連載

ママはロッカー マザー5 大阪府堺市 わだみや

※この記事は取材した2010年のアーカイブです。最新情報ではありません。

TEXT :桜坂秋太郎

隠れファンの多い連載「ママはロッカー」。第5回に登場してくれるのは、複数のバンドを掛け持ちして活動するわだみや(Vocal)。関西で活発に活動しているので、すでに知っている人もいるかも多いかもしれません。BEEAST読者なら、『WOMEN’S POWER Vol.48~東京・大阪 ひなまつりLIVE~』の大阪記事に登場している彼女を見ていることでしょう。事前資料によると、2007年には日本の老舗レディースバンドSHOW-YAと同じステージに立ったり、さまざまなロックイベントへの出演。そのようなキャリアを積み上げ、ヴォーカリストとして円熟していることがうかがえます。子育てをしながらも、アクティブに音楽活動を続ける秘訣にせまってみたいと思います。それではインタビューを始めましょう。

Photo— まず、音楽との出合いを教えてください。

わだみや:祖父母の代から実家がいわゆる料亭のような店をやっていて、小さい頃から三味線の音に囲まれていました。自分自身も3歳の頃から日本舞踊を始めました。その料亭で親族の宴会をするのですがそこ家族はみんな踊らされたり、歌わされたり。歌う歌は祖母直伝の小唄や民謡でした(笑)。思えば、それが出会いと言うか・・・自然な流れというか・・・。中学校では、コーラス部に入部しました。

— なるほど。ではバンドを始めるきっかけを教えてください。

わだみや:元々、ユーミン松任谷由実)が大好きで、Heavy MetalとかHard Rockとか全く興味がなかったんです。でも高校に入学してすぐの頃、音楽室で何となくピアノを弾いていたら同じクラスの軽音楽部の男の子が「ライブでちょっとだけ鍵盤が必要やねんけどそこだけ弾いてくれへんか?」と。その話には伏線があって、当時、私が憧れてた隣のクラスの男の子がHard Rock好きだと聞いて、その軽音楽部の男の子のところに情報収集に行ってたので(笑)。私自身がHard Rockに興味があると思われたんでしょうね。で、結局引き受けて、初めてスタジオでリハをしたときに、ひとつひとつの楽器の重なりが創る音に言葉にならない衝撃を受けて・・・そのままズルズルと(笑)

— ユーミンは良いですね。Heavy MetalやHard Rock以外を、今も聴いていますか?

わだみや:いっぱい聴きます!ユーミンはもちろん、中島みゆきも聞きます(笑)。曲が良ければ邦楽・洋楽問わず、なんでも聞きます。ゴスペルを習っていたので、今でもゴスペルはしょっちゅう聴きます。子供と一緒に歌える童謡、唱歌も好きです。

Photo— 最初のバンド体験は鍵盤ということですが、どのタイミングでヴォーカルへパートチェンジを?

わだみや:鍵盤をやりながらも本当はヴォーカルをやりたいと口にしたところ、身近なヴォーカリストさんから「ヴォーカルは難しいんだからなめるな!」と一蹴されました(笑)。しばらくして、学校内で開催された軽音楽部のライブの全体リハの時に、自分が鍵盤を弾いているバンドのヴォーカリストが遅刻して、リハーサル順番が来たのに間に合わなかったんです。それで仕方なく代わりに歌ったのを先輩が聴いてたんです。そのあと、「うちのバンドでヴォーカルやりませんか」と先輩から誘われたのがきっかけで念願のヴォーカリストになれました。

— 学生から現在までの、音楽以外のお話を聞かせてください。

わだみや:実家が繁華街で飲食店をやっていたので、夜の街で遊ぶのが大好きな子に育ってしまいました(笑)。そのうえロックバンドとかやってるのに、グレることもなく(笑)。どちらかというと、まじめに生きてきたなぁと言う感じです。人見知りするので、他の方々には「最初は怖い人だと思ってた」とか「めっちゃおとなしい人だと思ってた」とかよく言われます。そして、共働きの親が保育所代わりに小さいときから近所の英会話教室に入れてくれました。教室にいくのが大好きだったので英語も大好きで、結構まじめに勉強してました。その後、旅行業界への就職を考えていたのですが落ちてしまい(笑)、ラッキーにもあるメーカーに運よく拾ってもらえました。今もずっとその同じ会社でフルタイムで働いています。内容は、広報や企画、営業の仕事も経験させていただきました。

