FEATURE丨2015.03.31
大盛りレポ!ロック増量 Vol.22 THE冠 単独公演~マグロ漁、その前に~表、裏、裏の裏

2015.3.6@大阪・梅田Zeela
少しだけ春の兆しが見えだした3月のはじめ、梅田Zeelaでは春の陽気どころではない灼熱の暑苦しい夜が繰り広げられていた…
『THE冠単独公演~マグロ漁、その前に~表、裏、裏の裏~』と銘打たれた今回の公演は、春から劇団新感線の舞台出演のためにライブをしばらく行えないTHE冠が、舞台公演を遠洋漁業に例え、その前に存分にメタルを堪能する単独公演を東京と大阪の2カ所で行ったもの。
特筆すべきはその公演内容の凄まじさ。通常の公演でも体力と精神力の限界までアツいライブをするTHE冠が、1日のうちに『表冠(通常の公演)』『裏冠(マニアックでレアな演出の公演)』そして『裏の裏冠(DJタイムと打ち上げパーティ)』の3公演を一気にやってしまうという、演者とオーディエンス共に限界まで追い込む物凄いライブなのだ。
ちなみにTHE冠とは…1991年、ヘヴィメタルバンドSo What?を結成、1995年にメジャーデビューを果たした冠徹弥(Vocal)がSo What?解散後に「THE冠」として行っているソロ活動。現在のサポートメンバーはBETCHI(Guitar)、THUNDER(Bass)、YOUTH-K!!!(Drums)に冠徹弥を加えた4人編成となっている。
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「始まったぞ~」とシャウトしながら1曲目から鉄兜を脱ぎ捨ててしまった冠徹弥はこの時点で既にめちゃくちゃ楽しそうだ。続く「マスカラ」では満員の会場がモッシュピットと化す。「哀罠メタル」のラストではお得意の顔芸を披露するも、肝心な照明のタイミングが全く合わないというハプニング(むしろわざとの演出?)もありつつ、オーディエンスの愛ある”ハゲ”コールを一心に受ける。
ちなみにTHE冠のライブでは冠徹弥のことを愛をこめて”おっさん” ”ハゲ”とファンが呼んでいる…実際はハゲではなくスキンヘッドなのだが。
「今日は暴れる曲しか用意してません!世界一楽しい箱にしましょう。やれんのか?かかってこいや!」と威勢のいい煽りのあとは”すいませーん”のフレーズにあわせてお辞儀のようなヘドバンを繰り返す「ヘッドバンギン謝罪行脚」。曲のかっこよさと自虐的でセンスあふれる歌詞のオンパレードで会場は熱気と笑いの渦に包み込まれる。
合間にちょいちょいこじゃれたMCを挟んでくるのだが、テンポがよすぎて流れが全然とまらない。夢中になって暴れていたオーディエンスは次のMCで思い出した。そう、今日の宴はむちゃくちゃ長いことに…
「そろそろ後のこと考えてびびりはじめる時間ですよ~!うるさくなったら耳栓売ってるからね(笑)」そういえばこの日なぜか物販コーナーの片隅に耳栓が200円で販売されていた…もちろん会場内に耳栓をした人は見当たらないが。
この規模のライブハウスにしては不釣合いなほどの爆音が響き渡る中、表公演は早くも山場に差し掛かる。「男達の挽歌~ミソジヨソジオヤジエレジー~」「バカポジション」を畳みかけ、しばらくイベントなどでは披露されていなかったTHE冠のライブ名物ともいえる「エビバディ炎」では”あんたもう44やで~”という叫びで絶妙な哀愁と軽妙な語りをきかせ、「帰郷」では嫁と両親の板挟みになる中年の哀しさを切々とシャウトで歌い上げる。
「ここはTHE冠の世界や!おまえらも俺らも主役や!」というMCからの「民よ」では会場内超絶ヘドバンの嵐!”死ぬまで逃げるつもりか”のフレーズが心につきささる。ここまで歌い続け、年輪を重ねてきた男だからこそ出せる魂のシャウトが物凄い説得力をもって襲いかかってくる。
即興でBETCHIがギター弾き語りをしてくれるというサプライズも挟み、普段のライブでは見ることのできないレアな演出を惜しげもなく披露してくれたあとは、ライブの鉄板「糞野郎」「最後のヘビーメタル」でもう既にワンマンライブ1本分、THE冠のメンバーもオーディエンスもこれからまだまだライブが続くことを忘れてるんじゃないかと思うほど全力で叫び歌い暴れた。
重ねていうが、本日はこれで終わりではない。これからもう1本同じ、いやこれ以上の熱いライブが繰り広げられるのだ。
一度会場からはけたオーディエンスは、ほとんど帰る人がいないままもう一度受付に行列を作るというなかなかできない体験をしていた…。
M01. ~テーマ オブ 鉄兜~帰ってきたヘビーメタル
M02. マスカラ
M03. 哀罠メタル
M04. ヘッドバンギン謝罪行脚
M05. サンダーロード
M06. パーティーソング
M07. 永遠の咬ませ犬
M08. 男達の挽歌~ミソジヨソジオヤジエレジー~
M09. バカポジション
M10. エビバディ炎
M11. 帰郷
M12. 民よ
M13. 解放
~べっち昭和歌謡弾き語り~
M14. 糞野郎
M15. 最後のヘビーメタル
-encore-
M16. 中3インマイドリームス~行ってみたいなL.Aに~
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だがしかし!昨年の表・裏公演は2日間かけて行われていることを鑑みれば、東京に引き続き大阪ではまだ見たことのない地獄絵図が待っていることは容易に想像ができる。
ほぼ定刻通りにきこえてきたのは、聞き覚えのあるあの演歌!北島三郎の「北の漁場」をBGMに登場したのは、ねじりはちまきにネイビーのナイロンパーカーという、まさに漁師そのものの冠徹弥!さすがマグロ漁!そして似合いすぎ!貫禄出すぎ!
