連載

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ゆゆん『カーテンコール』
TEXT:鈴木亮介

ゆゆんが12月16日(水)に自身初のフルアルバム『カーテンコール』をリリースする。
 
ゆゆんは2013年9月に結成。メンバーはゆりえ(Bass & Vocal/ex:スカートの中)、まりな(Guitar/ex:日本マドンナ)、イシバシリサ(Guitar/ex:アイマイミー)、イシカワミナ子(Drums/ex:The alps)からなる4人組。メンバー4人とも10代の頃から頭角を現し、CDの全国流通やフェス出演など大きなステージでのライブを経験。しかしいずれのバンドも志半ばで解散している。
 
若くして成功と挫折を経験した4人だからこそ、実力も闘志も十分。ブレイクするべくして生まれた、奇跡のバンドなのだ。
 
今回リリースされる『カーテンコール』は、結成当初から演奏してきた「牛乳」、「やっほー」などの楽曲や、ライブで支持の高い「私の生活」、「さや」など、全10曲を収録。今のゆゆんが全て詰まった1枚に仕上がっている。そのうちアルバム収録曲「はんすう」は、テレビ東京系バラエティ番組「ソレダメ!~あなたの常識は非常識!?~」のエンディングテーマに決定。MVは各地の街頭ビジョンや音楽番組などでオンエア。この1枚で、満を持して全国デビューする。
 
今回本誌BEEASTではアルバムリリースを控えるゆゆんの4人にインタビューを実施。『カーテンコール』に込めた思いを聞いた。
 


 
—アルバム発売おめでとうございます。まず注目したいのはライブでも大人気の2曲目「私の生活」ですが、この曲は元々どのようにして出来た曲なのでしょうか?
 
ゆりえ:ゆゆんを始める前にお母さんが歌うために作曲した、ゆっくりとしたテンポだったのをバンド用にアレンジして歌詞も全部変えました。
 
—なるほど。完成形を、改めて歌詞カードを見ながら聴くと、この曲はゆゆんにとってのアンセムというか、バンドメンバー4人それぞれにとっての「今」が描かれていますよね。
 
ゆりえ:駆け抜けていくぞ!私の生活頑張るぞ!という曲です。
 
—歌詞のイメージはどのようにして出来上がっていったのでしょうか?
 
ゆりえ:ガムシャラに、とにかくやっていきたい、という気持ちですかね。
 
まりな:それまでにゆりえさんが作っていた曲はソロ弾き語りのような、ゆっくりめの曲が多かったのですが、この曲はサビでコーラスをするところもあり、バンドのことを考えて作ってくれた曲だなと感じました。
 
ミナ子:こういう歌を作ってほしいとリクエストしたわけではないけど、4人の中にあったフラストレーションが今まで以上に表現できるようになったと思います。
 
まりな:そうだね。ちょっとロックっぽくなった。
 
—結成から2年。最近は遠征も含め、様々なライブに出演する機会が増えたと思いますが、この1年特に大きな変化はありましたか?
 
ミナ子:この1年、メンバー間のコミュニケーションも以前に比べて生産性のあるぶつかり合いができるようになったと思います。
 
—引き続きアルバム収録曲の話を伺ってまいります。4曲目「はるのつき」は文学チックで、情景描写もこだわりがあるのかなと思いますが。
 
ゆりえ:この曲は冒頭のドッドッっていうドラムの音や、歌詞にもあるように、”足並みを揃えていこうぜ”という感じを表現したくて作った曲です。ゆゆんは4人バラバラなところから集まってきました。みんな余っちゃったんですよ。
 
—それが「ずっと待ってなんとか集まったのは 割りきれなかった あまりのやつら」という歌詞に込められていると。
 
ゆりえ:バンドを続けていきたかったけど続けていけない理由があって解散して…4人の中で自分がどう頑張っていけるか…まだわからないけど、頑張っていこうぜ、春の月!みたいな感じで。
 
—なるほど。だから、歌詞に出てくるのは「私」1人なのに、孤独感がないのですね。そういう意識が高まるきっかけが何かあったのでしょうか?
 
ゆりえ:とにかく「もっと頑張らなきゃ!」という気持ちが強くなってきた、そのタイミングで今回のアルバムを作ろうという話になったんです。
 
—アルバムを作ろうという構想はいつ頃からあったのですか?
 
