連載

※この記事は取材した2011年のアーカイブです。最新情報ではありません。

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

復刊後初の「ママはロッカー」は大阪取材。第6回に登場してくれるのは、蓮華(RENKA)(Vocal)。関西を中心に活動するパワフルなママロッカーです。何でも3人のお子さんを持ちながら、HEAVY METAL系のバンド活動をされているとか。東京にも時々上京して歌っているそうですが、いったいどのようなノウハウを持っているのでしょうか。その秘訣を探ってみたいと思います。少し風が冷たいオープンカフェで、インタビューをスタート。

— 東京にはどのくらいのペースで上京されているのですか?

蓮華:保険営業の仕事をずっとしているのですが、3ヶ月に一度くらいの頻度で上京しています。お客さんや同級生などに会う目的です。上京した時はセッションなどで歌うこともあります。

— ずっと保険屋さんですか?

蓮華:そうですね。今は新しい会社なのですが、前の会社でも16年勤めていました。子供がいると、自由が無いと辛くって。パートとかだと無理があったので。例えば、子供の保育園のお迎えを仕事中に行けるとか、子供が病気になった時などは休める仕事となると、どうしても限られてしまいます。保険の仕事は時間的には自由が利いて、成績というか成果の仕事でしたから。でも最近は結構厳しくなったみたいです。

— お子さん達はおいくつですか?

蓮華:長女が21歳、長男が18歳、次男が16歳です。でも長女はもう結婚しちゃったし、長男と次男も就職しているので、逆に少し養ってもらっているくらいかも(笑)。私は10年前に離婚したのですが、養育費を出すって言われて、一度ももらわなかったのです。だから子供を3人育てることに必死で、その間の音楽はまったくやっていませんでした。

— 音楽への理解が無い環境だったのですね。

蓮華:当時の旦那は、メタルをやるなら俺と別れてくれ!みたいな、メタルを取るか旦那とるかという感じで、音楽活動は一切やらなかったです。CDなど全部捨てられちゃって、本当に鎖国みたいな状況で、完全に音楽から遠ざかっていましたね。一回だけ、こっそり行ったことがあるのですが、バレて死ぬほど怒られました。私が音楽に情熱的になっていたのを知っても、まったく応援してくれませんでした。

— お子さん達の理解はどうでしたか?

蓮華:私が一番やりたいと思っていることを、やっていないのを知っていましたね。私が車でこっそり聴いていたのは全部メタルなので(笑)。子供達の方から、お母さん好きなことをやったらいいのに…って言われました。子供が3歳とか4歳くらいの話ですが、お母さんが聴いている音楽と、お父さんが聴いている音楽が違うってことは、わかっていましたね。どっちがいい?と聞くと、お母さんの!何て答えていました(笑)。

— お子さん達は音楽をやりたいとか言いました?

蓮華:最初に言ってきたのは長女です。小学5年くらいにピアノをやってみたいと。それで、知り合いの先生に習ったのですが、先生が弾くのとは全然違う音楽が弾きたい!って言いだして。先生は教則通り教えたいし、娘はTHE BEATLESを弾きたいと言うし意見が合いませんでしたね。その結果、この子は教えられないと先生から言われてしまいました(笑)。娘は好きな物が弾きたいと言って、良い曲だと思った「LET IT BE」とかを両手でちゃんと弾いていましたね。やってみたら弾けた!と言って、私に聞いて聞いてと(笑)。私はその頃、音楽はまったくやっていませんでしたけど。

— ご結婚の前は、いつ頃から音楽をされていたのですか?

蓮華:元々は私ドラマーだったのです。中学2年の終わりからドラムを始めまして、つのだ☆ひろさんに教えてもらっていました。レッスンに行くと、色々なミュージシャンと知り合えたし、本当にドラムを叩くの大好きだったのですが、そんな時に旦那と合ってしまって(笑)

— ドラムを始めるきっかけを教えてください。

蓮華:中学2年の時に初めて“ジャパメタ”を観たのです。その頃私は静岡に住んでいたのですが、モッキンバードというライヴハウスに来ていた、デビュー前のANTHEMを観ました。それまで聴いたことの無い音楽で、とても力強くて。この人たちみたいになりたい!マッド大内さんみたいになりたい!って思いました(笑)。それでライヴの後、マッド大内さんに挨拶して、その後何度かライヴや、ドラムクリニックに行くようになりました。あるドラムセミナーの夏の合宿でも講師をされていたので参加したのですが、そこでつのだ☆ひろさんと知り合って、月に2回くらい東京までレッスンを受けに3年通いました。

— 東京までレッスンとは気合いが入っていますね。

蓮華:はい。金曜日の夜に仕事が終わったらすぐ最終便で上京、東京で一泊して、月曜の朝に帰ってくるというハードな感じで、今は絶対できないです(笑)。当時、ドラムにしか熱くなれるものがなかったので。本当に音楽だけでしたね。レッスンに通う中で、宮脇“JOE”知史さんなど、“ジャパメタ”と言われていた物は全部通りまして、そこから外タレにもいきました。つのだ☆ひろさんを通じて、あ!この人知っている!みたいな凄いミュージシャンとも触れ合うことができたのが、とても良い経験でした。その頃に人見知りしない性格が出来上がったのかも(笑)。その後、保険営業の仕事を始める時に役立ちました(笑)

— そして結婚後、音楽活動は休止されたと。音楽活動再開のタイミングは?

