連載

レーベル資料館 ~Rock Will Never Die~

第1回 Case Of “B.T.H. RECORDS”
TEXT:桜坂秋太郎

昨今、世の中の不況は深刻な問題で、働くこともままならない現状があります。一般的な話として、娯楽費の削減は統計データを見るまでもありません。大衆紙にも“CDが売れない”などという見出しが躍ることもあります。音楽シーンは完全にデジタル化され、ついには配信がスタンダードな手法となり、まさに激変の時代と言っても過言ではないでしょう。

そんな中、ビーストでもレポートをお届けしている「ロックをテーマにした舞台(ミュージカル)」が人気を博したり、ファッション雑誌がロック特集を組んだり、一昔前に比べると、ロックの世間への定着は言わずもがなです。いわゆるロックマニアだけの物ではなく、ごく一般的な人たちがロックを身近に感じている表れだと思います。人気のあるロックアーティストは、チケットを発売すれば即ソールドアウトとなるケースも多く、ロック人気には陰りがまったく無いような錯覚をしてしまいます。

ところが、ロック文化の原点であるライヴハウスへ足を運ぶと、文化の危機的な状況を目にすることがあります。ロックに対する先入観が薄れ、大きな意味でエンターテインメントの一つとして認知されたがゆえ、逆に指標となる物が必要になってきました。一般大衆化がロックの目的なら、ロックの魂はいつか死んでしまうかもしれません。

自分に合ったロックライフを楽しむため、自分に合ったロックを探求するため、その「羅針盤となるような物を何か提供できないか?」ということで、ロックレーベルを紹介するコーナーを新設します。知っているようで、実は全然知らない世界かもしれません。好きなアーティストが所属しているレーベルという観点ではなく、レーベル側からみたロックの世界をご紹介できたらと思います!

【B.T.H. RECORDS】のスポークスマン斎藤靖さんにお話を聞いてみました。

●まず始めに、【B.T.H. RECORDS】の設立から現在までのプロフィールを教えてください。

斎藤:ディスクユニオンに入社して今年19年目になるのですが、最初の10年くらいは店舗勤務でした。肩書きはメタル担当者だったり店長だったりしましたが、当時から漠然とメタル・レーベルを立ち上げたいなぁとは考えていたんです。9年前くらいに営業部へ異動になりまして、いわゆるバイヤーになりました。

国内外問わずメタルな商品の仕入れを担当していますので、結果的に様々な人脈が出来たんですよ。国内ですとインディーズで活動しているバンドも多いものですから、アーティスト直で接する機会が自然と増えてまして。

そんな中、上司がアネクドテンを招聘したんですけど、そのサポート・アクトとして五人一首の名前があがり、私のほうからコンタクトを取りました。結局、諸々の事情でサポート・アクトの話しは流れてしまったんですが、いろいろと話しをしている中で彼らがニュー・アルバムを制作中だと聞きまして、一緒にやりましょうとなったのがレーベル立ち上げのきっかけです。それが5年前ですか。

以降、第2弾のJURASSIC JADEはバンド・メンバーが弊社店舗にフライヤーを持参するという偶然から、CASBAHは私がバンド・メンバーへ手紙を書いたりしてリリースが決まったんです。あとは人脈ですね。有難い事に弊社を知ってくれているアーティストも多く、かつ協力してくれる関係者が多かったので、年間数タイトルのリリースが実現出来ています。

●レーベルのカラーとして打ち出している特徴やセールスポイントを教えてください。

斎藤:今はレーベル・カラーを特に意識していませんが、基本的には自分がカッコイイと思えるバンドをリリースしています。自分の好みもありますが、激しいメタル系が多いですね。

●旬なお薦めをピックアップして紹介してください。

斎藤:こちらの2点になります。

JURASSIC JADEの初期の名盤が遂に蘇る!
2010年でデビュー25周年を迎えるJURASSIC JADE。’89年にEXPLOSIN WORKSからリリースされた2ndアルバムが、リマスターされ遂に再発!
ジャケット

