連載

lead_simple

M.D.M.S「Nasty Trick」
TEXT:桂伸也

 
80年代初頭にアメリカのLos Angelesを中心に発生した音楽ムーブメントで、L.A.METALと呼ばれるものがあった。HEAVY METALサウンドにグラムロック的な要素を加え、荒々しくもグラマラスでカッコいいと思わせるスタイルをどのバンドもが持ち、ちょうどMTVの進出という音楽業界の変革の波に乗って大きな注目を浴びた。
 
いわゆる日本のメタルシーンとは一線を画した存在ではあったが、当時そのスタイルに大きな憧れを持った日本のアーティストも少なくはなかったのではないだろうか。
 
M.D.M.Sは、そんなL.A.のスタイルを感じさせる日本のバンドであり、まさに「かつて多くの日本人ロックファンが憧れた」姿を持つグループといえる。単なるビジュアルやパフォーマンスのスタイルだけでなく、全体からにじみ出る、いい意味で日本人離れしたセンスは、かつて憧れが手に届かなかった日本のロッカーたちにとっては大きな衝撃ともいえるだろう。
 
彼らはボーカルのMamiyaを中心に、ドラムのMayo、ベースのDaibon、ギターのShinで結成された4人組のバンド。MayoはBEEASTが紹介しているイベント『WOMEN’S POWER』にも近年、出演しているバンドLittle Dynamite Sexでもドラムを担当しており、ご存知の方も多いと思う。
 
Mamiyaが繰り出すメロディラインは、ある時は攻撃的で、ある時はけだるく、そしてまた別の瞬間には印象的なフレーズをつむぎ出す。リリースされたシングルの3曲を耳にすると、非常に表現のレンジを広くとりながらも、メロディラインをしっかりと押さえていることがよくわかる。タイプは違うボーカリストであるが、かつてL.A.METALの雄、W.A.S.P.のボーカリスト、Blackie Lawlessが同じように、時に声で荒々しさを見せながらも、メロディラインを美しく響かせるという点をしっかり押さえていたことと、非常によく似ている。これこそはロックの荒々しさを押さえつつも、キャッチ―さをうまく曲に織り込む、そんな手法の一つだ。
 
そんな彼女を、Mayo、Daibonのタッグによる重量感抜群のリズムセクションと、Shinの攻撃的なギターが強力なバックアップを見せる。そのハーモニー、メロディ、微妙なフレーズの一端まで、まるで日本人が作ったとは思えないほどに日本人離れしたセンスが感じられる。バッドボーイズ的なけだるい雰囲気を、極太のロックサウンドにのせ、破天荒にその響きをかき鳴らす。スカッと晴れたハイウェイを、スピードを挙げながら飛ばしている車のB.G.Mにはまさに最適。ウジウジした雰囲気の中で流れる音ではない、気持ちが心からロックな音を欲している時に聴くには、最高にマッチするサウンドだ。まだこの作品が彼らの1作目であるにもかかわらず、その完成度も特筆すべきポイントだ。是非M.D.M.Sの今後の動きに、注目してみてもらいたい。
 


 

 
M.D.M.S「Nasty Trick」
発売中(現在はライブ会場での直接販売のみ)
1,000円(税込)
収録曲:
M01. Nasty trick
M02. Black widow
M03. Since you went away

 


 
◆ライブ情報
 
『優雅灯主催YouGotTwo!vol.9~空詩爆誕レコ発祭~』
2014年11月24日(月) 【東 京】渋谷GUILTY
 


 
◆オフィシャルサイト
 
http://mdms-official.jimdo.com/