— メーカーにお勤めだと、福利厚生が充実してそうですね。

わだみや:子供ができたときも、育児休業を取らせていただき働き続けることができました。バンドって結構お金がかかるので、絶対その分は自分で働いて捻出したかった。だから働くことはバンド活動するために必須だったんです。欲張りですが、結婚して子供も欲しかった。だから私には、バンドと家庭の両立プラス仕事があって、この3つのうちどれが欠けてもダメなんです。でも、一人目を産んだ後はしばらくバンド活動ができなくて沈んでいました。ちょうどその頃、友達が教えてくれたパソコン通信(笑)をはじめて、音楽仲間が集まるセッションフォーラムの存在を友人から教えてもらい参加するようになり、また音楽と接点を持つことができました。あ、また音楽の話に戻ってしまいましたね(笑)

Photo— 今はアクティブに複数のバンドを掛け持ちされていますが、大変じゃないですか?

わだみや:大変です(笑)。でも、どのバンドも大好きなんです。やれることはやれるうちにやっておきたいので、物理的に無理が生じない限りは頑張りたいです。バンドは、オリジナルバンド2つと、年に2回以上ライブをするコピーバンドが2つあります。何とかなるもんだなと感じています。ただ…歌詞を覚えるのが…だんだんきつくなってきました。

— 家庭を持ちながら、フルタイムで働かれているのに、バンド4つは凄いですね。例えば、平日にリハーサルがある日は、どんな一日を過ごされるのですか?

わだみや:仕事が定時に終わることがあまりないので、ぎりぎりまで仕事して、慌てて職場を飛び出していくパターンが殆どです。リハーサルの開始時間が夜9時以降になるような時は、帰りの足が心配なので一旦帰宅して車で行くときもあります。余談ですが、主人も仕事が遅いので、平日にスタジオがあるときはどうしても娘の面倒を、両親に頼らざるを得ません。まさに独身時代に夜遊びから帰ってきた時のように、親のご機嫌をうかがいながら、こっそり家に入ったりします(笑)。ある意味、主人より気を遣います(笑)

— いまお子さんはおいくつですか?

わだみや:長男が15歳で中学3年。長女が6歳のいわゆる「年長」さんです。来春、2人同時にそれぞれ高校と小学校に進学です。娘は音楽が大好きで先日、私のライブで1曲だけヴォーカルデビュー(笑)をしました。よく通る声をしていて、周りから「もうオカンは引退やな」と言われました(笑)。息子もギターに興味を持ち出したようです。

Photo— ママロッカー最大の課題は、家庭とバンドの両立ですが、その辺はどう工夫されていますか?

わだみや:家族の理解と協力の一言に尽きます。うちの場合は、私の両親の理解と協力も大きいです。主人もバンドをやっているので、ライブや練習がお互いの予定と重ならないよう調整して、どちらかが子供を見れるようにします。2人が一緒にやってるバンドのときは私の両親にお願いしますが、どうしようもないときは一緒に連れて行きます(笑)

— ご主人もバンドをやっているのですね。

わだみや:主人は、自分のリハーサルやライブに行く時は、何も考えずにふら~っと出て行きますが(笑)、私が出て行く時は、ご飯の準備や、洗濯物の心配をしないといけません。理解はありますが、家事を代わりに、というのはなかなか難しいようです。息子が大きくなったので、「ごめん、どこかで好きなの買って食べといて~」という非常手段が使えるようになったのはかなり楽です。息子には申し訳ないけど(笑)。でも自分の目標として、息子が中学生の3年間は、絶対お弁当を欠かさず作ると決めました。たいしたお弁当ではないけど、一度でもライブで帰って来るのが遅かったからと言う理由でお弁当を作らなかったら自分にも負けるし、息子にも理解してと言えないような気がして。

— なるほど。お弁当を欠かさずという自分ルール=信念を貫く。実にそれはロックですね。他にも何かそういう物がありますか?

わだみや:負けず嫌いなので、細かいマイルールはいろいろあるんですが・・・すぐに思いつかないですね。子育てではないですが、ライブの翌日は絶対仕事を休まないようにしてるとか(笑)。これは、「会社の飲み会の翌日は絶対寝坊して仕事に遅刻しない」という独身時代のマイルールから派生したものです。

— 夫婦そろって音楽をやっているということで、お子さんに対して、楽器やバンドの英才教育はされてますか?

