013年3月、1stミニアルバム『頭の中の色』発売。
2014年5月、完全無料CD『ボクが見つけたクレヨンイーター』発表。(配布終了)
2015年4月、小野町子加入。
今秋、全国デビュー!
 
現実との境界を失ったかのごとく妄想から、等身大の葛藤までを、独自のサイエンス・フィクションに落とし込んだ歌詞世界とそれを支える楽曲。
その世界観を大真面目に描き出さんとするライブは、もはやファンタジー。
クレヨンイーターは新時代の目覚まし時計とも呼べるひとつの哲学かもしれない。

 

 

ギターを始めたきっかけは「巻き戻しが面倒で」
—クレヨンイーターの結成は5年前の2011年ということですが、その経緯を教えてください。

 
アキヤマ:元々マコトくんの前のバンドが好きで、ライブを観に行ったり遊びに行ったりしていたんですが、そのバンドが活動休止して。その後Twitterで新しいバンドを組みたいとつぶやいていたのを見て「俺にやらせて!」って言って、そこからのスタートですね。
 
市川:彼もギター、僕もギターで、その後さらに「ギターやりたい」という人が現れて、「ちなみにドラマーってもう決まってますか?決まってないならうまい友達がいるので一緒に連れて行っていいですか?」と言われて、その人の付き合いで来てくれたのが武藤なんです。
 
武藤:結果、ギターの子じゃなくて、付き合いで来た俺がドラマーで入りました。
 

—そして何人かのベーシストを経て、小野さんが2015年春に加入しました。このときはメンバーを公募していましたよね。

 
市川:ベーシストがずっと定まらなくて…今回のアルバムのリリースを決めたときにサポートメンバーではなくずっと一緒にやっていけるメンバーにしたいからちゃんと募集しようと思ったんです。そのときその募集を見て来てくれたのが町子だったんです。
 

—どういうきっかけで応募しようと思ったのですか?

 
小野:ちょうどそのときにそれまでやっていたバンドが全部解散したので、探すかーってなって、探したら出てきました(笑)
 

—たくさん応募があったと思いますが、その中からなぜ小野さんになったのでしょうか?

 
市川:メールをいただいて、返信をせずにいたら…と言っても半日くらいなんですけど、そうしたら「念のためもう一度送ります」って日付の変わらないうちにもう1回連絡が来て、最初から熱心でしたね。それで、スタジオに入って…一通り会った中で誰が良かったかメンバー間で話して、気持ちを確認して。2回目に僕らが町子を呼ぶ時点では、(今後ずっと)一緒にやる人のつもりで呼びました。
 

—「一緒にやる人のつもり」というのは、どのあたりが決め手になったのでしょうか。

 
武藤:五弦ベースの謎の若い女の人が来たな!って。そこはおもしろかったね。
 

—逆に入る側としては、クレヨンイーターにどういう印象を持ちましたか?

 
小野:今まで10代の人同士でバンドを組むことが多かったので…怖かったです(笑)。
 

—想像していたのと違った?

 
小野:でも一緒にスタジオに入ったときドラムがすごく良かったので、ここしかないなって思いました。
 

—皆さんが音楽を始めたきっかけや、これまでの活動歴などを教えてください。

 
武藤:父親が音楽が好きで、ちっちゃいころから家に音楽がありふれていました。ギターも家にあって、「いつかやるんだろうな」と思っていました。
 

—ドラムと出会ったきっかけは?

 
武藤:中学校で友達に誘われて吹奏楽部に入り、そこでドラムと出会いました。そこに入らなかったら多分ギタリストになってたんだろうな(笑)
 

—ちなみに幼少期はどのような音楽を聴いていましたか?

