連載

※この記事は取材した2012年のアーカイブです。最新情報ではありません。

セレクション18(宮城)「MOSH CHOKERS」マスター 小田原洋平
TEXT & PHOTO:鈴木亮介

大人気連載「ロック酒場探訪記」、今回は東北・仙台に構えるロックバー「MOSH CHOKERS」をご紹介します。

東日本で、あの震災の影響を受けなかった飲食店は皆無と言えるでしょう。震災の直接的な被害はもちろんですが、節電や自粛ムード、首都圏の計画停電など、様々な要因により飲食業界は2次的なダメージを受けました。

ただ一方で、「最近は仙台の中心地区は復興特需で他県より繁盛している」「水商売系は東京で職の見つからない若年層が仙台で働いている」といった話も聞きます。その全容を解明するのに数日の滞在では困難ですが、実際に自ら繁華街を歩き店主の話を聞くことでその一端を見ようと思い、今回仙台での酒場取材を敢行しました。

「ロック酒場」の取材対象探しは困難を極めました。事前の聞き込みやネット調査で見つけた店の多くは、閉店。中には「話すことはない!」と取材拒否も。そんな中で、仙台一の繁華街・国分町で一軒のロックバーを見つけました。外観から既にアングラな臭いが漂います。店のドアを開けると、カウンターで待ちかまえていたのは、マスターの小田原氏、そして…ヘビ!カリフォルニアキングスネークで、名前は「フリスコ」というそうです。

マスター 小田原洋平 プロフィール

現在35歳。彫師を経て31歳の時に独立し、友人らとともに「MOSH CHOKERS」を開店。
現在は看板ヘビの「フリスコ」とともに一人で店を切り盛りしている。
 
音楽はSocial Distortionなどパンク系が特に好きで、自身で演奏するよりも専らリスナー派。
「ライブ行って暴れてるのが一番楽しいですね!」

— 開店はいつ頃ですか?

小田原:3年ほど前になります。2008年12月に開店しました。

— 開店のきっかけを教えてください。

小田原:10年ほど彫師をやっていたのですが、10代の頃からずっと飲食店をやりたいと思っていて、チャンスがあって気の合う仲間と一緒に始めました。

— お店のコンセプトは初めから決まっていたのでしょうか?

小田原:ライブハウスのようなイメージの店は作りたいと思っていました。細かい部分は考えていなかったのですが、比較的趣味も合う仲間と立ち上げたので、やりながら決めていったという感じですね。

— なるほど。音楽はどのようなジャンルが特にお好きですか?

小田原:ロックもパンクも聴きますが、やはりパンクが多いですね。特に好きなのはSocial Distortionや、今まさに店で流しているSystem Of A Downです。ライブもちょくちょく行きます。

— お店は今、マスター一人でやっているのですか?

小田原:そうですね。最初仲間数名で始めたのですが、去年一人辞めて、この店は今一人で切り盛りしています。そして去年もう一店舗別の所に出店して、そちらは友人と二人でやっています。

— お客さんはやっぱりパンク系が好きな人が多いですか?

小田原:そうですね。一緒にライブで暴れ回るような(笑)同世代が多いです。開店した当初は、パンクやハードロックなど激しい音楽を好む人が集まって、楽しくお酒を飲んで…という場所をイメージししていたのですが、最近はそれに加えて、パンクなどの音楽をあまり聞かない人や、年配の人も来てくださっています。

— 幅広いお客さんに支持されているのですね。

小田原:常連さんで、一番上だと60代の方もいらっしゃいますね。入れ墨が好きだったり、レザーが好きだったりと、様々です。お客さんの割合は常連さんが多いですが、あとは看板を見てふらっと来る人や、「友達の友達」という方も最近は増えました。

— そんな「MOSH CHOKERS」ですが、店名の由来を教えてください。

小田原:この名前は僕が付けました。「MOSH」はライブのモッシュです。「CHOKERS」は、調べてみるとイスラム語で”パニクる”という意味だったんですね。それで、ライブハウスみたいに踊り狂う楽しい場所になればと思って、この名前にしました。

— 店主催でイベントをやることもありますか?

