同人メタルの雄、IRON-CHINOを中心とした、強烈な個性を持った3人のパーソナリティが、単なる情報提供番組に留まらない楽しい情報トークイベントを繰り広げ、まだ本当の音楽の楽しみ方を知らないあなたを、新たな世界へお連れする「ももてつNMカフェ」!!
今回はそのいよいよ始まった第一回イベントの模様をレポートしよう。
若干緊張した趣で開始したイベントのオープニングコールに続き、記念すべき第一幕となる「鉄音放送」。メイン・パーソナリティのIRON CHINOからは、彼がライフワークとして力を注いでいるプロジェクト、IRON ATTACK!の紹介が行われた。今回はまず名刺代わりとして、最新アルバム『STARDUST』の紹介から、その制作を巡る裏舞台を語ってもらった。
このSTAGEで主題となる、作る側の視点に関した説明。根本にある曲作りに関する論考が語られる。「大概がキラーチューンから曲を作り、間を生めて歌曲になるようなアルバムの作り方をしている、きっと売れてる曲はそうではないかと思っているのですが(笑)」「ギターリフから曲を作るなんてことはよく言われていますが、大概が実はギターソロから曲が作られていると思います(笑)」作られたギター・ソロを際立たせるための構成を構築していくことで、曲を成立させていくという。通常よく言われている「モチーフのメロディを発展させる」などといった曲作りとは、似ているようでまた違った方向性が垣間見られ、ある種“同人ならではの自由なアプローチ”と解釈することもできよう。ちなみにIRON CHINOの作曲のパターンとしては、彼のギターの師匠である屍忌蛇より教わったという、「リフをいくつも作って、プラモデルのように組み合わせる」という手法を利用しており、今回リリースされた『STARDUST』の、こだわりのポイントとしても、「同じメロディの上に、違うリフを乗せる等、ハーモニーでのバリエーションを作り出す」ことを特徴として挙げている。
また、もう一つの特徴としては曲のキー設定を挙げていた。特に彼のもう一つの活動拠点となっているLIGHTNINGでVocalを担当している勇舞が、この『STARDUST』でも制作に参加しており、彼のキーの際立った高さを特筆していた。通常男性でA程度のキーが、勇舞ではCまたはC#ほどの音域になるとのことだ。また、そこから発展しロックでよく採用されるEm、Amというキー(ギターの開放弦の音よりこのキーに対してのリフが作りやすいため、このキーはよく採用される。)から、DEEP PURPLEの曲でよく採用されるGというキーに関しての論考まで、ギターへの思いを込めた熱弁が続いた。この話から、IRON CHINOが曲作りに対してギターという存在がいかに大きなポジションを握っているかを理解することができるだろう。
また、裏話的な話として、「ツアーのチケット予約特典として、タブ譜を付けようとした」というエピソード等、同人という面で自由に発想を考えられるポイント等、興味深い点を多く語ってくれた。イベント中で「ここまでネタ晴らししてしまうなんて…(笑)」と、本人が思わず口にし苦笑いしてしまうほどに、内容の濃いトークが展開された。
続くSTAGE2は、悶絶メタルによる同人メタル界の話題紹介。今回は同人メタル界で今最も熱い注目を浴びるアーティストImperial Circus Dead Decadenceより中心人物であるRib:y(uhki)がゲストにて登場。ちょうどイベントの次の日に渋谷ライブハウスMILKY WAYで開催された『INFINITE UNIVERSE presents「GATE TO THE UNKNOWN 2012」』に、奇跡の出演を果たす彼らの実態を通して、リスナー目線での興味深い話をたっぷり語ってもらった。
Imperial Circus Dead Decadenceは、九州を中心に活動を続けている、ヴィジュアルロックと同人物語音楽をデス/ブラックメタル上で昇華させるというコンセプトを持ったメタル・プロジェクトだ。首謀者のRib:y(uhki)は、漫画家、ミュージシャン、デザイナー。グッズやTシャツのデザインも手がけている。福岡で活躍を続けているヘヴィ・メタル・バンドANOTHER STREAMとも、彼らのジャケットデザインをやっていたことでも繋がりがあり、今回は参加するイベントのメンバーとしてBass、Drumsのメンバーを起用している。