 
武藤:KISSを聴いて「なんじゃこりゃ?」って思ったのは覚えてますね。あとは母親のお腹の中にいる頃からDavid Bowieは聴かされていたようです。
 
アキヤマ:僕は前のバンドまではギターボーカルでした。バンドを始めたのは中学生のときで、地元の友達と組んだのが最初です。ギターを持ったきっかけは親父にエレキギターをもらったんです。中1の頃3000円くらいのアコギをもらって、即挫折したんですけど、中2のときに親父から、昔使っていたグレコのBrian MayQueen)モデルをもらって、そこからですね。
 

—お父さんもやってたんですね。

 
アキヤマ:遊び程度だったみたいですけど。僕自身も音楽を聴くのはずっと好きで、GLAYとか90年代の日本のロックバンドが好きだったんですけど、中学3年生のときに衝撃的な出来事があって…。
 

—詳しく教えてください。

 
アキヤマ:松本大洋原作の『青い春』という映画を観たのですが、その中でTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTがかかっていて、カコーン!と(笑)。そこからロックバンドが好きになって、THE ROLLING STONESTHE BEATLESなどロックンロールをさかのぼるようになって、ぼくもああなりたいという思いからバンドをやるようになりました。高校に入ってからも軽音部に入って自分のギターボーカルのバンドとリードギターのバンドを並行しながら活動していました。
 

—中3のときのミッシェルとの出会いが人生を大きく変えたんですね。

 
アキヤマ:本当に、世界がカコーンと曲がっちゃった感じなんです。人生ごと、まるごと持っていかれるくらいの衝撃でしたね。
 
市川:ギターを始めたきっかけなんですが、中1ぐらいのとき、THE BLUE HEARTSの「少年の詩」という曲のイントロが好きで、当時カセットテープに録音したものをイントロ部分だけ何度も巻き戻して頭出しして再生していたんです。そこだけを聴いていたくて、それが幸せで。でも巻き戻しの作業が面倒で、自分でやったら早いなと思って、「これは何の音?」って友人に聞いたら「ギターだ」っていうので、じゃあギターを始めようと。
 

—それでギターを手に取る、と。

 
市川:当時僕も親の楽器が家にあって、それがベースだったんですけど、ベースの弦4本はギターの上4本と同じになってると聞いたから、ベースでコードを弾いたりしていて。だから、初めてギターを買えたときはコードを押さえるのがなんて簡単なんだ!ってびっくりしましたね(笑)。それがギターを始めたきっかけです。
 

—中学生時代にコンピューターのようなものが身近になくて良かったですね!

 
市川:そうなんですよ。高校生になってMDを使うようになって、そうしたら頭出しができるようになって「これ自分で弾かなくていいじゃん」って(笑)。10年違っていたらギターに出会っていなかったかもしれませんね。
 

—その後、バンドを組んだのはいつ頃ですか?

 
市川:高校生になるまでバンドを組めなくて、高校生になっていろんなバンドを組んで、クレヨンイーターの前に組んでいたTHE イギーポップ狂 チャコペンシルズっていうバンドを18歳のときに組んで、19歳でCDも出せて、このままずっとやっていきたいなって思って…
 

—THE イギーポップ狂 チャコペンシルズはどういう経緯で結成したのですか?

 
市川:ドラムは高校の同級生で、ベースはmixiで知り合ったんですけど、ある日突然「君って変な人だよね」って一言メッセージが来て(笑)。見てみたらアイコンが手書きのヒロト甲本ヒロト)とマーシー真島昌利)だったので「そうだよ。君と同じだよ」って返事をして。それから一緒にレコードを聴いたりして遊ぶようになりました。
 

—強烈な出会いですね。

 
市川:THE イギーポップ狂 チャコペンシルズは最初、新しいものをやろうということでパーカッションやバイオリンのメンバーを入れて、4拍子の曲はやらないとか、ひたすらアバンギャルドなことをしようと思って結成しました。でもすぐに、昔のロックンロールとかガレージロック、パンクとか、気づいたら普通に好きなことをやっていました。それで結成から1年で憧れていたレーベルからCDを出せて。バンドを組んだ時の一番の目標が「10代のうちにCDデビューをする」ということだったので、それがすぐに達成できたんです。その後はひたすら自分の憧れのミュージシャンと対バンしてみたいなと思っていたんですけど、具体的な目標はなく、「売れたい」とかもなかったですね。
 

—それから3~4年活動して、バンドの解散に至った理由はどのようなものだったのでしょうか。

 
市川:僕以外のメンバーが就職したいっていう、よくあるやつでしたね。なので、次にバンドを組むときは条件として「将来こういう家庭を築きたい」「こういう職に就きたい」というしっかりとした夢を持っていないテキトーな人を集めようと思いましたね(笑)。
 

—そんなテキトーなメンバーで構成されたのがクレヨンイーター、ということで(笑)。最後に小野さん、音楽を始めたきっかけを教えてください。

 
小野:もともと音楽はそんなに好きじゃなくて…地元が青森なんですが、楽器屋さんが出来て観に行ったら楽器が置いてあって、買おうかってなって(笑)、お年玉でベースを買って、そこから始めました。
 

—それは何歳くらいのときですか?

