連載

ロックライフソリューション

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

ロックな生き様を紹介する「ロックライフソリューション」のコーナーです。第1回と同じく、ハワイ州オアフ島からお届けしたいと思います。オアフ島は、8つの島からなるハワイ諸島の中で3番目に大きな島。ハワイ州の玄関とも言えるホノルル国際空港があります。一番メジャーな島なので、一般的にハワイと言えばオアフ島をイメージする方も多いはず。今回の「ロックライフソリューション」第4回は、そんなハワイ州オアフ島で、“ブレイジン ステーキ”を経営する、カドタ ケンジさんにお話をうかがいます。

その前に、一つ情報を書いておきましょう。カドタ ケンジさん自身は、表に出ることはあまり無いのですが、以前に経営されていた横浜・八景島シーパラダイスのレストラン「ローズベイハウス」は、レストランらしからぬ手法で、店歌を持つという風変わりなアピールをしていました。2004年に発売された店歌は、TBSテレビ系「U-CDTV」のエンディングテーマにも起用された「炎のエビフライ ~キングオブバイキング~」。ネット上で熱狂的な支持を受け、八景島シーパラダイスを導入したPVが話題になりました。発売当時を記憶している読者もいることでしょう。後追いの読者のため、音楽情報サイトBARKSの動画を引用して、ご紹介しておきます。

      

Photoカドタ ケンジ プロフィール

1969年岡山県生まれ、神奈川育ち。学生時代からパンクバンドでドラムを担当。社会人になってからも、数年間バンド活動を続ける。旅行会社での長い務めを経て、横浜・八景島シーパラダイス内のレストラン「ローズベイハウス」のオーナーとして独立。型破りな発想で、数々の伝説を作る。2010年、念願だったハワイでのレストラン経営のため渡米。奥様と一緒に、二人三脚の充実した日々を過ごしている。

— 現在ハワイ在住ということですが、こちらの生活には慣れましたか?

カドタ:そうですね。少し慣れてきたと思います。店が忙しいので毎日あっという間です(笑)。毎日を必死に働いている感じで、振り返る余裕はありません。ハワイには2010年の初夏から住んでいるのですが、気候は最高ですね。特に私は暑がりなので、年中Tシャツと短パンで生活できるのは、うれしいです。肌寒い日もわりとあるので、家内はパーカーが手放せないようですが(笑)

— そもそも、なぜハワイに来ようと思ったのでしょうか。
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カドタ:一番最初は、私がまだ旅行会社で働いている頃に仕事で来たのですが、気候が気に入りました。その後「ローズベイハウス」というレストランを日本でやってたのですが、場所が八景島シーパラダイスなので、繁忙期と閑散期の波が大きかったのです。なので閑散期を利用して、毎年ハワイに骨休めに来ていました。そうしてるうちに、ハワイで商売ができたらいいなって思ったんです。

— 思い立ってから実際にお店を出すまで、どのくらいかかりました?

カドタ:実際に店舗を探したり、本腰を入れてからは2年くらいでしょうか。オーナーと言っても、私達夫婦も「ローズベイハウス」に出て毎日働いていましたので、現地の視察などは本当に大変でしたね。繁忙期はどうやっても時間を作れませんから。でも困難があると、乗り越えたくなるので(笑)、日本に居ても出来ることはすべて実行して、閑散期を待つような感じでした。

— 海外でお店をやりたいと思う人は多いような気がしますが、実際にやってしまう人は少ないと思います。決断のエピソードなどありますか?

カドタ:先ほどの話の通り、毎年骨休めにハワイに来ている中で、将来的にはココ(ハワイ)で店をやろうと夫婦で話していました。それが老後なのか、数年後なのかは、決めていませんでした(笑)。事前調査をしている中で、ハワイのビジネスをコーディネートしている方と知り合いまして。そこから話がトントン拍子に進んだのが決め手ですね。その方のアドバイスもあって、少しでも若い今(笑)なら頑張れるだろうと、思い切って決めました。

— 実際にお店をやって、イメージと違いました?
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カドタ:やはり生活が変わりますので、その辺は多少ありますけど、想定内といえば想定内の範囲でした。お店中心の生活は、日本に居る時と変わらないので。むしろ環境面が辛かったですね。家を借りるにしても、日本のようにはいかないのです。なので最初は超安いホテルを借りて住んでました。家を借りること一つだけでも、かなりの労力。これは辛かったですね。

— お店の方はどうですか?

カドタ:ハワイだけじゃなくて、アメリカ全体のビジネスが、基本M&A(※企業の合併や買収)なんです。私達もイチからお店を作ることはせず、今ある店を買い取るような形で店舗を探しました。色々な物を見た中で、“ブレイジンステーキ”のプレートランチ(※日本でいう弁当のような類)店を選びました。“ブレイジンステーキ”自体は、ハワイを拠点に30店舗くらいあると思います。その1つを買い取って、経営を始めました。日本の時と同じで、オーナーとはいえ夫婦で店に出てますから、現場の人でもあります(笑)

— M&AはITバブルの頃から日本でも知られていますが、“ブレイジンステーキ”に決める時、悩みはありませんでしたか?

