連載

※この記事は取材した2012年のアーカイブです。最新情報ではありません。

セレクション13(大阪)「ハレソラ亭」マスター 白井“ナル”成剛
TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

大人気連載「ロック酒場探訪記」。第13回目、新春の大阪巡り最後を飾るのは大阪・福島の「ハレソラ亭」。凄腕のプレイヤーでありながら、音楽の道には進まなかったというマスターが居るお店です。福島駅からお店へ向かいながら、いったいどのような音楽人生を送ってきたのかを想像してみます。

「ハレソラ亭」はロックバーのスタイルではないため、おそらく一般的なロックファンには、あまり馴染みのないお店かもしれません。しかしお店に到着すると、外からはわからないロックの匂いを、壁にかかるLPレコードのアーティスト達がかもし出しています。

時間がある時は、いつもギターを弾いているというマスター。ギターを弾く姿に音楽への愛情を感じます。インタビュー前の雑談時、ハキハキしたトークに、ついついマスターに乗せられてしまいます。話を聞きにきたのに、私がしゃべってしまうのはこれいかに。それではさっそくインタビューをスタートしましょう!

マスター 白井“ナル”成剛 プロフィール

神奈川県出身。ウミガメがまだ産卵に来る頃の湘南の海で育つ。釣りを趣味にしていたため、サーフィンはやっていない。
青春時代からロックにハマり、キーボードを中心にマルチプレイヤーとして活躍。就職と同時に各地を転々とする生活を送り、2006年にお店をオープン。現在も時々セッションなどで音楽活動をしている。

— タイガースグッズがありますが、地元大阪でタイガースファンという感じですか?

ナル:タイガースファンですけど、地元ではないです。僕は神奈川の茅ヶ崎の出身なので。

— 茅ヶ崎の湘南ボーイですか!

ナル:就職するまで茅ヶ崎に居ました。就職してからは各地を転々と。

— お仕事を変えられとか?

ナル:いえ、この店を開くまでのサラリーマン時代は、転勤が多い仕事をしていましたので。東京から札幌や大阪などを転々として、各地の美味しい物を食べたり、夜のネオン街を闊歩する毎日でしたね(笑)

— 各地に住まわれた結果、どこが一番好きですか?

ナル:僕は北海道が好きですね。今はもう14,5年、大阪に住んでいますが(笑)

— お店はサラリーマンを辞めて、すぐにオープンですか?

ナル:いえ、すぐにオープンしたわけじゃなくて、一年間友達の居酒屋に勉強に行きました。それからですね、店を開いたのは。

— お店の客層を教えてください。

ナル:サラリーマンの方が多いですね。場所的にほとんどリピーターで、95%くらいは男性です。昔ロックバンドをやっていたって方が結構います。

— 男性が多いというのは、それを狙ったとか?

ナル:まったく狙ってないです(笑)。むしろ狙ったのは逆、女性ですね。今、女性が来るとしたら、生ビールを15杯飲んで帰るような方とか(笑)

— 壁に飾ってあるLPレコードのジャケット見て、何か反応はありますか?

ナル:そうですね。レコードを見て、懐かしい!って言いますね。だからお客さんの層は、その世代が中心と言えます。

— 音楽のリクエストはどうですか?

ナル:結構ありますね。お客さんがCDを持ってくるとか、店にあるCDとか。あれかけて、これかけてとワイワイやっています。

— ロックバーっぽい雰囲気は、まったく出していませんよね?

ナル:この場所(大阪市福島区)だと、どうしてもサラリーマンが中心なので、自然な感じでやっています。

— お菓子というか、スナック菓子がずらっと並んでいますが。

ナル:この店は僕一人でやっているので、お酒を出して、食べ物を頼まれると厨房に入っちゃう。そうすると、パッと食える物は無いのか?って必ず聞かれます(笑)。こうやってお菓子を置いておけば、とりあえず勝手に食ってもらって、間が持つだろうなって。

— なるほど。確かに何かすぐツマミが欲しい時はありますね。

ナル:ウチの場合は、2軒目とか3軒目に来る方が多いので、逆にお酒とちょっとしたツマミだけで十分という方もいますし、お菓子はすぐ無くなります(笑)

— それでは、マスターのロック話を聞かせてください。

ナル:僕は小学5年くらいから、Yesを聴いていました。周りは当時流行っていたABBABay City Rollers、それからKISSとかを聴いていましたけど。

— いきなりプログレですか!

ナル:Yesにいた Rick Wakeman(Keyboard)の『アーサー王と円卓の騎士たち(Myths & Legends Of King Arthur & The Knights Of The Round Table)』をテレビ番組で取り上げていたのを見て、レコードを買いに行って、一人でポツンと聴いていました(笑)

— バンド活動の方はどうですか?