さきほど1本ライブを終えたバンドとは思えないイキの良さで「鉄の心臓」「なんで言うたんや」など、普段ではなかなか聞けない、隠れた名曲揃いのアツいメタルサウンドが会場を再び熱くする。決して若いといえるバンドではないのに、パフォーマンス、迫力ともに全く衰えないのが逆に恐ろしい。
もちろんオーディエンスの平均年齢も10~20代とはいかない。いわゆる”いい大人”の男女が、一心に声をあげ歌い、拳を振り上げ、暴れる様はなんだか感慨深い。
THE冠だからこそ作れるこの空気、この場所では自由になれるという快感、そして目の前にいるおじさんはこんなに頑張っているという励まし。彼らはそこにいるだけで見るものを元気にしてくれる力があるのだ。
変わったというより進化したのは、いい歳の取り方をした渋みと苦労した分の説得力、そして歌い続けてきた証明にほかならない、ここまで来ても全く衰えないシャウトだ。
さらに、続くMCでは親交の深い後輩バンド、HARVESTに来週のライブのオファーをとりつけるなど、勢いは止まらない。完全にノリにノッている。
「売れたくないなんて思ってない、けど何しても売れたいとも思ってない。かっこいいと思ったものが売れればいいと思ってる。THE冠をみて何か頑張ろうかなと思ったり、明日につながればいいと思ってる」と、物凄くかっこいいMCの後に「物販で新曲買った人?(パラパラっと手が挙がる)すくなっ!」と絶妙なオチをつけて披露されたのが新曲「初志冠徹」。
タイトルに自身の名前”冠””徹”と名づけたことからも相当の覚悟が伺えるが、歌詞をちゃんと聴くと切なくて涙が出そうな曲でもある。
見ているだけでも入り込んでしまって消耗するバラードの後に畳みかけるラストスパート。裏公演本編ラスト、スタートから換算すれば既に4時間超に及ぶ大舞台の大締めは、最高にメタルで最高にキャッチーな文句なしの名曲「傷だらけのヘビーメタル」。まさに大団円にふさわしく、満場の会場は大きな声援と高く掲げた拳、ふらふらになりながらのヘドバンで応えたのだった…。
アンコールに応えて出てきたのはまさかのバルーンアートで作られたカラフルな風船兜!本人曰く、鉄兜は重過ぎるので軽量化をはかったのだそうで、今年で44歳のおじさんにしてはかなりファンシーな見た目になったところでアンコールがスタート。
”登坂車線をゆっくり進もう積んでるものが重いから”のフレーズにぐっとくる「登坂車線」、そして本当の本当のラストはやはり「担がれた冠」。4時間以上ぶっ通しでライブをした最後の最後で今更のメンバー紹介、そして「最後までつきあってくれてありがとう、また必ず帰ってきます!」という締めで、演者もオーディエンスも限界まで追い込まれたメタル耐久地獄は終演を迎えた。
M01. 鉄の心臓
M02. 何で言うたんや
M03. あなたの知らない世界
M04. 草食ロードウォーリアーズ
M05. ブラックサガス
M06. NEW WORLD~果てしなき鋼鉄の彼方へ~
M07. Oh!プリティーガール
M08. 俺なりのペインキラー
M09. ナンだっ!!チミは!?(So What?)
M10. 一発かましたれ(So What?)
M11. 初志冠徹
M12. 此処に
M13. 花占い
M14. 力(Riki)
M15. 傷だらけのヘビーメタル
-encore-
M16. 登坂車線
M17. 担がれた冠
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スタート時点で既に23:00前なのに、隙間もないぐらいのオーディエンスで埋め尽くされたDJブースでは、大舞台を終えて物凄くおいしそうにお酒を飲むTHE冠と写真を撮るのもお話するのも、音楽を聴きながら飲むのも自由という、まさにサービス精神満点!今回の宴のラストにふさわしい。
一番体力を消耗したはずなのになぜか一番元気な冠徹弥は自分の歌がかかったら歌い出したり、自らDJを担当したりシャンパンをあけたり、ついに日付が変わるまで宴は続いた…
ライブ同様レポートも長くなったが、全33曲+DJタイム、1曲たりとも手を抜かない怒濤の公演は無事終了した。こんなに聴いたのに、こんなに暴れたのに、身体は悲鳴をあげているのに、もっと聴いていたかった、もっとメタルに触れていたかった、THE冠のライブをまだまだずっと見ていたかった。
アドリブだらけの演劇を見ているような、流れるようなテンポの中から、次は何が飛び出すんだろうというワクワク感。20年以上の経験の中で培われた絶妙な間と哀愁すら漂わせる脅威の歌唱力。そして曲のゴリゴリのメタル感とまるで演歌のような歌詞のギャップ。その全てのバランスが他の誰でもない”THE冠ワールド”を作り出していて、似ているバンドが見当たらない。
梅田Zeelaはほぼ満員の状態だったが、できればもっともっとたくさんの人に体験してもらいたい、本当にいい時間だった。これからマグロ漁に出る彼が、帰ってきたときに今度は何を見せてくれるのか、楽しみに待っていようと思う。
【コラム】山口“PON”昌人 PON the ROAD ~Route 5~
https://www.beeast69.com/column/pon/94761
【特集】ARABAKI ROCK FEST.13
https://www.beeast69.com/feature/71848
































































































