カドタ:もう少し詳しく話すと、ハワイといっても島がいくつもありますよね。私が骨休めに毎年来ていたのは、マウイ島やハワイ島なんです。実際に物件を探し始めたのも、マウイ島とハワイ島です。そしてマウイ島に良い物件を見つけて、契約寸前までいきました。まぁ、実際ほとんど契約したと言ってもいいくらいの話なんですけど(笑)。やはり日本と違ってアメリカですから、そこは冷静に周りに意見を聞いたりした中で、止めた方がいいと判断しました。その物件を流した時は、ちょっと凹みました。

— そういうドラマがあったのですね。
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カドタ:次にどうするか考えている中で、マウイ島やハワイ島は物件の絶対数が少ないので、オアフ島をターゲットに切り替えて探しました。オアフ島なら選べるくらい物件もあるので。その頃はもうハワイで商売するモードになっていましたから、後戻りもできないし、商売が成功するを考えた結果、“ブレイジンステーキ”に決めました。決めてからも、同じオアフ島でも複数店舗が売りに出ているため(笑)、足を運んで立地やらを検証して。桜坂編集長が今回泊られているアラモアナホテルのそばにも、候補物件がありました(笑)

— オアフ島だとワイキキ界隈が中心部なので、その中心に近い方が繁盛するイメージがあります。

カドタ:ワイキキ界隈は完全な観光地なので、お客さんが観光客相手です。そして何はともあれ、地代が高すぎるのが難点です。私はローカル(現地の方)を対象にしたお店を考えていたので、最初からワイキキは外しました。いくつか見たローカル向けの店舗で、ショッピングモールの中にあった今の物件に決めた感じです。実際始めてみて、本当にローカルしか来ません(笑)。観光客が来たことは一度もないです。知り合いが訪ねて来る以外に、日本人は見かけませんね。

— やるまでも大変で、やってからも大変そうです。

カドタ:商売は根性が無いと、なかなか難しいですね。大変だからやらないという人もいるだろうし、大変だけどやってみようと思う人もいるだろうし。大変を大変と思わない人もいるだろうし(笑)。大変さでいえば、日本でお店をやっていた時も、色々ありました。客商売だと、お客さんが良い人ばかりではないのは、世界共通だと思います。自分が決めた道を、悔いのないように進むことを意識していれば、乗り越えられるのではないでしょうか。

— なるほど。実際に行動されているだけに、説得力バッチリですね。
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カドタ:根性論を振り回すわけじゃないですが、信念を持って仕事をするのは大切だと思ってます。信念があれば、迷っても解決の方法が見つかると思うし。判断に迷いがあると、商売もうまくいかないと思います。

— 信念というのは、よくロックの世界で出てきますが、本当に信念を貫いている人がどれだけいるか?というと、実に微妙です。

カドタ:私も若い頃はドラマーとしてバンドをけっこうやってたんで、そういう意味ではロックの精神が中にあるのかもしれません。パンクロックだったから、パンクスの精神というか(笑)。当時のバンド仲間は、プロ志向で頑張っていましたけど、結果的に今は誰もやってません(笑)。でも精神的な部分は人生にプラスになってるはずです。パワーの源というか。私もいつかハワイで!という夢を、実際に実現しましたし。

— 毎日お店に出ているということですが、お休みはゼロですか?

カドタ:お店は買い取って始めたわけなので、権利をもらった日から、すぐ店に出ています。従業員もそのまま引き継いだので、スタッフも同じなんですけど、全員ローカルだから、コミュニケーションに戸惑いました。ハワイで店をやってる割には、私達夫婦そろって英語が得意じゃないんです(笑)。でもスタッフとの会話は英語なので、意思の疎通に時間がかかることが多かったです。あと業務オペレーションにしても、旧オーナーのやり方と私ではまったく違うので、スタッフの方も戸惑ったとは思いますが(笑)。そんな感じで半年くらいは、休みたくても休めない状況で、毎日店に居ましたね。最近やっとスタッフが成長してくれたので(笑)、週に一度は休めるようになりました。

— お休みの日は何をされてますか?
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カドタ:日本と違って、娯楽がまったくありません(笑)。ビーチに行くことが休日にやることですね。それはローカルも同じで、スタッフに休日何してる?って聞くと、全員がビーチと答えます(笑)。日本だと数えきれないくらいの娯楽があるので、最初は刺激が少なく感じましたが、慣れてみると時間の使い方が違うような発想になって、休日はゆっくりと“時間”を楽しんでます。

— 実は私もカドタさんと同じように、この10年間は毎年ハワイへ来ています。そして何かやりたい!と考えているのですが、何もできずにいます(笑)。同じように悶々としている人は、結構いるかもしれません。何かアドバイスをもらえますか?