ナル:中学3年の時に友達が文化祭に出るって話になって、お前んちはピアノがあるから、キーボードをやれ!みたいな流れから、バンドをやるようになりました。

— 昔は確かに、そういうパターンが多かったですね。何々だから、お前のパートはこれだ!みたいな。

ナル:それで友達とバンドをやることになったら、お前 Deep Purple 知っている?って聞くわけです。いや知らないねって答えたら、「Highway Star 」を聴かされて、何これ!かっこいいじゃん!って(笑)

— その後もバンドを長くやっていたのですか?

ナル:そうですね。色々とやりました。ただ僕は自分のバンドってやったことがなくて。だいたいは、キーボードがいないから、お前やってよ!って呼ばれるケースが多いですね。フュージョンからロックンロールまで、多彩な感じでやっていました。

— ひっぱりだこですね。

ナル:基本的にバンドは誘われてやるのですが、鍵盤をやっているヤツは何でもできるだろって、ギターで誘われたり、ドラムやベースをやってくれと言われたりしました。そういうキーボード以外のバンドも結構ありますよ(笑)

— すごいですね、マルチプレイヤー!

ナル:僕的には、楽器はキーボードが一番できるけど、ギターも結構弾きますね。お店にもギターを置いているので、よく弾いています。あとはベースやドラムもやります。それからバイオリンとフルートも演奏はできます。

— 元々はピアノから楽器は入ったのですよね?バイオリンはそう簡単にできないと思うのですが。

ナル:確かに僕はピアノだったけど、従兄弟がバイオリンを習っていて、遊びに行った時にちょっと貸してもらって触っていました。あと高校生の頃に、UKEddie Jobson(Keyboard)が、キーボードとバイオリンを両方やっていて、衝撃を受けまして、自分もやってみよう!と思った感じです。スケールなどは何となく覚えていたので、すんなり入れました。

— 言うのは簡単ですが、普通できないですよ(笑)

ナル:元々楽器がすごく好きで、結構ストイックになりますね。僕はギターを高校3年から始めたのですが、当時VAN HALENが流行っていて、テクニカルなプレイを2,3週間必死に練習して弾けるようにしてみたり(笑)

— それだけマルチな才能があって、音楽というか、演奏で生計を立てることは考えなかったのですか?

ナル:ないですね。演奏は完全に趣味です。まったくプロになることは考えていなかったので、普通に就職しました。

— 転勤する中で好きになった北海道、好きな理由を教えてください。

ナル:何より四季がハッキリしているのが好きですね。春は花が咲いて、夏は木々が濃い緑になり、秋はその葉が落ちて、雪の冬が来る。この春夏秋冬こそが四季だなって。都会に居ると四季がわかりにくいですよね。

いつの間にか季節が変わってしまう都会。そこに暮らす私は、四季を感じる余裕もなく日々を過ごしています。マスターも大阪の都会で商売をされていますが、心のどこかで四季を感じる感性を持ち続けている方だというのが、インタビュー終了後の感想です。リピーターが多いというのも、マスターのそんな感性を好きになったファンが多いのだと思います。

本編に載せられなった話に、フードメニューの話があります。週替わりでお薦めを作っているとのことで、取材時は豚汁がありました。その前は粕汁だったそうです。また、お客さんの中には、ジャガイモがあるなら、こういうの作ってよ!とリクエストが入ることもあるとか。なぜか目を引いたメニューの麻婆豆腐を聞いてみると、「僕が好きで、結構こだわって作っていますので、麻婆豆腐だけ食いにくる方もいますよ(笑)」

「ハレソラ亭」という店名については、「四人囃子のハレソラって曲があって、そこから付けました。僕の中ですごく充実感のあるバンドで、『PRINTED JELLY』ってアルバムの1曲目がハレソラです」 ハレソラ…晴れた空のように、マスターとのリズムある会話は実に爽快です。隠れ家的な「ハレソラ亭」へ足を運んで、日常生活で曇った心模様を、晴れた空に変えてみてはいかがでしょうか?

呑み処
ハレソラ亭<閉店>
営業:17:00~24:00(月曜~土曜)
定休:日曜・祝日
※第2・4日曜日「開運酒場・どら猫」
開運セラピスト妙芳先生出勤日、毎週土曜日・開運酒場どら猫

住所:〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島2-8-10
TEL:06-6347-8208

公式blog:http://ameblo.jp/haresoratei/

大阪府大阪市福島区福島2丁目8−10



◆関連記事
【連載】ロック酒場探訪記 バックナンバーは以下をクリック!

http://www.beeast69.com/category/serial/drink