蓮華:ショッピングセンターの楽器屋にエレドラ(電子ドラム)が置いてあって、子供達は本屋か何かに行っていたので、何となく叩き始めたのです。子供達はお母さんがドラムを叩けることを知らないから、叩いていると、お母さんやめて!はずかしい!って言われました(笑)。ドラムで遊んでいるって思ったみたいですが、後からお母さんは本当に音楽がやりたいんだねって言っていました。子供達が独立していく中で、そろそろ好きなことをやりなよって言ってくれました。本当にやっていい?と確認しましたが、いいよと言ってくれたので、それがきっかけですね。そこからメンバーを探して、活動再開しました。

— パートはドラムで再開したのですか?

蓮華:実は、またドラムをやろうと思った時に、椎間板ヘルニアになってしまったのです。医者から手術しないとダメだよと言われてしまいまして。その頃私ちょっと太っていて、太り過ぎでヘルニアになってしまったような(笑)。でもドラムじゃなくても、音楽ならいいじゃん!って思って。声量だけはあったので、ヴォ-カリストになりました(笑)。バンド(Infinite soul)のメンバー、特にギタリストは、ダメ出しを私にたくさんしますけど、彼のおかげで自分が成長できたと思います。それが3年前くらいですね。

— バンドはすぐ作れたのですか?

蓮華:そもそもは、まずセッションをやろうと思って、誰かこない?と声をかけたら、30人くらい集まりまして。その中からバンドメンバーが決まりました。今は活動休止中ですが、月イチでライヴしたりしていましたね。2011年10月から、新しいバンド(LOTUS)も組みました。子育てが落ち着いたんで、自分がこんなに羽を伸ばしていいのかな?ってくらい、生き生きしていますね(笑)

— 子育て中と今で、変化したことはありますか?

蓮華:少し余裕が出来たので、今まで出来なかったことをやっています。例えば息子達が、俺達の弁当作ってと言うので、眠たくても毎日作っています(笑)。お母さんって結構料理うまいんだね!何て言います(笑)。栄養バランスを考えて夕飯もちゃんと作っています。お母さんはもっと主婦やればよかったんだよ!とか言ってくれますね。でも、仕事して子育てしている最中は、やりたくてもできなかったんだよ…と。だからお前たちの子供には、その分たくさんやってあげるね!って話しています。

— 先ほどは娘さんの話が出ましたが、息子さん達は音楽はやってないのですか?

蓮華:いえ、やっています(笑)。長男はベースを、次男はギターです。ジャンルは同じメタル系です。私のライヴもよく観にきてくれます。理解ある家族で、音楽活動にまったく支障が無いですね。だから音楽がらみで私を悩ませる人がいると、音楽は楽しむためのものだよ!なんて言ってアドバイスしてくれたり。苦しい思いしてまでやる必要ないよって。

— 素晴らしい家族コミュニケーションですね。

蓮華:家族でライヴも観に行きます。本当に理想的な形ですね。音楽の無理強いはしてきてないと思いますが、最初から興味があったわけでもないし、今に至るまではそれなりに大変でした。でもこれからの人生、先が楽しみですね。この子たちが自慢したくなるような母親でいたいと思いますね。

— それではお約束の質問を。「バンドをやりたい!」もしくは「またバンドやりたい!」というママロッカー達へ、アドバイスお願いします。

蓮華:この前も知り合いに、音楽やりたいけどできないって言う人がいました。でも、できないって決めたら終わりなのです。それこそ、いつまでに何人の人に声をかけようとか。それでダメだったらもっと広げようとか。口コミじゃだめならネットを使うとか。ともかく種をたくさんまいていけば、芽が出てくると思います。まずは自分を変えることが大切ですね。私はドラムが叩けなくなった時、そこで音楽を終わりにしたくないと思いました。体のことがあってドラムは叩けないけど、目線を変えて考えて、歌おうと決めました。バンドをやりたいなら、色々なところに種をまいて、私は楽器を弾いてみたい!とか、私は歌ってみたい!とか、まず人に言って行動することですね。あと、思い描いていることは何かに書く。そしてその言葉を毎日口に出してみる。口に出すことで行動が変わってきます。鏡を見て言うと更に効果があると思います。

— まず口に出して行動ですね。

蓮華:自分の中の何かが変わってくると思います。鏡を見て、言ってる自分の姿が情けないと、これじゃダメだと思いますから、堂々と言えるようになります。私、今婚約をしているのですが、婚約者にも、思っているだけじゃなくて口に出して言わないと!って言っています(笑)

— 婚約者の方も音楽関係ですか?

蓮華:いえ、まったくバンドはやっていません(笑)。私のファンというか応援してくれていた方です。歌ってカッコよくしている私を、見ていたいって言ってくれます。むしろ、ずっと歌って!と言って応援してくれます。自分が輝いていないといけないと思うと、自然と輝いていよう!って思いますね。良き理解者です。今までは漠然とライヴがあるから歌うって感じでしたが、今はこの人が応援してくれているから、私は歌う!って感じです(笑)

インタビューを終えた頃、可愛いお孫さん(長女の息子1歳半)を抱いて、婚約者の男性がお見えになり、私の次の取材先のルートなどを詳しく説明していただきました。良き家族と良き理解者を得て、まぶしく輝くママロッカーの取材は、予定を大幅に延長するほど、色々なお話を聞くことができました。本編には載せていない話で、私が一番感動したフレーズを最後に紹介します。

「常に前向きに生きるためには、誰かと会い続けないといけないと思っています。どんなときでも私は見られているんだって意識を持つようにしています。今日はしんどいって思ったら、そこで一日が終わり。そこから先へは進めない。でも今日はまだもう一人会えるかな、今からあの人にメールを書いたら返事が来るかな、とか。人が恋しいわけじゃなくて、自分が前向きでいるために、誰かと会い続けています。」

◆蓮華(RENKA)BLOG
http://ameblo.jp/renka0605