連載

lead_simple

exist†trace『ROYAL STRAIGHT MAGIC』
TEXT:桂伸也

exist_photo4_web堅実なライブ活動で着実にバンドとしての実力を高めてきたexist†trace。彼女らが前作のミニアルバム『THIS IS NOW』に続き、同年にリリースした最新ミニアルバム『ROYAL STRAIGHT MAGIC』は、そのタイトルが醸し出すように、次の一手に期待をせざるを得ないアルバムだ。
 
 いわゆる「ビジュアル系」と呼ばれるロックバンドをルーツとするexist†traceは、デビュー当初よりシリアスな雰囲気を醸し出すハーモニーと、ストレートな8ビートを主体として”彼女たちらしさ”を打ち出していたが、メジャーデビュー後の『VIRGIN』あたりから様々に音楽の幅を広げる試みを行い、『THIS IS NOW』の前にリリースされた『WORLD MAKER』は、描いてきた”らしさ”をまるで打ち壊さんとするような試みを要所に見せていた。そこではポップな雰囲気など、様々な試みをふんだんに取り入れ、音楽的にどんなことができるのかを模索する冒険を行っていたようにも見える。それに続いた『THIS IS NOW』ではガラッと趣を変え、ソリッドな”ロック”を感じさせるイメージを打ち出している。
 
 『ROYAL STRAIGHT MAGIC』はこれらの作品とは対照的に、原点のクールでシリアスな印象に回帰した印象を見せている。一曲目の「サイケデリック・ブラック・ナイト」のイントロで見せる、不安を煽るような音使い、そして疾走するような8ビートは、彼女たちのライブでも頻繁に演奏される曲「RESONANNCE」を連想させており、彼女たちの根っからのファンが聴いたなら「これこれ!」とドキドキするような感動を覚えるだろう。全般的にあれこれと実験を見せるのではなく、自分たちの出したいイメージ、例えばリズムで見せる疾走感や、クールな響きを自然に打ち出しているようにも見える。
 
 一方でその詞に描かれるのは、どちらかというと前向きなメッセージを表しており、ポジティブな表現があちこちで見られるところに、非常に興味深いポイントがある。また全曲中でアクセントにもなっているバラード「キミと雨と秘密。」の、ゆったりとしながらもシリアスな空気感をさらに強く感じさせる箇所や、ノリのいい4つ打ちのリズムと、ジョウ、mikoというツインボーカル体制で躍動感を表現している「GET BACK」など、原点を感じさせる雰囲気の一方で特徴的なポイントも多く見られ、非常に面白い出来になっている。またこれまでほぼ作詞、作曲はギタリスト兼ボーカルのmikoが担当していたが、「夜明けの光」はギタリストの乙魅が担当しているのも、注目のポイントだ。
 
 これまでの様々な試みが大きな実となってその幅を広げてる、そんな印象の仕上がりを感じる。ある意味集大成的な意味合いを持つ区切りのような作品ともいえるかもしれない。自分たちの武器にさらに磨きをかけ大きな器とした、そんなイメージもあるこの作品は、まさに彼女らの「ROYAL STRAIGHT」な手札ともいえる。ジョウ、miko、乙魅、猶人、Mallyという5つのカードが織りなす最強の一手。今後exist†traceが繰り出してくる一手は、どれもかなり手ごわいものになりそうだ。
 


 
◆リリース情報booklet_royal_fix
exist†trace『ROYAL STRAIGHT MAGIC』
製品番号:MOCD-1911
形態:6曲入りMini Album
価格:2,000円+(税)
発売中
 
<収録曲>
M01. サイケデリック・ブラック・ナイト
M02. ROYAL STRAIGHT MAGIC
M03. 夜明けの光
M04. キミと雨と秘密。
M05. GET BACK
M06. SKY
 
 
 
 


 
◆exist†trace official website
http://www.exist-trace.com/