 
小野:それが13歳くらいです。で、たぶん高校卒業した後就職もできないだろうから、音楽やるか、と。
 

—そこで様々な楽器の中からベースを手に取ったのはなぜですか?

 
小野:楽器が何だったかはわからなかったのですが、青くてキラキラ光っていてかっこいいからこれにしよう、って。
 
市川:それがギターだった可能性もあるわけだね。
 

—なるほど。最初はどういう曲を弾いていたのでしょうか?

 
小野:教本をひたすらやり込んでいました。あとは母が福山雅治を聴いていたので、ひたすらそれをやっていました。その後初めてバンドを組んだのは14歳頃で、DIR EN GREYのコピーバンドです。
 

—そこから、楽器でやっていこう、と決意して。

 
小野:学校が嫌だったので。それで、16歳でいきなり東京はまずいってなって、仙台の音楽専門学校に進学しました。
 
市川:まずいっていうのは親御さんの目線だよね(笑)
 

—仙台に出てからはどういうバンドを組んでいたんですか?

 
小野:色々です。声をかけられたものは全部やっていたので、多いときで15くらいバンドを掛け持ちしていました。
 

70年代オマージュ × 00年代~の融合 × 温かい日本語歌詞を…
—クレヨンイーターを結成して、当初はどのような青写真を描いたのでしょうか。

 
市川:目標は特に決めてなかったですね。ガンガン活動する、ということを僕はしたくて。バンド活動を楽しくしていくために「たくさんの人の前でやりたい」とか「かっこいい人たちと一緒にやりたい」とかが中心で、メンバーの中でこういうことを目標にしようというのは特になかったですね。
 

—よく「音楽性の一致/ズレ」みたいなことがバンドの命運を握ると言われますが、その辺りは話し合ったりしたのでしょうか。

 
市川:僕も武藤と同じで60~70年代のロックが好きで、そういう音楽をベースにしたものを前のバンドでやっていました。クレヨンイーターも最初はその延長という感じだったのですが、ゆくゆくは…ということでアキヤマと話し合ったのは、もうちょっと2000年代以降の、The Strokes以降の音というか、もうちょっとカチッとしたクールな音を出せたら楽しそうだよねって。
 

—2000年代以降ですか。なるほど。

 
市川:で、そういうバンドのアンサンブルとしてそういう音を出していくにしても、歌だけは温かい日本語を乗っけていけたら、それはあまり他にそういう音楽を聴くこともないし、自分たちも楽しくできて面白いだろうから、ゆくゆくはそういうふうになっていきたいね、と最初に話していました。活動し始めた1、2年目はそんなことも忘れてやっていたのですが、いつのまにかそっちの方向にシフトチェンジできて。
 

—活動を続けていくうちに自然とオリジナリティが確立していったということですね。

 
市川:70年代のロックをなぞらえてやっているだけだとしょうがないよねっていって、それで今のクレヨンイーターが出来上がった感じです。
 

—これまでを振り返って印象的なライブを一つ挙げるとすると、何でしょうか?

 
武藤:台湾(=2012年4月の台湾ツアーとフェス出演)は面白かったですね。
 
市川:前のバンドのつながりで誘ってもらいました。お客さんは台湾に限らず世界中から集まってくるようなイベントで、現地の人の割合は半分くらいでした。特にクレヨンイーターのライブに集まってくれたのは現地在住ではない人が多かったです。わざわざ海外から音楽を楽しみに来ている人たちで、白人の方が多かったです。すごく音を素直に楽しむ人たちが多かったのが印象的です。
 
アキヤマ:日本語の歌詞が分かるわけでもないのにバラードの曲は涙を流して聴いてくれたり、ステージに来いよ!って一言言ったら本当にステージに人があふれちゃったり…音楽を素直に伝える、楽しむという環境が整っていて、音楽そのものの力を感じることができて楽しかったですね。
 
