連載

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絶叫する60度×I love you Orchestra『剥』
TEXT:鈴木亮介

~「テレビ収録?すみません、その日ライブがあるんで…」
 年300本ペースでライブに命を懸ける2人組・絶叫する60度。その魅力は~

 
南緯60度から70度にかけて、激しい暴風や荒波の絶えない海域が存在する。世界一周の航海時に避けて通れない難所で、”screaming sixties”と呼ばれ恐れられている。そんな呼称を自らに冠し、ライブシーンに嵐を巻き起こしながらオーディエンスを席巻しているのは、もんてろの2人からなる、絶叫する60度だ。
 
zekkyouilyo2014年8月に絶叫する60度 with 6% is MINE名義でバンドとしてデビュー後、バンド編成とボーカルユニット編成を使い分けながら全国各地を舞台に車で寝泊まりしつつ年間300本近くのライブ出演を続ける彼女たち。ある時には全国40組のガールズバンドを集めた7日間連続開催「絶叫する爆女祭」を主催したり、またある時にはテレビ朝日系番組「アイドルお宝くじ」で「2017年絶対に売れるアイドルランキング」第1位に選出されるなど、その活動はバンド、アイドルといったカテゴリーを遥かに超越し、ジャンルという概念のその先に君臨し続けている。
 
冒頭、彼女たちのことを「バンド」と書いた。世間的にはアイドルという括りになるかもしれない。元々、はギタリスト、もんてろはドラマーでもある。そんな2人がステージに立つと、その佇まいはパンクスそのものである。事実、年間300ステージの多くは轟音ロッカーとの対バンであり、その中でキャリア、フィールドを問わず多くのミュージシャンから愛され、影響を与え合っている。
 
彼女たちの音楽、生き様に強く共鳴したミュージシャンの一人が、KAGEROのメインコンポーザーであるベーシスト・白水悠だ。ライブ共演を機に意気投合し、度々競演。そして遂に、白水悠率いるインストバンド・I love you Orchestra絶叫する60度によるコラボアルバム『剥』が2017年7月5日(水)にリリースされることとなった。
 
6曲入りの本作。冒頭1曲目の演奏開始5秒から、驟雨のごとく叩き込まれるドラムといななくギター、恐怖さえ感じる中「何もしなくても明日はくるだろう いつしか終わりもくるだろう」と歌い始める。なんという”騒然”。そうして、もんてろの歌声が一筋の希望となる。
 
1曲目「弱虫の唄」、2曲目「I love me.」、4曲目「泡沫の今、未来の過去。」ではも作詞に参加。「弱虫の唄」は、逃げられなかった後悔の過去を持ち、だからこそ今を全力で生きるの生き様が歌われている。「I love me.」では他者の目を気にしすぎ、失敗に怯える現代人に「だからって気にすんな 分かってるから」と強めのエールを送る。
 
zekkyouそれにしても白水悠のベースは頭から終わりまで一貫して最高潮だ。岩場に叩きつける荒波のように…絶叫する60度そのものだ。このベースサウンドだからこそ、安心して皆暴れられるのだろう。思い思いに超絶クールなフレーズを決め込むギターたち。こんなにかっこいい”チュイーン”を連発されると、「シビれるギター」なんて文言、他のバンドに対して使えなくなってしまう。
 
ケミカル轟音プログレパンクバンドを公称するI love you Orchestraにとって「散らかってるね~」とは最大の賛辞であるように思う。いやいや、散らかるどころか実際には大都会のメトロのダイヤグラムのように寸分の狂いもなく緻密に繊細に織り込まれたサウンドなのだが、アルバムを1曲目からぶっ通しで流していると、心拍数はぐんぐん上昇。4曲目「泡沫の今、未来の過去。」の裏打ちで脳天を破壊されたところに5曲目「天志音」でもんてろが叫びまくり、とどめを刺される。
 
それにしてもこれだけのラインナップが続くと、「ライブでフロアはどれだけ暴れるのだろう」と想像せずにはいられない。年間300本でありながら、いや、だからこそ?1つ1つ魂込めたライブが繰り広げられる、その原動力になっているのは確実に、フロアの力だ。よく「一流のバンドには一流の客がつく」と言われるが、まさにそれ。本作のサウンドのように、取っ散らかって暴れ倒していながらも、秩序が保たれている。「アイドルの現場やパンクロックの現場はフロアが怖い」という印象を持つ人にも、絶叫する60度のライブはぜひおすすめしたい。
 
とどめを刺されたところに6曲目「8522の夢」はこの中では異色な楽曲。もんてろも作詞を担当し、切なくも温かい応援歌で幕を閉じる。魂が剝き出しの本作。アルバムタイトルは「はぐ」と読むのだという。日本語では剥ぐ=剥がすだが、英語だとHUG=抱きしめる。遠慮とか日和見とか全部取っ払って、時に逃げてでもいいから、自分の本音に向き合い、相手に本気でぶつかれ!絶叫する60度というアーティストはきっと、忘れていたあの情熱を思い出させてくれるだろう。
 

 


 
hug

◆リリース情報
絶叫する60度×I love you Orchestra『剥』
・2017年07月05日(水)発売
EiT PARK RECORD | ETIP9 2000円+税
<収録曲>
M01. 弱虫の唄
M02. I love me.
M03. ススメ。
M04. 泡沫の今、未来の過去。
M05. 天志音
M06. 8522の夢
 
ディスクユニオン販売ページ:
http://diskunion.net/jp/ct/detail/1007395374


 
◆ライブ情報
絶叫する60度 三周年記念ワンマンライブ 『 三年Days 』
・2017年07月30日(日)【東京】新宿LOFT
 OPEN 17:30 / START 18:30

 
◆絶叫する60度 公式Twitterアカウント
https://twitter.com/zekkyo60

◆I love you Orchestra 公式サイト
http://kagero.jp/ilyo/
 


 
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http://www.beeast69.com/report/163516

 
 
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