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木暮“shake”武彦丨2015.07.03
その1 「Break On Through (To The Other Side)」
“魔界”。
いつの頃からか自分のなかでは最も重要なキーワードになっている。
魔王がいて血の川が流れているというのではなく、面白半分に使っているのだが、音楽でも何でもそこに「魔」を感じる何かがあるのか無いのか、自分にはそれが大きな問題だ。
その音と共に日常の現実感に穴が空いて、その向こうにある別の価値観を持つ魅惑的な世界と繋がる事が出来るのか、その領域に入り込んでない物にはときめきはない。
アブナいもの、恐い物は当然、美しい,悲しい,のんき、さわやかな物にも「魔」の気配は存在する。
作曲をしても、ギターを弾いても、「いかに魔界に入り込めるか」しか考えていない。
そこに一歩入り込めれば血が騒ぎ始め、すべてはキラキラと輝き始める。
最近はアコースティックばかりやっているが,自分はやっぱりロックミュージシャンなので、その感覚は当然ロックからやってきた物が多い。特にジムモリソンとジミーペイジ、ピンクフロイドから受けたインスピレーションは多大で、ピンクフロイドなどは自分で「原始神母」というトリビュートバンドまで作って毎年ツアーをやり、布教活動までしている。ロックだけではない、クラシック音楽や絵画、小説、女も魔界だ。
おっと,話しがヤバい方に行きそうだ。
話題を変えよう。

標高1150メートルの我が家。
ここは自分の頭の中の魔界を守り、育んでくれる物理的な魔界。
12年前から暮らし始めた富士山のふもと、森と草原,湖に囲まれて、かの有名な青木ヶ原樹海まで歩いて5分は充分魔界だろう。
ライヴツアーで長旅から戻って樹海に入るとホッとする。
あちこち長く遠出する事が多いので、家にいる時は日々散歩するぐらいだ。
なるべく現代社会の外側にいたい。
引きこもりと思われてもしょうがないが、世の中や時代の影響無く、純粋な自分の感覚でのびのびと音楽をやっていたいのだ。いったんツアーに出れば各地で通じ合う仲間と毎晩ワイワイやっているので,そこでバランスは取れている。
自然の中でひっそり暮らすのは日々発見があり,まったく退屈しない。
標高1000メートルを超えると天気予報はまったく当てにならない。
日に何度も天気はくるくる変わり,ビカビカの太陽と雲海が見えるかと思えば,次の瞬間、濃い霧の中に包まれる事も多い。
夜になれば、音も無く、月明かりの下を獣達が家の回りをうろついている。
春は魔法のように一気に緑が吹き出し、あらゆる鳥が鳴き、夏は森の中を蛍が飛び、やがてもの凄い量の枯れ葉が落ちると、冬には170センチの雪が積もり何日も世の中から完全に隔離される事もある。
季節は常に動いて止まる事は無い。
日々、自然の変化を目撃していると、この星が生きるために使っているもの凄いエネルギーを使っている事がわかる。
富士山がいつ爆発したところで不思議は無いが、文句もない。
地球も生きるためにがんばっているのだし、自分も好き好んでわざわざここににいるのだ。
新緑が吹き出した、天国のような5月から一転して、6月、魔界は一ヶ月間ぐらい霧に包まれ幻想的な世界となる。
ドアーズの“ジ・エンド”を聴き、エドガー・アラン・ポーでも読むには最高だ。

■木暮“shake”武彦 ソロライブ
http://www.psychodelicious.com/schedule.php
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■原始神母 〜PINK FLOYD TRIPS〜
http://pinkfloydtrips.com/tour/index.html
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