市川:このライブ出演を経て何か決定的に変わった!というのはないですけど、多分継続の力にはなったと思います。そういう体験がないと音楽って知らない人の気持ちを動かすことができないものだと思い込んでしまうかもしれないし。音楽の持つ力を実感できたので、バンドを続けていく力にはなったと思います。
 

—あと個人的に印象に残っているのは、高校生を集めた企画(参照:【特集】クレヨンイーターpresents「ロックンロールハイスクール!」)とか、自分たちの下の世代と交流をしたり、下の世代にメッセージを伝えたり…ということを積極的に行っていたと思うのですが。

 
市川:はい。元々そういう気持ちで音楽をやっていました。中学生のときの自分が聴いてかっこいいと思えるものをやりたいと。音楽があったから、音楽に救われたから、みたいな部分がみんなあると思うんですが僕もあって、そういうきっかけになれれば。音楽の入り口になったり、もっと深いところに連れて行ってあげられる存在になりたいし、そうなれなければやっている意味がないと思うんです。
 

—そうした思いが曲に込められているところもあるのかなと…たとえば「ヘッドフォンしてるから無敵!」という曲も。

 
市川:そうですね。ただ自分が学生の時に感じたものだけをというよりは、今自分は28歳ですが、今だからわかることをあの時の自分にどう伝えたらヒントになるかなということや、自分が5年後にこういうことを感じそうだなっていう、そこで得られそうなものを勝手に想像して、それをまた10代の自分に持っていくとか…そういう思考は好きで色々やりますね。
 

◆リリース情報
クレヨンイーター『サタニックマジョルカ』
・2016年10月26日(水)発売
IMCA-0017 価格:2,300円(+税)
発売元:INSIGHT MUSIC  販売元:BM.3
<収録曲>
M01. 性別があるらしい
M02. ベビアペ
M03. 空飛ぶ象
M04. 白亜紀の想い出
M05. 明日の人間
M06. 悪魔の涙
M07. 猫が歩いてたよ
M08. 時計
M09. 君が言うなら
M10. 怪獣前線
M11. テレビ
M12. サタニックマジョルカ
M13. ヘッドフォンしてるから無敵!


 
 
 


 

「ハラペコ博士がつくったヒーロー細胞活性剤」待望のフルアルバムを解剖
—2016年10月に1stフルアルバム『サタニックマジョルカ』がリリースされます。バンド結成から5年で初のフルアルバムということで、まさに”待望の”という表現がしっくりくるのですが、アルバムの構想はいつ頃からあったのでしょうか。

 
市川:アルバムを作りたいと思ったのは2014年の夏頃でした。その前からCDを作りませんかという声はあちこちから頂いていたのですが、その頃は「これがクレヨンイーターです」と言いきるものをまだ作りたくないなという思いが強くありました。でも2年前の夏頃から、そろそろ「自分たちはこういうバンドだ」って言えるようになったんじゃないかと思って、アルバム制作を決意しました。それから、「2015年秋にリリースしよう」「こういう内容にしよう」と色々計画して。
 

—今回収録されている13曲は、レコーディング段階から決まっていたのですか?

 
市川:レコーディングするときには曲順まで決めていました。アルバムの方向性を考えて、その中でロックンロールロックンロールしている曲だけを入れるアルバムにしても仕方がない、じゃあどういう方向性にしようかと話し合って。ベースの町子が加入するちょっと前に曲の選抜をして、このままじゃ使えないっていう曲はアレンジし直して、今からの方向性に合う曲を作ろうということで2~3曲新たに作るなどして、2015年の頭には曲が揃っていました。
 

—当初の目標は「2015年の秋」ということで、レコーディングはいつ頃に始まったのですか?

 
市川:2015年3月から準備して4月の終わりにはプリプロを始めて、6月にはレコーディングを始めていました。本番に使っている音を録っている時間はすごく短かったです。録った後のミックスは自分たちの音にしたかったので時間をかけましたが、演奏自体はパッと終わりました。
 

—当初は順調にスケジュールが進んでいたわけですね。それが、途中で…

 
市川:そうなんです。夏頃に、当初の予定だった2015年秋のリリース予定が頓挫してしまって。どういう風に調整しようかとメンバーとスタッフと一緒に模索しました。もしかしたら秋には出せないかもという気持ちでの作業が続きました。ただ、リリースが延びたことはクレヨンイーターにとって良いこともあって。
 

—というのは?

