連載

ママはロッカー マザー4 杉並区 Mona

※この記事は取材した2010年のアーカイブです。最新情報ではありません。

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

今回登場してくれるのは、BALBAROIバルバロイ)のMona(Bass & Vocal)。3人の子供を抱えながら、バンド活動を続ける彼女に突撃インタビューを実施します。東京は西荻窪で、エスニック雑貨衣料屋を営むという情報を得て、取材はお店で決行となりました。中央線に乗るのは久しぶり。西荻窪は、はるか昔に一度降りたことがあるだけで、まったく土地勘がありません。駅前で待ち合わせましたが、民族衣装のようなスタイルで登場!初対面でも一発でわかる個性には惹かれるものがあります。

BALBAROIは、トリオロックバンド。メンバーはMonaのほか、ケチャ(Guitar)とタケゾウ(Drums)。事前にバンド音源を5曲ほど聴いていたのですが、バリエーションに飛んだ楽曲を、Monaの歌で一つにまとめているような印象を受けました。幅広いジャンルからの要素だけを表現すると、まとまりのないアウトプットが出来上がります。しかし、それをうまく統一感のある形に仕上げている歌声は、まさに圧巻といったところでしょうか。それではインタビューをスタートしましょう。

— まず、バンドの活動拠点を教えてください。
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Mona:高円寺や横浜ですね。高円寺では「ShowBoat」にお世話になってます。一時期、ライブをたくさんやっている時があって、その時は都内各所を週に一度とかやってたんです。でも何か違うかなって思って。やればいいってもんでもないというか(笑)それから横浜は、東京とはカルチャーが違うので出てみようかなと思いました。

— 確かに横浜には独特の雰囲気がありますね。何かエピソードはありますか?

Mona:私は一人でふらっと旅に出たことがあったんです。その時に山の音楽イベントに出まして。私はそれまではバンドが表現のスタイルだったので、一人で何かやるとか考えたことが無かったんです。でもその山のイベントでは、一人でもやれないと認められない!っていうか、つまりバカにされました。「一人でも表現ができないとダメなんだよ!」って言われて、悔しくなってやってみました(笑)私はベースと歌なので、弾き語りっていうのも“?”だったんですけど、ベースと歌で何が伝えられるのか…チャレンジしてみたんです。

— 確かに弾き語りでベースというのは観たことがありません。

Mona:実際にチャレンジしてみたら、「君すごいね!」「負けたよ!」とか言われて驚きました。「俺たちよりロック魂あるよ!」みたいにほめてくれた人もいて、何か伝えられたんだなって思いました。そして、そのイベントに来てた人たちに「Monaちゃんって横浜向きだよ」って言われて(笑)、よく意味がわからなかったんですが、それをキッカケに横浜で活動するようになりまして。横浜は「CLUB LIZARD」に出たら、店長さんにもすごく気に入ってもらえて、自分の表現が伝わったことがうれしかったです。

— 音楽活動を続ける原動力って何ですか?
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Mona:若い頃と比べたら、今は子供達もいるし、やりたい時に活動できない悔しさがあります。正直言ってライブの場では、まだまだやれるな!って思うことが多いし。楽器のテクニックが上手いだけでは、人に伝えるという部分が弱いと思うんです。いくら上手でも、飲み仲間を呼んで学芸会的にライブやってる人達を見て“違う”と思ったんです。それで何か余計に燃えてきたんですよね。私の音楽への思いは、そんなんじゃない!みたいな(笑)

— 昔から結構ストイックなタイプだったんですか?

Mona:人知れず練習をたくさんしました。ロックの世界って、若い時に達成?成功?した人が偉いような文化がありましたよね。コンテストでも年齢制限が25歳くらいだったりして。なので25歳がリミット、その後は引退みたいな嫌な風潮がありました。何をもって音楽活動を卒業とするかは、自分の中で決めるべきじゃないかと思うんです。だからアクセサリー的にロックしている人は“違う”なと。私も本当に寝る時間を削って練習して、音楽活動してきたんで。

— いつ頃からバンド活動してるんですか?
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Mona:高校からレディースバンドをやってました。地元に居る頃は、ヤマハのコンテストなどで賞をよくもらってましたね。そして大学を卒業して、音楽をやるためだけに上京してきました。上京してからも、東京だけじゃなくて地元に帰ってライブやってましたし、音楽がすべてでした。

— ベースをやろうと思った理由を教えてください。

Mona:最初はボーカルだけだったんですけど(笑)ベースを誰か入れてやろうと思うんですが、選ぶ人が悪かったのか(笑)私のノリに合わなくて、気持ちよく歌えなかったんです。両立は難しいので、ベースが上手く弾けると歌が止まっちゃったりしまして、「ベースもう置いたら?」ってよく言われましたね。でも、その壁を越えることも不可能じゃないかな?って思ってやり続けてます(笑)

— 両立が難しいのはよくわかります。

Mona:それに昔は、ベースをやりながら歌う女は生意気だ!って言われたんです。もともと女性ベーシストも数少なかったし。音楽を聴いてもらう以前に「5弦ベースを女で弾きやがってこのやろう!」とか「女のくせに!」みたいな感じでしたね。だから、音楽とはまさに私にとって“怒り”でした。もどかしさというか。音楽表現の原動力は“怒り”ですね。

