連載

ロックライフソリューション

TEXT:桜坂秋太郎

ロックな生き様を紹介する「ロックライフソリューション」のコーナーです。第3回はハーレーダビッドソンのカスタムメイドショップ“BAD LAND”を経営するクワイケイイチさんにお話をうかがいました。クワイさんは35歳までの人生をロックに捧げ、そしてそこから第二の人生を歩まれています。

ロックミュージックとハーレーダビッドソンの組み合わせは、洋楽のプロモーションビデオや音楽雑誌の表紙などでお馴染み。著名なロックミュージシャンが乗るカスタムハーレーに、目を輝かせた人もいるのではないかと思います。日本では免許制度の問題から、大型バイクが長年流行らず、中型と呼ばれるクラスが人気の対象でした。

法改正があり、大型免許が取りやすくなったこの10余年で、大型バイクのライダーが急増。特にハーレーダビッドソンに乗る人が飛躍的に増えたことは異論ないでしょう。そして、人とは違うスペシャルなマシンに乗りたいと思うのは、自然な心理。ハーレーをカスタムして自分だけの物、自分専用の色に染めることは、ロマンでもあります。

Photoクワイケイイチ プロフィール

1964年東京都(板橋)生まれ。10代から35歳までバンド活動を続ける。パートはVocal。ハーレーダビッドソンのヨーロッパパーツ輸入業をきっかけに、カスタムメイドショップのオーナーへ。世界最高レベルの品質とデザインであるヨーロッパ製のパーツにこだわり、独創的で誰が見てもクールなスタイルのカスタムハーレーをプロデュースし続けている。

—まず、ロックを好きになったきっかけを教えてください。

クワイ:祖母の影響で、John Wayneの映画を観たのが始まりでした。音楽は「Rawhide」やJohn Denverなんかを聴いて、英語圏の音楽に興味を持ちました。そして友達がくれたThe Beatlesのカセットテープを聴いて、さらにのめりこみました。ガツンときたのは、Led Zeppelinを聴いた時ですね。あとJanis Joplin。ブリティッシュな感じのブルースがかったロックが好きです。バンドもそういうバンドをやってきました。

—ロックの好みとバンドのスタイルが一緒だったのですね。
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クワイ:僕はヴォーカルなんですけど、最初の頃はDeep Purple系が好きな連中が多かったので、Deep Purpleっぽいバンドをやってました。都内のライブハウスなどにも出てましたが、若い頃は寝ても冷めてもロックでしたね。僕自身のスタイルは、シャウト系ヴォーカルなので、やはりRobert PlantJanis Joplinの影響が強いです。あとはJohn Lennonかな。

—バンド活動はどのようにされていたのですか?

クワイ:僕は高校を出てから看護学校に行って、看護師として病院に就職しました。育ったのは埼玉なんですが、横浜で看護師になりまして、18歳から24歳までは病院に居ました。でも音楽の夢があきらめきれなくて。歌は中学生の頃からずっと練習し続けていました。病院では手術室に勤務していたのですが、病院の仕事の中では時間帯がハッキリしていたこともあって、21時以降は毎日歌の練習をしていましたね。

—病院勤務とは驚きました。24歳の後を教えてください。

クワイ:僕、19歳で結婚してるんです。で、24歳の時にカミさんにやっぱり好きなことをやりたい!と言いました。そして病院勤めを辞めて、トラックの運転手になりました。なぜトラックなのか?と言うと、病院時代にやっていたバンドの連中が、トラックに乗ってたんです。病院よりも時間に融通がきいて、トラックに乗っていれば、仕事中でも発声練習ができるなと考えました。もっと練習したかったので、何時間も歌える環境に身を置きたいと思ったのもあります。

—病院からトラックとはすごい転職ですね。まるで違う生活になったのでしょうか。
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クワイ:そうですね。朝6時にトラックに乗るのですが、乗った時から発声練習をして、仕事を終えるまで歌っていました。最初は運送屋に勤めていたのですが、途中からトラックを自分で買って、持ち込みのスタイルにしました。自分のトラックなので、常に音楽を聴いて歌える環境に整えることができましたね。

—結果的に、まさに音楽のために仕事を変えたような感じですね。

クワイ:本当に音楽一色でした。ただ年齢が24歳から30歳くらいまでは良かったのですが、33歳とか34歳になってくると、メンバー募集をしても若いミュージシャンしか来ないんですね。当時はプレイヤーという雑誌でメンバー募集をしていたのですが。同世代はほとんどが引退して、自分が一番年上というバンドが多くなりました。

—年齢的な部分による歌の変化はありましたか?

