連載

メタルヘルス

CASANOVA 編
TEXT:桜坂秋太郎

梅雨ど真ん中。不快指数が高く、この時期は私のもっとも嫌いな日本のシーズン。カリフォルニアのような湿気の無い暑さなら、いくらでも平気なのですが、この“じと~”とした暑さに、心まで湿気っぽくなってしまいます。今月の「disk union」お薦めの1枚は、CASANOVAカサノヴァ)。1991年にリリースされた1stアルバムの再発です!メタルヘルスでCASANOVAとはこれまた実に美味しい選択。心の湿気を飛ばして、第8回目のメタルヘルスはカラッといけそうです!

ドイツのBON JOVIと表現されることもあるCASANOVAは、アメリカン系のハードサウンドにメロディアスなヴォーカルがのった知る人ぞ知る良質なバンドです。カナダのHarem Scaremと同じく、歌えるメロディ大好きな日本人にとっては、いつでもウェルカムな音楽といえます。紹介がワンパターンにならないよう「disk union」の心意気を感じるアルバム選択です。ただしボーナストラックが多く、収録時間が77分と長いのが少々気になります。。。どんなアルバムかというと、こんな感じです!

disk union 今月の一押しアルバム
 
ジャケット

CASANOVA「CASANOVA」
1. Don’t Talk About Love 4:04
2. Burning Love 4:00
3. Living A Lie 4:26
4. The Girl Is Mine 4:20
5. Rome Burns 2:00
6. Love Lies 4:11
7. Bang Bang 3:29
8. Sticky Sweet 3:50
9. Back To The Wall 3:53
10. Ride The Wings Of Freedom 4:11
11. Hollywood Angels 3:54
12. Heaven Can Wait 4:33
13. Hot Legs 4:11
14. Written In My Heart 3:46
15. Hollywood Angels (Acoustic) 4:23
16. Love Lies (Acoustic) 4:38
17. Don’t Talk About Love (Live) 4:23
18. Burning Love (Live) 4:23
19. Ride The Wings Of Freedom (Live) 4:27

【アルバム解説】
2010年6月15日発売!

若くしてジャーマン・メタル・バンドMAD MAXに加入し、素晴らしいメロディ・センスでMAD MAXをメジャーでも通用するメロディアス・ハード・バンドへと導いたMicheal Voss。彼はMAD MAX解散後はBONFIREにツアー・メンバーとして参加したりしていたが、WARLOCKを脱退したMichael Eurichらとニュー・バンドCASANOVAを結成。そして91年にメジャーからリリースされた1stアルバムが今作。MAD MAX以上にMichaelの才能が発揮され、ポップな中に哀愁を帯びた極上のメロディに溢れたメロディアス・ハードの名盤中の名盤。Michaelのヴォーカルも素晴らしく楽曲に見事ハマっており、またアコースティック・ギターやキーボードを塗したアレンジも見事。BON JOVI級にメロディ・センスが光る作品。ボーナス・トラック7曲収録のリマスター再発盤。

【CASANOVA 公式サイト】
http://www.casanovaband.com/


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【CASANOVA】実施中その1

「Don’t Talk About Love」でスタート。ギターリフからして80年代後半のロック感がバリバリで最高です。91年発売の1stということですが、Micheal Vossのヴォーカルは、この段階でかなり完成しています。やはり若くしてキャリアをスタートした人材なので、今でも色あせないのはさすが。この曲のサビ“Don’t Talk About Love~Love~”で萌えないバブル世代は居ないのではないでしょうか?というくらいのナンバー。このハーモニーが完全にツボにはまってランニングも好調です。

続く「Burning Love」も“あの時代”へタイムスリップさせてくれるナンバー。ミドルテンポにポップなサビとくれば、一般人もロックに酔ったまさに“あの時代”。エフェクターのフランジャーも心地よい定番です。アコースティックに始まる「Living A Lie」は、まさに80年代後半の曲構成。できればランニングではなく、真っ直ぐに続くフリーウェイをアメ車で走りながら聴きたい感じ。続いてヴォーカルのシャウトとギターのチョーキングが目立つ、ちょっとハードな「The Girl Is Mine」。そして哀愁バラードの「Rome Burns」。意外とバラードって走りやすいのですが、すぐ終わってしまうのが残念。

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【CASANOVA】実施中その2(アクシデント)

これまたアコースティックがフィーチャーされた「Love Lies」。歌の後ろに入るキーボードが“あの時代”を演出。サビでオーディエンスが“BANG!BANG!”とやっちゃうだろう「Bang Bang」へ。これリズムが途中で結構変わるので案外走りにくいです。続いてどこかで聴いたようなリフの「Sticky Sweet」から「Back To The Wall」。どことなくScorpionsも彷彿させるのはジャーマン精神でしょうか。そしてまたまたアコースティックで「Ride The Wings Of Freedom」。Aメロ(※歌の1番2番部分)なんてBryan Adamsばりでシビレます。サビの甘いメロディもGOODです。

ついにこのアルバムで一番キャッチーな「Hollywood Angels」。大ヒット間違いなし!素晴らしい名曲!・・・なのに、なぜブレイクしなかったの?というナンバー。時代的にあとちょっと早く、87~89年にリリースしていたら大ヒットしていただろうと思うと、悔やんでも悔やみきれないアーティストの想いが伝わってきます。ギターリフやAメロがマイナー調で、サビがメジャーという王道の手法も完璧。しかもこのナンバーはすごく走りやすいのです。あまりの気持ちよさに「We’re the Hollywood angels! Do you really wanna fly tonight!」と一人シンガロング(※サビ等と一緒に歌う行為)大会。

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【CASANOVA】アクシデント後の放心状態

しかしここで事件発生。周りのランニングマンの視線を気にせず、両手を広げて一人シンガロング大会(本人はヘッドフォンしているため声の大きさは把握していません)。麗しき“Hollywood angels”の姿を妄想して「Fly with me tonight~」瞳を閉じてしまい、大木の枝に激突。。。脳震盪直前!ヤバイぜ!しばらく強制的に休息を取り、その後は走らずに歩きました。曲はバラードの「Heaven Can Wait」へ。こんな間抜けなオッサンを、Micheal Vossは甘く癒してくれます。15~19曲目はボーナストラックで、アコースティックバージョンやライヴバージョンが入っていますが、すでに走れる状況にないため「Hot Legs」とラストの「Written In My Heart」を聴いて終了。

「disk union」紹介文にある“BON JOVI級にメロディ・センスが光る作品”は本当で、むしろ日本の音楽史に残る名イベント『SUPER ROCK’84 IN JAPAN』の西武球場オープニングアクトに、BON JOVIではなくCASANOVAが出ていたら・・・ということも考えられなくないほどの才能を感じます。ルックスも良いです。でも時代の波とズレたのかもしれません。まさにそれが“運命”というものなのでしょう。1stでこれだけの高クオリティな作品が作れるというのは、普通ではありません。

“運命”というのは恐ろしいものです。バンドを含めたアーティストの成功を左右するだけでなく、私たちの日常も左右します。昨日まで思ってもいなかったことが、今日起きるというのを誰しも経験すると思います。メタボリックのように年々積み重なった結果というものであれば“運命”とはいえないと思いますが、急な病気には“運命”を感じてしまいます。そして転勤やリストラなど、青天の霹靂とよくいいますが、それもまた“運命”。「自分の意思ではどうにもならないもの」という解釈からすると、メタボリックはそうではありません。メタボロックな同士達よ! さぁ一緒にメタルヘルス!

ランナー【CASANOVAの効果】
実施前:体重65.8kg/体脂肪24%
実施後:アクシデントのため測定不能