まりな:去年の年末ごろです。アルバムのために新たに作った曲というのはなく、これまでライブでやってきた曲で構成されているので、今のゆゆんの集大成になっていると思います。でも、アコギアレンジも入れたし、アルバムに向けてということでいつもと違うこともやりました。
 
ミナ子:スローな曲からバラードっぽい曲、「隙間おばけのためのファンファーレ」みたいなパンクっぽい曲までどれを聴いても面白い、みたいな曲がやれるバンドになりたいよねって。
 
—確かに幅の広さを感じる1枚になっていると思います。「隙間おばけのためのファンファーレ」は特にハイテンポな曲ですが、このタイトルはどのような意味があるのですか?
 
ゆりえ:「隙間おばけ」って知ってますか?
 
—いや、わからないです(笑)
 
ゆりえ:押入れの戸の隙間からこっちを覗いているおばけ(編注:童謡が由来?)なんですけど、よく考えたら小心者ですよね。おばけになってまで隙間から覗いてるんです。そこに自分を重ね合わせているところがあって。勇気を持てない自分に対して「出て来いよ!」って。
 
—それを歌うことで、ゆりえさん自身もそうですが、曲を聴いた人に対しても一歩踏み出せない人の背中を押したい、という意味合いもあるのでしょうか?
 
ゆりえ:そうなっていたらいいなって思います。
 
—「隙間おばけのためのファンファーレ」を筆頭に、ツインギターのかっこよさも、ゆゆんの持ち味ですよね。今回のレコーディングでこだわったこと、苦労など教えてください。
 
リサ:ギターフレーズは歌を邪魔しないようにということを意識しています。
 
—特にここが聴きどころ、というところがあれば!
 
リサ:10曲目「やっほー」のソロは直前まで悩んでいて、レコーディングの日に「これでいこう!」と決めて録りました。
 
まりな:私は思い通りにいかなくて、「音楽的な才能が乏しいなぁ」って泣いてたりしたんですけど…でも出来上がったのを聴いたら「うまく聴こえるなー」と思ったので、良かったです!
 
—どういう点で苦労しましたか?
 
まりな:感情より譜面に合わせないといけない、でも感情も入れたい…というところを意識しました。例えば「やっほー」の冒頭は私のソロなんですが、(曲を作った)ゆりえさんにこれはどういう情景なの?と聞いて「教室で一人きりでいるところだよー」と教えてもらって、その情景を浮かべながら弾きました。曲を聴いてくれる人にはわからないかもしれないけど、そういうところに意味があると信じています。
 
—なるほど。ミナ子さんはいかがでしょうか?
 
ミナ子:ゆりえの世界観を、ライブだとドラムセットは一つだしシンバルとか曲の途中で変えられないですが、レコーディングは色んな音飾が選べて、よりゆりえが思っていることに近づくことができるので、それがすごく楽しいんです。
 
—曲によって色々と趣向を凝らしているいるわけですね。
 
ミナ子:特にバスドラムのチューニングを曲によって変えたのですが、思いっきり行きたいところやスッとしたいところなど、ゆりえの伝えたいことをドラムで一緒に表現できたかなって思うし、やれてよかったです。
 
—今お話を聞いているだけでも、楽しそうな光景が浮かびます!
 
ミナ子:すっごい楽しいんです!楽器っていいなって改めて思いました。
 
ゆりえ:レコーディングのときにリズム隊は一緒のブースだったのですが、ミナ子の迫力がすごすぎて!
 
—“音飾”といえば、9曲目「はんすう」もアップテンポで鍵盤も加わった、ライブとは一味違った仕上がりになっていますね。
 
ゆりえ:これを作ったときには色んなことに対して「やだやだ」ってなっちゃっていて。でも一歩引いて「考えすぎだろう」「くよくよ悩みすぎだ」って思ったんです。大人になるにつれて色んなことをあきらめたり妥協することに慣れてきますが、ワクワクする気持ちは大事ですよね。そういう気持ちを忘れずに、初心に帰ろうと思って作った曲です。
 
—歌詞が韻を踏んでいて言葉遊びが面白いのですが、こういうのはパッと浮かぶものなんですか?
 