クワイ:それが声がどんどん良くなってしまったのです(笑)Freddie MercuryAretha FranklinTina Turnerなどを歌ってもイケるし、W. Axl Roseなんて余裕!といった具合です。それだけ喉の調子が良かったので、どんなに叫んでも枯れない声を手に入れていました。俺の声ってすごい!と思っていましたし、実際どこの誰とセッションしても、驚かれました。

—かなりストイックな練習を積まれた成果でしょうか。
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クワイ:僕は音楽を楽しんだ記憶がなくて。歌の練習は本当に集中してやりました。看護師を辞めて以降は、当時自転車で20分くらいのところに東名高速の高架下があって、毎晩発声練習していましたね。でもさすがに夜中は危ないので(笑)その後サックスの個人練習用の防音ブースを買いました。家に帰ってからも、5時間は練習していたと思います。年間で歌わない日は一週間も無かったんじゃないかな。もはや強迫観念ですね。一日休むと昨日出てた声が出ないような気がして。生真面目過ぎたのかもしれません。でもステージやセッションがいつ入っても、常にベストコンディションでいたかったんです。

—音楽を楽しむ、つまり趣味的な音楽活動は考えられないような感じですか?

クワイ:無理ですね。僕は練習を少しでもさぼったら歌えなくなるという意識で音楽をやってきたので、逆にスパッと音楽を止めました。35歳の時です。それまでは歌のことしか考えてなかった男ですから、スパッと止めるといっても、まるで18歳の高卒と同じような感覚でしたね。まさにゼロからの出発。

—35歳で音楽を止めようと思ったきっかけを教えてください。

クワイ:たまたまハーレーに乗っていたんです。最初はハーレーに興味無かったんですけど(笑)バンド仲間が乗ってて、その影響で乗るようになりました。音楽は僕にとって趣味ではなかったので、ハーレーを知ってから、唯一の趣味が見つかったような。初めて買った1967製のハーレーは程度がひどくて、買ってすぐに近所のハーレー屋に駆け込んだんです。そこの親父さんと仲良くなって、10年近く付き合って、自分のハーレーをいじれるくらいになりました。そうこうしている間に、僕は体中に刺青入れてしまって(笑)それで35歳の時に「お前そんな歳にもなってこれからどうやって食ってくんだ?」と言われまして。

—35歳で転機を迎えたのですね。
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クワイ:BAD LANDは、ヨーロッパのハーレーパーツを日本に紹介しているのですが、その当時のハーレー乗りは、誰もヨーロッパのパーツなんて知らなかったのです。でも製品の品質ももいいし、誰もやってないし。じゃ、それを商売にしてみようかなと。初めて買ったボロボロのハーレーを直す時、フレーム(※バイクの骨格部分)をスウェーデン製にしたこともあって、ヨーロッパという意識がどこかにありました。

—アメリカンバイクの代名詞ハーレーと、ヨーロッパパーツの組み合わせは面白いですね。

クワイ:大量消費の時代ですから、手間のかかる鋳物の技術はアメリカに残っていないのです。でもヨーロッパには小さい町工場がたくさんあって、丁寧に仕事しています。ヨーロッパのパーツは、個人のエンドユーザーに売っても、装着できないことが多いので、どうしても業者相手が多くなります。商売を始めて3年4年はヨーロッパパーツを広めるのに時間がかかりました。この10年でかなり浸透したとは思います。ワイドタイヤのルックスの強烈さに、ハーレー乗りが憧れた時があって。それからヨーロッパのスタイルは、とてもクールなものになりました。

—ショップのオープンはスムーズでしたか?

