連載

lead_simple

Mary’s Blood『AZURE』
TEXT:桂伸也

Aldiousを筆頭に、ガールズメタルというムーヴメントがにわかに騒がしくなりつつある昨今だが、その中でも目覚ましい活躍を続けているのが今回紹介するMary’s Bloodだ。BEEASTでは以前『BEEAST太鼓判シリーズ第15弾アーティスト『Mary’s Blood』』で紹介したバンドであるが、初のアメリカ公演や宮前重金属発掘計画の公式バンドとしての抜てきなど、今まさに注目せずにはいられない話題が満載。今回は新しくリリースされた彼女らのニューアルバム『AZURE』を紹介しよう。

前作『SCARLET』に引き続き、色を現す『AZURE』(空色)。その色の違いを表すかのようなアルバムの性質の違いが随所に見られて非常に面白い。アルバム2枚を比較してみると『SCARLET』が深紅色=(罪悪を象徴する色であると同時に,地位・身分の高さをも象徴する色)、情熱的なもの、さらに妖しさのような魅力を感じさせたのに対して、今回の『AZURE』が空色=(紺碧(こんぺき))はどちらかというとストレートな激しさを感じさせる。もちろんその楽曲それぞれの中で様々な試みも感じられるのだが、アルバムのカラーという部分で彼女らが強くこだわっているもの、そしてこれからの制作においてもまたそのこだわりを大事にしようとしている向きが強く感じられる。

アルバムは、かつてロック界を席巻したジャパニーズメタルを彷彿させるギターのイントロから始まる「DEEP-SIX」から始まる。疾走感と力強さを感じさせるMariのドラムが印象的だが、この楽曲を含め全編が良い意味でローファイな雰囲気を感じさせるサウンドになっており、楽曲で表そうとしている激しさ、緊張感を程よく表している。

要所のキメやブリッジには絶妙なタイミングで複雑なポリリズムを挿入するなど、高いセンスを感じさせる彼女らの楽曲群だが、例えば2曲目の「Veronca」のサビにはリズム等含めて初期のMary’s Bloodのナンバーを彷彿させるような楽曲も存在している。このあたりには原点回帰的な意味合いも感じられるかもしれない。

ハードなナンバーが続く中で印象的なのが3曲目の「Voyage」。ワルツという特殊なリズムだが、変にバラードチックにせず、ハードさをキープしながらアルバムのカラーにスパイスを与える役割を十二分に発揮している。ベタベタのワルツではない、ロックっぽさを感じさせる重々しいリズムにも注目だ。全般にポリシーやコンセプトを感じさせる構成になっているが、そんな中でも、メンバーそれぞれのスキルも前作からさらに一歩ステップアップした様子がうかがえる。前作のような奇抜さを狙ったようなユニークさは影が少なくなっているものの、へヴィメタルをしっかりと演奏するという、彼女らのプレイの土台となる部分がしっかりと磨かれたかのようだ。

前作、今回と見られた流れから、今後の制作に向けた彼女らのコンセプトのようなものも感じられる。「次のカラーは何か?」今後の彼女らの動向を想像しながらそのサウンドに浸るのも一興だろう。


 
MASAKI-JMary’s Blood『AZURE』
発売中
NSMB-0002/2,000円
収録曲:
M01. DEEP-SIX
M02. Veronica
M03. Voyage
M04. セツナ
M05. FROZEN
M06. Blue Heaven


 

オフィシャルサイト
http://marysblood.syncl.jp/