ゆりえ:最初の「感動最高呆れたら負け」まではポンと出て来たんですが、そのあとは難しかったです(笑)
 
—そして、レコーディングならではの試みとして、軽快なピアノが入っていますね。
 
ゆりえ:鍵盤を弾いてくれたのが、前のバンド(スカートの中)で一緒にやっていたさきそん(ドラム)です。跳ねてるイメージの曲だったので、どうしてもピアノを入れたかったんです。ドラムもピアノも跳ねてるさきそんがイメージにぴったり!と思って、お願いしました。
 
—“跳ねる”を表現するというのは実は簡単じゃないですよね。
 
ミナ子:レコーディングエンジニアの方がおっしゃっていたのですが、「テンポを正確にやることも大事かもしれないけど、楽器だから。楽器も歌っていないとつまらなくなっちゃう。つまらないリズムなら叩かない方がいい」って。機械的なことじゃなくて、楽器っぽくドラムを叩けたらなと意識しました。たとえば「私の生活」のイントロはちょっとヘタクソに聴こえるかもしれないけど、これも「つまらなくならないように」を意識しました。
 
—「つまらないリズム」って、仰りたいことはわかります。こうして言葉に置き換えて表現するのは難しいですね。
 
ミナ子:楽器が歌うように…ゆりえが自由に歌っているので、楽器がカッチリ機械のようになっちゃうのはよくないなぁと思って。なるべくゆりえっぽく(笑)
 
ゆりえ:私っぽく?
 
ミナ子:すごく人間味があるんです、この人は。
 
—ゆゆんの代表曲と言えるのが1曲目「牛乳」ですが、改めてこの曲はどんな曲ですか?
 
ゆりえ:「こういう曲」って言ってしまうと聴く人が「そういう曲なんだ」って先入観を持ってしまうと思うので、好きなように受け取ってほしいんですが…私の解釈としては「未来から過去の自分に向けての応援」という意味合いがあります。「ちゃんとここまでやってこれてるから大丈夫だよ」って。
 
—歌詞のモチーフは学校ですよね。
 
ゆりえ:学校のことを思うと言葉が出てくるんですよ。他の曲に比べても、「牛乳」の2番の歌詞はすらすらと出てきました。何か前世の記憶とかなのかな…
 
まりな:前世っていうか今世でしょ(笑)
 
—実体験を歌詞にしたというよりは、「創作」として色んな言葉やイメージが浮かんでくる感じなんですかね?
 
ゆりえ:何か憑いているんでしょうか…というくらい、自然と出てくるんですよね。
 
—では、最後に今後の展望をお聞かせください。
 
ゆりえ:今回のレコーディングでは、既にライブで演奏していた曲の歌詞を変えたところもあるのですが、これでいいじゃんと思っていてももっともっと頑張って考えれば色々出来るものだなと気づけました。一番頑張らないといけないのが曲を作ることだと思っています。だから、いい曲をたくさん作って、いいライブをたくさんして、また音源が出せればなと思います。単純なんですけど、バンドってそれに尽きると思うので。
 
まりな:あとは、メンバー間では(東京以外の)違う都市にも行きたいね、と話しています。今回こうしてCDを出すので、ツアーにも行けたらと思います。
 
リサ:フェスに出たいです!夏フェス。フェス…
 
ミナ子:「フェス」しか言ってない!(笑)
 
リサ:個人的には初めて全国流通で自分の音源が出せるので、めっちゃ嬉しいし、ここがスタートだと思っているので…ここからまた頑張りたいと思います!
 
ミナ子:とにかく色んな人にこのアルバムを聴いてほしいですね。
 

 


◆リリース情報
ゆゆん 1stフルアルバム『カーテンコール』
・2015年12月16日(水)発売
RCSP-0063 2,200円(+税)
発売元:redrec / sputniklab inc.
<収録曲>
M01. 牛乳
M02. 私の生活
M03. ハーベスト
M04. はるのつき
M05. にげよう
M06. 隙間おばけのためのファンファーレ
M07. おうち
M08. さや
M09. はんすう
M10. やっほー

 

◆ライブ情報
“Dr.Usui presents POPLOT TIMES 大忘年祭!
~猫も男子も(皆も)踊りだす!?~”

・2015年12月16日(水)【下北沢】CLUB Que
 出演:(M)otocompo/Kit Cat/ゆゆん/タカハシヒョウリ (オワリカラ)
 時間:OPEN 18:30/START 19:00
 料金:前売2300円(+D)/当日2800円(+D)

 
≫ゆゆん初の自主企画ライブ!
いい湯ゆんだなぁvol.1~祝「カーテンコール」発売記念~
・2016年01月17日(日)【新 宿】紅布
 出演:ゆゆん/ハラフロムヘル/the coopeez/工藤みゆき(工藤姉妹fromまがりかど)  DJ:越川和磨(THE STARBEMS ex.毛皮のマリーズ)
 時間:OPEN 17:30/START 18:00
 料金:前売2300円(+D)/当日2800円(+D)

 


 
◆ゆゆん 公式サイト
http://www.music-scene.jp/yuyum/
◆ゆゆん 公式Twitterアカウント
https://twitter.com/yu_yu_yu_yuyum
 


 
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