連載3回目は、PINEAPPLE RECORDSをご紹介します。パイナップルのような手榴弾イラストがPINEAPPLE RECORDSのシンボルマーク。日本全国を精力的に回り続けるSA(aka.Samurai Attack)を中心にしたレーベルです。多くのPUNK ROCKN’ROLLファンを魅了し続けるSAは、TAISEI(Vocal)・NAOKI(Guitar)・KEN(Bass)・SHOHEI(Drums)の4人で活動するバンド。エネルギッシュという言葉がよく似合う、桁外れなパワーを放つバンド、SA自体のインフォメーションは下段枠に公式サイトへのリンクがありますので、そちらからどうぞ。
そんなSAの作品18タイトルがPINEAPPLE RECORDSからリリースされているので、すでにロックコレクションの中にPINEAPPLE RECORDSの商品がある人もいるはず。しかしSAの作品を中心にリリースをしてきたPINEAPPLE RECORDSは、今年から海外アーティストのリリースもスタートした様子。いったいどのようなビジョンを持っているのでしょうか。特定のアーティストのためのロックレーベルという存在から、違うアーティストも手がける存在へ変わる意味を、インタビューを通じて感じ取りたいです。
実は私も若い頃、パンク~ハードコアパンクなバンドでギターを弾いていたことがあります。“ニューヨーク・パンク”や“ロンドン・パンク”と呼ばれるシーンのバンドは、一通り洗礼を受けていると言っても過言ではありません。それゆえにパンクの持つスピリットは理解しているつもりです。昨年、老舗のパンク系雑誌が休刊。ある意味指標的存在を失ってしまった日本のパンク界ですが、少しでも弊誌ビーストが貢献できるように、PUNK ROCKN’ROLLファンへのアピールを考えていきたいと思います。
まず始めに【PINEAPPLE RECORDS】の設立から現在までのプロフィールを教えてください。
根本:発足は2002年、SAの作品をリリースするための自主レーベルというスタンスが最初です。当時、友人であったSAのTAISEI氏が、それまでの“ミュージックマイン”との契約が終了し、次の展開を模索していたのですが、「仲間うちでD.I.Y.でやるか!?」と思いついたのがきっかけでした。レーベル運営で稼ぐという考えは毛頭なかったし、それ以前にレーベルに関しては素人でしたから、それからは完全にSAの作品のみをリリースしていました。しかしある日、友人のROBINから相談を受けました。彼らもレーベル発足当時のSA同様、それまでのレーベル“トリッピン・エレファント”との契約が終了し、次の展開に関する相談でした。SAとROBINは年中共演もし、SAのヴォーカルTAISEI氏はROBINのレコーディングにも参加するような深い友人でしたから、酒の勢いもあり、ウチからのリリースが決まりました。SAは2002年以降、映像作品も含め全18タイトル、ROBINは2007年以降アルバム2タイトル、DVD1タイトルをリリースしています。そして今年2010年5月、第三弾アーティストとして、縁あって海外のバンドSORRY AND THE SINATRASの日本デビューアルバム『HIGHBALL ROLLER』をリリースしました。
レーベルのカラーとして打ち出している特徴やセールスポイントを教えてください。
根本:先にも言いましたが、もちろん多くの人に聴いてもらいたいという気持ちは当然ありつつも、レーベル運営で稼ぐ考えはないというのが正直なところです。だからこそ、自分たちのアンテナを感電させるぐらいの、手放しにカッコイイ!と絶賛できるバンドしかリリースしません。なのでお客さんには、ウチからリリースしているバンドのライブが近場であれば是非見てもらいたいですし、それを見てから作品を入手していただく形でも大いに結構です。作品もさることながら、ウチから出ているバンド自体を好きになってもらえれば嬉しいです。
旬なお薦めをピックアップして紹介してください。
根本:こちらの作品の4点になります。
【タイトル】HIGHBALL ROLLER
【発売日】2010年05月26日(水)絶賛発売中
【定価】¥2,096(税抜価格)¥2,200(税込価格)
THE WiLDHEARTSのベーシストSCOTT SORRY(スコット・ソーリー)率いるストリート・パンク・バンド SORRY AND THE SINATRAS(ソーリー・アンド・ザ・シナトラズ)。本国発売に遅れること約1年、遂に彼らのデビューアルバムが、正式日本盤として登場! しかも日本盤には、500枚限定リリースされた7インチシングルにのみ収録の2曲(M-13 & M-14)をボーナストラックとして追加した、全14曲の特別仕様!!!