 
市川:いつリリースできるか分からないから音にこだわる時間を得られたかなと。今思えばそれが良かったと思います。
 
武藤:普通はそこまでやらないだろうってくらいこだわったよね。その時間があったおかげで。
 
市川:ラフミックスをたくさんつくったんですよ。
 

—ラフミックスですか?

 
市川:楽器同士のバランスとかは最初の時点で決まってきます。そこも時間をかけましたが、それはだれもが当たり前にやってると思うんですけど、その後ラフミックスをいっぱい作って。「じゃあ今風のミックスにしたらどうなるか」「昔っぽいものにしたらどうなるか」とミックスのバージョンをたくさんつくっていって、「これってクレヨンイーターの音だよね」って言われるようにしたいなと。
 

—なるほど。

 
市川:素直にかっこいいものなんだけど、よく聴き比べてみるとあんまりないものかもしれない、という音にしたくて。ヘッドフォンでじっくり聴いて、自分が今まで好きで聴いていたアルバムと聴き比べてみてほしいです。
 

—1年のブランクがあったことが、かえって良い結果になったということですね。

 
アキヤマ:これからのクレヨンイーターはこれだ!というアルバムに仕上がりました。
 

—楽曲を作るプロセスについて教えてください。クレヨンイーターの楽曲には絵画にも通じる芸術を感じます。どのように着想を得て、どのような工程で曲を完成させていくのか…というところが伺えれば。

 
市川:バンドのアレンジのアンサンブルを考えるのが好きで、ギターがこういうメロディを弾いているときにベースをこう絡めて、こう鳴ったら面白いな、っていうのが思いついたときに、実際に曲にしようと思って作業します。メロディがあってそれに伴奏を付けるだったり、こういうコード進行、こういうリフっていう組み合わせが面白いなって浮かんだ時にそれを曲に育てていきます。
 

—その組み合わせの中には歌詞も含まれるのでしょうか?

 
市川:それもあります。完成像がパッと浮かぶものをつくっていることが多いですね。完成像が面白そうだなって思わないと、始めないです。
 

—例えば9曲目「君が言うなら」は、恋人の言いなりになっている人への皮肉なのかなと思ったのですが…

 
市川:うーん、どっちかっていうとそのままストレートなラブソングのつもりですね。でも、好きな解釈があっていいと思います。「愛しているからいいよ、なんでも」と言っているのを客観的に見たら「本当かよ」って言いたくなる気持ちも芽生えると思うし。
 

—メンバー皆さん個々のイチオシ曲を教えてください!

 
小野:私は「怪獣前線」が好きです。イントロがかわいいです。
 
市川:「悪魔の涙」です。どの曲も基本的にそうなんですけど、僕は自分が音楽的に好きな要素をいろんなところから引っ張ってきて詰め込みたいと思っていて、実際にそういうフレーズがなくても「あれっぽいな」っていう匂いを出したり。それぞれの曲にいろんなフレーバーを詰め込むようにしていますが、「悪魔の涙」は特にいろんな自分の好きなフレーバーを詰め込めた宝箱感、おもちゃ箱感があります。音楽的にやっていても楽しいし、聴く人も何度も聴いてもらっていろんなものを見つけてもらったりいろんなものを好きになってもらうきっかけになる曲じゃないかなと思います。
 
武藤:全部好きですけど(笑)、タイトルトラックになってる「サタニックマジョルカ」は特に好きですね。今日本で他にこういう音楽を鳴らしてるバンドはいないですよね。そういった意味では貴重だと思うし、どんどんこういうのをみんな聴けばいいのにって思っています。
 

—なぜこれがアルバムタイトルになったのですか?

 
武藤:ものすごく深い意味があるわけではないよね?
 
