連載

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ギターウルフ『チラノザウルス四畳半 T-REX FROM A TINY SPACE YOJOUHAN』
TEXT:まりな

guitarwolf「アポロ飛行士が聞いた不思議な音楽、NASAが公開」
 
1969年、月周回飛行中に宇宙飛行士らが宇宙で「音楽らしき音」を聞いたという。長い間伏せられていたがその時に録音した音をついに公開するというニュースが今年の2月に出た。宇宙飛行士が聴いたものは間違いなく音楽で、狼惑星から響き渡るギターウルフのジェットロックンロールじゃないだろうか。彼らならあり得ると思わせるロマンがギターウルフにはある。
 
そんな宇宙空間までその爆音を轟かせるギターウルフの3年2か月ぶりの新作、そのタイトルが明らかになった時点でロックリスナーは大いに盛り上がった。相変わらず劣ることのない閃きのネーミングセンス、その名も「チラノザウルス四畳半」。バンドの名を日本に広めた衝撃のメジャー1stアルバム『狼惑星』、今でもライブでよく演奏する人気曲が多く収録されている2nd『ジェットジェネレーション』を手掛けた南石聡巳によるレコーディングのもと、メジャーデビューから20年以上たった今でも薄まることのない、爆音と初期衝動あふれる最高のジェットロックンロールアルバムとなった。
 
 
すでにYouTubeでMVも公開されているリード曲「チラノザウルス四畳半」は王道ロックンロールのコード進行に「この屋根をいつぶち破ろうか 考えているところさ」というセイジ(Vocal & Guitar)の音割れシャウトがのる。爆音ゆえの音の歪み、ハウリングは大いに健在だ。いつかはこの狭い部屋をでて世の中に噛みついてやる、そんな恐竜のように凶暴ですらある熱いパワー漲る曲だ。
 
恐竜期の次はアメーバ期にまで遡る。地球の始まりに隕石に乗ってやってきたアメーバ同士がもしキスをしなかったら、人類は生まれていないという超原始的な愛のテーマ「アメーバーラブソング」。せいぜい既存の愛の物語はアダムとイヴが最古で、それ以前のラブソングを作るとはまったく斬新だ。間奏のファジーなギターソロは一発どりだからこその生き生きとした音の動き、スタジオの熱が伝わってきて最高にしびれる。つづいて「恋のレイクタウン」もまた疾走感のあるラブソングで、勢いのいい3コードの演奏がセイジの故郷である島根県の宍道湖周辺をバイクで爆走しているイメージを彷彿させる。
 
ギターウルフといえば炭酸飲料メッツのCMに出演したことも記憶に新しい。ギラギラ照りつける太陽光線なみに気合の入ったギターリフが印象的な「海とコーラ」は、熱さの中に炭酸の爽快感もあるキラーチューン。その他、日本史とロックを融合させた「忍者のシーズン」、アルバムの中で最もハウりまくり、爆音ギターがこれでもかというほど感じられる「バミューダの女王」など、只かっこいいだけではなく、聴いていて楽しめる曲々が収録されている。
 
そしてアルバムのラストを飾る「In the ギャラクシー」はすべてが宇宙の中に存在しているという歌詞が詩的で美しい。セイジのブログを読めばわかるが、彼の言葉は聞き手のイマジネーションを掻き立てる不思議な魅力がある。私は宍道湖も宇宙もこの目で見たことはないし、バイクを運転したこともないが、ギターウルフを爆音で聴くことによって曲の世界の中に入っている感覚になることがある。だからこそギターウルフに対して冒頭で言ったようなロマンを感じるのかもしれない。
 
 
いろんな音楽の形や方法が選択できる世の中で、ひとつのことだけをやり続けるのはむしろ一番難しいことだ。しかしギターウルフはまるでそれが使命であるかのように己の信じた一番カッコいいことだけをやり、今もなお日本が世界に誇るロックンロールバンドであり続けている。
 
初めてロックに心を奪われたとき、誰もがまずギターの「ジャーン」や「ギュイーン」の音にしびれたと思う。最初からエフェクターの音やアレンジ云々などと思った人はいないはずで、そんなことを考えさせる前にすごい速さで私たちの心を奪っていったものが「ロック」だった。教室にある箒をギターのように構え、好きなバンドの真似をして思いっきりあてぶりをする。それだけで自分がロックスターになったような最高の気分になったものだ。
 
純粋に「ロックが好き」という気持ちはどんな音楽的知識やテクニックより一番輝いて尊い。その気持ちの純度が薄まることのないギターウルフはもはや生きる化石というよりも宝石である。ギターウルフがいる限り、あのときの気持ちを何度でも思い出せる。このアルバムを聴いてその喜びを感じてほしい。
 

 


 
◆リリース情報
『チラノザウルス四畳半 T-REX FROM A TINY SPACE YOJOUHAN』
・2016年05月11日(水)発売
初回生産限定盤(カセットテープ付き) KSCL 2717-8  3,456円(税込)
通常盤 KSCL-2719 2,700円(税込)
<収録曲>
M01. ジェットリーズン
M02. チラノザウルス四畳半
M03. アメーバーラブソング
M04. アランドロンの逆襲
M05. 恋のレイクタウン
M06. 海とコーラ
M07. ネッシームーン
M08. 忍者のシーズン
M09. バミューダの女王
M10. ソ連のヒロシ
M11. In the ギャラクシー

 


 

◆ライブ情報
Guitar Wolf 2016 逆襲の四畳半ツアー

・2016年06月05日(日)【群 馬】松原街道
・2016年06月08日(水)【北海道】BLUE BEAT SOUND
・2016年06月09日(木)【北海道】北見夕焼けまつり
・2016年06月10日(金)【北海道】根室 HYWATT HALL
・2016年06月11日(土)【北海道】帯広 STUDIO REST
・2016年06月12日(日)【北海道】札幌 BESSIE HALL
・2016年06月14日(火)【青 森】八戸 ROXX
・2016年06月16日(木)【宮 城】仙台 BIRDLAND
・2016年06月17日(金)【秋 田】LOUD AFFECTION
・2016年06月18日(土)【茨 城】水戸 90EAST
・2016年06月24日(金)【広 島】BoRDER
・2016年06月25日(土)【石 川】金沢 EIGHTHALL
・2016年06月26日(日)【徳 島】Em BASE KURAMOTO
・2016年07月01日(金)【愛 知】名古屋 HUCK FINN
・2016年07月02日(土)【大 阪】SOCORE FACTORY
・2016年07月10日(日)【東 京】代官山 UNIT
・2016年07月15日(金)【福 島】郡山 PEAK ACTION
・2016年07月16日(土)【福 井】velvet
・2016年07月17日(日)【新 潟】WOODY
・2016年07月18日(月)【長 野】JUNKBOX
・2016年07月29日(金)【島 根】松江 AZTiC canova
・2016年07月30日(土)【岡 山】Desperado
・2016年07月31日(日)【愛 媛】松山 星空JETT
・2016年08月02日(火)【鹿児島】SR Hall
・2016年08月03日(水)【熊 本】Django
・2016年08月05日(金)【長 崎】Studio Do!
・2016年08月06日(土)【大 分】club SPOT
・2016年08月07日(日)【福 岡】UTERO

 


 

◆ギターウルフ 公式サイト
http://www.guitarwolf.net/
 


 
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