音楽的な影響として、1)ゴシカルかつ物語性を持つもの、2)ヴィジュアル系、そして3)デスメタルとして、大きく三つの影響を受けているという。その影響を及ぼしたバンドとして、以下のようなアーティストを挙げた。
1).SOUND HORIZON
2).DIR EN GREY
3).IN FRAMES、Cradle Of Filth(特にDani Filth(Vocal))、Children of Bottom
続いて、今期出演するイベントについて。実は彼ら、大きな支持を得ているにもかかわらずライブを行ったことがない。それだけにこうして今回メディアにメンバーが登場するということは、非常に貴重な機会でもあった。イベントでは“トランスメタルの雄”として名高いBLOOD STAIN CHILD、ヨーロッパでの有名なメタル・ライブフェス『Wacken Open Air』に出演が決まっているHONE YOUR SENSE、更にはIRON CHINOのバンドIRON ATTACK!でもドラマーとして参加している長谷川ゆうきが所属するANCIENT MYTH(バンドではJUHKI名義にて参加)と、強力な面子が出揃っていた。Rib:y(uhki)が、出演するバンドそれぞれの性質を熟知しているところも興味深い。単なる対バンイベントに収まらず、お互いのサウンドをよく知り合い、イベントの意味を考えているところに、彼らが今回のイベントに参加した大きな意義があるようにも見える。
こうして、Rib:y(uhki)が最後にイベントのステージに対する意気込みの言葉「貴方達の言葉を私に」を残し、STAGE2は幕を下ろした。
STAGE.2に引き続き、Rib:y(uhki)も参加の上、最終幕のSTAGE3がスタート。この枠は月毎のリリースタイトル紹介を通して、メタル初心者の興味を更に引き込むトークを、稲本瑠夏(以下、稲本)というモデルを通して展開することをテーマとしたSTAGE。その目的を掘り下げ、今回は「メタル初心者から見たメタルの印象」的な部分を、ざっくばらんな会話から掘り下げ、その可能性について探ってみた。
プロフィールの通り、元々がバンギャという素性の稲本。かつて母親が音楽に対し雑食で、何でも聴いていたことから拒否反応はなく、メタル寄りのヴィジュアル系は聴いていたということでメタルに対し違和感はないが、実際にはCDショップなどであまり手にとったことがないという。これに関しては、「CDショップでのカテゴリが曖昧」であり、一般的なショップでは、メタルと分からない分類をされていることが原因となっているようだ。そのため「そこまで聴き込もうというところに進まなかった」という意向が、このカテゴリのものには強く感じられる。そして、ゲストのRib:y(uhki)のルックスに対する印象を応えてもらうと、「『Nightmare Before Christmas』のjackみたいでカワイイ」というインパクト的な印象のほかに、元々彼女が頭に描いていたメタルのイメージにぴったり、という印象も持ったようだ。具体的には、“白塗り”“黒の衣装”“ヘドバンで叫んでいる”的な印象がメタルにはあり、そういう意味ではRib:y(uhki)がこの日見せてくれたルックスは、彼女が頭に描いていたメタルのイメージにかなり近い。また、試聴として掛けた彼らの楽曲に対しての印象も、「意外にもメロディアス。」という意見が述べられた。これらのトーク内容からは、ビギナーがメタルに感じる印象も、元々は何らか難しい方向をイメージし食わず嫌いをしているイメージをメタルに持っているかのような情景が垣間見られる。