— 今のメンバーとは長いのですか?
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Mona:長いですね。大学の頃からです。20年くらいは一緒にやってます。普通のバンドは、メンバーの入れ替えとかあると思うんですが、BALBAROIの場合は、お互いにリスペクトできていて、今でも一緒にやってる感じです。絆というものでしょうか。

— 話題を変えまして、お店を始めた話を聞かせてください。

Mona:吉祥寺にある「曼荼羅」が好きで、出たいと思ってオーディションを受けたんです。結果受かって月に2回くらいやってたんですけど、ある日「曼荼羅」に見知らぬオバサンから問い合わせがあって、たまたま通りかかって聞いた私の歌が耳から離れない!って(笑)。そのオバサンとのご縁があって、応援してくれるということになりました。バンド以外で何かやりたいこと無いかと聞かれて、私は民族物が好きだったんで、音楽以外ならお店をやりたいって言ったんです。そしたら持ってる物件をタダで使っていいからって。翌週からすぐ店を始めました(笑)。その後、やはり家賃を払って!となったんですけど(笑)。まず西荻窪の北口で始めて、その後、今のところに移りました。

— お店のお客さんがバンドを観にくることもありますか?

Mona:そうですね。お店のお客さんがライブに来てくれることもあります。でもライブやってる時と、店をやってる時って全然別人なんで(笑)けっこう驚かれます。お店があるメリットは、ライブが終わった後でも話ができるのが良いですね。ライブ会場だと、どうしても話できる人って限られてしまうので。会場では話せなかったけど、後でお店で会って感想を聞いたり。

— なるほど。ところで3人のお子さんの年齢はおいくつですか?
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Mona:8歳、5歳、2歳です。子供達はライブも観に来てますが、自分なりにモードを切り替えるみたいで(笑)、ママが命がけでやってると思うと、ぐずらないですね(笑)。初めてライブに連れて行った時に、私に対しての尊敬が出てきたような気がします。子供って純粋にエネルギーを感じるので、一生懸命やってる私の姿を見て、子供なりに刺激や感動を受けたみたいです。逆にそれからは、子供なりに自分のことをしっかりやるようになりましたね。

— 親の真剣な面を見せることが、子育てにプラスになってるわけですね。

Mona:音楽を続けていると、どうしても自分のやりたいことをやっているわけなので、子供達に接する時間はちょっと少ないとは思うんです。専業主婦のように、いつでも子供と一緒なら安心かもしれないけど。でも逆に、ずっと一緒だと馴れ合い関係になって、ストレスをぶつけたりすると思うんです。私は子供と向かい合う時間が少ないので、いつでも愛おしく思うし、ママは音楽が大事というのを伝えて、子供達にも自分の大事な物を探そうね!みたいな空気ができてます。

— お子さんは音楽に興味はありますか?

Mona:音楽というか、芸能をやっていて、本格的には2年くらいなんですけど、タップダンスや舞台をやってます。特にタップは縁あってすごい先生に付くことができましたし、子供なりに頑張っていると思います。

— 特に印象に残ってる親子の話を聞かせてください。
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Mona:ライブ本番の日に、子供が脱水症状で入院しそうな時がありました。それが印象的ですね。病院に行って子供が点滴うけたりしているんですけど、バンドやライブハウスには、リハーサルには参加できないけど、本番には出たい!と伝えて。本番の20分前に子供を病院から家に送って、ライブハウスへ行きました。そしたら、なぜかすごく良いライブができたんです。人間ギリギリの状態だと凄いパワーが出るんだなって思いました。

— では最後に、くすぶってるママさんロッカーへ一言ください。

Mona:私は、子供3人とも臨月までライブをやってました。お腹が大きくてベースがちゃんと持てない状態でも(笑)。歌は思い切り歌うと、お腹から子供が「それ以上やると出ちゃうよ!」みたいなメッセージを送ってくるんです(笑)。ライブはお腹の子と私の戦いみたいなところもありましたね。何ていうか、もちろん学生と違って時間や家族のハンデもあるとは思いますが、本気でやりたいことならやるべきだと思います。自分にとって命がけでやりたいことなんだ!ってわかれば、周りも変わってくるはずです。

インタビューを終えての印象は、とにかく“パワフルなエネルギーを持った人”です。インタビューの最中にも「命がけ」という言葉が何度か出てきましたが、真剣さという意味では、これほど純粋に音楽を向き合っているバンドマンはなかなかいないでしょう。影響を受けたアーティストは?という問いには、「ZELDAサヨコ」と答えてくれました。言わずもがな、ZELDAは日本のロックに大きな影響を残したガールズロックバンドです。

大手メジャーレーベルからも声がかかるほどのアーティストMona。契約こそしなかったものの「音楽がすべて」と言い切る姿は本物です。生まれ持った歌声と独特のグルーブを生むベースを手に、これからも独創的な音楽活動をすることは間違いありません。自分の中で生まれたものを、相手に伝わるように表現する。アーティストの基本中の基本を思い出すことができました。歌とベースの両立だけでなく、アーティスト活動と子育ても両立する素晴らしさ。日本のママロッカーに、大きな影響を残すような存在になってほしいと思います。

◆BALBAROI(Guitar:ケチャBLOG)
http://profile.ameba.jp/ikeda0103
◆BALBAROI インフォメーション
2010年10月17日(日)【横 浜】F.A.D
2010年10月31日(日)【高円寺】Show Boat


◆ニーニャ:モーナ ばるば屋
東京都杉並区西荻南3-15-13 タカナシビル2F
年中無休 11:00~23:00

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東京都杉並区西荻南3丁目15−13