わだみや:上の息子は、3~5歳くらいのときは、KISSのビデオ見ながら、漫画雑誌を重ねた「簡易ドラムセット(?)」で、ちゃんとスティック持って叩いてました。将来有望!と思ってましたが、ライブハウスなどに連れ回しすぎたせいか、反面教師で「音楽嫌い」になってしまいました。でも、最近、急にギターに興味を持ち始めて、欲しいとか習いたいだの言い出しましたね。下の娘は、息子の時の失敗を活かして慎重に育ててます(笑)。具体的には「ピアノは音楽の基本」という主人の考えもあって、3歳から習わせてますが、今は歌うほうが好きみたいで、私の真似ばっかりしてますね。先日、私と主人が一緒にセッションバンドを組んでライブしたのですが、1曲歌わせてみました。爆音の中で、声が通ってたのがすごいなぁと…親バカですね(笑)

Photo— わだみやさん自身(笑)の、ヴォーカルのアピールポイントは何でしょうか?

わだみや:日本舞踊で鍛えた舞台度胸と、大きい声です(笑)。持って生まれた才能はないと思っているので、ステージでは全身で一生懸命歌うことを心がけています。体を使って、声を使って、表情を見せて、汗をいっぱいかいて、見に来てくれた人に何か感じてもらえるステージをしようといつも思っています。内側の感情を表現するという意味でゴスペルを少し勉強したのも良い経験でした。

— お話を聞いていると、まさに音楽一家という印象です。音楽以外の趣味などありますか?

わだみや:このまま息子が本当にギターでも始めてくれて、娘がベースや鍵盤を弾いてくれたら・・主人がドラムで、私がヴォーカル。家族でKISSのコピーバンドがしたいです(笑)。そのライブを私の最後の引退ライブにしたいなあって密かな夢があるんですよ(笑)。「家族全員の趣味」というのは、改めて考えたら無いですね。ちょっと寂しい(笑)。でも家族旅行や誕生日などのイベントは大切にしてます。

— それでは最後に、お約束の質問を。「バンドをやりたい!」もしくは「またバンドやりたい!」というママロッカー達へ、何かアドバイスお願いします!

わだみや:この質問を受けたら何て答えようかと、実は主人と話してたんですが・・・主人は「僕のような旦那を見つけることや!」と言ってました(笑)。このセリフはそっくりそのまま返したいと思いますが(笑)。でも、本当にその通りだと思います。家族に理解してもらうためには、自分も努力が必要です。そんなに難しいことではないんです。バンドとの両立で疲れた顔をせずに、自分自身が毎日生き生きと暮らせば良いと思います。音楽をやることで、今以上に家族に笑顔が増えれば誰も反対しないと思います。

Photo— では追加でもう一つ。「理想的な旦那さんを見つけたい!」と思ってる現役バンド女子達へのアドバイスをお願いします(笑)

わだみや:最初から理想的な旦那なんていない!おだてて褒めて持ち上げて、自分好みの理解ある旦那に教育しましょう(笑)。もちろんそこには、自分もちゃんと妻として旦那を理解してあげることが大切です!なんて、カッコイイこと言っちゃいましたが、本当は日々喧嘩しながら、少しずつまとまってきたなぁという感じです。あ、それってバンド活動と一緒ですね(笑)

インタビューを終えての感想は、ロックな美学を持った“パワフルな女性”。全国のママロッカーの指標となる話が聞けたのではないかと思います。そしてまだママになっていない独身の社会人女性、自分がバンドをやっている姿を想像してください。フルタイムで働きながらバンドをやることは、結構難しいものです。それが複数のバンドをやるとなれば、相当時間の効率化を考えないと無理。そこにプラスして家族が加わると…。その想像は正しくて、時間的にも精神的にも、とんでもなく大変なことは確かです。それゆえ家族がある人は、やりたくてもバンドをあきらめているケースが多いのが実態。弊誌BEEASTでは、そんな状況でも音楽活動を頑張っているママロッカー達を、これからも応援していきます!新しい文化を築いていきましょう!

◆わだみや BLOG
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