ルックス的な話からは、本題からは外れるが興味深い内容も語られた。IRON CHINOから「名前と顔を売っているから、出すのは当然だと思っていたが、同人系は顔を隠すことが多い」という部分には、メタルという枠を超えた同人という部分での特徴が表されている。自身のスタイルに関しRib:y(uhki)は、「正統派メタルの人からは怒られるんじゃないか?まあ、でも正装だから」という意見を出したが、それに対し「同人ならではないか?(やりすぎくらいやる)、逆にメジャーでは中々そこまで行われることはなく、同人だからこそできる露出の仕方ではないか」という前向きな意見が返された。むしろ、Rib:y(uhki)のスタイルを含めImperial Circus Dead Decadenceのイメージからは「ジャパニーズ・メタルのイメージとして強い。ヨーロッパでも受けるんではないか?」という評価の意見も出された。前述の影響を受けた部分から分かるように、Imperial Circus Dead Decadenceはメタルに留まらずヴィジュアル系のイメージをも強く打ち出す部分があり、メタルという分野に限らない、広い趣向性に対応できる幅の広さを彼らは持っており、そんな特徴からも彼らの音楽が実は受け入れられやすい度量があることを示した。「メタルにもモテキ到来か!?」そんなジョークと本気を折りまぜながら、第三幕を終了させた。
かくしてこの日のイベントは、幕を閉じた。だが、同時にイベントが目指す到達点への旅は、スタートを切ったばかりだ。
完全なスタイルを追及しないがために、このイベントで出てくる内容は予測不能、新しいものを目指すだけに、問いと議論が繰り返され、多くの疑問に対する一つの答え、またはそこに行き着くまでの軌跡があらわにされる。メタルを知らない音楽ファンの目線、知っているファンの目線、そして作る側の目線とその観点は豊富で、「知りたい」と願う人々の欲求を、満たしてくれたことだろう。また、議論というと堅苦しいかもしれないが、実際にはもっとフランクなトーク内容で、まるで単なる井戸端会議のようなリラックスした雰囲気が会場には溢れた。真に音を楽しむことに堅苦しい雰囲気を持ち込まない、一つの重要な要素であるともいえよう。また放送では流れなかったが、イベント終了後の気楽な観覧者とパーソナリティの挨拶やトーク等、通常のイベントとはまた違った空気を味わえるのもこのイベントの特徴だ。次はどんな話題やハプニングが飛び出すだろうか?メタルを笑顔で、心から楽しむことを目指すこのイベント、その動向からますます目が離せない!!
コンサート・ツアー『STAR DUST MEMORY 2012』
■京都 8月24日
~次元を超えた、異ジャンル同志の対決!!~
IRON ATTACK! vs 魂音泉
都雅都雅
http://park20.wakwak.com/~togatoga/
■名古屋 8月25日
~ヴァイオリンvsエレクトリックギター、宿命の対決!!~
IRON ATTACK! vs TAMUSIC
Party’z
http://partyz.radcreation.jp/
■渋谷 9月1日
~遂に実現する、夢の師弟対決!!~
IRON ATTACK! vs Unlucky Morpheus
サイクロン
http://www.cyclone1997.com/
お求めは、とらのあな、メロンブックス、ローソンチケット、イープラスにて。
特設サイト
http://ryu-5150.jp/star-dust-memory2012/top.html
とらのあなインフォメーション
http://www.toranoana.jp/info/media/120824_toho/
Twitterハッシュタグ
#STARDUST2012
Rock Bar Malmsteen
営業:19:00~LAST
定休:不定休
住所:〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町33-10J+Rビル サイドJ5F
TEL:03-5456-3956
公式サイト:http://www.malmsteen.jp/
REGULUS
「STAR★REGULUS」
発売日:2012/6/22
BLRC-00054/2,500円(税込)
2010年に日本で結成されたグループREGULUSの、待望の1stアルバムだ。その旋律とハーモニーには美しいだけでなく、日本のリスナーに馴染みやすいテイストが満載。また、Keyboardには近年あまり聴かれないオルガンの音がフィーチャーされ、往年のプログレッシヴ・ロック風味も感じる等、非常にバラエティに富んでいる。単なるメタル・ビギナーだけでなく、メタル以外の音楽が好きなファンにも十分アピールする魅力が一杯だ!