小田原:毎年1回、年末にライブハウスを貸し切ってイベントを開催しています。お店に飲みに来る人の中にバンドをやっている人に出てもらって、お客さんを呼んでごちゃごちゃやってますね(笑)

— 店の内装で一番のこだわりは何ですか?

小田原:やはり、この壁のグラフィティですね。彫師をやっていた時の弟弟子(おとうとでし)が描いてくれたのですが、マッキー1本でこれを描いたんですよ!

— それはすごい!

小田原:近くでよく見るとマッキーだって分かりますよ(笑)

— 東北一の繁華街・国分町で、競合他店も多いと思います。”生き残り”のために、何か心がけていることはありますか?

小田原:私がお客さんに気を遣わないこと、ですかね(笑)何でも結構言いたいことを何でも言っちゃうので、その代わりお客さんも気構えないで話しやすい、と言ってくれますね。

— イチオシの一品があれば教えてください。

小田原:二店舗目が居酒屋系なので、そちらでフードを作っていて、こっちではお酒メインですね。お酒はジャックダニエルが一番出ます。あとはバスペルエールというイギリスのビールが人気です。日本のビールと黒ビールの中間くらいで、美味しいですよ!

— ところで、昨年の震災時は相当な被害があったのではないでしょうか?

小田原:それが意外と、店が地下なので、ボトルが5~6本倒れた程度で、グラスも1つしか割れなくて、ほとんど何ともありませんでした。同じ建物でも2階や3階はかなりの被害があったみたいですね。

— 地震が発生した時はどちらにいらっしゃったのですか?

小田原:家にいました。その後余震の時は夜だったので店にいました。この辺りも1回停電になったんですよ。びっくりして向かいの人と「大丈夫ですかね」と話して。この国分町が真っ暗になるなんてことはかつて一度もなかったので、キャバクラの女の子はみんな泣きわめいていたし、僕もさすがに怖かったです。

— 震災後はすぐ営業再開したのですか?

小田原:いえ、10日間ほどは休業しました。震災から3日後には電気が復旧していたのですが、やはり周りの状況を見るとやる気が起きず…この辺りの店も休んでいた所が多いですね。

— 震災を経て、何か変わったことはありますか?

小田原:お客さんは特に変わらないですね。以前の常連さんもすぐに戻ってきてくれました。むしろ、震災発生から2、3日後には電話がかかってきて「早く店を開けろ」と言われたり(笑)ともかく、被害が少なかったのが幸いです。

— 最後に、今後の展望、そして読者へのメッセージをお願いします。

小田原:お店を開店してから3年が経つので、内装はリニューアルしたいなと考えています。店のコンセプトは変わらず、ずっとこのままですね。僕自身が好きなものをちりばめているので、これがなくなってしまったら楽しくなくなっちゃいますから。外観を見て「入りづらい」「怖そう」という方もいるのですが、僕を見てもらって分かる通り(笑)そんなことはないので、普通に色んな事を話して、気楽に酒を飲んでもらえればと思います。気構えないで来てほしいですね。

マスター・小田原氏とお話ししていて、人生「食わず嫌い」ほどもったいないことはないな、と改めて感じました。パンクミュージック、タトゥー、グラフィティ、スカル、そしてヘビに至るまで…いずれも「怖い」というイメージが先行しがちですが、全世界的に脈々と受け継がれている文化ですから、知れば知るほどハマっていく、奥深さがあります。

そして何より、小田原マスターの笑顔と気さくな人柄に癒されること間違いなし!国分町で羽をのばしたいという人にはオススメの一軒です!

Rock Bar
MOSH CHOKERS

営業:20:00~5:00
定休:不定休
住所:〒980-0803 宮城県仙台市青葉区国分町2-12-12 千代田ビルB1
TEL:022-266-3644

公式サイト:http://moshchokers.web.fc2.com/

宮城県仙台市青葉区国分町2丁目12−12



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