連載

※この記事は取材した2012年のアーカイブです。最新情報ではありません。

セレクション19(大阪)「ダイアモンドロックスBAR」 ノヴ(NOV)マスター
TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

大人気連載「ロック酒場探訪記」、今回は大阪の「ダイアモンドロックスBAR」をご紹介しましょう!大阪はミナミの繁華街、心斎橋筋商店街からすぐの好立地。地図を一度見ただけで、迷うことなく一発でたどり着きます。イメージカラーのブラックとレッドの看板、そして店名からロックな匂いがプンプンするお店です。

目立つ看板に誘われて、滑り込むように店内へ。エレベーターをおりてビックリ!いきなり顔のオブジェが出迎えてくれます。店内もブラックとレッドを想像していましたが、ウッドな木目調のオシャレさにビックリ!二度驚いた後に、マスターがにこやかに出迎えてくれます。

「今日は暑かったでしょう」と取材前にドリンクを出していただき感謝感激!インタビューを始める前から、マスターのファンになってしまいます。心づかいとタイミング、さすがです。そんなプロ中のプロであるマスターに、段取りなしの突撃的なインタビューを、さっそくスタートしてみたいと思います!

ノヴ(NOV)マスター プロフィール

大阪府出身。学生からの就職で大阪の有名ロックバーへ入店。そこで店長を13年半務める。2009年に独立して、ダイアモンドロックスバーを開店。業界屈指の筋金入りのマスターだが、その気さくな人柄は、お客様からだけでなく、多くの同業者からも慕われている。様々なロックを知り尽くした結果、70年代のロックを敬愛している。


— 店内が素敵ですね。置いてある小物は集めてきたものですか?

ノヴ:いえ、それが不思議な物で、全部お客様が差し入れてくれました。開店当初はそれほどなかったのですが、プレゼントが増えて(笑)。考えてみて、ウチは本当にお客様に恵まれています。それは長いこと(バーの世界)やってきたご褒美かなと思っています(笑)

— 独立されるまでのことを教えてください。

ノヴ:元々13年半くらいロックバーで店長をしていました。それから独立して、今に至りますが、独立して3年目になります。

— 独立する時期は決めていましたか?

ノヴ:そうですね。長いこと色々と勉強させてもらいまして。僕は今38歳なんですけど、35歳くらいの時に、そろそろ行かないと(独立のタイミング的に)ダメかなと(笑)。でも自分でやるお店は、スタイルをガラッと変えたかったんで、今のような形になりました。

— お客様の層を教えてください。

ノヴ:もちろん以前のお店の頃のお客様も来てくれますが、新しいお客様も多いですね。ロックバーというより、単なる飲み屋として使ってくれる人もいますし(笑)、層としては幅広いと思います。男女半々で、下は20歳くらいから40歳代くらいまでが中心的な感じです。

— お店ではどのようなロックが流れていますか?

ノヴ:僕自身が70年代のクラシックロックが好きなんで、その辺を主軸にしています。それ以外も対応はできるようにしていますので、何々ない?って聞かれたら、だいたい大丈夫なはずです(笑)。もしなかったら、次までには用意するようにしています。

— さきほど単なる飲み屋としても利用して頂いているとのことで、ロックを聴きに来る方ばかりではないのですよね。

ノヴ:音楽を聞きたい方はもちろんですが、お喋りがしたい方、飲みたい方。それぞれのお客様の自由な感じで利用してもらっています。

— オープンされるまでは、13年半の店長生活があったわけですが、この業界的には長い方ですよね。その前は何をされていたのですか?

ノヴ:その前は学生ですね。17年前くらいでしょうか。就職するにあたって、音楽に携わる仕事がしたくて、実はいろいろと探していました。でも、知識もコネもないから見つからなくて(笑)。ちょうどその頃にオープンしたロックバーがあって。そのカウントダウンに行った時、こういう世界もありだ!って思いまして。それから何だかんだ13年半経ってしまいました。

— 就職という意味でロックバーを選ぶのは稀なケースかもしれませんが(笑)、実際やってみてどうでしたか?

ノヴ:いざやってみたら接客業が好きなことがわかって、すごく楽しくなってきて(笑)。音楽と接客が同時にできるこの仕事は自分に合っているなと。それまではお酒も、別に好きでも嫌いでもなかったんですけど(笑)、お酒が潤滑油となって楽しい時間ができるんです。この気持ち良さに、ヤラレちゃった感じです。

— この道一筋ですね。

ノヴ:確かに他の仕事はしていないですね。考えてみると、学生の頃のバイトも、喫茶店とかの飲食系でした(笑)

— ご出身はどちらですか?

ノヴ:出身は東大阪です。僕はミナミに愛着やこだわりがありまして。今は景気も色々とありますけど、大阪カルチャーという目で見た時に、僕より下の30代前半の子たちも、頑張って店を出したりしていますんで、そういうのを大切にしたいですね。音楽とお酒と酒場で、大阪のカルチャーが出来ていると思います。

— この店舗物件はすぐ見つかりましたか?