ELENDIRA
「INNOCENT AGE」
BLRC-00055/2,500円(税込)
2008年に日本で結成されたヘヴィ・メタル・バンドELENDIRAの、1stアルバムが登場。ツインギターの持ち味を存分に発揮したヘヴィで攻撃的なサウンドと、奥行きを醸し出すシンフォニック・サウンドを絶妙にミックスし、U-TEN(Vocal)の甘くキャッチーなヴォイスが奏でるメロディを強く引き立てる。非常に耳に馴染みやすく、ヘヴィ・メタルに興味を持ったばかりのビギナーにはオススメだ!!
THE AGONIST
「Prisoners」
発売日:2012/7/11
SPIN-040/2,500円(税込)
2004年に結成された、カナダのグループTHE AGONIST。その3枚目のアルバムが到着した。Alissa White-Gluz(Vocal)の強力なグロウルで押しまくるオープニング・ナンバー「You’re Coming with Me」のインパクトは強烈、更に全編に、単なる力業ではないバンド側の思慮が方々で聴かれる、ヴォリューム感たっぷりの作品。筋金入りのメタル・ファンにはお薦めしたいアルバムだ。
WIGELIUS
「Reinventions」
発売日:2012/7/11
SPIN-039/2,500円(税込)
スウェーデンの国営テレビのタレントコンテスト番組に出場した経歴のあるAnders Wigelius(Vocal)を中心として結成されたWIGELIUS。ルックスの良さだけでなく、そのヴォーカリストとしての実力は折り紙付きで、情感たっぷりな歌は魅力的だ。メタルに留まらない80年代のテイストが満載の、キャッチーでメロディアスな楽曲は、このアルバムの持ち味。幅広い年齢層に受け入れられるスケール感抜群の逸品だ!!
ANKOR
「My Own Angel」
発売日:2012/7/11
QIHC-10044/2,700円(税込)
2003年5月スペインで結成された6人組ハードロックバンドANKORのセカンドアルバム。結成当時全員が14歳だったところから、非常に若々しさに溢れたバンドだ。紅一点のRosa De La Cruz(Vocal)のキュートなヴォイスと、ハードなロックを猛烈に主張する激しいビートとギターのリフが生み出すヘヴィでスリリングなサウンドとの対比が絶妙!特に若い層に強くアピールするサウンドだ。ガールズ・ファンも必見!
PHOENIX RISING/Fire & Ashes
「MMXⅡ」
発売日:2012/7/11
QIHC-10045/2,700円(税込)
2006年に結成された、スペイン・マドリッド出身のメロディック・パワー・メタルバンドPHOENIX RISING/Fire & Ashesのセカンドアルバムだ。伝統的なヘヴィ・メタル・サウンドを踏襲し、激しく打ち鳴らされるビートとギターの中で美しいハーモニーとメロディが共存する、本格的なメタル・ファンなら思わずうならずにはいられないサウンドだ。ギター・ソロのメロディにまで様式的な美しさを感じられる、秀逸作だ。
BETRAYING THE MARTYRS
「Breathe In Life」
発売日:2012/7/11
HWCY-1315/2,300円(税込)
2008年にフランス、パリで結成されたメタル・コア・バンド、BETRAYING THE MARTYRSの、デビュー・アルバム。デス・ヴォイスのAaron Matt(Lead Vocal)とクリーン・ヴォイスのVictor Guillet(Keyboards &Clean Vocal)のコンビネーションも絶妙、シンフォニックなサウンドでスケールを感じさせたり、テクニカルなキメを絶妙に取り入れたりと、強力なヘヴィネスはもちろんのこと、ブラスト・ビートと音の洪水に終わらない、幅広いエッセンスを要所に感じることができる。
PROFANE OMEN
「Destroy!」
発売日:2012/7/11
HWCY-1316/2,300円(税込)
1999年にフィンランドで結成された古豪ヘヴィ・メタル・バンド、PROFANE OMEN、彼らの3作目となるアルバムの登場だ。オールド・スクールなヘヴィ・メタル・サウンドに、計算されたタイミングで入り込むシャウトやデス・ヴォイスが非常に絶妙で、「メタル・コアはどうも…」というメタル・ファンにも受け入れられそうな、バランスのいい作品だ。疾走感と勢いに溢れ、かつ絶妙な決め所をいくつも持っている、“カッコいい作品”だ!!