ロック界も若い女性の進出が目立ってきた昨今で、ギタリストとして頭角を現しているのが今回紹介するRie a.k.a. Suzakuだ。流麗なテクニックだけでなく、たぐいまれな作曲能力と豊かな世界観が幅広い層のロックファンに支持され、注目せずにはいられないアーティストの一人となりつつある。そのスキルは既にジェンダーの壁すら打ち破りそうな勢いも感じられる。今回は彼女が発表した初のフルアルバム『Kingdom of the Sun』を紹介しよう。

今回のアルバムは、初のフルアルバムにして初のインストアルバムというチャレンジングな内容が盛りだくさん。一番の注目はなんといっても豪華な参加ゲストミュージシャン陣。ベーシストに鳴瀬喜博、IKUO、日野Jino賢二、瀧田イサムというロック/フュージョン界では泣く子も黙る重鎮、ベテラン、クセモノ揃い。難解なRie a.k.a. Suzakuの楽曲の中でもひときわ光るプレイを連発し、アルバムの華やかさを演出している。

その多彩なゲスト陣に目を奪われがちだが、彼女の作曲センスにも要注目だ。これまで発表された彼女のミニアルバムでは、どちらかというとへヴィメタルの枠をしっかりと貫き通した重量感が強く感じられたが、スペシャルなゲストを大々的に採用したこと、そしてインストアルバムとしたことで、いい意味でその壁が取り払われ、自由な世界観をより広く展開しているようにも見える。

従来のようなへヴィさを持ちながらも、まるで海岸を車でドライヴする際にピッタリのさわやかなポップナンバーもあり、一方ではダンスチューンのようなリズミカルな楽曲もありと、非常にバラエティに富んでいる。

印象的なものは2曲目の「Stardust」。全編、超絶ともいえるギタープレイで満たされている中で、この曲は主旋律を追うとわかるが、ギターでプレイしているにもかかわらず歌メロのようなメロディを奏でているのが印象的だ。何らかの歌詞を意識していることも想像に難くない。ギタリストのインストアルバムはそのギタープレイ、テクニックをフィーチャーする方向に向かいがちだが、そういった方向とは一線を画した向きに進めようという意向すら感じられる。

「歌メロをギターで」というプレイ自体は、実は大きな曲者で、普通にそのまま音符だけを追っていくと歌メロはギターインスト曲と違って平坦なものになりがちだが、彼女のプレイはしっかりと続く音符を歌い切るテクニックをそこに込め、「ギターで歌う」ことに成功している。6曲目の「Heaven」もしかりであるが、これは彼女がリリースしたファーストミニアルバム『Messiah』の楽曲をアコースティックギターにてプレイしたもの。その美しさ、完成度には誰もが強く惹かれることだろう。

そんな「歌のある」アルバムであるがゆえ、インストアルバムであるにもかかわらず統一感も感じられ、アルバム全体としても聴きやすい。なかなかインストアルバムはこれ！といったものを勧めるのが難しくもあるが、インスト、ハードロックなどまだそれほど音楽に造詣のないリスナーにも安心して聴ける作品だ。入門として聴いてみても、細かくその味わいを分析してみても、様々な発見があることは間違いない。是非一度、チェックしてみることをお勧めする。

オフィシャルサイト
http://www.poppin.jp/rie_web/