クワイ:最初は自宅で輸入販売を一年間やりました。トラックに商品を積んで行商したり。取り扱い品が増えてきて、だんだん手狭になった時、ちょうど出物があったので店をオープンしました。それが2000年の暮れですね。その後、今の場所に移転しました。

—店名「BAD LAND」の由来を教えてください。
Photoクワイ:ヨーロッパパーツの輸入販売すは、35歳でハーレー屋の親父に紹介してもらったのですが、やらせてください!とお願いした時に、俺がつけてやる!と(笑)つけてもらいました。由来としては、サウスダコタにインディアンの居住地があって、無法者が集まるエリアに通称バッドランドと呼ばれるところがあるみたいです。

—「BAD LAND」のお客さんはどのような方が多いですか?

クワイ:35歳以上の大人の方が多いです。内容はオーダーメードですね。車両が無い人もいます。お店にあるハーレーのAとBとCを足して3で割った物を作りたいとか(笑)見積もりが大変ですね。でも納得の一台に仕上げるため、特にヨーロッパのパーツは高価な物が多いので、納得の一台のために情熱を注いでいます。

—ハーレーカスタムショップ同士の交流はありますか?

クワイ:昔はありましたけど、今はあまりないですね。それぞれのショップは、バンドのようです。店をロックバンドに例えると似ています。基本ライバルでありながら、ライブハウスでは対バンで話す時もあるような。

—お店をバンドに例えるあたりがロック好きには理解しやすいです。
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クワイ:僕は歌い始めた3年くらいは、喉がが潰れて落ち込んたんです。でもあるときコツをつかんで、声がバーと出るようになりまして。常にそのことを頭において商売をしているというのはありますね。ただ自己満足なアーティスティックになりがちなので、そこを経営者としてどうバランスを取るかが難しいですね。今は8人の従業員がいますが、彼らの生活を背負っているわけですし。彼らだけじゃなく、彼らの家族も背負っていると思うと余計に。

—では最後に、今後目指したいところを教えてください。

クワイ:僕は毎日、朝9時から24時の日が変わるまで働いている感じなのですが、常に何かやっていてトータルで30分も休憩してないんじゃないかな。ネット系は僕が主になってやってますが手間がかかりますね(笑)でもネット経由で来店される人が多いので、絶対に手を抜けない仕事でもあります。通常のバイク屋やカスタム屋は、社長や親父が自らメカニックなケースが多いので、現場作業に追わてしまいネットのことなどできないのが実情だと思います。僕は幸いメカは従業員に任せているので、管理や情報発信に集中できます。最近はITに詳しい人とワールドワイドに展開できるビジネスを考えていて、その構想を成功させたいですね。

 

BAD LANDを訪ねて驚いたことは、ゴミやチリが一つも落ちていないだけでなく、細部まで徹底して美しく、作り上げるマシン同様に、お店も美しかったことです。私もバイクに乗る人間なので、バイク屋・カスタム屋は多少知っていますが、これほどまでに美しいショップは見たことがありません。クワイさんの美学を感じずにはいられません。

インタビューはお店の2階にあるモダンなソファーで実施しました。そこで熱く語るクワイさんに、思わず引き込まれそうになりました。ロックに人生を捧げてきた男だからこそ、かもし出すオーラがあるのではないかと思います。そしてそれがクワイさんの最大の魅力であり、お客さんや従業員の方の心をとらえているのではないでしょうか。

下記リンクから、BAD LANDのWebサイトをチェックしてみてください。クールでかっこいいサイトです。お店のイメージと完全にリンクしています。Webサイトから受ける印象は、実際にお店に足を運んでも同じでしょう。トータルデザインのコンセプトがマッチしたBAD LANDは、クワイさんのロック魂との相乗効果で、カスタムハーレー界で快進撃を続けるに違いありません。

<取材協力>
BAD LAND
http://www.badland.net/
所在地 〒212-0055神奈川県川崎市幸区南加瀬4-18-1
TEL 044-587-3139
FAX 044-580-3431
営業時間:9:30 ~ 20:00
定休日:水曜日
神奈川県川崎市幸区南加瀬4丁目18−1




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