ノヴ:最初から心斎橋界隈で探していました。何軒か見ましたけど、1フロアで木目調な落ち着いた雰囲気もイメージ通りだったので、ここに決めました。うるさいロックもガンガンにできますし、逆にゆっくり飲みを中心にすることもできます。お姉ちゃんを連れてきてもよさそうな感じだし(笑)

— 立地的にも素晴らしい場所ですよね。理想的なお店を開店されたわけですが、コンセプトは何かあったのですか?

ノヴ:家っぽくならないように心がけています。僕もちょっと油断すると、すぐ家っぽくなっちゃうんで(笑)。アットホームなバーと、落ち着いた居心地がいいバーっていうのは、紙一重だと思うんです。そのところは気を付けています。

— なるほど。居心地の良さとアットホームの差ですね。

ノヴ:こういうお店(ロックバー)って、趣味だけでやるには、難しい世界なんですね。でも好きなことやっているからこそ、考えないといけないこともあって。ココ(カウンターの中)に立っている以上は、僕は輝いていないと。バンドマンじゃないけど、ココはステージだと思って。お客様に接するようにしています。

— さすが、プロの言葉は心に響きます。ところでマスターのロック初体験の話を教えてください。

ノヴ:高校生くらいに、当時流行っていたGuns N’ RosesMotley CrueSkid Row何かから入りました。その後、90年代のOasisとか、逆に60年代のThe Beatlesやら。あとはサザンロックやグラムロックなどを行ったり来たりして(笑)、最終的には70年代のクラシックロックと呼ばれる物が一番しっくりきました。

— バンドはされてないのですか?

ノヴ:バンドはやっていませんが、DJみたいなことをよくやっていました。イベントのエアパフォーマンスでW. Axl Roseやってみたり(笑)。今でもイベントに呼ばれたら、お店の開店前に行って、ロックや歌謡曲もはさんだDJをすることもあります。

— お店のお勧めのメニューを教えてください。

ノヴ:定番は、自家製ローストビーフがお勧めです。それから、ごま油と鷹の爪であえたピリ辛枝豆。手羽元と卵を煮込んだものとかも人気があります。ドリンクだと焼酎やウィスキーが出ます。常連さんの好みを取り入れていったら、今のようなラインナップになりました(笑)

— 女性が好きそうなフルーツもありますね。

ノヴ:今日はバナナです。バナナミルクみたいにリキュール入れたバナナシェイクを出しています。あとフレッシュなイチゴでモヒートみたいなのも作ります。

— 女性のお客様も多いというのも納得です。

ノヴ:普段から女子会的なものとか、誕生日会やコンパも多いですね(笑)。

— それでは最後に、店名の由来を教えてください。

ノヴ:お店を出す時に、風呂で名前を考えました。僕の好きな70年代のロックから付けたいなと。ジャケットにダイアモンドが5つ並んでいるAerosmithの『ROCKS』というアルバムがありまして。さらに僕の生まれた年にDavid Bowieが『Diamond Dogs』というアルバムを出していて、その辺から「ダイアモンドロックスバー」という名前に決めました。イギリスとアメリカの70年代の良いところがミックスされているような感じで、これがいい!って(笑)

— お店のロゴもカッコいいですよね。

ノヴ:友達がデザインしてくれたんですが、これは本当に気に入っています。僕は周りに恵まれていて、支えられていることに感謝しています。だから少しでも長くお店を続けたいと思っています。儲けるよりも長くやりたい。Janis JoplinKurt Cobainというより、The Rolling Stonesのようなお店にしたいですね。いかんせん毎晩飲みますから、体調管理だけは考えないといけませんけど(笑)

インパクトある入口の顔のオブジェは、名刺にも同じものがプリントされていて、意味や経緯を聞いてみると、「お客様の中に造形の職人さんがいまして、僕の顔が入口に“いらっしゃい”とあったら面白いねって話から、本当に作ってくれた物です」。お客様から慕われているマスターならではのエピソードです。

開店時間が近づいてきたので、片づけをしながらの雑談に、お休みの月曜日のことを聞いてみると「家で事務作業していますね」とのこと。休みの日も結局は仕事をしているというプロ根性に感動です!心からロックを愛し、ロックバーを愛し、お客様を愛していることが伝わる取材を終え、店を後にします。

少し高めのトーンで、よく笑うマスターの声は、元気付けられることは間違いなし!日々の疲れをふっとばし、明日への活力をいただきに、ダイアモンドロックスバーへぜひ足を運んでください!

ダイアモンドロックスBAR

営業:20:00~05:00(土曜は07:00)
定休:月曜日
住所:〒542-0085 大阪市中央区心斎橋筋2-2-29 五ツ星ビル 4F
TEL:06-6212-2202

公式サイト:http://diamondrocksbar.com/

大阪府大阪市中央区心斎橋筋2丁目2−29



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