「ウォーク・ディス・ウェイ」その2 エアロスミス
~応援ソング~
「ウォーク・ディス・ウェイ」その2エアロスミス
「エアロビクスじゃなくて、エアロスミスよ!バカ笹井」
沙織が笹井に八つ当たりをしている。
「アタシはスタイル抜群だからエアロビなんてしなくていいのよ!アホ笹井」
バカ&アホと言われようが、当然、笹井の心は折れる訳もなく、
むしろ照れている。
「そうだよね!沙織はスタイルいいよね!きゃー」
「当然よ」
沙織はデボラ・ハリーのような妖艶なポーズをとっている。
「ひゃ~、やっぱ沙織はスゴいよ!だって神様だもんね!」
とキラキラした瞳で感心している笹井。本当にバカ。
しかし自信をつけた沙織は、再び歌い出した。
♪ カッカッカッカカ カッカッカカカカ アタシは神様~
♪ ゴッゴッゴドゴド ゴドゴドゴッドド ゴッドでゴッデス~
「え…ちょっとヒドすぎるよ沙織…驚くほど歌えてないし」
あきれる香織に、キレる沙織。
「だから歌じゃなくてKAPって言ってるでしょ?」
「今のカッパ出てこなかったからKAPになってないじゃん」
「いいのよ!KAPはアタシならではのRAPなんだから」
「ウォーク・ディス・ウェイってラップっぽいけどラップじゃないよ。
歌だよ。超リズム感の歌だよ」
「え?香織!サランラップっぽいクレラップって何?アルミ箔?」
噴水の真ん中で、山崎の手を取ろうとして苦戦している笹井は、
けれどこちらの会話に参加する。
「器用か!」
香織がツッコミを入れるが、笹井はこちらを見ず山崎の手を取り、
なんとか噴水から出すべく奮闘している。
「まーくん!みんな待ってるよ。水から出て!」
「…」
無言すぎ頑固すぎの山崎は、何気に器用に笹井の腕を振りほどいている。
「器用対決かよ」
香織がぼそっとつぶやく。
すぐさま笹井が香織に反応。
「対決?そっかラップとアルミ箔どっちがいいか?うちのおにぎりはアルミ箔だよ!」
「ああそう。どっちでもいいし…てかおにぎり関係ないし!」
「え?おにぎりじゃないの?あ、わかった!KAPってカッパ巻き?」
「ああ、そのほうが近いわ」
「まーくんがカッパだから?」
「かなり近い!」
カッパ山崎は、ムッとした顔で上半身を前後左右に動かし、
まだ笹井の救助活動に反発している。
「おお山崎!どうして噴水から出たくないの?何か理由でもあるのか?」
遠山が両手を伸ばし、王子様のように地面にひざまずいて叫んでいる。
遠山クン…やっぱなんかキャラ変わってる。
もっとAORな、アダルトでクールなところが魅力だったのに…。
香織はそう思ったが、どうやら沙織にとっては、
遠山の「ミュージカル王子」なキャラが、どストライクなもよう。
「そうよ黄桜!とっとと出てきなさいよ!」
そう言いながらも、さりげなく遠山の反応をチラ見していることを香織は見逃さない。
「沙織~~むふふふ」
香織が肘で沙織をつつくと、
「なによ!神に気安くさわらないでよ!」とさらに威張るが、
絶対「恋顔」。
「沙織、一緒に山崎を説得しよう!あいつは…オレらのバンドの仲間だ…」
遠山王子がそう言った。
必要以上に苦悩するその表情は、もはやシェークスピアふう。
「バンド仲間と決まったわけじゃないわ。
あいつが言いたいことも言わないで、ウジウジしてるのがムカつくだけよ」
威張っているがその瞳はハート型♡
異色な二人がちょっとキモイが、微笑ましくもある香織。
香織が一番「上から目線」である。
「そっか~!沙織もまーくんを応援してくれてるんだね!
だからカッパカッパってお経を唱えてたんだね!」
「お経ですって?バカ!KAPよ!」
「わははは!今のオモシロいよ笹井!」
ウケる香織に、笹井は「ありがとう、えへへ」とお辞儀している。
「なによ!アタシのKAPは、お経よりもエネルギーがあるのよ!
神のエネルギーよ!ふん!」
そして沙織は、さらなるヒドいKAPとやらで歌い出した。
♪ カッカッカッカカ パッパッパパパパ~~~~ アタシは神様~
すると、あろうことか遠山王子が口(くち)のベースを始めた。
♪ ブ ブブ ブブン ブン ブン…
沙織の顔が、パッと輝く。
笹井ほどではないが、キラッとしている。
♪ ゴッゴッゴドゴド カッカッ神神 アタシはゴッデス~
♪ ブ ブブ ブブン ブン ブン ブ ブブ ブブン…
苦悩顔の遠山王子の口(くち)ベースが何気にファンキー。
そして、香織に目で合図している。
(お前もやれよ)と。
ええええ!無理~~!
