連載

lead_simple

ABEDON『Feel Cyber』
TEXT:鈴木亮介

「僕らの言葉は デジタルになるが」―― 2011年4月発売、ユニコーンの13thシングル「デジタルスープ」の一節だ。「あなたの言葉は あなたらしくあれ」。
 
20代でユニコーンにその身を捧げ、30代は「世のため人のため」と氣志團をはじめとするプロデュース・楽曲提供に心血を注いだABEDON当時阿部義晴。40代で再び、自身の創作活動を主軸に据える。2006年2月に『四ツ葉の森(上)』を発表。翌年に行われたリリースツアーを筆者は観ているが、クリスマスの南青山、小ぢんまりとした会場でそれはそれはもうピュアに演奏する阿部義晴とその仲間たちの姿は今でも鮮明に覚えている。少年の初期衝動のごとく、ピュアなロック。アンコール時に観客一人ひとりと握手して回ったのだが、その時の手のぬくもりは忘れられない。
 
わが国の音楽業界のトップランナーにこれほどの”少年性”(なんて、当時大学生の筆者が語るのはおこがましいのだが)を見出せたのはなんだか不思議だったが、その純度を保ったまま、2009年にユニコーン復活、2013年には『R』『G』『B』ソロ3部作の発表。あっという間に40代を駆け抜けていったように思う。その集大成とも言うべき、ABEDONの40代最後のソロ作品が今回リリースされる『Feel Cyber』だ。
 
本作は2016年1月から3月の間に録音された8曲を収録しており、レコーディングメンバーはおなじみ八熊慎一奥田民生木内健斎藤有太。レコーディングメンバーのグルーブはいっそうの高まりを覚える。特に斎藤有太による上質な大人の鍵盤は、4曲目「誰だっけ?」では格段に曲のスケール感をアップさせ、5曲目「TALK TO THE LADY」では邪悪さと裏返しのエロス(つまり、小悪魔ということ?)を巧妙に表現する。
 
2曲目「R&R SHOWER」の冒頭、全ての楽器をドコドコ、いやドクドク叩く様は、心拍のよう、命の鼓動を覚える。ABEDONの体内に流れるロックンロールの血流との、見事な調和。ちなみに1曲目から5曲目まで、八熊慎一奥田民生が交互にドラムを叩いているのも聴きどころだ。
 
ミックスからマスタリングまでをABEDON自ら手がけている本作、全体的な印象としては前作『ファンキーモンキーダンディー』(2015年5月)の延長線上にあるようで、前作に比べると”抒情”(エモーショナル、あるいはセンチメンタル)の要素が少々薄まり、よりいっそう自由に楽しくのびのびと、ハンモックで揺られながら鼻歌を歌っているような、それでいて音楽家・ABEDONの多彩さが随所に垣間見える1枚に仕上がっている。「まどにさしこんだ やさしいひかりを りょうてですくったから かげにこぼれておちた」(8曲目「やさしいということ」)を筆頭に、詩歌としての心震わすフレーズも健在。前作「みみそうじをしよう」のグレードアップ続編とも言うべき7曲目「寝る」も楽しい。
 
とはいえ「遊び心満載」と簡単にまとめられない奥深さが本作にはある。音楽家・ABEDON40代の締めくくり、その根底にあるのは冒頭に挙げた「デジタル」への順応と抵抗だ。音楽を万人に届ける障壁を取り除くこと。それはミュージシャンにとって望むべき明るい未来であったはずだが、どうやらそうでもないらしい。音楽が野菜のように、或いはサプリメント錠剤のように、八百屋でたたき売りされ、大量消費・大量廃棄されるらしい。そんな未来への警鐘が、”Cyber”というタイトルに集約されているように思える。人工知能が2030年をメドに多くの人間の職業を消し去ろうとしているが、そんな中で、音楽家が見失ってはいけないDNA=細胞=遺伝子を、彼は残そうとしているのではないか。
 
「あしたのことなど しらないままに ぼくら」「ひざしのように そうあるように せめてきょうは かんがえてる」――決して小難しいことを言うわけでなく、結論を押し付けるわけでもなく、ただただ、「考えるな、感じろ」と細胞レベルで語りかけてくる。最終トラックはABEDONのボーカルとアコースティックギターだけが収録されているが、曲が終わってからしばらく、余韻に浸ってみた。そういやこの「余韻」を楽しむ余裕が最近なくなっていた気がする。既に演奏は終わっていて、音声信号は何にも発せられていないのに、脳裏にはメロディが残っている。残像、残響。音楽は、情報じゃない。
 

 


 
◆リリース情報
ABEDON『Feel Cyber』
・2016年06月03日(金)発売
abedonCD0109
<収録曲>
M01. Feel Cyber
M02. R&R Shower
M03. 不思議は不思議
M04. 誰だっけ?
M05. TALK TO THE LADY
M06. 海から
M07. 寝る
M08. やさしいということ

 


 
◆ライブ情報
Feel Cyber Tour 2016 ABEDON and THE RINGSIDE
・2016年06月07日(火)【東 京】赤坂 BLITZ
・2016年06月10日(金)【福 岡】イムズホール
・2016年06月11日(土)【熊 本】熊本 B.9 V1
・2016年06月13日(月)【大 阪】心斎橋 BIGCAT
・2016年06月18日(土)【青 森】青森Quarter
・2016年06月21日(火)【愛 知】名古屋 DIAMOND HALL
・2016年06月23日(木)【広 島】BLUE LIVE 広島
・2016年06月25日(土)【福 井】響のホール
・2016年07月02日(土)【北海道】小樽 GOLDSTONE
・2016年07月07日(木)【東 京】保谷 こもれびホール
・2016年07月16日(土)【神奈川】横浜 Bay Hall

ユニコーン ABEDON50祭「サクランボー / 祝いのアベドン
・2016年07月30日(土)【山形】山形市総合スポーツセンター
・2016年07月31日(日)【山形】山形市総合スポーツセンター

 


 

◆ABEDON 公式サイト
http://abedon.jp/
 


 
◆関連記事
【連載】新譜るLIFEダイアリー ユニコーン『イーガジャケジョロ』
http://www.beeast69.com/serial/simple/101416


 
 
  コラムニスト
The HIGH
さかもとえいぞう
2019年5月30日更新
人生の宿題その4(最終回)
The HIGH
2019年4月17日更新
第15回「LAST ONE OK?」
mondo
中村 “MR.MONDO” 匠
2019年5月25日更新
第十二回「マニア道」
PINK SAPPHIRE
PINK SAPPHIRE
2019年4月3日更新
第20回「AYA」
永川敏郎
永川敏郎(Toshio Egawa)
2019年5月29日更新
Progressive Man 第42話