連載

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the peggies『なつめきサマーEP』
TEXT:鈴木亮介

 
peggiesthe peggiesが2018年7月5日(木)に”徹底的に夏に振り切った”という新譜『なつめきサマーEP』をリリースする。楽しいこといっぱいの夏休み、多少の理性はカバンの中に置き去りにして、楽しすぎる多幸感に溺れたい。そんな回想に耽る大人にも、未知の扉を現在進行形で開き続けている10代にも、the peggiesの奏でる世界はとても眩しく、温かい。
 
高校卒業からメジャーデビューまでの快進撃、松本花奈監督映画への出演、漫画家・小山健とのコラボレーション、世界初と目される”文房具店の試し書きだけで作った楽曲”のリリースなど、特異なキャリアが注目されがちだが、ここまで着実にファンを増やし続けているのはそうした”バズる”試みだけでなく、極めて王道のロックバンドとしての道のりを歩んでいるが故だと思う。すなわち、根底にある曲の骨太さと、北澤ゆうほ(Vocal & Guitar)の詞のセンス、そしてその世界観を忠実に再現する屋台骨、石渡マキコ(Bass)と大貫みく(Drums)の存在だ。”女子校の教室の片隅に結集した”同級生3人のグルーヴの強靭さは、ライブに足を運んだことのあるファンなら誰もが認めるところだろう。
 
その”王道”は、今作でも1曲目「サマラブ超特急」のイントロから既に溢れ出ている。スパークするドラム、奥田民生「イージュー★ライダー」を彷彿とさせる疾走感あるリズムギター、並走しながらも自由にうねるベース、そこにチュイーンとクールなリードギターが加わる。冒頭15秒だけでも何回も繰り返し聴きたくなる、”王道”がたまらない。
 
本作に限らず北澤ゆうほの書く詞の一人称は「僕」で語られることが多い。これも王道と言えば王道なのだが、女性ボーカルのSSWが半端に「僕」主語を多用すると、正直違和感というか陳腐さが出てしまうこともある。が、北澤ゆうほ詞には繊細なユニセックスの普遍性があり、例えば「いつもそうやって背伸び気味の君 誰かを見てるの?」といったフレーズには男子も女子も共感できることだろう。だから、世代も性別も超えて「みんなのうた」になる。「触れてしまいそうなぐらい想ってる」なんて秀逸なフレーズと「最高潮のラブが超特急で」なんていう(敢えての)ダサフレーズが同居して、それでいて違和感がないから不思議だ。
 
2曲目「かみさま」もセンチメンタルな歌詞と爽快なロックサウンドの融和が絶妙。3曲目も王道なロックサウンドに、透明度の高いボーカルが重なる。「ガールズセンセーション」と評されるのも納得だ。
 
そして4曲目、これには驚いた。the peggiesの初期曲「ちゅるりらサマフィッシュ」が見事なまでにリミックスされて音源化されている。インディーズ当初の音源にあった”10代の初期衝動”が、年齢とキャリアを重ねての洗練されたサウンドにリライトされ、オシャレポップナンバーに生まれ変わっているのだ。どちらが良いとか悪いとかではなく、the peggiesの進化、そして「メジャーアーティストだからこそできること」が詰まった4分40秒は珠玉。ちなみに同曲のリミックスを手がけたのは彼女たちの同級生であり自身もメジャーアーティストとなったラブリーサマーちゃんだ。共に「すいかわっしょい」した青春の同志の切磋琢磨には涙さえ浮かぶ。「とまれないよ 僕らのサマー」…最後の歌詞の通り、the peggiesは超特急で走り続ける。ここまでも、そしてこれからも。
 

 


 
natsu◆リリース情報
the peggies 『なつめきサマーEP』
M01. サマラブ超特急
M02. かみさま
M03. ボーイミーツガール
M04. ちゅるりらサマフィッシュ~ラブリーサマーちゃんRemix~
 
iTunes販売サイト:
https://itunes.apple.com/jp/album/%E3%81%AA%E3%81%A4%E3%82%81%E3%81%8D%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%BCep/1395917973


◆the peggies オフィシャルサイト
http://thepeggies.com