連載

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フジファブリック『BOYS』
TEXT:鈴木亮介

今年、コンセプトミニアルバム『BOYS』と『GIRLS』をリリースするフジファブリック。そのうちの『BOYS』がまず、6月24日(水)にリリースされた。本作はかねてより彼らのテーマとされる「叙情性と普遍性と変態性」に改めて真正面から向き合い、昇華させていこうという、メジャーデビュー11年目に突入したフジファブリックの今の”決意”を読み取れる1枚に仕上がっている。
 
ストリングスの仰々しいイントロから、壮大に『BOYS盤』の幕が開く。1曲目「Green Bird」は山内総一郎(Guitar & Vocal)と旧知の仲である百田留衣をサウンドプロデューサーに迎えた意欲作。もう戻らないと分かっていても、割り切って前に進むことのできない切なさ。男子特有の”過去賛美”がエモーショナルな歌声と弦楽器で表面上は耽美に繕いつつも、悔しさやもどかしさ、苛立ちで爆発しそうになっている…そんな心の奥底を加藤慎一(Bass)とBOBO(Drums/※サポート)のリズム隊が激しく、巧妙に表現している。
 
そうした「叙情性」が顔を見せたかと思えば、続く「夢みるルーザー」では元気いっぱい男の子のギターロック、「夏の大三角関係」では金澤ダイスケ(Keyboard)がシンセで遊び倒すシティポップで、全力疾走。ライブでも常勝・上昇の「普遍性」も健在だ。
 
そして(懺悔の意味を込めて正直に書くが、)ここ1、2年フジファブリックから離れつつあった我が心を完全に取り戻させてくれたのが、4曲目「マボロシの街」。本作で唯一金澤ダイスケが作曲したこの曲は、加藤慎一のワードチョイスの妙も手伝い、山内総一郎の持ち味、透明感あふれるボーカルをしっかりと引き立てている。
 
「ぼんやりは素敵だけれど 何を思うかであなたが変わるよ」…このフレーズにハッとさせられた。3曲目「夏の大三角関係」を聴き終えた時点では、男子目線の「ふざけつつもふざけ倒さずにちょっとかっこつけようとする、どこか”中2″な感じ」な歌詞が全面に出ていたが、本作で唯一ここだけ、鍵括弧をつけて女子目線の台詞を載せている。それはフジファブリックの作家性…つまり、とことん”男子”になりきって作り上げた本作のカラーを鮮明にするための、一滴のスパイスになるとともに、次作『GIRLS』への期待感をこの上なく膨らませてくれた。
 
『GIRLS盤』ではいったいどのような世界を見せてくれるのか…。本作5曲目「ALONE ALONE ALONE」では怒涛の転調に加え、「熊の惑星」や「モノノケハカランダ」を想起させるようなギターリフなど「変態性」の一端を見せてくれたが、「女性目線での変態」という新境地を期待せずにはいられない。
 

 


 
boyst◆リリース情報
フジファブリック Mini Album『BOYS』
・2015年06月24日(水)発売
初回生産限定盤[CD+アイスボールトレー(ボール型製氷皿)] AICL-2891-2 ¥2,300+税
通常盤[CD]AICL-2893 ¥1,850+税
※年内リリースの【GIRLS盤】とのW購入者スペシャル特典応募券封入
<収録曲>
M01. Green Bird
M02. 夢みるルーザー
M03. 夏の大三角関係
M04. マボロシの街
M05. ALONE ALONE ALONE
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◆フジファブリック2マンツアー フジフレンドパーク2015
・2015年07月01日(水)【東 京】Zepp DiverCity (TOKYO)
 ゲストアーティスト:キュウソネコカミ
・2015年07月02日(木)【東 京】Zepp DiverCity (TOKYO)
 ゲストアーティスト:ウルフルズ

◆フジファブリックオフィシャルサイト
http://www.fujifabric.com/
◆フジファブリック CONCEPT MINI ALBUM「BOYS」&「GIRLS」特設サイト
http://www.fujifabric.com/special/boys_girls/