THE WiLDHEARTSよろしく、抜群のメロディセンスと、ロックンロールのダイナミズムを踏襲しつつも、一音一音から吹き出るような衝撃は、まごうことなき100% PUNK ROCK!! パンクス垂涎、サークルピットは炎上必至の、冴え渡るアレンジワーク、そしてSCOTTのダミ声VOCALに、PUNK KIDSは確実にイチコロでしょう。昨今のPUNKシーンに巨大な存在感を刻み込む一枚、堂々の殴り込みです!
【タイトル】REVOLT ‘N’ ROLL
【発売日】2010年02月03日(水)絶賛発売中
【定価】¥1,715(税抜価格)¥1,800(税込価格)
年相応の落ち着きなど微塵も見せず、初の全米ツアーをはじめ、さまざまなビッグフェスへの出演や、RANCIDジャパンツアーでの再サポートアクトなど、さらに精力的なアクションに明け暮れた2009年。そんな中で、これまで以上に多くの、そしてジャンルも世代も国籍もさまざまな客層と対峙して感じたこと、それはこれまで以上にPUNK ROCKを叫ばないかん!ということだった。
本作は、フルアルバム『VANDALS BOP』で見せた振り幅の広いロックンロールをより研ぎすまし、凝縮して、持てる感情全てを剥き出しにしたような全6曲。ジャケットのアートワークやタイトルが彷彿とさせるように、ロックンロールの蜂起(Revolt)を宣誓するかのような一曲目「Hey,Hello Mr.Freedom」に始まり、青臭い思い出や、挫折、再起、そして改めての決意表明といった、ちょっとしたドラマが展開される作品でもある。表現の振り幅は広いが、曲が持っているものは全て完全ド直球、SA流のPUNK ROCKN’ROLL作品だ。ファンには垂涎の、初心者PUNKSは尿洩れ注意の衝撃作!!
【タイトル】MAKE MORE NOIZE
【発売日】2009年09月02日(水)絶賛発売中
【定価】¥3,800(税抜価格)¥3,990(税込価格)
結成8年目に突入し、ジャパニーズパンクシーンではもはや不動の地位を築いたといっても過言でないSA。彼らが新たな試練と感動を求め、2009年3月、ついに初の海外ツアーを敢行した。
が、総移動距離10,410キロ、最大温度差40度、9日間で8本という過密スケジュール…それぞれにキャリアのあるメンバーだが、これまでの彼らの概念を突き崩すアメリカツアー。その全貌をとことん追ったドキュメント作品。
本編は、2009年6月9日にCSフジテレビNEXTでオンエアされた90分特番『SA突撃! ATTACK FROM JAPAN! 全米ツアーの全記録!』のDVD拡大ヴァージョンだが、泣く泣くカットされたシーンや、ライブでの模様を包み隠さず再編集し、よりツアーの厳しさと熱い胸の内が伝わる内容に。さらに、各会場からのライブを1曲ずつ加えたボーナス映像含め、全2時間半を超える大ボリューム作となった。ジャパニーズパンクバンドの意地と誇りを胸に、葛藤の壁を突き進むメンバーの姿は必見である。
【タイトル】Thunder & Speedumb
【発売日】2008年10月22日(水)絶賛発売中
【定価】¥2,381(税抜価格)¥2,500(税込価格)
2007年、元THEE MICHELLE GUN ELEPHANT~現The Birthdayのチバユウスケ氏が主宰するTRIPPIN’ ELEPHANT RECORDSから電撃移籍を果たしたROBIN。昨年3月リリースの移籍第1弾フルアルバム『DEAD LUCK CITY』から約1年半。その間、渋谷クラブクアトロでの主催イベント、BALZACとの東名阪ツアー、人気イベント“SET YOU FREE”への初参戦で若手メロディックバンドと共演するなど、新たな試みにチャレンジし続けている。
そんな、サイコビリーの枠に収まり切らない音楽性と人気を誇るROBIN。今作は、パンクはもちろんラウド&ヘヴィ系のリスナーにも訴求できる、ハードかつドラマティックな楽曲が目白押し。サウンド面では、サンボマスターやフジファブリック等との仕事で名高いエンジニア、杉山オサム氏との初コラボにより、圧倒的なパワーとクッキリした音像感を両立している。もはやサイコビリーもパンクも凌駕した、ラウド&へヴィな4thアルバムだ!!