香織がそういうアクションをした瞬間、沙織がドヤ顔でシャウトした。
♪ Like this!!!
♪ デデデデ デデデデンデン!
しまった。うっかり口(くち)ギターでリフをやってしまった香織。
遠山王子は満足そうに香織に頷き、リフをユニゾってくる。
「お、これは…」
ファンクな口(くち)ベースと、これまたファンクな口(くち)ギターを口ずさむうちに、
思いのほか気持ちがよくなってきた香織。
ドヤ顔はなはだしい沙織のKAPも、ちょっとはマシになってきた。
思わず3人でノリノリになる図。
はっと気づくと、噴水の真ん中にいる笹井が完全にノッテいる。
未だ山崎に拒否られながらも、救助にトライするその動きが、超絶リズミカル。
「まーくん!ほら、オレにつかまって歩いて!まーくん!」
偶然「歩く」という言葉と「Walk」this way がリンクし、
激しく踊りながら山崎に説得している笹井に、迫力さえ感じる。
そうこうしているうちに3人の演奏(口くち)は、サビに突入。
思わず笹井のバイタリティーにつられた大声でシャウト!
♪ うぉ~くでぃすうぇ~~い!うぉ~くでぃすうぇ~~い!
「まーくん、みんな応援してくれてるよ!
みんなありがとう!もっと、うぉ~えんして~い!」
え?顔を見合わせる香織と沙織。
「沙織、あんた黄桜を応援してるの?」
「まさか、笹井が勝手に空耳アワーやってるだけよ」
「だよね。私達はなんかノリで歌っただけだよね」
♪「応援して~ぃ!応援して~ぃ!」
笹井が、ありえないほど間違えながら歌っている。
「わかった!」
遠山王子が両手で、頭の上に輪を作っている(OKマーク)。
「もっと応援するよ!さあ、一緒に!」
さあ!と勢い良く首を振り、香織と沙織に合図する遠山王子。
合図したわりには自分だけ前のめりで歌い始めた。
♪「応援して~ル!応援して~ル!」
マジか!
正義の味方すぎる遠山王子に困惑する香織。
「沙織、どうする?」
「どうって…応援なんてしてないわよ」
「だよね。私は黄桜にむしろ『あやまれ』って歌いたいくらいだよ。
こんなにみんなに迷惑かけて」
こそこそ話をしている女子達に気づいた遠山王子が「さあ!」と応援ソングを促した。
「でも遠山クンがそんなに、さあ!って言うなら歌ってあげてもよくってよ。神として」
「え?」
ダメだこりゃ。沙織の目がまたハート型になっている。
遠山王子の「さあ」もストライクゾーンだったのか。
「ただし!アタシは黄桜の応援なんてしないし、バンド仲間だとも思ってないわよ。
だからアタシはこう歌う!」
♪「応援して~(ナイ)!応援して~(ナイ)!」
なるほど。じゃ私はこう歌うわ。
♪「応援って~(無理)!応援って~(無理)!」
各々の歌詞が決まり、さらなる遠山王子の「さあ!」で再び歌い出した4人。
笹井「応援して~ぃ!」
遠山「応援して~ル!」
沙織「応援して~(ナイ)!」
香織「応援って~(無理)!」
後半の歌詞が違うので「応援」部分だけ妙に大きく聴こえる。
歌詞が違う部分も、何らかのフュージョン感を出している。
みんなの応援に感動したのか、
笹井の顔が尋常ではないほど煌めき、その輝く光が、噴水の上で虹を作っている。
「出た。笹井、なんかまたスゴいことになってるよ。なんか始まりそう」
香織の予感は的中し、
なななんと、笹井の背後にでっかい翼が浮かび上がった。
「ぎゃ~!なにあれ!」
「エアロスミスのロゴだ!」
「ホントだ!笹井の背後にエアロのロゴがいる!」
「しかも笹井仕様になってる!」
よく見ると、ロゴ中央の「A」が「S」になっていた。
「AEROSMITH」じゃなくて「SASAISMITH」だ。
これにはさすがに驚いたのか、山崎も驚愕顔であんぐりと口を開けている。
「あ、まーくんの顔が少し動いた!みんな!もうちょっとだよ!」
♪「応援して~ぃ!応援して~ぃ!」
案の定ロゴにまったく気づいていない笹井は、
光り輝きながら大声で歌っている。
「笹井!うしろ!うしろ見て!」
「え?あっっっ!!!!!」
ようやくロゴに気づいた笹井が、光を発しながら叫んだ。
「怪鳥ロプロス!」
まさかの「バビル2世」発言に、ロゴ出現よりも驚いた香織であった。
つづく
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