市川:僕のイメージの中ではマイノリティ、マジョリティの「マジョリティ」からこの言葉を作りました。マジョリティの存在に押しつぶされないぞ、ということだったり、マジョリティの存在にみんなも負けるなよ、という気持ちを込めているというか。それをわざわざ言う必要はないかもしれないけど、そういうものを感じ取ってくれる人がいてくれてもいいと思うし、そういう意味なのかなって思ってくれる人が100人に1人くらいいたら面白いかなって思いますけど。
 

—そういう意味合いが込められてたんですね。

 
市川:単純に語感がかっこいいから、っていうのをオフィシャルな理由にしようかな(笑)
 
アキヤマ:僕は「猫が歩いてたよ」を推したいですね。この曲はレコーディングでイントロのノイズからギューンとくるマコトくんのサンプラーから、ものすごい重ねまくって作り込んで、色んな所から音を持ってきて「これとこれを足したら面白いよね」って話して。
 
市川:一つの架空の楽器で演奏しているようにしたかったんです。デジタルでそういう音を作り込んでも良かったんですけど、実際に存在する楽器の音やデジタル楽器などいろんなものを混ぜ込んでいって世界にない新しい楽器を作りたいと思ったんです。1個ずつの音は聴こえないんですが、混ぜ込んで面白い音をつくろうと。
 
アキヤマ:この曲はサビもポップだし、俺のギターフレーズもかっこいいし、歌詞に関してもいい具合に仕上がっていると思います。
 
武藤:楽器すごい使ったよね。いくつ使ったのか、メンバーも把握していないくらい…
 
市川:スタインウェイのピアノを弾かせてもらったり、鉄琴もちゃんとしたオーケストラ用のグロッケンを叩かせてもらっている一方、メンバー私物のトイグロッケンも使ったり…それも実際に聴き比べて、曲によっていいと思った方を採用しています。他にも、バイオリンをゲストミュージシャンの方に弾いてもらったり、バランス的にはロックバンドの曲が入ってるんですけど、細かいところでいろんな楽器を使っています。
 

—今お話を聞いていても本当に思いますが、ギュッと詰まったおもちゃ箱から一つずつおもちゃを取り出していくような感じがあって、バックミュージックとして聴き流せるアルバムじゃないなと思います。

 
武藤:どっちがいいのかわからないですけど(笑)
 

—色々発掘する楽しさがありますよね。

 
武藤:そういうアルバム好きだけど、たまに嫌になる(笑)
 
アキヤマ:今回出す『サタニックマジョルカ』は、家で一人でいるときにじっくり聴いてもらえたら、それは嬉しいかもしれない。歌詞カードをじっくり見ながら…
 
武藤:どっちかっていうと映画を観るとか本を読むに近いものです。
 
市川:今回のアルバムでは僕が10代から一番憧れていたディレクターさんと一緒に仕事ができたり、自主製作でアニメのビデオを作ってくれる人がいたり、楽曲を映画に使ってくれたり、いろんなコラボレーションが実現しています。他にも、これからカメラマンになりたいと思っている人など、クレヨンイーターの仲間になってくれる人をまだまだたくさん探したいと思います。この記事を読んで「クレヨンイーターと何か一緒にやりたい」と思ってくれた人がいたら、いつでも、遠慮なく声をかけてください!
 

 
◆クレヨンイーター 公式サイト
http://crayoneater.xxxxxxxx.jp/
 
◆ライブ情報
・2016年11月19日(土)【東京】浅草Golden Tiger
・2016年12月08日(木)【東京】新宿Marble
・2016年12月15日(木)【宮城】仙台FLYING SON
・2016年12月19日(月)【愛知】名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
・2016年12月27日(火)【神奈川】藤沢GIGS SHONAN FUJISAWA
・2017年01月07日(土)【東京】渋谷clubasia

◆企画協力:ミューズ音楽院
http://www.muse.ac.jp/
 
◆インフォメーション
ロック・ポップスのジャンルでは日本で初めて1984年に
文科省の認可を受けた音楽専門学校。
OBにはB’z松本孝弘をはじめ、GRANRODEOe-ZUKA
藍坊主藤森真一など多数。
 
これまでの2年制専門課程に加え、社会人や大学生でも通いやすい、
1年制夜間コース(ボーカル専攻、ミュージック・ビジネス専攻)も
スタート! 詳細はコチラ!
http://www.muse.ac.jp/course/#course-top-night
 

 

 
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