今後のリリース作品や、アーティスト情報、また公募などあれば教えてください。
根本:ただいま水面下で進行中なのは、SORRY AND THE SINATRASに続き、またしても海外アーティストです。2月のSAリリースツアーでも共演を果たした、テキサス州オースティンのパンクバンドでLOWER CLASS BRATS。彼らも、先日の来日ツアー時に、余りにもいいヤツら過ぎて、勢いで決めてしまいました(笑)。なんだかガキの頃に描いたPUNK ROCKへの憧れをいまだ純粋に、汚すことなく持ち続け、それをライブや楽曲でまんま表現できる連中です。アメリカではもはや活動歴15年を越える重鎮バンドですが、そこには楽しさを通り越し、美しさすら感じました。こういう、やりたい表現を迷いなくストレートに放出できるバンドは海外、特にアメリカならではかも。乞うご期待です。。
根本さんが思う、レーベルを通じた「ロックシーン」への熱いコメントをお願いします!
根本:SAが中心なので、PINEAPPLE RECORDSはやはりPUNKが主軸となります。が、ここ最近、ことPUNKにおいてのシーンというものは本当に元気が低下していると思われます。全国各地に存在したいわゆるPUNK SHOPは軒並み閉店し、いわゆるPUNKを前面に押し出した若いバンドも、ズタボロのPUNKファッションに身を包んだ酔いどれも、すっかり目立たなくなりました。残念です。ただ、ピストルズがツバを吐いて30数年、いまだ在り続けている音楽でありカルチャーなわけで、そこには絶対の魅力があるわけです。当レーベルとしてやるべきことは、その絶対の魅力を浴びせるための「きっかけ」を作り続けること以外にありません。実際、その火は多少小さくなろうが、ライブハウスではいまだ根強く灯っていますからね。それを目の当たりにできるぶん、我々には希望があります。確かに景気は悪いですが、そもそも昔から周りは景気なんか関係なさそうな連中ばかりでしたし、景気のせいばかりにするつもりはありません。各方面の皆様も、この絶対の魅力を信じて共に返り咲きましょう!。
PINEAPPLE RECORDS
http://www.bandsjapan.com/pineapple/
◆アーティスト インフォメーション
SORRY AND THE SINATRAS
http://www.myspace.com/sorryandthesinatras
SA
http://sa-web.jp/
ROBIN
http://www.robin-jp.com/
PINEAPPLE RECORDSは、PUNKシーンへの「きっかけ」を作るため、海外アーティストのリリースまで手がけるようになった。精力的に活動するSAとともにこれからも飛躍は間違いない。本誌BEEASTが誕生した経緯も、低迷するROCKマーケットへの元気の「きっかけ」を作りたいという部分から。インタビュー中の「手放しにカッコイイ!と絶賛できるバンドだけをリリース」するというスタンスは、ロックの美学にほかならない。レーベル業というのは、通常はセールス数がすべてだ。「レーベルでは儲けない」という概念をぶち壊したような方針はすごい。そんなPINEAPPLE RECORDSが太鼓判を押すアーティストを体験してほしい!