カドタ:最後は思い切りしかないと思いますが(笑)、事前にどんなに準備をしていても、やってみたら違うということは普通にありますし。日本で商売を始めるのと、基本的には同じだと思います。海外ならではの点は、円とドルなど為替関係ですね。これがかなり大きいです。今は円高(※取材時レート:1ドル=83円程度)なのでスタートするには良いかもしれません。私はホテルの会員権を持ってるんですけど、その時のレートは、1ドル130円でしたから(笑)。もう売るに売れないので持ってるしかないです。事業の場合も、資金は借り入れて始めるのが普通ですが、日本人なら日本の金融機関で借りると思います。そうするとこの為替問題が実に響くんです。簡単に言えば、毎月の返済が為替変動によって、20万円が30万円になったりするわけです(笑)

— 確かに為替相場によって大きく揺れますね。

カドタ:高級店ならまだしも、私の店はプレートランチの店だから、ローカルが日常的に食べにくる店なんですね。だからローカルのプライスです。値上げしたら日常的に食べれないからお客が減ります(笑)。美味しくてボリュームがあって安い!というのは絶対条件。なのに一生懸命働いても、ちょっとした為替変動で、利益が飛ぶことも十分あるのが痛いところです。

— なるほど。ご苦労は絶えないですね。音楽の話に戻って、ここ一番で聴いている曲があれば教えてください。
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カドタ:渡米前は不安も大きくて、挫折しそうになることも正直ありましたね。そんな時に「頑張れ!」と背中を押してくれた曲があります。THE MODSの「Killer Joe」。この曲は『CLOUD 9』ってアルバムに入ってます。ハワイに来てからも、「自分のやってることは間違ってないのか?」と自問自答する時によく聴いてます。迷いがある時には、この曲がピッタリです。

— 「Killer Joe」の持つメッセージが、カドタさんに同調するのでしょうか。

カドタ:そうですね。特に「世界のどこに居たって、自分自身信じろ!」という歌詞。これはThe ClashJoe Strummer(Vocal & Guitar)が、THE MODSのメンバーと合った時に言った言葉が歌詞になっているのですが、世界的に活躍したJoe Strummerの言葉だけに、余計に重みがあるというか、ずしっときます。

— フェバリットアーティストは、やはりTHE MODSとThe Clashですか?

カドタ:それ以外はLAUGHIN’ NOSEです。ちなみに家内のカラオケの十八番も、LAUGHIN’ NOSEの「BROKEN GENERATION」(笑)。まぁその3バンドは今でもよく聴きますね。思えば学生時代に初めてコピーしたバンドを、そのまま好きな感じです。音楽の基本はロック中心ですが、ここ最近はハワイアンも(笑)。やはりハワイに居るので、ハワイアンミュージックが生活にマッチします。

—では最後に、何か一言お願いします。

カドタ:ハワイに来て、まだまだこれからも大変なことがあると思いますが、お店を順調に経営して長くハワイで暮らせたらと思っています。皆さんも、やり方を間違えなければ、誰でも夢の実現はできると思います。協力してくれる人が出てきたり、チャンスが来たり。タイミングを見失わず、信念を持った自分らしい人生設計をされるとよいのではないかと思います。あと、観光などでオアフ島に来ることがあれば、ぜひレンタカーを借りてドライブしてみてください。素晴らしいハワイの景色を楽しみながら、ついでに私のお店に寄って、ステーキを食べてください(笑)。プレートランチですが、テイクアウトはもちろん、店内でゆっくり召し上がっていただくこともできます。日本語が話したい時もあるので(笑)、この記事を読んだ方のご来店を心よりお待ちしております。

Photoハワイでポピュラーなプレートランチ。さまざまな料理のプレートランチがあります。特にお肉は人気のメニュー。そんな日常的に食べられているステーキのプレートランチを、日本人夫婦が経営。文字で書くと簡単に終わってしまいますが、カドタさんを一言で表現するなら、“ガッツ!根性の男”といったところでしょうか。信念をもった男は本当にカッコ良いです!

実はお店での取材以外に、カドタさんとっておきのお薦めビーチがあるということで、そちらにも案内をしてもらいました。お店のプレートランチを持って、気分はまるでピクニック。観光客のいないビーチで、ステーキを食べながら、記事に書けないような裏話まで聞くことができ、とても楽しいひと時を過ごせました。さらにアフターで、ハワイで一番美しい夜景が楽しめるタンタラスの丘へ。約半日一緒にいたせいか、カドタパワーをもらって、私まで“ガッツ!根性の男”に少し近づいた気がします。ステーキと一緒に食べる夢は、本当に美味しかった!素晴らしき時間をありがとうございました。


BLAZIN STEAKS Windward City
所在地 Windward City Shopping Center 45-480 Kaneohe Bay Dr, Kaneohe Hi,96744
営業時間:10:30 ~ 22:30 (日曜・火曜/21:00)
定休日:なし
Kaneohe, HI 96744




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