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【アーティスト】JURASSIC JADE
【タイトル】GORE
【発売日】2010年3月5日(金)
【定価】¥2,300(税抜価格)¥2,415(税込価格)

LPとCDでは曲順とミックスが異なる本作。今回はリミックスされたCD音源を使用し、LPの曲順通りに再構成。更にボーナス・トラックとして、オムニバス『HEAVY METAL FORCE Vol.3』(’85年)収録曲(「I Was Born To Thrash」と「流血人形」)、オムニバス『SKULL SMASH Vol,1』(’88年)収録曲(「Child Abuse (Live)」:初CD化)、当時LPに封入されていたソノシート収録曲(「精神病質 (Live)」:初CD化)、計4曲を追加収録。
HIZUMI独特の世界観を持つ歌詞・生々しいヴォーカルと、鋭角的なリフとがせめぎあうジャパニーズ・スラッシュ・メタルの最高峰ともいえる傑作。
ライナー by 行川和彦

ジャケット

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【アーティスト】JURASSIC JADE
【タイトル】誰かが殺した日々 〜NEVER FORGET THOSE DAYS
【発売日】2010年3月5日(金)
【定価】¥2,300(税抜価格)¥2,415(税込価格)

プロデューサーにDOOMの藤田を迎えた本作は、当時のオリコン・インディーズ・チャートで初登場8位を記録した。それまでのスラッシーな路線を踏襲しながらも、現在のスタイルに通じるような「黒い童話」や、実験的な要素の強い5分台の長尺曲「禁断少女」などを収録した意欲作。ボーナス・トラックとして、初CD化となるライヴ・カセット作品『PIRATED EDITION Vol.1』(’95年)を全6曲を追加収録。
ライナー by 行川和彦



●今後のリリース作品や、アーティスト情報、また公募などあれば教えてください。

斎藤:まだ未確定要素が多いので何とも言えませんが、5月くらいに再発のリリースが出来るかも知れません。

7月にはJURASSIC JADEのニュー・アルバムと、ヒストリーDVDのリリースを予定しています。JURASSIC JADEは今年デビュー25周年を迎えます。レーベルも5周年を迎えますので、 年末あたりに記念イベントが出来るといいなぁと考えています。 まだ何も決定していませんが(笑)

●斎藤さんが思う、レーベルを通じた「ロックシーン」への熱いコメントをお願いします!

斎藤:日本のバンドがもっと広く認知され、聴かれるようになるといいですね。日本人に一番フィットする音楽は、日本人が産み出す音楽だと思うから。

演者側には、自分が表現したいことは何なのか、明確な意志を持って挑んで貰いたいです。最近の若いバンドは技術的には素晴らしいけれども、なんか熱いものが伝わってこないことが多いんですよ。技術があるに越したことはないんですが、テクニックは自己表現を可能にする、または広げる手段でしかないと思うので。

今後も自分にとってカッコいいバンドをリリースしていこうと思います。

ロゴ
■レーベル インフォメーション■
B.T.H.(Bang The Head) Records
http://www.diwproducts.com/bth/
※直販あり

■アーティスト インフォメーション■
JURASSIC JADE
http://www2.odn.ne.jp/jurassic-jade/



■ビースト推薦文■
JURASSIC JADEは、歴史ある日本のメタルバンドとして知名度も高い。ヘヴィメタルをプレイしているプロなら、知らない人は居ないだろう。今回のお薦めアルバム2点は、レギュラーのナンバー以外に、貴重な初期音源をボーナストラックとしてCD化したことに意味がある。
そしてヴォーカリストHIZUMIが、なぜメタル界の女性パイオニアと呼ばれるのか、これらの作品を聴けば一発で理解できるはずだ。作品を聴いた後は、公式サイトからライヴインフォメーションをすぐにチェック!